2015年、東京アンダーグラウンドはなぜ大きなシーンとなったのか? LIQUIDROOMのパーティに寄せて
東京インディではなく、東京アンダーグラウンド。ベース・ミュージック、スカム、ハードコア、ヒップホップ、パンク、オルタナ、アイドルなどジャンル問わず盛り上がるこのシーンを語る上では、そんな言葉がもっともしっくりくる。夜な夜な繰り広げられるパーティでは、ステージ上でもフロアでも熱狂し暴れ狂う人たちで溢れている。このシーンがおもしろいのは、マーケティングやターゲットという言葉とは皆無な空間から生まれたカルチャーということだ。キーワードは、ジューク、インターネット、アイドル、フリーなど、2010年代ならではのものばかり。もっとも象徴的なのは、ここの秩序は演者とお客さんたちによって成り立っていることだ。言い換えてみれば、両者の共犯関係によって盛り上がってきたシーンともいえる。
そんな東京アンダーグラウンドの中心にいるバンド、Have a Nice Day! が、11月18日にLIQUIDROOMで〈「Dystopia Romance」リリースパーティー〉を開催する。このイベントに向けて彼らはクラウドファンディングで100万円を集め、入場料をフリーにした。少しでも自分たちのシーンが広がるように、そして、未知の世界へ行くために。果たして、東京アンダーグラウンドの行くすえは?
LIQUIDROOMでのパーティを目前に、新宿LOFTの副店長でオモチレコードの主宰者・望月慎之輔と、夜な夜な現場を何個もはしごするパーティ・ピープル・ハダモリとともに、東京アンダーグラウンドを振り返った。本特集のために、Have a Nice Day!、おやすみホログラムのフリー・コンピも用意したので、それを聴きながらお読みいただければ幸いだ。東京アンダーグラウンドへようこそ!
インタヴュー&文 : スカムライター西澤くん
Have a Nice Day!「Dystopia Romance」リリースパーティー
2015年11月18日(水)@LIQUIDROOM
時間 : OPEN / START 19:30 / 20:00
料金 : ADV / DOOR CHARGE / FREE ※入場時にドリンク代500円いただきます。
LIVE : Have a Nice Day!、NATURE DANGER GANG
DJ : D.J.APRIL
ゲスト : Limited Express(has gone?)、おやすみホログラム、Y.I.M
東京アンダーグラウンドの一端に触れるフリーEP!!
V.A. / 東京アンダーグラウンド2015
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV / AAC
【価格】
単曲 0円
【Track List】
1. Have a Nice Day! / ロックンロールの恋人
2. おやすみホログラム / note(inst)
INTERVIEW : 望月慎之輔 × ハダモリ
会ったこともないのにノリで決まるみたいな感じでした(笑)
ーー11月18日に、Have a Nice Day! の〈『Dystopia Romance』リリースパーティー〉が恵比寿リキッドルームで開催されますが、2015年の東京アンダーグラウンドにおけるひとつの集大成にしてはじまりの日になるのではないかと思い、本日はお集まりいただきました。現在の東京アンダーグラウンド・シーンは、新宿LOFT、強いていえば、望月さんが発端となっていると僕は思っていて、そのきっかけの1つが、JUKEをフィーチャーした〈SHIN-JUKE〉だと思うんですね。2012年にJUKEなどのベースミュージックの魅力に直接触れたのが大きなきっかけになっていると思うんですけど、望月さん、かなりJUKEに入れ込んでいましたよね。
望月慎之輔(以下、望月) : そうですね。2012年に四谷アウトブレイクでやっていたJUKEやゴルジェを取り上げたイベント〈GHETTO VALLEY!!!〉や、2013年に南池袋ミュージック・オルグでやっていた粗悪ビーツさんが主催した〈粗悪百年物語〉ってイベントにもJUKEのDJの人たちが何人か出ていて、それを見たのが大きいですね。ブレイク・コアとかは好きで、関西ゼロ世代のZUINOSINとかも生のブレイク・コアだと思ってその当時は聴いていました。クラブ・ミュージックはそこまで聴いていませんでしたが、なんとなくブレイク・コアの延長線で入っていったのかなと思います。そういえば、ハダくんは今いくつなの?
