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宮田和弥、森純太、寺岡呼人、小林雅之の4人が戻ってきた。そう書くと語弊があるかもしれない。なぜなら彼らは4人とも音楽を続けており、だからこそ今回の完全復活があったのだ。JUN SKY WALKER(S)は1997年に解散し、バンドに一度幕をおろしている。そして、2007年に期間限定の再結成を果たし、今回完全復活を遂げた。その裏には、東日本大震災という大きな天災と、それに伴う東北/北関東のツアーの影響があったという。
4人が集まり、JUN SKY WALKER(S)として各地のリスナーの前で演奏をした2011年。どれだけ自分たちが必要とされているのかを実感し、その役割を引き受けることを彼らは選んだ。そうした覚悟を持って、復活後に初めて作り上げられたオリジナル・アルバム、それが『LOST&FOUND』である。テーマになっているのは、原点回帰とも言えるロック。それは解散を経て、年齢を重ねたことによってしか出来ないロックだった。2012年のJUN SKY WALKER(S)が鳴らすロックについて、宮田和弥と森純太に話を伺った。
インタビュー & 文 : 西澤 裕郎
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ジュンスカ完全復活! 待望のオリジナルアルバム登場!
JUN SKY WALKER(S) / LOST&FOUND
2012年1月18日にリリースした、全曲新録音のベスト・アルバム『B(S)T』が17年8ヵ月ぶりにオリコン総合TOP10を獲得。ジュンスカの完全復活が大きな話題に。
そして、待望のオリジナルアルバム『LOST&FOUND』が登場! オトナになった彼らが今だからこそ鳴らす音、唄う歌を詰め込んだ究極のロック・アルバムが完成。
【価格】
単曲 : 250円 / アルバム : 2400円
日本を支えていく世代の人達を僕たちは音楽で支えていきたい
――なぜ、このタイミングで完全復活に踏み切ったのでしょう。
宮田和弥(以下、宮田) : 2008年に再結成したとき、次のオリンピック・イヤーに4人で会おうなんてことを、ふざけて言っていたんです。それで2011年のお正月に集まって「どうする?」なんて話をしながら、水面下で動いていたんですね。そんな中、3月11日に大地震があって、すぐに支援金を集めて届けたんです。秋頃には音と気持ちを届けにいくという意味で、東北6県北関東2件の8本のツアーをやったんですね。この2つの活動をすることにより、完全復活にしようぜってことになったんです。
――その2つの活動の中で、どのようなことを感じたのでしょう。
宮田 : 特にライヴをやって感じたのが、ジュンスカのお客さんは30代後半の世代が多いってことなんですよ。お父さんになったりお母さんになったり、会社で言えば中堅というか。そういう人たちが僕たちの歌を歌って、涙を流していたりする姿を見て、これから日本を支えていく世代の人達を僕たちは音楽で支えていきたいと思って完全復活を宣言したんです。
――じゃあ、もともと完全復活をしようと思っていたわけではなかったんですね。
宮田 : そうですね。完全復活にしようという強い意志を持てたのは、震災以降のツアーで日本全国のジュンスカ世代の人たちを目の当たりしてからなんですよ。
――つまり、自分たちがやりたいっていうだけでなく、リスナーの反応ありきで完全復活が決まっていったと。
宮田 : それが一番大きいですね。僕らが完全復活と決めたというよりは、僕たちを待ってくれていたファンの人たちや世の中のムードが、僕らの気持ちをさらに一つにし、気持ちを溶かし、完全復活に突き動かしてくれました。だから、僕たちというよりは、ファンの人たちの力なんです。
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森純太(Gt)、宮田和哉(Vo)
――今作は完全復活してから初のオリジナル・アルバムとなりますが、ロックというワードが強く押し出されていますよね。
宮田 : そうですね。ロックを柱でいこうというテーマはありました。「ロックンロール☆ミュージック」っていう曲が3年前くらいに出来たんですけど、ロックに始まりロックに終わるアルバムになったというか。
――どうしてロックをテーマに持ってこようと思ったんですか。
宮田 : 正直、ロックという言葉自体、ダサイっちゃダサイのかなとも思うんですね。普通にロックという言葉が市民権を得すぎちゃっていて、あまりおもしろくないからこそ、敢えて40過ぎた俺たちがロックだぜっていうという。何か、ださカッコいいというか、僕たちっぽいというか。
――そこは、やっぱり意図的なんだろうなと思っていて。正直、20代以下の人たちのロック感と大分違うと思うんですよ。むしろ、仰々しいくらいな感じがして。きっと敢えて歌っているんだろうなと思いながらも、すごく気になっていました(笑)。
宮田 : 実際、僕自身禁煙をしていますからね(笑)。つまり、ロックの中でロックを遊んだというか。僕らの時代は、それこそセックス、ドラッグ、ロックン・ロールじゃないけど、そういう時代だったんですよ。もっとロックも縦社会だったり、先輩の言う事聞かなきゃいけないみたいな。酒をつがれたら絶対一気に呑まなきゃいけないとか(笑)。そういうロック観をわかった上で、僕らの時代のロックはこれなんだ! みたいな感じでやったんです。
――「ロックフェス」には皮肉が込められているような感じがしたというか、こんな歌を歌ってしまって大丈夫なのかなって思ったのですが。
宮田 : もし僕らが新人でこの手の歌を歌ったら、レコード会社にも止められたり、それこそロック・フェスから「お前らは出さない」とかっていうことになると思うんですよ。だけど今回、僕らはそれをすごく楽しんでやっていて。逆に責任をとれるというか、それで出してくれないんだったら出してくれなくてもいいやくらいで。実際、(寺岡)呼人とかは『Golden Circle』ってイベントとかロック・フェスをやっているので、やる立場からの考えもわかるし、出る側の出してもらえなかったときの辛さも分かるわけですね。だからこの歳になった僕らが、そのことに対して敬意を評しつつも、ロック・フェスを歌うってことがおもしろいんじゃないかと思って。
――なるほど。
宮田 : だから、皮肉っていうよりも、ちょっとシャレのきいたエンターテイメントというのかな。この歳にならなかったら歌えなかったというか。
――そういうオチも含めたロック観みたいなことですか?
