Kilk records session10週連続企画がスタート!
メラメラと燃える野心を持つ男。それがKilk recordsのレーベル・オーナー、森大地である。彼がフロントマンを務めるバンドAureoleの音を聴いていると、音楽的野心こそあっても、業界を変えていきたいという野心を持っているようには思えない。しかし、森は真剣な目をしてこんな発言をしてくれた。そのギャップがおもしろい。「音楽シーンの平和的テロといいますか、権力者たちにうざったがられるようなレーベルでいたいと思うんですよね」
今回の連載は、森がOTOTOYに持ち込んだ企画である。既存の音楽業界を変えたいという気持ちと、Kilk recordsのアーティストを知ってほしいという思い。そんな前のめりで熱い思いを10ヶ月、全10回に渡って連載する。その第1回目として、レーベルに所属するアーティストの中から、bronbabaの西方龍と虚弱。の海野稀美を招いて存分に語ってもらった。10ヶ月後、何かが変わっているかもしれない。そんな期待を込めて、この連載を開始しよう。
進行&文 : 西澤裕郎
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レーベル・サンプラーでKilk recordsを予習!!
V.A / Kilk Records Sampler 2011 Summer
【TRACK LIST】
1. Rehearsal / Ekko / 2. Retrospect / üka / 3. Atlas / Tie These Hands / 4. Bold Chain / Hydrant House Purport Rife On Sleepy / 5. Summer / Gamine / 6. Shower Drop / Melodique / 7. sincerer-y / nemlino / 8. Fading Sigh / Ferri / 9. Goodbye / Chris Olley / 10. egoist (studio live ver.) / 虚弱。 / 11. Zhulong (alternative version) / urbansole / 12. Glow / Worm Is Green / 13. life / bronbaba / 14. The Sea , The Room / Aureole
見てて楽しい、色んな人に聴いてもらえるような音楽を作りたい(海野)
——いくつものレーベルがある中で、西方さん(bronbaba)はなぜKilk recordsに所属しようと思ったのでしょう。
西方龍(以下、龍) : そもそも、2年間くらいbronbabaの活動を休止していたんですよ。バンドはしばらくやらねえって感じで過ごしていたんだけど、そろそろやるかと思って久しぶりにメールを開いてみたら2000通くらい溜まっていて、一番上に「はじめまして、Kilk recordsです。感動しました。うちからCD出しませんか」っていうメールがあったんです。それで次の日に森さんと会って話して、やってみることにしたんです。
森大地(以下、森) : そのメールを出す直前に初めてbronbabaの音源を聴いたんですけど、なんていうバンドがいるんだって衝撃を受けたんです。もう活動していないのかなと思いつつも、思いきってメールを送ってみたら、返事が返ってきたんです。2000分の1に入った偶然ですよね(笑)。
龍 : 本当に一番上にあったんですよ。自分を中心に世界が回っているんじゃないかと思ったくらい。そろそろ音楽をやりたいなと思って偶然受信箱を見たら、そんなメールがあったんですからね。活動を休止していた2年間はイヤなことばっかりで、ダメかなと思っていたんですけど、偶然受信箱を見たらCD出せちゃう状態だった(笑)。これは、俺に音楽をやれってことなんだなって思ったんです。
——その時期、なぜ活動を休止していたのですか。
龍 : どんどん音楽がつまらないものになっていったんですよね。音楽というより、バンド界っていうんですかね。お客さんの反応もそうだし、そういう色々なものがイヤになっちゃったんだよなあ。あと、1stアルバムのレコ発ワンマンの直前に、メンバーが1人失踪しちゃったんですよ。そこからですね、下り坂になったのは。それで更にいろんなものが見えてきて、だんだんバンドをやることがストレスになってきちゃったんですね。
