奇妙礼太郎×サンデーカミデ 対談
歌うことによって自然と聴き手を巻き込み、ここまでの多幸感をもたらす男は滅多にいないだろう。無理にコール&レスポンスするわけではなく、聴いているとうずうずしてきて体が反応してしまう。こうやって言葉で書けば書くほど本質を捉え損ねてしまいそうだけれど、ここまで歌というものを表情豊かに活かすことのできる歌い手は、何十年に1人という逸材といっても過言ではない。そんな奇妙礼太郎が歌う曲のなかでも、とりわけエモーショナルで印象的なのが「君が誰かの彼女になりくさっても」という曲だ。<ずっとずっと君が好き/誰かの彼女になりくさっても>というフレーズから始まる同曲を聴いて涙したものは僕だけではないはず。同曲を作詞・作曲したのは、サンデーカミデという男で、彼はワンダフルボーイズのリーダーでもある。「マジであった事ポップミュージック」と言われるように、彼の書く曲は自分の体験を元にしている。そして実にエモーショナルでメロディアスなグッとくる楽曲が印象的だ。なんと今回、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団とワンダフルボーイズの新譜が同日にリリースされることになった。それをお祝いして、2人に話を訊くことにした。実は大阪でルームシェアをしていたこともあったそうで、とても親密な雰囲気が垣間見える対談であった。それぞれの歌い手としての考え方、姿勢をぜひ読んで、音楽を聴いてみてほしい。
インタビュー&文 : 西澤裕郎
写真 : 畑江彩美
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>>奇妙礼太郎トラベルスイング楽団「風の王国(キング オブ ミュージック収録版)」
>>ワンダフルボーイズ「ビューティフルグッバイ」
グッド・メロディー&グッド・ソングの2作品が同時リリース!
左) 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 / 桜富士山
右) ワンダフルボーイズ / ビューティビューティビューティフルグッバイ
奇妙礼太郎を中心に大団円のハッピーバンドで形成される奇妙礼太郎トラベルスイング楽団の新作『桜富士山』が完成! 聴いたものをトリコにする印象深すぎるヴォーカルは、本作でも健在です。そして、奇妙礼太郎の定番カヴァー「君が誰かの彼女になりくさっても」のオリジナル作者でもあるサンデーカミデ率いるワンダフルボーイズが、聴けば誰もが涙するグッド・メロディー尽くしのアルバムを引っ提げてデビュー!
曲を書くのが楽しい時もあるんですけど、歌う事自体のほうが全然楽しい(奇妙)
――奇妙礼太郎さんは、サンデーカミデさんが作詞・作曲された「君が誰かの彼女になりくさっても」を色んな場所で歌ってらっしゃいますけど、もともとお二人はお知り合いだったんですか。
サンデーカミデ(以下、サンデー) : 知っているのは10年以上前からなんですけど、この5、6年になって割と頻繁に遊んだり、一緒に住んだりしていました。
——一緒に住んでいたんですか?
奇妙礼太郎(以下、奇妙) : 結構前のことになりますけど、ルームシェアをしていました。
サンデー : 5人くらいで一緒に狭い部屋を借りていたんです。6年ぐらい前からぼちぼち奇妙君の家に行っていたんですけど、いろんな人とフィーチャリングしたアルバムを作るってことをやってはって、一緒にやろうよみたいな感じで誘われて。そこから結構一緒に遊んでる感じです。ライヴでお客さんにお題を出してもらって、2人で即興で歌うみたいな遊びもやっていました。
——それじゃあ、一緒に生活している中で耳にした曲を、奇妙さんがカバーされたんですか?