ハダモリ(以下、ハダ) : 23歳ですね。2011年に上京したんですけど、そのときは例のKとか好きだったんで高円寺界隈のライヴばっかり観にいってました。それから2013年に大森(靖子)さんとかどついたるねんがすごい数のライヴをやってた時期があったんですけど、その辺りから徐々に新宿界隈のライヴハウスにも通うようになったんです。
ーーベース・ミュージックにはどこで触れたんですか?
ハダ : ずっと前にOTOTOYでJUKEの特集があったんですけど…。
ーーああ、「熟JUKE塾」だ(笑)。それこそ、望月さんに講師になってもらった連載でしたけど、あの頃にはすでに〈SHIN-JUKE〉も盛り上がってましたよね。
望月 : 〈SHIN-JUKE〉は、実質的に広島JUKE / FOOTWORKトラックメーカーのCRZKNYのリリース・パーティーとして開催した2回目がはじまりみたいな感じなんですけど(1回目は2012年10月19日に新宿ロフトのBARで開催)、その時は、CRZKNYはじめ、俺が知り合ったり好きだった日本のJUKEをやっている1番勢いがある人たちを全国から集めたみたいな感じのイベントした。Have a Nice Day!(以下、ハバナイ)も出てましたね。きっかけになったのは、友人を介して最初に知り合ったBooty Tune(※)っていうレーベルとの出会いが大きかったです。当時はSoundcloudとかで毎日JUKEを漁っていました。
※Booty Tuneは、国内のJuke / Footworkレーベル。同レーベルのD.J.APRILと望月の出会いが、〈SHIN-JUKE〉に結びついた。
ーー2013年くらいから望月さんはFacebookとかTwitterでJUKE、フットワークの動画をすごくあげてましたよね。
望月 : JUKE関係の方はツイートがめちゃくちゃおもしろいんです。それを見てノリでCRZKNYに「リリパやりましょう!」ってリプライしたら、「やりましょう!! 」ってなって。会ったこともないのにノリで決まるみたいな感じでした(笑)。この音楽が広まるか分からないけど、やっている人もそんなにいなかったんで、面白いし格好良かったからなんとかして絡みたいなと思って。
ーーハダくんは、いわゆるバンド・シーンにずっと通っていたんですか。
ハダ : そっちメインでした。でも当時、バンドも客もごく少数の内輪で盛り上がってる環境も案外多くて。変に態度がでかかったり悪目立ちするような盛り上がり方をしていたり、何度行っても馴染めなかったんです。すごい疑問だったし、そういうところが今だに残っているところもある。そこに対しては相当なフラストレーションを感じています。
ーーそこは僕も一緒で、自分の場合、きっかけになったのはBiSなんですよね。アイドル・カルチャーってお客さんの盛り上がりもすごいじゃないですか。現場の熱量が全然違くて。それこそLOFTもアイドル・イベントが増えていった時期ですよね。
望月 : そうですね。そこは並行しているのかなと思います。それこそ〈SHIN-JUKE〉にもhy4_4yhとか出してましたし、アイドル・イベントもやってましたし。
演者そっちのけで盛り上がってるんですよ(笑)
ーー先ほど、 〈SHIN-JUKE〉の2回目にハバナイが出演していたという話がでましたけど、望月さんはいつからの付き合いなんですか?
望月 : もともと僕はタワーレコード新宿店で働いていたんですけど、2011年の3月1日に辞めて、そこから半年間無職の期間があって。その期間に池袋のミュージック・オルグでオモチレコードを始めたんです。で、レーベルとしてマリリンモンローズのアルバムを作り始めたんですけど、マリリンモンローズとハバナイは昔から仲がよくて。ハバナイのメンバーのさわちゃんはマリリンモンローズのトップ・オタだったんですよ。その繋がりで浅見さんを紹介してもらって、そこからの知り合いです。
ーー当時のハバナイはどんな感じだったんですか?
望月 : 実は印象がないんですよね。あんまり覚えてないっすね(笑)。
ーーいまからすると意外なんですけど、スカムでもなかった?
望月 : ないっすねえ。いい曲だなって思うくらい。
ーーそんなハバナイを〈SHIN-JUKE〉の2回目ブッキングしたのはなぜなんですか?