——そういうバンド界とは別のところから森さんがポンと出てきて、声をかけたんですね。
森 : bronbabaファンから言わせれば、ライヴ・パフォーマンスとかキャラクターとかも含めて愛されているんだろうけど、僕は純粋にbronbabaの音楽だけを聴いて気に入ったっていうのが第一印象なんです。ライヴがすごくいいとか、キャラがすごいっていうのは後付けで。それを知ったらますます好きになりましたけど。
——続いて、海野さん(虚弱。)がKilk recordsに所属した経緯を教えてもらえますか。
海野稀美(以下、海) : 虚弱。はポスト・ロックって言われちゃうことが多いんですけど、私たちにしてみれば「もっとポップでしょ」って気持ちでいるんです。例えば、女子十二楽坊っているじゃないですか。あのくらい色んな層に聴いてもらって、スッと入るような音楽をやりたいんです。単なるBGMじゃなくて、見てて楽しい、本当に色んな人に聴いてもらえるような音楽を作りたいってところから始まっているんです。でも、自分たちで出来る限界があることがわかって、誰か助けてくれる人はいないかなってときに、いくつかのレーベルから声をかけてもらったんです。ポスト・ロックが前提でっていう話が多かった中、森さんは「色んな人に聴いてもらいたいし、聴いてもらえると思うよ」ってことをすごい言ってくれたんです。1回お断りしたんですけど、それでも「やっぱりどう? 」って熱意を持って言ってきてくれて、出来る限りのことは僕がするからって言って下さったので、お願いしてみようかなって思ったんです。
龍 : ちなみにポスト・ロックって言われたら誰を思い浮かべる?
海 : toeかな。
龍 : なるほどね。森さんは?
森 : 僕の年代になると、モグワイとトータスになっちゃうかな。
龍 : そうですよね。世代で変わってくる。
海 : ポスト・ロックってすごい曖昧ですけどね。
龍 : もちろんtoeを思い浮かべていいの。俺らがおっさんすぎるんだよ。ポスト・ロックが嫌でって言うけど、俺らの知っているポスト・ロックと違うんだから、いいんじゃない。
海 : ジャンルとして括られるのが嫌ってことじゃないんですよ。
龍 : 森さんがやるかはわからないけど、「4人組女子ポスト・ロック最前線、虚弱。」みたいにキャッチ・コピーをつけちゃえばいいんだよ。高校生に「ポスト・ロックといえば誰? 」って訊いたら、「虚弱。」って言われるんだぜ。虚弱。は、これからのポスト・ロック最前線に立つだけの存在なんだよ。だから自分たちから言っちゃったほうがいいんじゃない。
海 : そっか。でも、もうちょっと別の輪っかと交わるところがあればいいなって思うんですよね。
森 : ポスト・ロック・ファンばかりが聴くからポスト・ロックとして扱われちゃうけど、聴いたことがないけど実はポスト・ロック好きって人もいるだろうしね。例えばAKB48ファンの中にもポスト・ロックを聴いてみたら好きになる人はいるだろうし、その辺の意味で環境を変えたいってことだよね。
レーベルは政治に似ている(龍)
——この連載を開始するにあたって、お伺いしておきたいことがあります。すごく根本的な質問ですが、レーベルは必要かどうかということです。ネット環境が整っていく中で、D.I.Y STARSみたいな配信サイトが登場しているわけですよね。また、まつきあゆむさんみたいに、音楽流通を一切通さずに作り手が直接販売をすることが出来る環境が整っています。極端な話、レーベルがなくても、アーティストが一人でやっていけるんじゃないかってことなんですが、その辺はいかがお考えですか。
森 : 僕はインディーのバンドでもここまで出来るんだぞってことを、レーベルとしてサポートしていきたいんですよね。だって、現状よりも売れそうなバンドっていっぱいいるんですよ。そういうバンドたちがインディーズ止まりにならずに、どこまで出来るのかっていうのを提示してやりたい気持ちがある。今仕事としてやっているのは、いい音楽をどうやったら伝えられるのかっていうことで、そこに100%の力を注げば、ここまで出来るんだぞっていうのを見せたい。もしかしたらバンドだけでも死ぬ気でやれば、同じように広めることが出来るのかもしれないですけど、やっぱり時間の制約だとかがあって、出来ることってのが限られてきちゃう。そういう意味じゃ、外に発信していくバンド・メンバーみたいな捉え方ですね。虚弱。の中の発信していくメンバーでもあるし、bronbabaのメンバーでもある。