サンデー : 「君が誰かの彼女になりくさっても」に関しては、曲が出来た時に奇妙くんが横にいて。たまたま京都から広島まで2人で向かっている途中で「こんな曲あんねんけど」みたいな感じで、車の中でウクレレで弾いて聴いてもらって。
——それを聴いてみて、歌って自分でも歌いたくなっていったと。
奇妙 : そうです。すごいなーって。
——ワンダフルボーイズのプロフィールには、「マジであった事ポップミュージック」て書いてあるじゃないですか。基本的に歌詞を書くときってサンデーカミデさんの場合は実際にあった事を歌にしていくんですよね。
サンデー : そうですね。
——つまり、カミデさんの場合って、歌っている本人と曲の距離がすごく近いと思うんですね。それに対して、奇妙さんは自分が作った曲以外のものも結構歌っているじゃないですか。そういった意味で、お互いの歌に対する距離って違うと思うんですよ。
サンデー : でも、自分の知ってる日本の有名な曲を奇妙君が歌っているのを聴いたら、謎が深まったりします。「その曲がこうなる? 」みたいな。また違う命が入るというか。僕はそういうことが出来へんから、パーソナルな部分とかを歌ってるもあるんです。僕からしたら奇妙くんはサーファーみたいな感じですけどね。
——サーファー?
サンデー : これ、奇妙君が言ってたのかな? 「曲を歌うというのはサーフィンや」みたいな。
奇妙 : 言ったことない(笑)!
サンデー : はははは。これ奇妙君がTwitterで言ってたんやと思う。
奇妙 : 酔っぱらってたんだよ、多分。
サンデー : でも俺めっちゃしっくりきて。
——サーファーみたいっていうのは、波が曲ってことですよね。
サンデー : 「それ、そう乗る? 」みたいな。僕の曲も歌ってもらってるけど、「え、これこうなる!? 」みたいな。それが面白かったりするんですよね。
——発言したのは覚えてなかったとしても、今の話は奇妙さんもそう思いますか。
奇妙 : 完全に一人でギター弾いて歌ってたりするときって、曲の間やコードをこうしようとか、メロディも上にいこうよか下にいこうとか、そういうのが自由になるので、楽しいというか。
サンデー : 例えば、歌詞を歌いながらメロディを変えていってんの? 先にメロディがあることが多いの?
奇妙 : もういっこ上かな。
サンデー : もういっこ上にいこうみたいな感じがあってバンって声出すって感じ?
奇妙 : うん。出したい。出した方が気持ちいい。
——アレンジすることによって、その曲がよくなるっていう感覚ですか?
奇妙 : いや、良くなるっていうか、声を出したり歌う事自体気持ちいいことなんです。もっと気持ち良くなりたいからそうしてるというだけで、聴く人の事は考えてなくて。
サンデー : でも、歌っている人が気持ち良さそうじゃないと、聴いてる人も気持ちよくないと思うんだよね。「こう、いったか! 」っていうのとか、「それ、そこいける!? 」みたいな(笑)。そういうXゲームみたいなとこあると思う。二度と同じメロディを聴けない可能性があったり、「この技見られへん」っていうのがあるから。
——カミデさん曲を奇妙さんがカバーした結果、自分じゃ考えつかなかったような展開になったこともあるんですか?
サンデー : 全然あります。例えば「ロッケンロールベイベ」って曲をずーっと小さい声で歌ってたり。自分でいうのもなんなんですけど、「うわ~すごいええ曲やな」と思いました。
——奇妙さんが、何曲もカミデさんが作った曲をカバーしているというのは、カミデさんの曲に魅力があるからだと思うんですけど、どういう部分が魅力だと思いますか?
奇妙 : 一番すごいなと思うのが、一回目に聴いてバーンって頭に歌詞とメロディが入ってくるのがすごいと思います。なかなかそういう曲書けないんで。
——どこかのインタビューで、奇妙さんは自分で書く曲にあまり自信がないという風におっしゃっていましたよね。
奇妙 : 曲を書くのが楽しい時もたまにあるんですけど、歌う事自体のほうが全然楽しいというか。
サンデー : 前に「世の中にめっちゃ良い曲いっぱいあるから別に作らんでもええやん」って言っていて、それがすごいなと思って。その発想は、普通の人にはなかなかないと思うんですよね。よう、言ってたもんなライヴ中も。
——音楽活動をする中でも歌うっていうことが、奇妙さんの活動の中で一番強いポイントなんですね。
奇妙 : そうですね。
——それに対して、カミデさんは、やっぱり曲を作りたいっていう気持ちが強くあるんですか?
