王道清涼系ポップス!! ノンブラリ『Lily yarn』配信開始
山本きゅーり、鷲見俊輔、サカイユウスケ、山口実篤で構成される4ピース・バンド、ノンブリラリ。スウェディッシュ・ポップ、シューゲイザー、カントリーなどに影響を受けた多彩なサウンドに、人懐っこい声のボーカルが乗っかったノンブラリの音楽は、まさにポップ・ミュージックの結晶といえるだろう。生活に寄り添う心地よい音楽に、耳を傾けてみてはどうだろう?
INTERVIEW : ノンブラリ
初めてノンブラリの名前を聞いたのは、OTOTOYの企画「若者座談会」でのことだった。インターンで来ている子たちや若いライターたちに、いまおもしろい音楽について思う存分話してもらった。その話のなかに、ノンブラリの名前も出てきたので、どれどれとYouTubeを再生してみると、彼らの世界観に一瞬で引き込まれてしまった。クラムボンを思わせるような雰囲気を軸に、グラスゴーやスウェーデンのギターポップを取り込んだかのようなサウンド。心が弾むようなポップ・ミュージックに、どこか懐かしささえ覚えることとなった。
ノンブラリが結成されたのは2010年、本格的にライヴ活動を開始したのは2012年からだという。2013年には「りんご音楽祭2013」や「BEATRAM MUSIC FESTIVAL 2013」といったフェスにも出演し、その活動範囲を少しずつ広めている。なんでも、彼らのいまの目標は日比谷野外音楽堂でライヴを行なうことだという。ふわふわしていそうでいて、ちゃんと目標を持って、それを口にするというのは、とても素敵だなことだと思う。ぜひ、彼らが思い描いている景色が実際の景色になる日が来る日を想像して、このインタビューを読んでみてほしい。
インタビュー & 文 : 西澤裕郎
ノンブラリ / Lily yarn
【配信形態 / 価格】
まとめ購入 : WAV / mp3共に2,000円
単曲購入 : WAV / mp3共に250円
【トラック・リスト】
1. シンフォニー / 2. Dear Lily / 3. 誰とのにらめっこ / 4. Twinkle / 5. 急ぐ鯨 / 6. ミルクと砂糖が溶けるころ / 7. オー!シャンゼリゼ / 8. ストロボ / 9. やくそくの手紙 / 10. あの子いま何してるんだろう
野音でやるっていうのが大きな目標です
ーーノンブラリって、すごく耳に残るバンド名ですね。
山本きゅーり(以下、山本) : 実は、八丈島にある雑貨屋さんの名前なんです。小学生の頃に何度か行ったことがあるんですけど、島の方が2人か3人でやっている観葉植物と雑貨のお店で、日の光だけで店を照らしているような雰囲気なんです。初めてお店にいったとき、このお店の人たちはここで暮らしているんだと思ったら、ああーーーー!! って。
山口実篤(以下、山口) : びっくりした(笑)!!
山本 : (笑)。それで、バンド名をどうしようってなったときに、そのお店のことを思い出して。そのときは、まだこのメンバーでどういうことをやっていくかはわからなかったけど、人の生活を思うような歌を歌っていくんだろうなと思って、バンド名にしました。
ーーへえ。バンド名のことは、お店の人も知っているんですか?
山本 : つい最近ようやく挨拶したんですよ。「実は(名前を)借りています、お借りしてもいいですか?」って。CDもお送りしたら、すごく喜んでくれて。CDもお店でかけてくれていて、さらにライヴをできるスペースを作ってくれていて。
ーーそれは素敵な話ですね!! そもそもみなさんは、それぞれ別のバンドをいくつか経験されてきたんですよね。この4人だからこそ、気があうところがあったわけですよね。
山口 : そうです、そうです。つんけんしている人はいやだなと思って(笑)。実際、やりやすい人たちだと思うし、パワーバランスがとれるメンバーだなと。
ーーなるほど。音楽をやることを目的としてバンドをやる以上は、共通の目標というか指針が必要なのかなと思うんですけど、そういうものはありますか。
山口 : 野音でやるっていうのが大きな目標です。
ーーおお!!
