“団子”で“砂”?! 小島麻由美、4年10ヶ月ぶりのアルバムをハイレゾで!!
小島麻由美の十八番であるビッグ・バンド / スウィングから、「砂っぽい」サウンドへ。前作『ブルー・ロンド』より4年10ヶ月ぶり、9作目のオリジナル・フル・アルバム『路上』が完成しました。この変化の裏には、リズム・セクション、ハチマ(ドラムス、EX.デキシード・ザ・エモンズ)、カジヒデキ(ベース)、塚本功(ギター)の絶妙にスウィングする「8ビート」が大きく影響を与えています。もちろん、Dr.KyOn(キーボード)、ASA-CHANG(パーカッション)、国吉静治(リコーダー)、四家卯大(チェロ)ら、お馴染みの方々もサポート参加。初参加であるカンザスシティバンドの上野まこと(サックス)も迎え、作り上げた渾身の本作をOTOTOYではハイレゾ配信!! “団子”と“砂”に迫った小島へのインタヴューとともにゆ〜っくりとお楽しみください。
インタヴュー & 文 : 西澤裕郎
4年10ヶ月ぶり、9作目のアルバムをハイレゾで!!!
小島麻由美 / 路上(24bit/96kHz)
【配信価格】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/96Hz) 単曲 300円 / まとめ購入 2,569円
【Track List】
1. モビー・ディック
2. テキサスの黄色い花
3. 白い猫
4. 水曜日の朝
5. 素敵なロックンロール
6. あなたはミー ・私はユー
7. メリーさんの羊
8. 泡になった恋
9. あなたの船
10. モダン・ラヴァーズ
INTERVIEW : 小島麻由美
ーー今作で初めて全面的にエレキ・ベースを導入したということですけど、これまでエレキをそこまで使わなかったのには、なにか理由があったんですか。
小島 : もともと4、50年代の音楽が好きだったので、楽曲を作るときにウッド・ベースを入れることが自然だったんですよ。もちろん、ゾンビーズとかビートルズとか60年代の音楽も昔から好きは好きなんですけど、エレキ・ベースがあるかどうかはすごく大きいですよね(笑)。
ーーはい(笑)。ちなみに、4、50年代のどういうところに惹かれたんですか?
小島 : 音源の質感だと思うんですね。なにをやっているかわからない野蛮な感じがしたんですよね。迫力があるというか。それで、どんどんオールディーズの音色が好きになっていって。
ーーそうした嗜好性は、いまも変わらずですか?
小島 : それはデビュー当時の話で、いまは周りの人やお友達のミュージシャンで、いろいろ教え合ったりして、新しいのも聴くようになりました。映画音楽の構成とかコード進行とか歌詞もすごく好きになりましたし。最近は、アラバマ・シェークスがお気に入りです。ブルージーな感じなんですけど、今の人って感じがしますよね。
ーールーツを探りながらも、今の音楽として成立している部分が好きなんですね。
小島 : そうですね。例えば、いま、エルビス・プレスリーを聴いて「うわあ、痺れるね。こういうのやりたい!」って感じはなくて(笑)。好きなものを踏まえながら、いまの音楽に置き換えてるようなバンドはおもしろいなって思います。
ーー小島さんって、曲作りはどういうところからはじめていくんですか?
小島 : ピアノで作ってるんですけど、リハーサルで自分の作った軽いラフの曲を聴いてもらって、なんとなくセッションしようってやってるうちに、ああいう感じこういう感じっていうのが出てきて、それをカセットで録るんです。そうするとよく聴こえるんですよね。カセット・マジックがある。
ーーカセットで録っているんですね!?
小島 : カセットで録ると、なんかまとまるんですよ。見えない音とかが入っていて、最高です。何度も聴ける音になります。
ーーそれはおもしろいですね。今作は、『ブルーロンド』から約4年ぶりのアルバムとなりますが、メンバーはその期間ずっと一緒にやってきた方々なんでしょうか。
小島 : 前作からドラマーが変わったんですね。(元デキシード・ザ・エモンズの)八馬(義弘)さんが入って、ベースでカジヒデキさんが1年ぐらいですっけ?