望月 : その時は自分の思いつく限りのバンドをとりあえず出してみたんですけど、the mornings、どついたるねんくらいしかいなくて、話をしてみたら、浅見さんもJUKEやベースミュージックに興味があったみたいでした。それによって、ハバナイもDJと知り合ったり、交友関係が広がって、活動の内容が変わっていったんだと思うんですよね。浅見さんが直接シカゴのトラックメーカーのEQ whyにリミックスを頼んでやってもらったりもしました。
ーーまだNATURE DANGER GANGをはじめる前の関くんが、2回目の〈SHIN-JUKE〉に遊びにきていたんですよね。
望月 : そうですね。どついたるねんを観に来ていたんです。緑の髪をしたやつがめっちゃ暴れてて(笑)。その回が、〈SHIN-JUKE〉で1番お客さんが入ったんですよ。その時のオールスターみたいな感じのメンツで、サウンド・システムも入れたり、相当ハッタリと気合も効かせたんで、新しいもの好きの人がわーって来た感じですね。そういうものをちゃんと観れる機会がなかったっていうのもあるんでしょうね。
ーー結局、〈SHIN-JUKE〉は何回やったんですか?
望月 : 7回ですね。七尾旅人さんが出たのが最後かな。
ーー望月さん的に手応えを感じたのは何回目くらいの話ですか。
望月 : 2回目の時点で感じてましたよ。JUKEには、フットワークっていうダンスが付随してくるんですよ。プロのダンサーももちろんいるんですけど、遊びに来ているお客さんも客席で踊り始めるから、みんなが周りを囲んで盛り上がったりして、演者そっちのけで盛り上がってるんですよ(笑)。
ーー望月さんもフットワークを練習して筋肉痛になってましたよね(笑)。
望月 : (笑)。そこは〈SCUM PARK〉とかに繋がるとこで、演者とお客さんの境目がないっていうか、何をやってもいい。自分で踊り始めるお客さんとかも次第に増えてきましたね。
ーー形は違いますけど、BiSの現場でも研究員(BiSファンの呼称)が、いかに目立つかみたいな感じで、それぞれの暴れ方を発揮していった時期でもありますよね。
望月 : そこは不思議な関係性ですよね。研究員とBiSの関係ってすげえなと思うんですよ。普通のバンドじゃありえないじゃないですか。
ーーお客さんと演者の共犯関係というか、演者とお客さんの相互作用で現場が盛り上がっていくんですよね。そういう点でバンド・シーンからアイドル現場に遊びにくる人も増えていた気がしますよね。その頃、浅見さんと望月さんで〈SCUM PARK〉をはじめましたけど、どういう経緯で始まったイベントなんでしたっけ?
望月 : 2012年に下北沢シェルターの平日が開いてて何かやらないといけないって時に、普通のブッキングにしても人が集まらないしおもしろくないから、浅見さんとも何かイベントやりたいねって話もしてたんで、ハバナイ中心に好きなの集めてやろうってはじめたんです(笑)。
ーーあははは。そもそもなんで“SCUM PARK”って名前なんですか?
望月 : なんでその名前になったか経緯は全く覚えてないんですが(笑)、〈B-BOY PARK〉とか〈CHAOS PARK〉も現象じゃないですか? 突然始まって、いつの間にか盛り上がっているみたいな(笑)。そこからは、月に最低1回、多いときは2、3回くらいのペースでLOFTやシェルターで乱発してましたね。
浅見さん、自分の書く曲にすげー自信があるんですよ
ーー先ほども少し話しましたけど、NATURE DANGER GANGが生まれたのは、それこそ〈SHIN-JUKE〉の2回目に関くんが来ていたことがきっかけなんですよね。
望月 : そうです。どついたるねんを観に来ていた関くんを次の回のSHIN-JUKEにDJで誘ったら、バンドで出たいって言われて、作ってきたんですよね。最初から、いまみたいな感じで「俺たち」の原型みたいな曲もあって。
ーーそう考えると、ネイチャーは今話してきた流れを象徴したグループですよね。お客さんとして来ていた人たちが集まって、曲を流して大暴れしだして、そのままステージにあがっちゃったみたいな(笑)。サウンドもベース・ミュージックだし、全部が詰め込まれたグループなのかもしれない。そうした流れに比例して、イベント事態の動員も増えていった感じですか?