——音楽を作ることに専念できる環境を作ってあげたいということですね。
森 : 仕事をやめれば時間をとれるかもしれないけど、生活が出来なくなっちゃうから、僕がそこに時間を割きますよっていう感じですかね。1人1レーベルって言われてますけど、現代社会は忙しいので、やっていることがそこそこに終始しちゃわないようにするには、本気の力みたいなものがなければいけない。だから、レーベルは必要だと思います。
——なるほど。音楽制作が疎かになってしまうと本末転倒ですからね。その点、Kilk records以外のレーベルも経験したことのある龍さんはいかがお考えですか。
龍 : 前作は自主レーベルを立ち上げてCDを出したんですね。言ってみれば無所属。今回はKilk recordsから出すじゃないですか。その2つを経験して思ったんですけど、レーベルは政治に似ているなって。さっき言っていたみたいに、死ぬ気でやろうと思えば確かにバンドだけでも出来るんですよ。無所属で。でも知っての通り無所属だとなかなか勝てないですよね。票もなかなか集まらない。資金繰りも大変。だけど、例えば残響record(以下、残響)みたいな影響のあるレーベルの判子が押されるとする。無所属だと400票、でも残響だったら1万は越えるかもしれない。こういうものだと思うんですよ。だから今回Kilk recordsの判子をバーンって押されたわけですけど、おもしろいのはKilk recordsにまだ色がついていないことですよね。
——確かにまだ色がつく途中の段階ですよね。
龍 : でも判子をつけられることはいいことばかりじゃなくて、そのレーベルのイメージがつくでしょ。そいつが何を言っているかなんて関係ないし、多少意見を曲げないと判子を押してくれないところもある。すべてがいいわけじゃない。だから、自分と相性のいいレーベルがみつかったらそこに所属するのがいいんでしょうね。それがみつからなかったら、無所属でやったほうがいいものが出来ると思う。ただ誰にも流れないんだろうな。そして正当な意見は受け入れられない。Kilk recordsのフリー・サンプラーに入れた「my sick」って曲は実は2年前くらいに作った曲なんだけど、2年前の反応なんて寒いもんですよ。今後CDを出す、先のあるバンドじゃないと誰も見ないんですよね。俺はレーベルは必要だと思います。最高にばっちり来るパートナーっていうのが必要だと思いますね。
——海野さんはレーベルに所属するのは初めてですけど、やりにくいことや意思を曲げなければならないと感じたことはありませんか。
海 : やりにくいって感じたことはないですよ。やりたいことはやらせてもらえるし、アイデアをくれることもありますし。それがちょっと合わないこともあれば言える間柄ですし。
龍 : そう考えるとレーベルっていいものだね。
言葉じゃ説明できないようなものを音に詰めてこそ、音楽は素晴らしい(森)
——1998年をピークにCDの売り上げが落ち込んでいて、その1つの影響としてインターネットの存在があると言われています。悪い面ばかりでなくいい面も多いと思うのですが、ネットに対してはいかがお考えですか。
森 : CDが売れないのはネットのせいって言われることがあるけど、正直僕みたいな規模のインディー・レーベルにとっては、ネット様々なところもあります。ネットで音楽情報を知るって人も増えてきているので、派手な広告を打つ必要性が前より少なくなった。そういうフェアな条件下において音楽の選択肢の一つになれば、僕らを選んでくれる人はもっといっぱいいると思うんです。今まではそもそも知られもしなかったから、売れない、生活としてやっていけない、正当な対価も支払われないって部分があった。もともと僕はAureoleで本当に自信のある音楽を作っていたので、そこに対しておかしいと思って、Kilk recordsを作りました。今もKilk recordsの自分とAureoleの自分がいて、考え方は別ものなんですよね。芸術家の一面と、経営者の一面がある。
