INTERVIEW : 巻上公一
ヒカシューが、前作『うらごえ』から約1年半ぶりのアルバムを完成させた。レコーディング場所は前作と同じNY。そして前作と同じく、ルー・リードのエンジニアも担当するマーク・ウルゼリがエンジニアをつとめている。『うらごえ』の続編的な作品と巻上公一自らが語るように、再生ボタンを押して聴こえてくるのは、これぞヒカシューという奇天烈ながらもキャッチーさを持った楽曲たち。なんとも恐れ入るのは、ヒカシューというイメージを壊すことなく、それでいてそのイメージに捕われないという、不可思議なものになっていることだ。その根本には、ヒカシューのアウトサイダーとしての原点、そして小さな人間の活動を描くという視点が貫かれている。インデックスカードに詰め込まれた詩たちから生まれたというヒカシューの激烈な音楽を、バンドの臨場感がリアルに収められたDSDの音質でぜひ体感してみていただきたい。そして巻上のインタビューをじっくり読み込んでほしい。
インタビュー & 文 : 西澤裕郎
オノセイゲンによるDSDマスタリング・バージョン
ヒカシュー / 万感
【配信形態 / 価格】
(左)DSD 5.6MHz+mp3 まとめ購入のみ 4,500円
(右)DSD 2.8MHz+mp3 まとめ購入のみ 3,500円
1. 目と目のネット / 2. なのかどうか / 3. ナボコフの蝶 / 4. にわとりとんだ / 5. 祈りのカラー / 6. ニョキニョキ生えてきた / 7. 人間に帰りたい / 8. もし もしが / 9. 惨めなパペット / 10. みえない関係(充電してる) / 11. そのつもり
【配信形態 / 価格】
(左)HQD(24bit/192kHzのwav) まとめ購入のみ 3,200円
(右)HQD(24bit/96kHzのwav) まとめ購入のみ 3,000円
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普通にライヴをやっているのを録ってもダメなんですよ
ーー『うらごえ』のインタビュー時に、もう1枚レコーディングした作品があるって言っていらっしゃいましたけど、今作はもしかして?
巻上公一(以下、巻上) : それは、まだできてないの(笑)。だから、もう1枚あるんですよ。
ーーじゃあ、『万感』は一から作られた作品なんですか?
巻上 : そうです。この作品は『うらごえ』の続編的な感じで、同じような作り方で作ったんですよ。まったく同じスタジオとエンジニアで、ミックス / マスタリングも全部同じスタイルで録りました。
ーージョン・ゾーンさんのツアーも担当されているマーク・ウルゼリさんが、エンジニアを担当されているんですよね。どんな特徴のあるエンジニアさんなんですか?
巻上 : 仕事がはやいんです。そうじゃないと困るから。なにせ、ほぼ1日で録るので。
ーー『うらごえ』も2日で録ったんですもんね。
巻上 : 今回もそう。ただ、出来上がってきたのが、ギリギリになっちゃったので。あと、ミックスしている最中に、ルー・リードが死んじゃったんですよ。それがすごく大きくて。なんでかっていうと、最近のルー・リードのエンジニアさんでもあるんですよ。ショックで作業ができなくなっちゃって。ぼくらもギリギリで制作していたんですけど、うわーってなっちゃって。
ーーそれはいろいろと大変でしたね。ただ、作品を聴くと、バンドとしての状態はよかったんじゃないかと思ったのですが。