望月 : いや、そこは横ばいで、結構しんどかったと思います。〈SCUM PARK〉は集客は50人くらいで、〈SHIN-JUKE〉も100人前後の規模でやっていて。
ーーこの頃に来ていたお客さんって、どういう人たちなんですか?
望月 : 外国人がちらほら、あとはちょっとセレブっぽい人とか、JUKE好きな人ですね。普段ライヴハウスに来ているような人たちはあんまりいなかった気がします。この頃に来ていた人は、今は1割か2割くらいしか残ってないです。だから人脈を増やしたりとか、すげえ悩みましたね。〈SCUM PARK〉に出せるバンドがいない… おもしろいバンドがいない… っていうのも感じ始めた頃ですね。あと、2013年前後に音楽前夜社(※)のスガナミユウくんと知り合って、その後2014年に〈歌舞伎町Forever Free!!!〉っていう無料イベントをはじめたりしました。スガナミくんが無料で1回やってみたいって言っていて、でも浅見さんがうーんって感じだったんですけど、とりあえずやってみるかってことでやってみて。
※東京で活動する音楽創作クルー。GORO GOLO、ジャポニカソングサンバンチ、MAHOΩなどでのバンド活動の傍ら、劇団ロロ、ダンスユニットflep funce! の劇中曲を担当するなど多岐に渡り活動中。
ーー平日の夜にもかかわらず、ものすごく人が入っていて大成功でしたよね。浅見さんがフリーに対して積極的ではなかったのは意外ですね。
望月 : 〈SCUM PARK〉も基本2,000円とかでやってましたからね。〈歌舞伎町Forever Free!!!〉に関しては、スガナミくんが既存のライヴハウスのシステムとかに疑問があって、もうちょっと利益をみんなでシェアしたいっていう思いがあって、試しにやってみようかってことでやったんですよ。俺も2012年のLOFT入社当時に〈SXSW〉に行って思ったんですけど、海外のライヴハウスに行くとチケット代が安いんですよね。誰でも見にこれるような空気があったからいいなと思っていたんですけど、完全無料はさすがに難しいとその当時は思ってました。いろいろなイベントを続けていく流れの中で、なんとなく無料でやってみるタイミングかな~って、やってみた感じです。
ーー望月さん的にハバナイが盛り上がってきたと思い始めたのはいつ頃ですか。
望月 : やっぱりアイドルと絡み始めたあたりですね。その前は、盛り上がっているとは思っていたんですけど、身内が頑張って盛り上げてるっていう印象で。俺が全然知らない人から「ハバナイ好き」って声を聞くことはまだあまりなくて、俺たちのヒーローみたいな感じだったんですよ。
ーーそれこそ、おやすみホログラムとの関わりが大きいと思うんですけど、彼女たちはどのように登場したんでしょう。
望月 : 恵比寿BATICAでJUKEのイベントがあって遊びに行った時に、あたまがぐあんぐあんっていうVJが小川さんを紹介してくれて。おやホロはネイチャーの福山タクちゃんもめっちゃ推していて、2014年に俺とハバナイのさわちゃんのLOFTでやった誕生日パーティーイベントに出てもらったんですよ。その時に、八月ちゃんがハバナイを初めて観て1発で好きになって、自分のツイキャスとかで曲を流したり、DJでかけ始めたりして、それを浅見さんがTwitter上で見つけて、俺が曲書いてやるよって声かけて。
ーーそれでできたのが「エメラルド」なんですね。
望月 : そう。浅見さん、自分の書く曲にすげー自信があるんですよ。俺のほうが絶対にいい曲を書けると思っているから、それがいい具合に表れて。それと同時進行くらいで、younGSoundsの森川さんがせのしすたぁと対バンしたいってTwitterで書いていたので速攻連絡したんです。で、SHELTERでせのしすたぁ、ハバナイ、ネイチャー、younGSoundsで〈SCUM PARK〉をして。バンドに挟まれてるのに、せのしすたぁがめちゃくちゃライヴ感のあるライヴをして。2015年1月の高崎WOALで「エメラルド」の初披露をしたときに、俺は初めて研究員と一緒に酒を飲んだんですけど、内藤さんが怪我したり、浅見さんもライヴ中にガンガン水を撒いていたり、めちゃくちゃイライラしていたと思うんですよ。ネイチャーも注目を集めているなかで、なんとかしてやろうっていう気持ちが「エメラルド」にもすごく反映されてると思うんですよね。
GEZANも結局ライヴハウスだけじゃ収まらないやつらだったんですよね
ーーyounGSoundsの話が出ましたけど、谷口さんだったり、LessThanTV(※)との関わり合いも大きいですよね。
※谷ぐち順が主宰するレーベル。GOD'S GUTS、STRUGGLE FOR PRIDE、プンクボイ、デラシネなど数多くのアーティストをリリースしてきた老舗レーベル。
望月 : レスザンは2014年くらいから近づいていった感じですね。なんとなく谷口さんと浅見さんが繋がり始めて、〈ぐるぐる回る〉で10mモッシュ・ピットと1mモッシュ・ピットを作って交互にライヴをやるってことをして、そこで谷口さんと浅見さんが高めあって(笑)。
ハダ: 床べっちゃべちゃになってみんな転んだり(笑)。午前中から観るライヴじゃない!