龍 : 2つやっていると、そうなりますよね。
森 : そうじゃないとやっていけないし、Aureoleの音楽がクソみたいになっちゃうからね。
——時代の変化とともに、評価の軸も多様化してきています。CDや音源が売れることに重きを置くのか、ライヴにお客さんが来てくれることに重きを置くのか、それともYouTubeなどで多くの人に知られることに重きを置くのかなど、基準がいくつもあると思います。Kilk recordsは、どこに評価のポイントを置いているのでしょう。
龍 : それは究極の質問ですよね。ユニクロがすごいのかシャネルがすごいのか、それに近い。
森 : 本当はものすごいデカイところを狙っていますけどね。レディオヘッド級というか、大きな成功は狙いたいし、それを笑う権利なんかないと思う。
——多くの人たちに知ってほしいって部分があるんですね。
森 : できれば日本国民の誰に聞いても知っているくらいにしたいですけど。
龍 : 思ったんですけど、特に事前情報なしにライヴ・ハウスに行くとするじゃないですか。そこで、3番目とかにレディオヘッドが出たとして、何も知らないで見たら本当にかっこいいのかな。つまり、音楽って音楽だけの力じゃない部分で広まってきたんじゃないかって疑問がある。
森 : 同じ演奏でも、会場の雰囲気とかに左右されるんじゃないかってことだよね。
龍 : 森さんの言うようなことを俺らは狙ってますよ。俺たちの考え方を誰も笑えないぞっていうことで、森さんのことを応援したいわけですよ。だから小さいライヴ・ハウスでお客さんを掴めれば、極端な話1万人を喜ばせられる可能性は高いんじゃないかと思っている。だから目標とかじゃなくて普通に狙っていきましょうよ。
——まだ色をどのようにでもつけられるっていうのが魅力的ですよね。とは言っても、どういうアーティストを扱うかっていう森さんの基準があると思うんですね。今所属しているアーティストに共通する部分ってどこなんでしょう。
森 : 僕の趣味ですけど、全バンドで共通しているのは、音楽性は違えど、全部美しさがあるというか… 美しさじゃないかな。
龍 : いや、美しさだと思いますよ。ちょっと恥ずかしい言葉だから使いたくないけど、俺は森さんが共通で揃えているのは、美しさだと思います。他のバンドの音を聴いていて奇麗だなって思いますもん。
森 : 日常的な音楽がいいっていうレーベルもあるけど、うちは逆に非日常な感じの音楽が多いかもしれないです。言葉に言い表わせないような音というか、聴いているとある風景が思い浮かぶようなバンドが多いかな。すごくシンプルにいうと海の情景が思い浮かぶとか、そういう感じかな。
——海野さんは、美しさを感じますか。
海 : そうですね。言われると確かにそうかも。
森 : 結局、僕はそれが音楽の素晴らしさだと思っていて、言葉じゃ言い表わせないことを音楽は表現できる。カレーの匂いを音楽にしなさいって言われて、それを表現するとこんな感じになる、みたいな。小学生の時に哀しい出来事を抱えながら食べたカレーの味とか、言葉じゃ説明できないものを音に詰められるからこそ、音楽は素晴らしい。
龍 : それが出来るから音楽は楽しいんですよね。
あくまでメインは音楽で、動画などはツール(森)
——一方で、若い人の音楽の聴き方は時代と共に変わってきています。その象徴が神聖かまってちゃんだと思うんですが、彼らはネット文化を軸に動画を作ったり、配信をしたりしてトータル的に自分たちを見せている。そして、若い人たちも彼らを支持している。音楽を聴く行為自体が変容を見せている中、かまってちゃんみたいな音楽の見せ方はどう思いますか。
龍 : 俺はありですよ。全員が時代の流れに合わせていく必要はないけど、それはそれでいいんじゃないですかね。家でヘッドフォンをして一人で音楽を聴いていることも、親父の世代からしたらおかしいって言われているかもしれないから。結局、世代が違えば若者が気に食わないのが当たり前で、俺らは若者を許せないんですよ。それと同じような構図な気がするな。それはそれ、これはこれで分かれていくだろうし、かっこいいことをやっていればいいんじゃないかな。
——海野さんは平成生まれということでお若いですが、年寄の戯言のように聞こえますか?
