ポスト・ハードコア〜パンクを基調に、あらゆる要素をゴチャ混ぜにしたキャッチーなサウンドと、エネルギーに溢れたライヴで注目を集めている4人組、the mornings。これまでにヒップホップ、インディー・ロックやパンクなど多様なジャンルのコンピレーションCDに参加し、「どこにでも属せて、どこにも属せない」と言われる程、その活動の幅は広い。結成8年にして、遂にファースト・アルバムが到着!!
★OTOTOYのみの特典!! アルバムを購入すると、2010年10月2日に新宿motionで行われたライヴの音源がついてきます!
【特典内容】1.マッドチアガール / 2.悪いお兄さん / 3.amazon surf(録音 : 馬場友美(個人盗撮れこーど))
INTERVIEW
the morningsの音楽からは、1978年に発表されたコンピレーション・アルバム『NO NEW YORK』に収められた4バンドや、The Pop Groupなど所謂ポスト・パンク期のバンドたちの遺伝子を感じることができる。あるいは、PANICSMILEやLimited Express (has gone?)などの、日本人ならではの衝動を抱えたバンドからの遺伝子も感じることができる。しかし、それは音楽が似ているとかいう話ではなく、音楽活動に対する意識における共通点が大きい。旧い価値観を壊すとか、そうした目的意識すらぶっ飛ばして、ただただ叫び楽器をかき鳴らす。ネット環境が時代感覚をフラットにしてしまった現在こそ、彼らのような原始的な叫びが音楽の未来を切り開いていくに違いない。2011年の渾沌を切り裂く音を聞き逃すな!
インタビュー&文 : 西澤裕郎
「chief」は、今あるthe morningsの原型が初めて出来た曲
——アルバムこそ出していませんでしたけれど、the morningsって活動期間は長いですよね。なぜ、このタイミングでアルバムを作ろうと思ったんですか?
キシノジュンヤ(G、Vo / 以下、ジュンヤ) : 8年も活動しているのに、EPとか、コンピ参加用に小分けで録ったものしかなくて、それらの曲をまとめて聴けるものがなかったんです。いわゆる名刺代わりみたいな作品が欲しいと思ってアルバムを作り始めました。
——そういえば、去年のジェームス・チャンスのライヴって観に行きました?
ジュンヤ : 行けなかったんですよ。
——僕、めっちゃ期待していったんですけど、思ったよりいまいちだったんですよ。音源通りで素晴らしかったんですけど、それ以上感じるものがなくて。the morningsはライヴがすごいテンションで熱いから、逆に音源になってがっかりしたらどうしようとか勝手に心配してたんです。でも、音源もめっちゃよかった!
ジュンヤ : 嬉しいです(笑)。
——1曲目の「opening act」とかはNO WAVEやポスト・パンク期のバンドを想起させるし、他の曲も展開がおもしろい。楽器の重なり方もすごくいいですよね。僕は一番奥底で、PANICSMILEの存在を感じました。
ジュンヤ : 大体の人が、the morningsのライヴを破天荒とか訳分かんないみたいな感じで見ていると思うんですけど、僕たちは楽しいからライヴをやっているだけなんです。曲作りは完全に別もので、もっと構築的というか、かっこいい重ね方や展開の仕方だけを考えて作っています。そういうふうに別れているので、ライヴ時の印象とは全然違うだろうなと思います。
——特に1〜4曲目までの流れがいいですよね。曲毎に色が出ているし展開が楽しいし、サウンドが気持ちいい。
ジュンヤ : もちろん最後まで聴いてほしいんですけど、アルバムって相対的に最初のほうがよく聴くじゃないですか。だからわりと最近作った曲とか押している曲は、前のほうに置いていきましたね。
——後半に収められた曲は、初期の作品ですか?
ジュンヤ : そうですね。「chief」は大学四年生の時なんで2006年です。「drug me」は去年ですけど。
——前半と後半で色が違うのは聴いていてもわかるんですけど、キーになった曲はやっぱり「chief」なんですか?