ーーあはははは。
望月 : あと、2015年の5月4日にやった〈SCUM PARTY!〉がすごくデカイと思っていて。ハバナイ、ネイチャー、おやホロ、せのしすたぁの4組でやったんですけど、このイベントを作ったきっかけは、NUTS君っていうお客さんですからね。NUTS君は、おやホロもせのも好きだったんですけど、浅見さんがせのとSHELTERで対バンした後に「曲書こうか」ってリクエストをしたんですけど、せの側がスルーしていたり、おやホロも現場が荒れていたり、だったら今一番すごいのは誰か対決したほうがいいって煽って、それに俺が乗っかった感じですね。
ーーハダくんはこの頃、ハバナイをどう見ていましたか?
ハダ : もちろん5月のライヴも観に行っていたんですけど、荒れてた時期はハバナイもお客さんもすごいギラギラしてておもしろかった。あと、この時期から高円寺界隈のバンドさんとの関わりが増え始めて。「ハバナイとかネイチャーは知ってるけど、普段聴くバンドと毛色が違うから行きづらい」って言ってた人も、こういう競演がいいきっかけになったと思います。
望月 : あと、GEZANと繋がったのもデカいですね。十三月の甲虫ってレーベルを主宰しながら、スタジオや野外、ギャラリーなどで自分たちのイベントを積極的にオーガナイズしていてめちゃくちゃ刺激受けました。アイドルと繋がって、その上にレスザンとかGEZANとも2014年以降繋がってききました。
ーーそれによって、ハダくんがもともと好きだったバンドのシーンはおもしろくなってきた感じはありましたか?
ハダ : どちらかといえばおもしろいシーン同士が繋がってきた感覚でした。GEZANもKK mangaとかVOGOSとか大阪のバンドを盛んに呼んできたり、るるる菌さんとかゲタゲタみたいな、東京の中でも特に尖った人も企画に出てて。あとskillkillsとかBLACK SMOKER RECORDS界隈の人たちとも関わり始めて、各地域のみなぎってる集団が互いに寄ってきてる感じがあった。
望月 : GEZANも、なんやかんや関西のライヴハウスを全部ぶっ潰してこっち出てきたけど、結局ライヴハウスだけじゃ収まらないやつらだったんですよね。交友関係の広さを自分たちのイベントに反映させているところとかは、浅見さんとか通ずるものを感じたと思いますけどね。なかなか共感する相手がいなかったと思うんですよ。レスザンはちょっと先輩すぎるんで、同世代っていう中ではGEZANが1番近いのかなって。
俺たちより激しいライヴをやっている人なんていないと思っている
ーーお客さんもジャンルとかメディアとかの情報経由じゃなくて、おもしろいかそうじゃないかで、ちゃんと反応するようになっているのが興味深いですよね。どついたるねんのパーカーを着て、BiSHのライヴで暴れてるとかっていうのも見かけますし。
望月 : オタクっていう壁がなくなった気がしますね。いわゆるベタベタなオタク像って、ここにはないんじゃないですかね。おやホロ・プロデューサーの小川さん自身、アイドルのこと全然分からないですからね。元々知ってるのはBiSとでんぱ組だけで、ライヴも1回も観たことないっていう。
ーーなんでアイドルをやろうと思ったんですかね(笑)。
望月 : そこは掘り下げたことないですけど、小川さんも浅見さんと一緒で、自分の音楽にめっちゃ自信を持っているんですよ。アイドルというフォーマットで音楽を作っているけど、共通するのはライヴ感だと思うんですよね。お客さんがただ観に来るんじゃなくて、自分たちもなんかやらないとと思う場になっている。
ーー例えば、ポエムコア(※)とかも盛り上がりましたよね。現場現場って言ってるけど、東京アンダーグラウンドの人たちは、ネットの使い方がうまくて。ヴェーパー・ウェーヴ的なコラージュだったり、ネイチャーのアルバム特設ページもジャンクな感じがあるじゃないですか。あと、浅見さんはインターネット・モッシュピットとかも提案していたし、フライヤーも紙ですらなくて、データですもんね。