巻上 : そう。素晴らしいバンドの状態でできて、すごくよかったです。いま演奏を聴いても、このときの演奏状態に戻れないんですよ、バンドが。カナダ4都市で演奏をして、すぐにNYに入ってから演奏して。その時点で、バンドの状態、即興のセンス、レコーディングも含めて素晴らしかったんです。
ーーレコーディングもライヴみたいな感じで、そのときの状態が現れるんですね。
巻上 : そこはプロデュースなんですよ。どうやってバンドの状態をよくして、一番いいときにレコーディングできるかっていう賭けですから。グループのなかで、全員の体調が揃うのって大変なんですよ。それをどううまくオーガナイズするかっていうのが、プロデュースの仕事。カナダ4都市の公演がすごくうまくいって、その翌日の休みに、ジョン・ゾーンの音楽だけをずっと聴きにいって。ものすごくいろんな栄養をもらって、やりたいって気持ちになったんですね。自分にないものがいっぱいあるわけじゃないですか、人の音楽を聴くと。満たされないものがあるから、演奏に活かされるんですよね。
ーーそうした経緯を経て、最高潮のときにレコーディングできたんですね。
巻上 : だから普通にライヴをやっているのを録ってもダメなんですよね。そういう仕込みが大事で。スタジオに一番近いホテル選ぶとか、それが僕の一番の仕事です。
生きているから、余計なものもあるんです
ーーそもそも、ジョン・ゾーンさんと、巻上さんの付き合いは長いんですよね。
巻上 : 1980年代からすごく仲のいい友達で、2人で香港に行ったりしているからね。僕のソロも、Tzadikから5枚くらい出してくれているし、ヒカシューも『Hikashu History』っていうのを出してくれているし。
ーー仲がいいっていうのは、好きなものだったりセンスが近いってことなんですか。
巻上 : そうですね。彼は素晴らしい、本当に天才的なアーティストです。
ーーミュージシャンとしての視点から見ると、どういう部分が素晴らしいんですか。
巻上 : それは、制作態度ですね。本当に音楽を大事にしている、自分の信念を貫いている。いろんなものに左右されないで、自分のやりたいことをどうコントロールしていくかを知っている。そこはすごく参考になりますね。最初は、東芝EMIからリリースした『殺しのブルース』のプロデュースをしてもらったんですよ。それは1992年のことなんだけど、レコーディングのスタイルとかすごく勉強になりました。
ーージョンさんはレコーディングをどういうふうにやるんですか。
巻上 : すべて一発でやります。『殺しのブルース』の場合には、1曲ずつアレンジャーを変えて、1日1曲って感じで。バブルの最後だったので、贅沢なレコーディングをしましたけど。要するに、レコーディングをするときは、本当にみんな一緒に演奏する。そのことを強く学んだんです。
ーーそれはいまも続けていますか。
巻上 : 素晴らしいと思ったので、いまも続けています。というのもね、ドラム・ベースを録音して、ギター、歌入れを最後に録音するっていうレコーディングのスタイルは、ちぐはぐなんですよ。全体が見渡せない。音楽を演奏するうえで、それは違うだろうと思って。部品を集めて作り上げる商業作品じゃなくて、演奏そのものが大事なんです。生きている演奏っていう。
ーーレコーディングとはいえライヴ要素みたいなものもあるということですか。
巻上 : そうですね。生きているから、余計なものもあるんです。いらないと思われるものを切らないで、なるべく残す。空間に存在している無駄な音をね。
ーー残す理由っていうのは?