ジュンヤ : 「chief」は、今あるthe morningsの原型が初めて出来た曲なんです。曲のカラーがバンドに合っているなって思えました。それまでは全然違うことをやっていたんですけど、この曲で今の流れが出来たんです。その後の「マッドダンサー」とか「秋芳洞」のころって、結構模索期っていうか、どうやったらこういう感じの曲が出来るのかわからなくて、本当に継ぎはぎっぽい感じの曲になっているんです。それを何とか1曲にまとめるようと頑張ってやっていた頃だったんですけど、だんだんビジョンみたいなものを1曲ごとに持ってやれるようになっていきました。
——どのようにして、ビジョンを持ってやれるようになったんですか?
ジュンヤ : 作り方を変えたんです。「マッドダンサー」とか「秋芳洞」とか「chief」の時は、基本的にはみんなで意見を出し合う感じでやっていたんですけど、最近はある程度僕の中で最終的なゴールを持ってからみんなで共有して、その上で意見やフレーズを出し合って作っていくって感じになってきています。
僕らは浮いているバンドだと思うんですよ
——web magazine『creatalk』のインタビューで、2006年の早稲田大学での学祭への出演がターニングポイントという話をしています。今でこそ東京ボアダムなどでtacobondsとかとも絡むことが多いですけど、その時期のことを教えてもらえますか。
ジュンヤ : その学祭ライヴの最後に、tacobondsのオガワさんがアンプをフルテンにしてカミナリみたいな感じでギターを弾くのとか最高すぎましたね。その時期、他にも憧れのバンドと対バンできたんですけど10年選手の年季や本気さを感じて、うちらこのままじゃいけないなって思ったんです。その年の8月にマヒルノを見に行ったときもマジにすごいなって影響を受けて、そこから僕たちも真面目にやらなきゃなって変わりました。大学四年生のころまでは、実はライヴもあまりしてなかったんです。それが早稲田以降は1ヶ月に8本とかやり始めて、それから社会人になっても、最初こそ減りましたけど今みたいに徐々に増えていきました。
——影響を受けたのは、音楽性ももちろん姿勢とかの面が大きかったんですね。
ジュンヤ : そうですね。真面目にやっている人たちを目の当たりにしたのが大きいです。
——ジュンヤさんの言う「真面目」っていうのは、どういうものか詳しく教えてもらえますか?
ジュンヤ : 曲がっていないってことかな。売れることに価値を置いてない人たちにシンパシーを感じるんです。売れることとかを考えたら、もっとポップで分かりやすく最短距離で売れるための方法もあると思うんですけど、僕の尊敬する人たちは自分のやりたいことがあって、それをすごく愚直にやっているバンドなんです。それが真面目ってことだと思います。
——2005年に自主的にアメリカツアーに行ったことも影響があるんじゃないですか?
ジュンヤ : そうですね。大学3年生のころに、観光ツアーみたいな感じでアメリカに行ったんですけど、その時に向こうの音楽環境って本当にいいなと思ったんです。ガレージを2バンドくらいで共有してスタジオにしてたり、バーでライヴをしたんですけどチャージ料金だけで音楽見れるし、俺らがやっても「awesome!」っていってくれるような雰囲気だし、みんなお酒を飲みにきている感じなんです。日本に戻ってきたら、ちょうどGREEN MILK FROM THE PLANET ORANGEのdead kさんとかが仕切っていたネオ・アンダーグラウンドっていう小さいムーブメントがあって、海外ではミュージシャンが食えてるのになんで日本では食えないんだみたいなことを考えるシンポジウムがあったんです。そこでtacobondsにも出会えて、早稲田でのライヴに呼んでもらえたから、アメリカに行ったタイミングやネオ・アンダーグラウンドのタイミングとかがリンクして、真面目にやる流れができた部分もありますね。
——実際に行動に移してみて、バンドに変化はありましたか?