※ポエムコアとは、BOOLが2006年、自主制作アニメの制作にあたり、音声コンテとして音声パートのみのデモ音源を作り始め発展させたスタイルを、2012年に「ポエムコア」と名付け、ネット・レーベルを中心に発表し広まり出した音楽ジャンル。ポエムコアの音楽的特徴として、その特異な制作方法があげられる。まず先行して、深夜の暗い部屋の中でポエム・テープというポエムの朗読音源が作成される。そのポエム・テープを元にトラックが作成され、最終的に楽曲として成り立つ。歌やラップなど小節に言葉を当てはめていく作曲方法とは根本的に異なる。
望月 : インターネットが大好きですからね(笑)。ネットってリアクションが分かるじゃないですか? 紙のフライヤーは分からないから。
ーー5月に感じた手応えは、ずっと続いて来てる感じですか?
望月 : そうですね。それ以降で浅見さんの考え方が大きく変わったと思うんですよね。LOFTの範囲だったら、やっていることを100%伝えられるんですけど、外に出てみると、ハバナイのことを知らないヤツらばっかりで。もっとでかい規模でそういう風景が見たい。それが浅見さんの今の理想なんじゃないですかね。だからリキッドルームでのパーティは、自分たちがやったことない規模でやることによって、普段LOFTに来ないような人たちがどういうリアクションをするのかってところを見たくて。その結果次第では売れているバンドがちゃんとやってることを、こっちも普通にやらなきゃいけないのかもしれないのかなとも考えたりします。
ーーいまの規模では満足してはいないんですね。
望月 : やっぱり知ってほしいです。だって、俺たちより激しいライヴをやっている人なんていないと思っているから。他のライヴハウスに行って、そんな景色観たことがない(笑)。ハバナイの曲って、大概が横ノリだと思うんですよ。R&Bみたいなヒップホップとかゆるいノリの曲だけど、激しいモッシュが起こる現象自体がすげえおもしろいなと思って。なにか分からないんだけど、ハバナイの音楽に引き寄せられるものがあって、すげえ暴れたくなっちゃうんだと思いますね。
ーー嬉しそうにパンツを脱いで、トイレットペーパーを股間に巻いて、ステージに向かって走っていくお客さんとか、ここくらいでしか見ないですからね(笑)。
望月 : (笑)。他のインディ・バンドのリリパに行ったんですけど、パンパンに人は入っているけど、なんかそれだけだなと思っちゃって。やっぱり、熱量もったお客さんがいないと、ただお客さんが沢山そこにいるってだけじゃ消費されちゃうだけだと思います。簡単に言うと、なんちゃってのお客さんなんですけど、リキッドではそういうお客さんを何人こっちに引っ張れるかなって。
今回も、オタクには全部言ってありますから
ーーとはいえ、東京アンダーグラウンドのお客さんを称賛しきっているわけじゃないんですよ。めっちゃお酒飲むし、暴れるし(笑)。でも、おもしろいものを観たい欲求とか、その貪欲さは本当にすごい。
望月 : 昨日Tumaさんがツイートしていたんですけど、バンドでコミュニティができると、身内同士で固まって、いいも悪いも言えなくなるって。それが嫌でライヴハウスから抜けだしてアイドルに来たお客さんが、例えばまたハバナイってコミュニティに入っていいも悪いも言えなくなって、いいしか言わなくなっちゃう。そういう状況になったら嫌だと。話半分で見てましたけど、それは一理あるなと思って。
ーー実際、お客さんはリアルになんでもいいますよね。「会場、クソせめえ」とか、普通に何も気にせず言いますしね(笑)。それがリキッドの大きさでやった時にどうなるかっていうのは楽しみですね。とはいえ、クラウドファンディングで100万円を達成した時点で成果が出ているとも言えるんじゃないですか?