巻上 : なにかそこにあるから、要素になると思っていて。そういうのを切ったものが商業音楽だと思っているから。
ーーつまり、ヒカシューの音楽は商業音楽ではないと。
巻上 : そこは、なんとも言えないですけどね。売る以上は商業音楽ですけど。ただ、商業音楽的な作り方、産業主義的な作り方とは違うふうにできたらいいなと思って作っています。
ーーDSDで録るっていうのは、そういう無駄なものも全部収録されますからね。
巻上 : そうですね。DSDはインプロヴィゼーションとかに、とっても向いていると思いますよ。立体音像だからね。やっぱりロックでリミッターとかをあげちゃうと、平面的になりがちなので、今回もそのへんは苦労しましたね。DSD版はちょっと違うふうにマスタリングしてあります。やっぱりインプロヴィゼーションの生き生きしたところがDSDのほうが生々しく聴こえると思います。
音楽の専門じゃないって気持ちで始めているわけですよ
ーーちなみに、これは短絡的な質問かもしれないんですけど、巻上さんが演劇をやっていたことは、空間を意識することと繋がっていると思いますか。
巻上 : そうですね。消え行くものに対する潔さっていうのは持っていると思いますね(笑)。
ーー(笑)。それは演劇っていうものが一回性を強く持っているものということですか。
巻上 : 音楽も一回きりだと思っています。それをなるべく再現できたらって思っているわけですよ。それは素敵なことだと思うし、生に近い形で聴ければ体験になるし、そこがDSDのすごいところだと思います。
ーー巻上さんがは、常に新しいもの、与えられたフォーマットではないものを追求してこられたわけじゃないですか。どうして、それを続けられるんだと思いますか。
巻上 : まあ、基本的に門外漢だからね。アウトサイダーなわけ、常に。演劇をはじめたときも、アウトサイダー的な感じで参加していて、音楽をはじめたときも、音楽の専門じゃないって気持ちで始めているわけですよ。常に外側からの視点でいる。
ーーさすがに、いまは音楽に対して門外漢って気持ちはないんじゃないですか?
巻上 : もう、あんまりないんだよね(笑)。さすがに長くやりすぎているから。そろそろ辞めたほうがいいのかもしれない(笑)。
ーーいやいや(笑)。ないものを自分でもみたいって気持ちもあるのでは?
巻上 : 始めた以上は、誰もやっていないこと、聴いたことのない音を発見できたら最高なわけでしょ? ヒカシューでは、一つのスタイルができたんですよね。8年くらい同じメンバーでやっているなかで、自分たちのスタイルがやっとできてきた。それで、いまレコーディングをがんがんやっているって感じなんです。
ーーバンドにとって、作品を出すっていう行為は定期的に必要なことだと思いますか?
巻上 : そう思いましたね。前、13年間出さなかったんですよ。それはよくなかったなって反省していて。ずっと活動していたにもかかわらず、やっていない感じになっちゃうんですよ、社会的に。だから定期的に作品を作っていかないといけないと思いました。そうすると、いろいろコミニティが広がっていきますからね。
ーー最近は若い人ともよくやられてますもんね。
巻上 : 若い人に声をかけてもらって、本当に嬉しいです。
みんなに好かれようっていう音楽なんか僕は作っていない
ーー楽曲制作にあたり、音楽以外の文化的要素は反映されたりしますか。
巻上 : 芝居はもう見なくなりましたね。なんか、時間の無駄かと思って(笑)。なかなかおもしろい芝居にあわない。
ーーお芝居は、巻上さんのはじまりの場所でもあるのに。
巻上 : もともと普通の芝居をやっていないんですよ。パフォーマンスみたいなことをしていたし、実験劇場が好きなんですよ。今年、スウェーデンに行ったときに、ウメオっていうところで観た人形劇がよかったんです。イギリスの劇団で文楽を元にしているんだけど、ダンボールで作った人形でやっているっていう。しかも、3人で動かすんだけど、メインの人がずっとしゃべり続けている。で、ずっと見えているわけ。それは、よかったなあ。
ーー巻上さんの琴線に触れるものは、限られているわけですね。
巻上 : 相当限られてますね。
ーーいままで持っていた興味はなににとって変わったんでしょう。
巻上 : いや、好きなものが限られているので、そんなになくて。お芝居でいうと、リチャード・フォアマンっていう人の研究をずっとしているんですよ。今年リチャードの新作があったので、レコーディングのときにみんなを連れて観にいったんですけど、素晴らしかったです。だから芝居を観てなくはわけではないね(笑)。
ーーリチャードさんはどういう方なんですか。
巻上 : 45年くらいずっとオフブロードウエーでやっているん人なんですけど、ジョン・ゾーンは、リチャード・フォアマンの影響を受けています。通常の芝居じゃなくて、意識そのものを解体していくようなところがあるんですよ。観ている人が相当混乱します。すべてが途中で、すべてが起こっている。非常に繊細に劇を壊していくんですよ。
ーー脱構築みたいなことですか?