サンデー : そうですね。音楽をやる中の一つではあるんですけど、人の曲は難しくて歌われへんとかあって。やっぱり自分のキーだったり、音域の狭さもあって、自分でそれを歌えるように作らないとっていうのはあります。あと、「これ、俺だけちゃうやろ。お前らも思えや! 」みたいな、そういう気持ちは往々にしてあります。「俺がこう思てんねんから、こう思てくれ! 」みたいな(笑)。僕は、人前で「そやろ?そやろ?」っていう感じのライヴするから、そう思えた方がいいっていう。
——共感を求めるみたいな感じですか?
サンデー : 言ってしまえばそうやと思います。自分が思ってることを思って欲しいっていう。
——奇妙さんは、自分の経験を歌にしたりとかっていうのはあまりないんですか?
奇妙 : そうですね。特に経験がないんですよ、人生経験が。
——そんな(笑)。
サンデー : 青春時代が、色で言うたら真っ黒らしいですよ。
奇妙 : 真っ黒やわ~。それに比べたらもう、カミデくんはすごい情報量ですよ。ティーンエイジャー時代に死にかけてるんですよ。
サンデー : そう、死にかけていますね。
——えっ?!
サンデー : あと、めちゃめちゃぐれたりしてます(笑)。
奇妙 : そんな形のバイクあんねや! っていう形のバイクに乗ってたよね。
——ははははは。じゃあ、奇妙さんとかの曲を書く時のそういう生まれてくるインスピレーションの元ってどういうところなんでしょう?
奇妙 : まあ音楽と、映画とか本とか… 全部ですね。でもまあ自分の話とかじゃないですね。
——他の人の作っている創作物とかに結構刺激を受けるとかはありますか。
奇妙 : それは全然あると思います。曲を聴いてたら、別の曲が思いついたりとか。
サンデー : すごいライヴを見たりしたらとかね。
奇妙 : うんうん。
サンデー : 今日(7月8日、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団ワンマン)とかやったら、松井君と上田君とさよならバイバイズのライヴを見たら、インスピレーションが湧きそうな気がしていて。
——例えば、メンバーから刺激を受けて曲が変わっていくことはあるんですか? 奇妙さんのライヴって、メンバーの方達の表情も、雰囲気もすごくいいですよね。
サンデー : メンバーも、「ん~、いいよね」みたいな感じで、聴き入ってしまってるもんね。
——そういうのもあって、近くの人からも影響を受けるのかなって。
サンデー : まあ、それで曲には直接的には繋がらんよね。ただステージで、何でも言える人と一緒にステージに乗ってるっていうのはすごい大事なことで。
奇妙 : うん。
——カミデさんはメンバー間での意見は言いやすいですか。
サンデー : 僕の場合は言いやすいというより、言ってしまうんですけど(笑)。基本的にワンマン仕切りなんで、僕が「右」って言ったら「右」みたいな。
奇妙 : そこがほんまに違う。
サンデー : 違うね(笑)。
奇妙 : 僕の場合はまあまあ人任せやから。
サンデー : 奇妙君の場合は、何がどうあっても俺がこう持っていくんやみたいなのを歌で示せるから。基本的には最終的にやってることは一緒なんやと思うんですけど、僕は歌でそう出来ないってのもあるし。一人一人楽器を詰めて、楽器の出す音をつめて積み上げたものをドンって出したいタイプなんで。まあ、最終的に有無を言わさんっていうのは一緒なんやと思う(笑)。
どうせ発表するならいっぱいの人に発表したい(サンデー)
——お二人が今音楽をやる目的とか動機って、いろいろあると思うんですね。お二人が音楽を続けていくそのモチベーションってどこにあるのかお聞きしたいんですけど、奇妙さんはいかがですか。