森純太(以下、森) : そうですね。ロック・フェスは本当に素晴らしいし大好きですから、そこに敢えて洒落を入れてみたんです。酔っぱらいが「俺は酔っぱらっているんだ」って言うのと同じことというか(笑)。
宮田 : そうだね。それこそ、ジョニー・ロットンがPiLを始めたときに「ロックは死んだ」って言ったわけですよね。だけど、彼はロックをやっているわけで。そういう洒落というか、やっているヤツがそれを言っちゃう面白さっていうのかな。それが僕らのやれるロックだと思うんです。
ここをホームとして音楽人生を転がり続けられれば
――ジュンスカは歳を重ねた上で出来るロックをやることに自覚的ですよね。アンチ・エイジングではなく、今を出していこうという姿勢を感じます。
宮田 : もちろん年齢も体系も変わっていくわけで、それを隠すんじゃなくて、今のリアルをオブラートに包まずに隠さず出すことが僕らのよさというか。そういう気がするんですよね。
――若さだけで突っ走るのではなく、少し俯瞰する余裕や厚みが出てきたということでもありますよね。
宮田 : そうですね。若い時に作っていたような歌詞を無理矢理書く必要もないと思うんですよ。やっぱりロックって寄っていっちゃいけないと思うんですよね。僕も若い時分、寄ってくるおっさんは好きじゃなかったし、自分らしく演奏している人とか生きている人が好きなんですよね。その歳なりの今の生き様を生きている人のほうが好きっていうかな。この歌たちが今の20代の人たちに分からなくても、その人たちが30、40代になったときに理解してくれればいいと思うし、作品ってそういうことだと思うんですよね。残るものだから。
――僕は若い人の取材をすることが多いんですけど、ジュンスカは何とか自分たちの音楽を伝えようってことに意欲的だなと思いました。とにかくいい音楽をやっていれば聴く人は増えていくし、聴き手が気づかないほうがおかしいってくらいに思ってやっている人たちもいますからね。
宮田 : 分からないヤツはわからなくていいっていうのは、カッコいいし素敵なことだと思いますよ! みんな、ロックをやっているってことで人生を学んでいると思うんだよね。僕らもそうだけど、人間関係だったり、お金をそれで稼ぐとはどういうことかとかをロックから学んだんですよ。だから、今どんな気持ちでやっている人も素晴らしいと思う。でも、そいつらが僕たちのことに文句をつけてきたら言い返すけどね(笑)。信念を持っていて、人のことをバカにすることなく、自分に誇りを持ってやっていれば素晴らしい。僕らと同じ年齢で未だにアルバイトをしながらロックをしている人たちもいて、それも素晴らしいと思う。自分の音を追求してやっているってことはとても誇り高いこと。別に僕たちも売れるためにやっているわけじゃなくて、やりたいことをやっていたらこうなっているだけであって。もちろんそこに至るまでは色んな葛藤もありましたけど、今回のアルバムもそうだけど、本当に楽しんでやれたっていうのが一番大きいんです。
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――今作では、先ほど話に出たように、30代、40代の目線が入った歌詞が多く見受けられますね。
宮田 : そうですね。例えば、「ラットレース~出世狂騒曲~」だったら、昔はこういう大人を攻撃していたと思うんですよね。僕らの曲に「ランドセル」って曲があって、<俺は政治家がきらい>とか<金持ちの突き出た腹を潰せ>とか、いわゆる「ラットレース」で語られる立場の人間を攻撃していたんですよ。逆に自分らが歳をとって、友だちが社長とかそういう立場にたっているからこそ歌えるんです。肯定も否定もせず、その事実を歌っています。
――ジュンスカは、中学生の頃に結成されたんですよね。正直、今の年齢までやっていることを想像していましたか。
宮田 : そうだねー。(…少し考える)。思わなかったというか、考えなかったというか。どう? 森君は?