ジュンヤ : 結構変わったと思います。それまでノルマを払ってライヴに出ていても、かっこいいバンドってたまにしかいなかったんです。ライヴをなぜしているかって考えたら、自分たちが楽しいからやっている。だったら自分たちで楽しいことをやろうということで自主企画がめちゃくちゃ増えました。
——手応えがあったんですね。
ジュンヤ : すごくありました。だから今でもスタジオ・ライヴはやるし、ライヴ・ハウスでやるにしても、どうやったらもっと楽しめるか自分たちで考えてやっています。
——the morningsも主催者として関わっている東京ボアダムは「ライヴ・ハウスをおもしろくしたい」などテーマがあると思うんですけど、the morningsが自分たちでイベントを組む目的はどんなところにあるのでしょう?
ジュンヤ : 今の立ち位置としては、色んなところと繋がりがあるのは強みだと思っていて、例えば吉祥寺warpに来てくれたお客さんが秋葉原GOODMANに来たりして、対バンに出た他のバンドをかっこいいと思ってもらえたら嬉しいですよね。もちろん自分たちで活動するのが楽しいっていうのが一番なんですけど、意味とかを考えると、こんなに楽しい場があるんだってことをわかってもらって、ワイワイしに来なよってことを言えたらいいかなと。そういう楽しいことをしていきたいですね。
——去年末に新宿MARZとMotionの2つのライヴ・ハウスを使って行われたイベント「SWAN SONG COUNCIL」では、オワリカラとかSEBASTIAN Xなど勢いのある若手バンドも多い中で、カウントダウンを任されました。ライヴ・ハウスとか周りからも、今一番期待されているってのがひしひしと伝わってきます。
ジュンヤ : 新宿MARZとMotionにはお世話になっていて、すごく嬉しかったです。ただ、僕らは浮いているバンドだと思うんですよ。TOKYO NEW WAVEにも入れてもらったけど、自分たちだけBPM早くて、本当に訳分かんないボーカルとか入っていて完全に浮いている状態ではあると思うんですね。でも、お客さんやバンドの友達はいいって言ってくれるので、そこは自信を持っていていいかなと思っています。僕たちみたいにポピュラーじゃない要素を持った音楽でもダイブもモッシュもできるし楽しめるから、もっといろんな人に見て欲しいと思っています。
このバンドはこういう風で、このパターンねみたいには思われたくはない
——去年のOTOTOY AWARDが韓国のバンド、チャン・ギハと顔たちだったんですね。国内にも勢いのあるバンドが多かったし面白い一年だったんですけど、一歩飛び抜けたバンドがいなかった。the morningsには、そこから突き抜ける勢いとか資質があると思うので、どんどん前へ進んでほしいと思うんです。
ジュンヤ : ありがとうございます。たしかに音楽の面では突き抜けたいっていう気持ちがあるんですよ。もちろん誰もやっていないことってなかなかないと思うんですけど、うちらにしか出来ない方法が見つかってきていて、今回のアルバムで持ち曲を出し切ったので、これから新しい曲を作って、その奥のところでもっとすごいことをしたいなって思っています。ただ、活動ってなると突き抜け方がわからないんですよね。
——僕はthe morningsに海外でツアーをしてほしい。それが、いまthe morningsが突き抜けるってことだと思う。
ジュンヤ : 確かにいま海外でやってどういう反応になるかってのは、メンバーみんな考えているんですよね。去年もそういった機会はあったんですよ。スティーヴってカナダ人のお客さんがオワリカラとかandymoriを連れてカナダにツアーへ行ったんですけど、それにも呼ばれていたんです。それ以外にもたびたび誘ってもらっているんですけど、仕事があったり、タイミングが合わないんですよ。
——the morningsは全員がフルで仕事をしていて、そちらもバンドを形成する上で大きな意味を持っていますもんね。
ジュンヤ : 突き抜けたいけど生きていたら生活とかもあるわけで、そこに身を任せてやっていかないとと思うんです。もちろん音楽のことをもっと考えていい曲を作らなきゃいけないけど、それだけじゃなくて生活のことも考えてやらないとと思います。
——学生から社会人になったり、曲の作り方やビジョンが見えてきたという意味でも、今作はこれまでの集大成的なアルバムですね。
ジュンヤ : そうですね。本当に頑張って作った曲を、ちゃんとまとめたっていう作品です。
——少し気が早いかもしれないですが、次に向かっていくべき新曲の構想は見えていますか?