巻上 : ぼくは脱構築を謳ったものは、趣味に合いません。
ーーアカデミックっぽさが出ると違うんですね。
巻上 : インチキです。裸の王様のようなものです。
ーーそこの境ってなんでしょうね。
巻上 : わざとらしいでしょ、やってることが。インテリのつもりでやっているなってところが気持ち悪くて。それはバカにしか見えないでしょ。だけど、インテリの活動は好きなんだよね。ものを考えたり、深く入ったりするのは好きだけど、脱構築の作品はどうかと思うものが多いです。
ーーそういう意味では、リチャードさんはまた違うものをやっていると。
巻上 : 人を寄せ付けないところはありますよ。例えば、お芝居を観にいきたい人から事務所に電話がかかってきて、たまたまリチャードがとっちゃったとき「この芝居はどんな芝居なんですか」って聴いたら最後、「It's not for you」って言って切っちゃう(笑)。まあ、向き不向きはあって、それは音楽にもあると思いますけど、みんなに好かれようっていう音楽なんか僕は作っていないですし。
ーー巻上さんもそうですか。
巻上 : そう思ってます。だってみんながいいと思う音楽をいいと思ってないから、作っているんだから。いや、それだけじゃないな。かなりいろんな音楽すきだから。いままで表現されてない音楽をつくりたいんですよ。それに共感してくれる人が多くいればもちろん嬉しいけど。みんなが商業主義的に買っている音楽が、より広範な選択ができればと思ってます。
何年も生き続けられるような作品を考えている
ーーそうやって作られているわけで、1年3ヶ月ぶりの新作のタイトルが『万感』っていうのが感慨深いですね。
巻上 : これは抽出したんです、詩のなかから(笑)。いろいろ詩を観たときに、一番合っている言葉が入っていたから使ったんです。
ーーいろんな感情が入っている、という意味の言葉ですよね。
巻上 : まあ、そうですね。いろんなふうに感じられるでしょ。
ーー歌詞は巻上さんが書いているわけじゃないですか。そこから抽出したわけですから、なにかしらの意味はあるんじゃないですか(笑)?
巻上 : どう機能するかっていうことだけを考えてやっているんです。
ーー機能っていうのは?
巻上 : いま、感じられるのか感じられないのか。それが選択する基準です。心も体も、そして頭も。
ーー小説を書くみたいにストーリーを考えるわけではないんですね。
巻上 : そうです、そうです。言葉の音があって、それがなにかしらの意味と繋がっていくような状態を作り出す。アソシエイトが大事なんです。意味のない言葉を繋げていくことはできるけど、そうじゃなくて、なにかつながりがある言葉で、なおかつ考えられるもの。だから、詩を作るのには時間がかかるんですよ。
ーー音源を残すっていうのは、そのときの記録として残るわけですしね。
巻上 : そのまま記録され、いまが記録されるから社会と繋がれるわけですよね。しかも普遍的なものも考えているから、何年も生き続けられるような作品を考えているんですよ。
プライベートなちっちゃな世界の豊かさをどこまで表現できるか
ーーいろんな角度から感じられる作品になっているっていうのは、ヒカシューの作品の大きな特徴でもあると思います。今回もジャケットにこだわってらっしゃってますよね。
巻上 : 今回は、ジャケットを蝶蝶にしているんですよ。2年前にサンクトペテルブルクに行って、レニーグラード音楽院のなかで演奏会をしたんですけど、本番まで時間があるので、イサク大聖堂っていう大きな聖堂まで散歩していったんですよ。その途中にナボコフミュージアムがあって。
ーーウラジミール・ナボコフですか?
巻上 : そう。『ロリータ』って作品で有名な人で、日本で全作品翻訳されているんですよ。非常に難解な作家にもかかわらず、全部訳されていて。彼は、蝶の学者でもあるんですよ。蝶のスケッチとか、彼が使ったタイプライターとかもあって。あとインデックスカードがあったんですよ。
ーーインデックスカード?