山本 : 私たちが一緒にいられるのって、同じ景色を一緒に観られるっていうのがすごく大きいと思うんですね。頭の中に思い描く風景みたいなものっていうか。ほどほどに大きくて開放感のあるところで、その景色を観るというのを思い描いたら、それが野音だったんです。
ーー野音ってかなり大きいですよ(笑)?
マネージャー : いま聞いてて、こいつらどんだけ大物なんだって思いました(笑)。
一同 : (笑)。
クラムボンさんは好きというか、ありがとうございますって気持ちでいっぱい
ーーでも、そういうふうに目標があるっていうのは気持ちいいですね。
山本 : 野音って、お客さんとの距離が本当に近いと思える場所なんですよね。お客さんとの距離の取り方は、いままでもずっと探ってきていて。
ーーそういう気持ちはなんで生まれてきたんですかね。
山口 : それが自分たちに一番合っているんだろうなと思って。今回のワンマンも、ダブル・アンコールのとき、フロアに降りていって、生歌でやってみて。
ーーステージとフロアでやるのは違いましたか?
山口 : ぜんっぜん、違いました!!
一同 : (笑)。
山口 : 私たちがやっていることが、伝わっているっていうのがわかるっていうか。一緒の位置で鳴らすのって、こんなにも違うんだなって思いました。
ーーきゅーりさんの歌声は、ノンブラリの楽曲において、かなりアクセントになっていると思うんですけど、影響を受けたシンガーっているんですか?
山本 : わたし、みんなに比べたら聴いてきた音楽が少なくて。女性アーティストでは、椎名林檎ちゃんとYUKIちゃんしか知らないくらいだったんです。そんななか、高校1年生のころ、バイト先の人がクラムボンを教えてくれて。そこで原田郁子さんを知ったんですけど、こういうあり方の人がいるんだ! と思って、それがわかったときに、すごくいろんな道が見えて。そういう意味でもクラムボンさんは好きというか、ありがとうございますって気持ちでいっぱいです(笑)。
山本 : こんなに自然体でいていいんだ!! と思って。YUKIちゃんとか林檎ちゃんも大好きなんですけど、バッチリ決めてる感じがしたので、私にはできないと思って。それが、原田さんを知ったときに、肩の力って抜いていいんだって、楽になったんです。
ーー他のメンバーのみなさんもクラムボンはお好きなんですか。
山口 : 4人でよみうりランドのライヴを観にいくくらい好きです。
鷲見俊輔(以下、鷲見) : 僕は、生活になじむ音楽というか、そういうところに惹かれて。もともとギターをはじめたきっかけはハイスタンダードだったんですけど、けっこう体育会系の部分が多くて。僕はそこじゃないなと思ったときに、こういう方向性の音楽が心地いいなと思って。
ーーノンブラリを語るにあたって、クラムボンってワードがけっこう出てくると思うんですけど、どこか逃れたい部分もあるのかなって。
山口 : そんなこともないですね。
鷲見 : むしろ、名前が出てくると嬉しいです。
物語がすごくあるんですよ
ーーちなみに、今作が初の全国流通盤となるわけですよね。全国に向けて、自分たちを広めていこうっていう意識も出てきましたか。
山口 : そろそろ、みんなに聴いてほしいなって気持ちはありましたね。それまでの音源はライヴハウスにしか置いてなくて、曲も溜まってきていたから。もうひとつステップアップするために、一つリリースしないとダメだなと思って。どうしたら成長できるんだろうって考えたときに、自分たちの作品に対して反応をもらわないとダメだなって。
ーーそれじゃあ、今作は、自分たちの成長のための作品作りでもあったわけですね。音源制作って、対お客さんという以上に、対メンバーっていう作業になると思うんですけど、どんなレコーディングになりましたか。
鷲見 : 今回の作品に関しては、なんでも言えるくらいまで詰めましたね。惜しみなく出そうってことで、ああでもない、こうでもないって言い合いながら、作業していきました。
ーー曲はどういう流れで作ることが多いんですか。
サカイユウスケ(以下、サカイ) : この2人(鷲見、山本)が曲を作る人たちなんで、まずは2人に任せます。
鷲見 : 僕が、山本が何を言いたいかっていう意思を受け取って、その考えに一致する景色をどんどん出していって、それをどう言葉に近いようにしていくかって作業をしていくんです。
山口 : 景色をあわせるんだよね?