制作スタッフ(以下、S) : いやいや、この春からですよ。
小島 : そうかそうか(笑)。今年入ってからですね、一緒に演奏したりしたのは。
ーー前作のインタヴューで、リズムが変わることでロックっぽさや、前のめりな感じが出てきたっておっしゃっていましたが、カジさんが入ったことでの変化も大きかったんじゃないですか?
小島 : 私って、音楽の変化があんまりわかる人じゃないんですね。だけど、ベースって大きいですね。派手に弾きまくるわけじゃないのに、カジくんはたまに飛び抜けてくるレーズを弾いたりしていて、静かにクールでかっこいい感じです。
ーー最初のスケッチ部分は小島さんが作るけど、メンバーのみなさんで膨らませていって曲を作るんですね。
小島 : そうですね。昔は宅録少女で、細かい音まで指示していたんですけど、好きな音楽がガレージとか寄りになってきて、ミュージシャンの力量が大事になってきましたね。音の仕上がりが、想像をこえてほしいというか、自分の頭の中だけで鳴っている音で終わらしたくなくて。人のエネルギーがほしいんですよね。
ーー今作は、本来の発売日から少し延期されてのリリースですが、そういうサウンドを詰めていくのに時間がかかったってことなんですか?
小島 : うーん。なんで延びたんだろう(笑)。
ーーそれじゃあ、いたずらに曲を作っていくんじゃなくて、1曲1曲を温めて深めていく作り方をされてるんですか?
小島 : いや、むやみやたらに作ります(笑) 。でも、今回は締め切りがあって発売日も決定してっていう感じだから、ある程度絞って作りました。
スウィング・ジャズに飽きたんですよね
ーー前のインタヴューでは、歌詞を書くのに時間がかかったっておっしゃってましたよね。
小島 : やっぱり、お手本にしてるのが外国の音楽じゃないですか? そこに日本語の歌詞を乗せるのって結構難しいんですよ。
ーーそれこそ、外国語を乗せたらいいんじゃないですか?
小島 : 帰国子女とか、普段から英語の文章が思いつく人ならいいと思うんですけど、そうじゃないから。あと、一聴して分かる日本語の言葉を使いたいっていうのがあるんですよね。
ーー小島さんのルーツは4、50年代の洋楽でありながら、いわゆる昭和の歌謡曲っぽい匂いが出てくるのは、意識的にやっているからなんでしょうか。
小島 : 私自身は昭和歌謡を聞き込んでる訳じゃないし、みんなと同じ程度しか知らないんですけど、たぶん、歌い方じゃないですかね。歌い方が黒くないんじゃないかな?
ーーさっきの歌詞の話と一緒ですよね。無理矢理、やりたいことに寄せるというより、自分の手元に引き寄せて、そこでできることを探していくというところから生まれてくる、と。
小島 : そうですね。資質に合わないと続かないから(笑)。あと、野太い声は歌えないし、本当の本物がいるからね。そこにはなれないから。
ーーそういう意味では、小島さんが「砂っぽい」と表現する要素っていうのは、小島さんならではの音作りだと思うんですけど、そもそも砂っぽいってどういうことなんですか?
小島 : 砂っぽいっていうのは、砂漠というか… テキサスのイメージですよね。なんにもない荒れた土地にサボテンがちょんちょんって生えていて、銃で「だーーー!!」 って撃って、砂が「ばーーー」って舞う。乾燥した空気と砂が飛び散っているイメージです。向こうの人聴いたら怒っちゃうかもね(笑)。
ーー(笑)。土っぽいとかはよく聴きますけど、砂っぽいって言葉はあまり聴かないですしね。
小島 : 乾燥してる感じなんだよね。すごく抽象的かもしれないんですけど。
ーーなんで、砂っぽさを求めるようになったんですかね?