望月 : そこは、入場料を無料にしたいから浅見さんはクラウドファンディングをやったわけじゃないと思うんですよね。普通にCDを作ってお店に置いて売るとか、ライヴハウスにお金を払って観に来てもらうとか、既存の音楽に纏わるシステム自体がおもしろくないと思っていたんじゃなですかね。今回は、お客さんが音源を買うことイコール、お客さんの力でハコを、パーティーを買い取ったっていうことだから、お客さんの達成感にも繋がるじゃないですか。で、誰かに教えたくなる。そういうおもしろさがあるんだと思います。
ハダ : この仕組み、すごいわかりやすくていいですよね。あくまで音源を売るための手段ではあるんですけど、最終的にリキッドの会場費になる、っていう流れがハッキリしていて健全ですし。これが少しでも彼らのモチベーションにつながれば嬉しいです。あとハバナイ、ネイチャーの現場っていい意味で敷居の高さがあるんですよね。明らかにマナーが悪かったらその場で止めたり、ダメなことはダメってはっきり言うけど、ルールさえ守ればみんなすごく優しい。モッシュで転んだり物落とした時はフォローしてくれるし、なにより楽しもうっていう気合いが尋常じゃない。そういう部分が居心地のよさにつながってると思いますし、この姿勢がバンド、アイドル問わず広まったら確実にいい流れが生まれそうですよね。
望月 : もちろん人が増えると変な人も出てくることはあって。ネイチャーのテレビ出演後にマナーが悪い人がきたりして、違う暴れ方をしちゃう人がきたりしたんで、普段来てる人たちが止めてくれたり、Twitterであれおかしいだろうって言ってたりしていて、それが嬉しかったですね。今回も、オタクには全部言ってありますから。なんかあったら止めろよって(笑)。
ーー望月さん個人としての展望はあったりしますか?
望月 : 俺の希望としては、地方を周ってイベントしたいですよ。それこそ、1つのところに1、2年住んだりして〈SCUM PARK〉みたいなイベントを始めてデカくしたい。あと、お金の話をもうちょっとしてもいいんじゃないかなと思っていて。企業とかにちゃんとサポートしてもらうとか、全然恥ずかしいことじゃないし、金があるに越したことはないですからね。ここから先は、大きいお金を動かすきっかけを作らなきゃいけなんじゃないかと思ってます。
東京アンダーグラウンドを知るためのヒントとなる10作品
NATURE DANGER GANG / THE INFERNO(24bit/48kHz)
NATURE DANGER GANGが2ndアルバム『THE INFERNO』を〈オモチレコード〉よりリリース。今作には全13曲が収録。今作に参加したのはKΣITO、DJ DON、Gnyonpix、Masayoshi Iimori、食品まつり aka foodman、CRZKNY、Seimei&Taimei from TREKKIE TRAX、国士無双、LEF!!! CREW!!! の9組。レコーディング、ミックス、マスタリングはTSUTCHIEが担当している。
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おやすみホログラム / おやすみホログラム
おやすみホログラム初のアルバムが完成!! オルタナティブとアイドルの融合、いやその先へ!
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Have a Nice Day! and more / Heaven Discharge Hells Delight(24bit/48kHz)
Limited Express (has gone?)とHave a Nice Day!のスプリット作品。2組の共作である表題曲をはじめ、Have a Nice Day!「Zombie Party」のLimited Express (has gone?)によるカバーなど全6曲が収められる。
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どついたるねん / ミュージック
結成8年目、8人組となった彼らがリリースする8作目のアルバム『ミュージック』は、なんとR&Bアルバム! ブラック・ミュージックの影響を受けているのはceroだけではない! 過去6枚のアルバムが小学校の6年間だとしたら、ベスト・アルバムが卒業証書、今作でついに中学校入学! 少しだけ大人になったどついたるねんのすべてがここに!