鷲見 : そう。
ーーその間、山口さんとサカイさんは?
サカイ : 暇ですね(笑)。
山口 : 最近は、最初に2人で作ってもらっていうのが多いですね。最初からスタジオでセッションして、いいねってなることもありますけど、2人のところで軸が固まらないと、俺たちが出て来てもぺらぺらになってしまうから。
ーーじゃあ、今回も土台作りは2人で。
鷲見 : そうですね。そこで出来た気持ちを2人に伝えるんです。この曲はこういうストーリーがあって、っていうところから。
山口 : イメージをふくらませて共有するって感じですね。
サカイ : 物語がすごくあるんですよ。
結局は同じところで落ち合うんだってことが最近わかったんです
ーー具体的にどういう感じで伝わっていくんですか。
山口 : 畑でバレリーナが踊っていてみたいな。
サカイ : あった、あった。
山口 : どんな感じなんだろう? って(笑)。でも、それを自分なりに解釈して、音に出していく。
ーー最終的に4人で景色はあうんですか。
山本 : なかなか伝わらないときもあるし、ぱっと伝わってしまうときもあります。でも、なかなか伝わらないときは、しょうがないなって思います。大丈夫! わかってないだろうけど大丈夫! ときが経つにつれてどうにかこうにかなるし、って。
山口 : でも、そのイメージは残っていますよ。この曲はこういうイメージだったなと。極力近づきたいから、どんな感じかなってこちらからも質問するし。
ーーそれでも意思疎通がはかれないってことはありました?
山口 : ってことはなかったかな。
山本 : あったよ!!
山口 : そりゃあ、あるよね(笑)。
山本 : そっちの2人(山口、サカイ)の性格は、明確でわかりやすいんですよ。言うこともそうだし、目指していることもそうだし。こちらの2人(鷲見、山本)はもやっとしているんですよ。
山口 : 感覚重視の人たちです(笑)。
山本 : ここから(鷲見、山本)はじまって、そっち(山口、サカイ)に投げないといけないので、「こういう感じなんですけど」みたいに言うと…。
山口 : フィーリングじゃ伝わらない!! って(笑)。
山本 : もやっとした状態で曲が出来たとして、それをライヴでやったり、レコーディングしていくにつれて、こっちから2人に寄っていくこともあるし、向こう側から寄ってくることもあって、結局は同じところで落ち合うんだってことが最近わかったんです。曲ってなんだろう? ってなっている状態でも、一緒にやっていくにつれてまとまっていくんだ!! って。不思議じゃなかった?
山口 : そうだね。
ただただ嬉しいです。それでお腹がすきます
ーー「Dear Lily」は、時間がかかったそうですね。
山本 : 全然できなくて、レコーディングの前日にメロディを変えてしまったりして。もやっとしているものは見えていて、景色も伝わっているんですけど、それを音楽にする作業がすごく難しくて。日が迫っていてピリピリしているのもあったし。でもレコーディングをして、なんとか終了しましたってときに、全員が「ああ、こういう曲だったんだ」ってなった瞬間があって。
ーーそこまで苦労しながら曲ができたときは、どんな気持ちなんですか。
山本 : わたしは、ただただ嬉しいです。それでお腹がすきます。
一同 : (笑)。
山口 : それは知らんよ(笑)。
鷲見 : ちょっとわかる。
サカイ : 知ってる組だ!!
ーー(笑)。感覚組と論理組でわかれているのに、4人のメンバーになると結びつくのがおもしろいですね。
山口 : 最初に組んだときのパワーバランスが、そこに近いのかなって。ユウスケさんならなんでも許してくれるだろうって。
サカイ : たいがい許すから(笑)。仏になりたかったんで。
一同 : (笑)。
ーー最初にバンドを組むときから、これほど色が出るっていうのはわかっていたんですか。
山口 : 感覚組と論理組でわかれるとは、ここまで思ってなかったです。むしろ、俺らもそっちだろうって思っていたし(笑)。アーティストっぽいのはそっちだから。
ーー分担とかもわかれているんですか。
山口 : 裏の仕事とかHPとかは、全部こっちなんですね。物販に関しても、作るのはこっちだけど、デザインするのはそっちって分担されているね。あ、でも、ユウスケさんデザインするじゃん!!