小島 : スウィング・ジャズに飽きたんですよね。で、60Sの感じが好きだったから、そこにスワンプ・ロックの沼感、テキサス感が加えてみたんです。実は、そういうことはあまりやってなかったから、すごく新鮮だったんですよ。自分が嫌いだったコード進行とかもたくさん導入してやってみたら、周りの反応がよかったので、「よし、よくわかんないけど楽しいからやってみよう!!」みたいな感じでずるずるときて、それで完成しましたね。
ーーそうなんですね(笑)。砂っぽさは、いつくらいから試しているんですか。
小島 : 去年…。
S : 去年というか、もっと前からやってるよね。一昨年くらいじゃない?
小島 : 恐ろしいですね。忘れちゃうよね1年経つと(笑)。前作のアルバムが4年10ヶ月前くらいだから、その辺りから徐々に変わってきてはいたんですよね。きっと。
ーースウィング・ジャズに飽きたというよりも、メンバーが変わったことで、趣向性も変わってきた部分もありますか?
小島 : いや、飽きたのもあります(笑) 。デビューが1995年でずっと同じ音楽をやってるわけですから。
ーーそろそろ違うことをやりたいなと。
小島 : そうですね。『スウィンギン・キャラバン!』で、やりきったっていうわけじゃないんですけど、満足したんですよね、スウィングに。
ーーなんだったら、今作のタイトル『路上』っていうのも乾いている感じ。
小島 : 砂っぽい。(笑)
ーーあははは。全体的に"砂"のアルバムなんですね。
小島 : こじつけなんだけどね。シングルが『渚にて』で「オン・ザ・ビーチ」だったから『路上』で「オン・ザ・ロード」とかはどうかなって感じで。
ビートが団子にならないとだめなんですよ
ーー本作はOTOTOYではハイレゾで配信していますけど、最初にmp3で聴かせてもらったんですね。そのあとハイレゾで聴いたら生々しくて、ほんっとうに素晴らしかったです。
小島 : 嬉しいですね。
S : mp3にすると消えちゃう、テープに録ったときの倍音キラキラがハイレゾだとちゃんと入ってますよね。デジタルで録ると、ハートに来ないっていわれちゃうので、必ずテープで録っています。最近はスタジオにないからレコーダー持ち込みで。
ーーかなり質感に対するこだわりや思いがあるんですね?
小島 : 質感だと思うんですけど、キレイな音が嫌いなんですよ。キレイにしないでって思っちゃう。
ーー無菌状態になるのが嫌?
小島 : うん。すごいキレイに、どの音もはっきり聴こえてっていうのは好きじゃない。わかんなくてぐちゃってしてるのが好きなんです。
ーーちょっと雑菌がいるくらいの方がいい。
小島 : そうそうそう。
ーーキレイすぎるものは逆にゾワっとしたりしますもんね。でも、いわゆるロー・ファイとかとは違いますもんね。
小島 : そのへんは、ハートにくる・こないしか考えてないです。細かいところは、エンジニアの人は分かってくれていると思っていて。
S : 団子状態ってよくいうんですけど、小島はビートが団子にならないとだめなんですよ。
ーービートが団子になるっていうのはどういうことですか?
S : 昔の音源はアタック音が潰れて、それがベースの音なのかサックスの音なのかよくわからない一塊の状態になっちゃうんですけど、エンジニアさんたちはそれを団子って呼ぶんです。
小島 : だから、4、50年代の音楽が好きっていうよりその団子が好きなんですよね。昔は流行の音楽も聴いてたんですけど、4、50年代の音楽にはまってしまうと、ちゃんときれいに聴こえてくる音楽がハートにこなくなっちゃって。より団子感を求めるようになったというか、なんだかわからない音が固まって降ってくる感じにぞくぞくってくるんですよね。それもあって、ビック・バンドとかオールディーズとかがすごい好きだったんですよね。
ーーつまり、今作は団子で砂ということですね(笑)。
小島 : 団子で砂(笑)。
ーーレコーディングも、いってみればライヴみたいな感じで、いっせーのーでで録っていくんですか?