海 : 聞こえないですよ(笑)。私は最初に映像ありきでも、パフォーマンスありきでも、いいんじゃないかなと思っていて。
龍 : もし友だちに「すげえいい曲見つけたんだよ、聞いてみて」って言われたとき、どういう媒介で聴かされることを想像する?
海 : 私はCDプレイヤーを想像しましたけど。
龍 : 意外だね。パソコンって言うかと思った。ちなみに俺はそういうときYouTubeで見せる(笑)。
海 : それも全然ありだと思いますよ。そこから入って、言葉では伝えられない面を汲み取ってくれるような人がいても。だから最初は映像でもいいんじゃないかと思っていますけど。
森 : 音楽を情報と捉えるのなら、どんどん出していきたいと思っているので、レーベル・サンプラーもその一貫でフリーで出しています。DOMMUNEとかもすごい尊敬できるし、そういうことはどんどんやる必要があると思います。伝えるにはすごく有効な手段ですよね。うちの場合は音楽があって、こんなに素晴らしいんだよっていうことを伝えるために動画とかを用いています。あくまでメインは音楽で、動画とかはツールなんですよね。
龍 : いま、一番難しい時期だと思うんですよ。それこそ新しいとされる音楽の伝え方やお金の取り方も変わってきていて、流行に乗り遅れたら寒くなりますよ。ありかなしかは、その場その場で決めたほうがいい。レディオヘッドの音楽の売り方(※ダウンロード販売で、値段は買い手が決めることができる)とかは時代を先どっていたじゃないですか。
森 : あの手法がレディオヘッドから出てきたっていうのがおもしろいよね。音楽的にあんなにすごいクラスのバンドから、売り方まであんな画期的なものが出てくるっていうのは。音楽に対して真剣だからかなって思いますね。本当に真剣に音楽をどうにかしたいと思って、ああいう売り方が出てきたと思うから、すごく支持しますね。
龍 : レディオヘッドは成功だったんですか?
森 : どうだったんだろう。平均すると1枚6ドルくらいでアルバムが買われた計算になるみたいなんだよね(※ただし、無料ダウンロードした人も含めると平均価格は2.26ドルに下がる(米調査会社comScore調べによる))。それって、すごくリアルですよね。人々がCDとか音楽のパッケージにどれくらいお金を払えるかっていうアンケート結果にもなっているから。
——森さんはいくらで買ったんですか。
森 : 僕はボックス・セットの一番高いやつを買いました。
——僕は当時クレジットカードを持っていなかったから、フリーでダウンロードして、CDで買い直しました。それくらい買い手の自由度があるんですよね。
森 : いいですよね、あの売り方は。値崩れしようが、そういうのを嫌がっているのは、大きいレコード会社で、何100人と社員を抱えているところの給料を払うには、CDが売れなくなっちゃうと困りますからね。僕らみたいな小さなレーベルは、ぶっちゃけ10回ライヴをやって、ライヴ会場で手売りで売れる数のほうが、全国流通のCDより売れるケースも多々あるんですよ。だからライヴは大事なんですよね。
龍 : 今の話を聞くと、残響のやっていることはすごいなあ。いま、ショップ作っちゃったほうが早いんじゃないって言おうと思ったけど、すでに作っちゃってますからね。彼らは。高円寺の古着屋じゃないですけど、レーベル1つに1店の直属ショップがあるっていうのもいいですよね。これはファッションにするって意味だけど。
権力者たちにうざったがられるようなレーベルでいたいと思うんです(森)
——2人から森さんに要望ってありますか。
龍 : 俺はないですね。制作費くれとかはありますけど、それ以外の要望はないかな。
海 : 一緒にやっていきましょうよって思います。
龍 : Kilk recordsはこれから色がつくわけですよ。一番最初に色をつけるのが俺らと虚弱。なわけですよね。森さんにずっと言っていたんですけど、虚弱。を選んだのは本当にすばらしい。だってすごい毒だよ、森さんの。
海 : 毒?