森 : 現実的な想像はしていなかったけど、やれていたらいいなとは思ってましたね。俺らが10代のころって、30歳を越えたらブルースか演歌をやっているみたいなイメージがあって、雰囲気もそうだしメディアもそうだったんですよね。なので、夢は見ていましたけど。それが今出来ているから本当にありがたいですね。
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――当時の雑誌『宝島』などでは、宮田さんと森さんは犬猿の仲などと書かれていましたよね。最近のインタビューでは、2人とも丸くなったと話していらっしゃいましたが、現在のお二人の関係には変化は見られたりしますか。
宮田 : キース・リチャーズとミック・ジャガー、ジョー・ペリーとスティーブン・タイラーじゃないけど、ボーカルとギターってライバルであり、そのバチバチ感もファンは楽しんでくれていたりするのかなって。だからといって、計算してやっているわけじゃなくて、本当によくないときは解散したり、完全復活とか再結成って形になることもあるし。そういうことで、本当にファンが喜んでくれて、僕たちがこうなると感謝してくれたり動いてくれるんだってことも実感して。ましてや、この4人が集まれば、こういう風に現象になるんだってことに自分でも驚いたというか、気づかされたっていうのがあるんですよね。
――改めて4人で集まってみたときに、ジュンスカの持つエネルギーを実感したと。
森 : それはもちろんですね。
宮田 : だから、リアム・ギャラガーとノエル・ギャラガーがいないとオアシスじゃないみたいな(笑)。その人柄だからいい、みたいな感じなんじゃないですかね。
――改めて4人でやったら、ジュンスカの影響の大きさを改めて実感したのはもちろん、それ以上に楽しかったんですね。
宮田 : 楽しかったし、エネルギーが湧いてくるというのかな。忘れてはいなかったんだけど、しばらく体感していなかった情熱とかを、特にフェスに出たときには感じましたね。それがあったからこそ、今回もニューアルバムに着手しようとか、ベスト盤を録り直そうとか、震災のときすぐ動こうってなったと思うんですね。もしこの4人でいなかったら、そういう気持ちにはならなかったし、あの20周年がなかったら、今回の完全復活もなかったと思う。
――いろいろなことが重なって必然的に完全復活に至ったというわけですね。
宮田 : そうですね。あと大きいのは、みんなが音楽を辞めずにいたっていうこと。呼人は呼人でやっていたし、森くんも小林も僕も、みんなそれぞれ音楽という道は続けていた。だからまた戻れたと思うんですね。
――最後に、これから先のジュンスカの目標をお聞きできますか。
宮田 : どんどん新しい曲を作って、ニュー・アルバムを作って、ツアーをするってことをやり続けられるところまでやり続けられたらと思いますね。もうお祭りって感じではなく、完全復活ってことだから、ここをホームとして音楽人生を転がり続けられればいいなと思います。1本でも多くのライヴを全国に届けられたらなと思います。
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Naokoを中心に大阪で結成され、1983年に1stアルバム「Burning Farm」でデビューした少年ナイフ。その後、アメリカ・イギリス・ヨーロッパで人気を博し、1992年に日本・アメリカ・イギリスでメジャーデビュー。以後、コンスタントなリリースとワールド・ツアーを続ける彼女たちのデビュー30周年記念リリース第一弾は、原点回帰のラモーンズ・カヴァー・アルバム!!。
LIVE SCHEDULE
J(S)W TOUR 2012“LOST & FOUND”
2012年6月2日(土) @Live House 浜松 窓枠
2012年6月3日(日) @岐阜 club-G
2012年6月5日(火) @松坂 M'AXA
2012年6月7日(木) @金沢 AZ
2012年6月8日(金) @新潟Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGE
2012年6月10日(日) @郡山HIPSHOT JAPAN
2012年6月16日(土) @苫小牧ELLCUBE
2012年6月17日(日) @旭川 CASINO DRIVE
2012年6月19日(火) @弘前Mag-Net
2012年6月23日(土) @大分DRUM Be-O
2012年6月24日(日) @熊本DRUM Be-9 V1
2012年6月28日(木) @広島クラブクアトロ
2012年6月30日(土) @神戸ウィンターランド
2012年7月1日(日) @京都 磔磔
2012年7月7日(土) @NHKホール
2012年7月8日(日) @NHKホール
PROFILE
80年代後半~90年代に活躍した、4人組ロック・バンド。80年代後半から東京・原宿のホコ天(歩行者天国)にてライヴを続け、徐々に人気を集めていく。1988年に宮田和弥(Vo)、森純太(G)、寺岡呼人(B)、小林雅之(Dr)という編成で、アルバム「全部このままで」でメジャーデビュー。当時勃発していたバンドブームの波に乗り、「歩いていこう」「白いクリスマス」「START」などといったヒット曲を連発する。1993年に寺岡が脱退し、デビュー以前のメンバーだった伊藤毅が再加入。その後も精力的な活動を続けるが、1997年6月に解散。以後、各メンバーはソロやバンドで活躍するが、2007年春に東京と名古屋でライブを行うために復活。同年9月には解散から10年ぶりに再結成。
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