小島 : そうそう、ライヴ、ライヴ。間違えたら罪重いですね(笑)。途中で誰かが間違えたら「ああー」ってなって、録り直さないといけないから。
ーーもう一回やり直しはプレッシャー大きいですね(笑)。小島さんは、来年で活動20周年を迎えますが、続けていくっていうのは常に意識されてやってこられたんですか?
小島 : いえ、ないですね。毎回いいものを作ろうと思ってやっているだけで、その後のことは分からないから。とりあえず次の作品を作ろうねっていうのを毎回やってますね。
ーーじゃあ、また次の作品に向かっていくわけですね。
小島 : 次、またスウィングだったらすいません(笑)。
ーーあははは。12月18日には、恵比寿 The Garden Hallで、「ビッグバンド / スウィング」から、「スウィングする8ビート」まで、すべてを披露する2部制でライヴをするそうで楽しみですね。
小島 : そうなんですよ。1部は、ASA-CHANGを入れてスイング・セットでやります。飽きたといえども、やっぱりASA-CHANGのスイングは、すごいので。あと、古い曲をやるのも好きなんですよね。で、ちょっと休憩いれて、2部では新作を中心にハッチのドラムでやります。
ーー後半の公演は砂っぽい感じになりそうですね(笑)。
小島 : 砂っぽい感じです(笑)。両方楽しめるので、ぜひご覧いただけたらと。
RECOMMEND
小島麻由美 / ブルーロンド(24bit/48kHz)
小島麻由美の8作目となるニュー・アルバム『ブルーロンド』。先行でリリースされた「メリーゴーランド」や「アラベスク」はもちろん、意匠を変化させながらも”スウィングする日本語の歌”を軸に、数多くの冒険的な要素を取り入れた作品に仕上がっています。ototoyでは、気軽に聴けるmp3と、レコーディング・スタジオと同じ空気を味わうことのできるHQD(24bit/48KHzの高音質WAVファイル)で販売します。リスナー達を魅了し続ける独自のコンボ・サウンドとともに、唯一無二の世界をどうぞ。
中山うり / 鰻(24bit/48kHz)
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二階堂和美 / ジブリと私とかぐや姫
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LIVE SCHEDULE
YEBISU GARDEN PLACE 20th Anniversary presents L’ULTIMO BACIO Anno 14
2014年12月18日(木)@恵比寿 The Garden Hall
時間 : open / start : 18:00 / 19:00
料金 : 全席指定 5,800円(ドリンク代別)
未就学児童入場不可
PROFILE
小島麻由美
東京都出身。「古き良き時代」の音楽を愛するガール・ポップ・シンガー・ソングライター。1995年7月、シングル『結婚相談所』でデビュー。 現在(2014年11月)までにオリジナル・アルバム8枚、ミニ・アルバム2枚、シングル16枚、ライヴCD1枚、ベスト・アルバム2枚、映像DVD2タイトルを発表。ジャケットにも多く使用される自筆イラストがトレードマークで、1999年NHK「みんなのうた」への提供曲「ふうせん」では、3千数百枚に及ぶアニメ原画も提供。イラスト&散文集『KOJIMA MAYUMI’S PAPERBACK』もある。 映画、CMへの歌唱、曲提供多数。近年では2011年~現在放映中の『キッチン泡ハイター』CM曲を歌唱。 海外での活動は、2001年仏盤コンピレーション参加。2001~2002年「はつ恋」が任天堂USAのCM曲として北南米にて1年間に渡り放映。公演は2006年JETRO主催「Japan Night」(上海)、2009年『Music Terminals Festival』(台湾・桃園)参加など。 2014年7月、4年ぶりとなるオリジナル・リリースとしてミニアルバム『渚にて』、12月3日にはフル・アルバム『路上』をリリース。デビュー20周年となる2015年には活発なライヴ、リリースを絶賛計画中。