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BOOL / THIS IS POEMCORE(24bit/48kHz)
あなたは、ポエムコアを知っているだろうか? 2012年頃からネットを中心に話題になりはじめた、ポエムを主体にトラックが融合した音楽ジャンルである。とはいえ、まだポエムコアをやっているアーティストは少ない。むしろこの人物が一人で牽引しているといってもいい。彼の名はBOOL。このたび、オリジネーターである彼が初のフル・アルバムをVirgin Babylon Recordsよりリリース。
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VA. / Footwork on Hard Hard Hard!!
80年代からシカゴで活動し、2012年『"DA MIND OF TRAXMAN』をPlanet-Muから発表し、多くのシーンを震撼させたシカゴ・ゲットー・サウンドのゴッドファーザーTraxmanや、収録曲が「ジューク / フットワーク」スタイルでの初CDリリースとなるKID606、世界中の「ジューク/ フットワーク」プレイヤーによる楽曲をコンパイルする「World Wide JUKE」シリーズの主宰者Juke Ellingtonらの海外勢に加え、日本国内に向けて精力的に「ジューク / フットワーク」を紹介しつづけ、海外でもその名を知られるD.J.Fulltono。そして、彼が主宰するジューク / ゲットー・テック専門レーベルBooty Tuneに所属するD.J.G.Oがここに集結! とどまることを知らない進化の過程をぶっ壊れるほどの重低音と共に体感しろ!
LEF!!! CREW!!! / LEF!!! CREW!!! Teaser Mix
ロック・バンドのような激しいノリ、高い熱量を放つDJパフォーマンスで会場を揺らしまくるユニット、LEF!!! CREW!!!。横浜を拠点としながらありとあらゆる音楽シーンを行き来し、インディー・ロックからテクノ、ジュークなどの先端クラブ・ミュージックまでジャンルレスかつ超クイックに掛けまくるスタイルは唯一無二。聴いていただけなきゃ理解不能ということでOTOTOY限定ミックス音源をフリーでお届けします!
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Have a NiceDay! / エメラルド〜おやすみホログラム×Have a Nice Day! エメラルドEP リリースパーティー@渋谷WWW(24bit/48kHz)
スカム・パンクとアイドルの2者が融合して誕生したアンセム「エメラルド」のレコ発にして封印パーティ〈エメラルド〜おやすみホログラム×Have a Nice Day! "エメラルドEP" リリースパーティー〉。OTOTOYでは、その臨場感を収録すべく、モッシュ・ライヴ・レコーディング・チームを集結。レコーダーを持って客席でモッシュしながらレコーディングを決行した。2015年のアンダーグラウンド、隅々まで楽しんでほしい。
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おやすみホログラム / エメラルド〜おやすみホログラム×Have a Nice Day! エメラルドEP リリースパーティー@渋谷WWW
スカム・パンクとアイドルの2者が融合して誕生したアンセム「エメラルド」のレコ発にして封印パーティ〈エメラルド〜おやすみホログラム×Have a Nice Day! "エメラルドEP" リリースパーティー〉。OTOTOYでは、その臨場感を収録すべく、モッシュ・ライヴ・レコーディング・チームを集結。レコーダーを持って客席でモッシュしながらレコーディングを決行した。2015年のアンダーグラウンド、隅々まで楽しんでほしい。
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NATURE DANGER GANG / NATURE DANGER GANG presents High Tension Party! at SHINJUKU LOFT(24bit/96kHz)
眠らない街、新宿歌舞伎町。怪しげなキャッチで溢れる街中の地下2Fに居を構えるライヴハウス・新宿LOFTにて、1月11日(日)24時より開催されたイベント〈NATURE DANGER GANG presents High Tension Party!〉にOTOTOYライヴ・レコーディング・チームが潜入。ライヴ中に服を脱いじゃうとか、暴れまくるとか、巷で噂の8〜10人の集団・NATURE DANGER GANGのライヴをハイレゾでレコーディングしちゃいました。こちとら負けてられないということで、レコーダーを持って客席でモッシュしながらレコーディングを決行。ハードコア、パンクのエッセンスをレイブ、ベース・ミュージックといった音楽に落とし込み、快楽的な部分のみ濃縮還元させた音楽と深夜のテンションが合致したThis is LIVE音源!!
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