サカイ : はい。
山口 : そっち組じゃん!!
サカイ : 真ん中くらいにいる(笑)。
山口 : でも、感覚組の2人も、もちろんいろいろ考えてますけどね。
みんなで一緒に野音にいくのを思い描いています
ーー昨年12月には、nestで初ワンマンを行なったんですよね。自分たちだけを観に来てくれるお客さんのなかでやるっていうのはなかなかないと思うんですけど、どんなライヴでしたか。
山本 : 私たちは、ノンブラリの周りにいるおもしろい人たちと一緒に野音まで転がしていこうっていうのがあって。なので、初めてのワンマンだったんですけど、ノンブラリ全員が好きなお店におでん屋を出店してもらったり、ノンブラリが仲良くしているDJの方にDJをまわしてもらったりとかして。わたしたちの仲間を紹介する場でもあってほしかったんです。そういうことを積み重ねながら、仲間が増えて増えて、みんなで一緒に野音にいくのを思い描いています。これがノンブラリです、仲間たちですって人たちがいて、お客さんがいる。すごく楽しいことをしていますよって空間の中心で鳴っているのが、ノンブラリの音楽だったらいいなって。ずっとその図は想像していたんですけど、なかなかその景色には辿りつかなくて、この間のワンマンでようやくこれこれこれ!! ってなって。結成当初から思い描いていた景色が4年間かかってみられたというか、これが観たかったんだなっていうのが観れたので、すごくおもしろかったですね。
ーー一緒に転がっていこうとしているのが、音楽だけじゃないっていうのがいいですね。
山本 : その人たちに特に共通点みたいなものはないんですけど、私たちノンブラリの4人が集まってなんとかいけると思ったのと一緒で、この人たちとだったらおもしろいことができるかもって人たちと一緒に転がっていきたいです。
山口 : コラボっぽいっていうか、尊敬していたり、リスペクトしている人たちとやっているんです。素敵でごはんがおいしくて、一緒にやらない? って本当に軽いノリから始まっているんでですけど、そこから深くつながっていけば、結局音楽につながるのかなって。
ーーノンブラリは、ネオアコっぽさだったり、グラスゴーとかスウェーデンあたりのポップ・ミュージックにも通じるところがあると思うんですけど、そういう音楽性は意識されますか。
山口 : 曲によってですけど、意識する時期もあったりって感じです。スパイス的に入れたいなっときに、意見を出して、それを汲み取ってもらって昇華してもらうってことは頻繁にしてましたし。一つの景色を観るために繋げていく素材って言うのかな。
ーーあくまでも景色を描くための要素なわけですね。そう考えると、野音での景色はとっても美しそうですね。その野音でのライヴですが、いつくらいに実現しそうですか?
山口 : 言っちゃってよ!!
山本 : うーん… 3年で!
山口 : 簡単だなあ(笑)。
ーー(笑)。八丈島の雑貨屋さんでもライヴをしないとですね。
山口 : そうそう!! もちろんです!!
ーーそれこそクラムボンも全国各地の様々な場所でライヴをしていますからね。最後に訊きたいんですけど、ノンブラリの活動を通して伝えたいことってなんでしょう。
山口 : バンドって楽しいよ、っていうのは言いたいですね。音楽が売れないってよく言われるけど、やること自体が楽しいと思うんです。僕たちもワンマンでそれぞれが思ったことで、やっててよかったなって。音楽って楽しいなって。それがちょっとでも伝わればいいなと思います。
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PROFILE
ノンブラリ
2010年結成、2012年から本格的にライブ活動を開始。人懐っこい声のボーカルにスウェディッシュ・ポップ、フォーク、カントリー等に影響を受けたサウンドで下北沢、渋谷を中心にライブ活動を展開。2012年6月にはスリーマン「言わせておけば」をソールドアウトさせ、2013年には「Shimokitazawa SOUND CRUISING Vol.2」、長野「りんご音楽祭2013」、富山「BEATRAM MUSIC FESTIVAL 2013」など、様々なフェス、イベントに出演。同年9月に初のFull Album『Lily yarn』をリリース。12月にはワンマン・ライブ「Hello My Dear Lily」を開催。