龍 : bronbabaと虚弱。をセットにしてドカーンと出そうっていうのはすごいことだぜ。俺だったらワクワクするね。『ファイナルファンタジー』でフレアとホーリーを同時に打っている感じっていうのかな。白魔法、黒魔法を一斉に使う感じですよね(笑)。だから虚弱。がレーベル・メイトにいるって聞いたときは、正解だったなって。
——海野さんは、bronbabaがレーベル・メイトにいることを聞いてどう思いました。
海 : すごく前に一緒にライヴしたっきりで、そこからしばらくやっていなかったから、bronbaba決まったよって言われて、びっくりしました。尊敬している先輩だし、すごいバンドだなって思って見ていたので、メンバー間でドヒャーってなりました。嬉しいですね。一緒に頑張りましょう!
——最後に、森さんが10回の連載を通して達成したいことを教えて下さい。
森 : 音楽シーンの平和的テロといいますか、権力者たちにうざったがられるようなレーベルでいたいと思うんですよね。身の程知らずだとか調子に乗っていると思われようが、早くそういう方々には引退してもらって、うちのいい音楽を紹介したいと思っています。10回を通して、これからの音楽を作り上げていきたい。Kilk recordsは一つのシーンだと思っているんで、こんなにいいバンドがいるんだっていうことを友だちと話せるくらい知ってもらえたら嬉しいです。連載を通して、隅々までよーく分かってほしいですね。Kilk recordsと所属するバンドの全部を。そうすればきっと気に入ってくれると思います。
龍 : 森さんはすごい音楽が好きなんですよ。だから、違うフィールドの人間が、音楽をひっちゃかめっちゃかやっているのを許せない。かまってちゃんとかは、他の学校から転校してきた不良みたいな感じで、音楽会を荒らしているわけ。これは日本の音楽を好きな人の悪いクセでもあるんだけど、変に哲学的に「これはありなんじゃないか」って慣れてくるんだよね。森さんはその中でも真面目に音楽をやりたいんですよ。お前らちょっと我慢してくれよってタイプなんですよ、きっと。
森 : 別にすべてを否定しているわけじゃないよ。かまってちゃんを見てて思うのは、力を持ったり結果を出せば、何でも説得力を持つってことですよね。あれと同じことを中学校の文化祭でやっていたら、誰もおおーってならないで終わるかもしれないし、彼らの戦略はすごいですよ。レーベルとして見習わなければいけない部分もある。小さなところからあそこまで力を持てたっていうのは本当にすごいと思います。
——確かに1年の間で大きく変わりましたからね。では、第1回目の締めの言葉を森さんからお願いします。
森 : 今のところ、Kilk records周辺の音楽を聞いているのってバンド・マンとか音楽関係者が多いので、そういう人たちと協力してやっていきたいですね。
龍 : 個人的に付け加えると、俺らがやっていることですら、たった一つの動きでしかないってことは見てほしいな。大きな枠の中でこういう動きがあるんだぞ、だから正しいものはお前で探せよって。だけど、共感したら、ちょっとついてきてよ、CD買ってよっていうのはありますよね。
森 : 俺らが最強っていうよりは、色々な音楽がある中でここにも素晴らしいものもありますよっていう風に感じてほしいですね。
Kilk recordsのタイトルをチェック