巻上 : ナボコフって人は、自分のアイデアをインデックスカードに書いて、それの並び替えをやったりしながら小説を作る人なんですよね。その手法を、リチャード・フォアマンも使って、日々芝居を作っているんです。芝居を作ろうってときに、インデックスカードから抜粋して、いまにあうもの、機能するものを考えていって芝居を作っていく。ジョン・ゾーンもそれをやっていて、インデックスカードに作曲しているんです。それも、毎日作曲するんです。僕もそのスタイルで詩を毎日書いていて、それを並び替えたりとか、そのなかからヒントをもらって別の詩にしたり、創作活動をしているんです。そういう制作態度が近いこともあって、ナボコフの名前を出していいかなと思って。巨大な名前なんで、どうかなと思ったんですけど。
ーーインデックスカードを使っているというのは、制作においてなにかしらの影響を及ぼすと思いますか。
巻上 : それは、ありますよ。やっぱりそれだけ脳が活性するってことですから。フラグメントですよね。結局はひとつのボディから出来ているから、決してかけ離れたものではないということですよ。
ーー作曲もインデックスカードを使うというのはおもしろいですね。
巻上 : だから、いっくらでも出してくるんだよね。
ーー同じものも使っちゃうってこともあるんじゃないですか。
巻上 : もちろんあると思うけど、引用もあるから。つまり、気に入ったものをそこに書き込むわけですよ。例えば、今日観ておもしろかった映画のことを書いたり、日記みたいな機能もある。
ーー巻上さんもそうやっているんですね。
巻上 : そうやって書いています。電車に乗っているときに浮かんだことを、いまだったらケータイに書いたりして貯めておいて、あとで組み合わせたりとか。だって、普通の詩じゃないから。そうでしょ? もともと、僕も歌の詩を作ろうとおもって書いていた訳じゃなくて、芝居のために詩を作りはじめたから。他の作家の人とだいぶ違う形だと思いますけど。
ーーアウトサイダーというか、巻上さんとしての個がしっかり刻まれているのが、若い世代からしてもとても心強いというか、創作の指針になっていると思います。
巻上 : ルー・リードも、リチャード・フォアマンも、ジョン・ゾーンもみんなそうだけど、いかに個人的な世界が大事なものかっていうのを教えてくれていると思うんですよ、創作活動において。そういったものを表現にできる。自分の小さな世界をね。
ーー自分のなかの小さな部屋みたいなものを表現するってことでしょうか?
巻上 : すごいパーソナルっていうのかな。それが大事だと思うんですよ。個人が持っている中身。それを表現のなかに織り込める。小さな人間の活動が大事だっていう視点を与えてくれる。あとはパーソナルの質と深さが問われます。人間の活動を豊かにしてくれるし、みんなに本当の勇気を与えてくれると思いますよ。
ーー無味乾燥な大きなものではない、個の力を表現にこめると。
巻上 : そう。大きなマスを相手にするんじゃなくて、プライベートなちっちゃな世界の豊かさをどこまで表現できるか。それこそ、僕らがやっている仕事だと思うんですよ。ぼくはNYのアーティストたちから、それを沢山学びました。若い人たちが自分たちの活動を観てそういうふうに思ってくれればいいなと思いますね。
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PROFILE
ヒカシュー
1978年に結成のノンジャンル音楽ユニット。 リズムボックスとメロトロンを使ったバックグラウンドに、地下演劇的な内容と軽快で色彩感ある歌声を加味した音楽で、スタート。1979年にニューウェイブ・ロック、テクノポップ・バンドとして一般に認知されたが、その後、メンバーを変えながらも、 即興とソングが共存する方法論で、今なお、独自の活動を続けている。そのライヴは、陶酔と覚醒のアンビバレンツ。究極のノンジャンル。… そして、形而超学音楽のロック・バンドとして唯一無二。その即興性は魔法の領域にある。