奇妙 : 僕は舞台に上がっている1時間とか、その瞬間に全力を出したいというか、そこで全部出し切りたい。それを歌うことで出来たら良い。それを求めているかな。 燃え尽きたい症候群っていう言葉が昔あって。
サンデー : あったね! うちらは、その世代とか言われて。
——へ~。
奇妙 : 燃え尽きちゃったら、やる気無いみたいな感じでね。
サンデー : 一瞬で燃えあがるんだけど、それ以後は灰のようになるっていう。仕事とかでもワッて最初やって、あと全然やらないようになったりするって言われて。
奇妙 : そんなん、めっちゃ困るやんな(笑)。
サンデー : 長いスパンで考えたらどうすんねんっていうくらい燃え尽きてまうっていう世代らしいんです。
——(笑)その一瞬は全力を傾けるんですね。カミデさんの続けていくモチベーションっていうのはどこにあるんでしょう。
サンデー : 僕は曲を作って人前で発表して、「これってこうやけど絶対こうよな? 」みたいなコミュニケーションがあって、お客さんも増えていってというのがすごい楽しいですね。「平和to the peopleやろ? 」とか言って、お客さんもそれを言ってくれたらすごい納得というか。
奇妙 : やっぱみんな思ってんねやみたいな?
サンデー : みたいな! 「そやろ~? 」とか思って(笑)。
——ははははは。
サンデー : そういう場所が大きければ大きい程すごく楽しいと思えるし、それが小さくなっていくと、それはちょっと寂しい。どうせ発表するならいっぱいの人に発表したい。「こう思ってますけどどうですか? 」「そうでしょ! やっぱりそうやんな、Ah Yeah! 」みたいな感じで全部いけたらめっちゃ素晴らしいなと思ってます。いつも。
——それでは最後に、せっかくの場なのでお互いに激励の意味も込めて、それぞれに一言ずつお願い出来ればと思います。
サンデー : 僕は、70歳になったときの奇妙礼太郎を見たいっていつも思っています。そして「ロッケンロールベイビー」を一緒に歌いたいですね。
——では、奇妙さんからカミデさんに一言。
奇妙 : なんやろな~。いっぱい、いろんなものをもらっているんで…。いつもお世話になっております(笑)。
サンデー : いやいやいや(笑)お互い様ですね。
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奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 PROFILE
2008年大阪にて結成。奇妙礼太郎を中心に総勢11名以上?! の陽気なメンバーで構成。奇妙礼太郎ソロ・ライヴも含めると年間200本ものステージをこなす歌謡スイング・バンド。2010年の自主制作デビュー盤以来、ライブ盤を含む2枚のアルバムを経て、まさに、満を持してP-VINEより2012年7月18日デビュー決定 !! 関西での人気を不動のものとし、その魅力が口コミで伝わり、あっと言う間に全国で大きな話題になっている奇妙礼太郎率いるトラベルスイング楽団。7月度には大きな広告塔など大量露出も決定しており、今年大きな話題になること間違いなしの大所帯バンド。
ワンダフルボーイズ PROFILE
2010 年に突如、インディーズ界に舞い降りた、パープル・ハイウェイ・オブ・エンジェルス。それが「ワンダフルボーイズ」。クラブで遊び続ける6 人のメンバー(サンデーカミデ/番長/ミッキー/岡ベストフレンド/アツム/ニーハオ)が繰り出す「マジであった事ポップミュージック」は、リアリティmeets ポピュラリティ。そんな切ない青春をうたった楽曲と、気ままなライブで、関西アンダーグラウンド・シーンにおいて話題沸騰中だとかそうでもないとか…。不定期に開催しているスーパー・アットホーム・クラブ・イベント「土曜日は大キライ!」「love sofa」のほか、大阪を中心として様々なイベントに出演している。 常にボーダーを着用。