イギリス、ブリストル在住のシンガー・ソングライターYuka Kuriharaによるソロ・プロジェクトのデビュー作。北欧音楽やブリストルの音楽シーン、幼少の頃に慣れ親しんだクラシックから強い影響を受け、チェロ、ギター、キーボードやプログラミング等を用いて制作される楽曲は、芸術性を持ちながらも非常に耳馴染みの良い音とメロディーで構成されている。
福岡出身、東京在住のアーティストFerri(vo、key、programing)によるデビュー作。舞台音楽、映画音楽、アンビエント、ポップスやエレクトロニカなどを通過した独特の楽曲には、多くの著名人から賞賛が寄せられた。心の中にしまい込まれた「思い出」や「郷愁の念」 に焦点を当てた本作は、懐かしさ、愛おしさ、寂しさ等、聴く者の心に宿る「何か」に訴えかけてくる。
平成生まれの女子4人によるインストゥルメンタル・ポスト・ロック・バンド、虚弱。のセカンド・デモ音源。まさかそんな若い女の子たちが作っているとは思えないような、細やかな曲の作りと完成された世界観。言葉が持つ力以上に感情の溢れを伝える楽器の鳴り。病的かつポップに、繊細なメッセージを轟音に込める。
PROFILE
Aureole
2007年結成。森大地(Vo、Gt&Prog)、矢野彩子(Syn&Flute)、岡崎竜太(B)、中村敬治(G)、中澤卓巳(Dr)、佐藤香(Vibs&Glocken)の6名からなるポスト・ロック、エレクトロ、クラシカル、ミニマル、プログレ、サイケ、民族音楽などを通過した奥深いサウンドと「歌モノ」としての側面、この二つの要素が矛盾することなく融合を果たしている。2009年にNature Blissよりデビュー・アルバム『Nostaldom』をリリース。2010年には自身のレーベルであるkilk recordsより2ndアルバム『Imaginary Truth』を発表。各方面から絶大な支持を得ている。両作品とも全国のTSUTAYAで好評レンタル中。 Aureole official HP
bronbaba
茨城県古河市にて結成された、西方龍(Gt)、丸山大裕(Ba)、鳥羽信吾(Dr)による3ピース・バンド。2007年10月ミニ・アルバム『LOOP&LOOP』 を"NMK5records"からリリース(CRJ-TOKYOチャート初登場1位、10週連続チャートイン)。同年12月、1stアルバム 『kinder book』をNMK5recordsからリリース(CRJ-TOKYOチャート初登場6位、CRJ-Cチャート初登場2位)。2008年1月、新宿 MARZにてワンマン・ライヴ「LOOP&LOOP」を開催(同じセット・リストを3回ループさせる2時間耐久実験的ワンマン)。それを皮切りに、ファイナル下北沢SHELTERまで全18カ所を回る「kinder book release tour」を決行。そこまで数回のメンバー・チェンジがあったが、2009年6月に丸山大祐が加入し現在の形となる。2011年、Bronbaba本格的に再始動! Kilk recordsより待望の2ndアルバムを発売予定。
虚弱。
2008年11月、現在の壷内佳奈(Gt)、新井深雪(Ba)、海野稀美(Prog, Syn, Glocken)、河野まな(Dr)の編成になり、翌2009年2月から本格的にライヴ活動を開始する。平成生まれ女子四人による、病的且つどポップなインストゥルメンタル・バンド。多趣味で様々なジャンルを吸収しており、バンドの背景にある音楽は全く以て謎。頭痛・腹痛・筋肉痛・精神的苦痛と闘いながら繊細なメッセージを轟音に込める。