ジュンヤ : このバンドはこういう風で、このパターンねみたいには思われたくはないんです。そう思われちゃったらおもしろくない。自分たちがやってないこととか、新しい感覚になれるかってのは毎回考えながらやっていきたいなと思っています。最初にやれるアイデアが10あったとしたら、出すごとに少なくなっていくじゃないですか。想定している中では残り2くらいしかないんですけど、その2の奥にもっと深いものがある気がしているので、色々探しています。なかなか難しいですけど。
最初にPANICSMILEを聴いたときはマジでへこみました
——NO WAVEっぽいとかポスト・パンクっぽいとか言われることがあると思うんですけど、具体的にこういうバンドを参考にしようとかはあるんですか?
ジュンヤ : そういうのはなくて、僕らは全部後から聴いているんですよね。例えばNO WAVEっぽいって言われるようになってから、それを聴いてかっこいいねってなったり、これやられてるじゃんとかなったりすることが多いんです。
——自分たちが作り上げた曲が、たまたま他のバンドの要素を感じると言われることが多いんですね。
ジュンヤ : だと思ってやっています。だから最初にPANICSMILEを聴いたときはマジでへこみました。実はPANICSMILEを聴いたのって結構おそくて、社会人1年目とかにすごくはまったんですけど、全部やってるじゃんって(笑)。
——最初にPANICSMILEの名前を出したのは、音楽が似ているって部分よりも、どうやって音楽を作っていこうかとかプロセスの部分に近さを感じたんです。
ジュンヤ : 本当におこがましい話なんですけど、PANICSMILEの『E.F.Y.L.』〜現在の流れを聴いて、僕らが辿る道を先に見せてもらってるんじゃないかと思ったんです。僕らも「chief」みたいな曲を作っている時期から、拍のズラしとか、みんながバラバラなことをやるとかもやったりしてきて、どうしても手法が似てきちゃうと思うんです。自分としては、そこは影響を受けているわけじゃないと思いたい(笑)。
——PANICSMILEは次のステージに向かうために、2010年に当時のメンバーでの最後のライヴを行いました。the morningsにとって、この4人である必然性を感じますか?
ジュンヤ : the morningsは一度もメンバーが変わってないんです。バンドをやっているともちろん不満とかはあります。曲を覚えないとか、慣れた曲で2拍くらいズレてしまうとか。もちろんそのたびに話はするんですけど、バンドのあるべき姿を探しながらやっているところです。こうやってインタビューとかを受けていると、4人でやりたいってことは思いますね。
——では最後に、次に向かっての抱負をお願いします。
ジュンヤ : お客さんに待望されている状況ってのは少なからずあると思うんですけど、それは気にしちゃいけないなと思っていて、自分たちが納得できるものを自分たちのペースでやれればいいなと思っています。真面目に音楽のことを考えて、新しいやり方を考えて、毎回ビックリするような曲を作りたいです。
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PROFILE
2003年結成。初期衝動全開、常に事故と隣り合わせの刺激的なライブ活動を各地で展開中。ポストハードコア〜パンクを基調にあらゆる要素をゴチャ混ぜにしつつも、フレーズや歌詞にキャッチーさを残すサウンドが特徴。これまでヒップホップ、インディーロック、パンクなど多様なジャンルのコンピレーションCDに参加。「どこにでも属せて」かつ「どこにも属せない」その天然のクロスオーヴァーっぷりは驚異的だ。2005年には自主的にUSAツアーを敢行。自主企画をハイペースで開催している。
LIVE SCHEDULE
- 1月21日(金)@新代田FEVER
- 1月22日(土)@札幌 Klub Counter Action
- 1月30日(日)@ディスクユニオン下北沢店
- 2月20日(日)@新宿MARZ
- 2月26日(土)@秋葉原CLUB GOODMAN
- 3月12日(土)@秋葉原CLUB GOODMAN
- 3月13日(日)@水戸SONIC
- 3月20日(日)@東高円寺二万電圧 (レコ発!)