INTERVIEW : 高山和久(Ba)、飯沼亮太(Gt)(room12)
バンドマンが自己主張のかたまりかというと、必ずしもそんなことはないのかもしれない。東京都立川市を拠点に活動する5人組ロック・バンド、room12は、インタビュー内で「自分たちに自信がない」「ライヴに出るのが怖い」、そう心情を吐露してくれた。といっても、重々しい感じではなく、さらりと笑いながら、そうした気持ちを話してくれた。彼らのサウンドと歌詞世界を聴けば、自身の弱さを音楽に込めた、内省的なバンドなのかと先入観をもってしまうかもしれない。しかし、決してそういうわけではない。彼らが一貫している部分。それは、自分たちの周りにいるスタッフやお客さんがあってこそ成り立っていることを明確に意識しているということだ。まわりの人たちの意見は、自分たちの意見でもある。それくらい受け皿を大きくし、作り上げたサウンド。それはまだ発展途上かもしれない。しかしそれ以上に伸びしろもみえる。room12というバンドが、どんな想いで活動をしているのか。メンバーから高山和久と飯沼亮太を迎え、話を訊いた。
取材&文 : 西澤裕郎
room12 / 五線譜で踊る
【販売価格】
HQD(24bit/48kHzのwav) 単曲 250円 / アルバム購入 2,000円
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 1,500円
【TRACKLIST】
1. カタルシス / 2. 改造彼女 / 3. 空蝉 / 4. 時に暴走 / 5. 輪廻
6. 廻る洋梨 / 7. rugen / 8. fake / 9. 僕らは… / 10. epilogue
年齢も時代も関係ない、いい音楽はいいんです
ーー高山さんはもともと三味線をやっていて、高校生になるまではロックを聴いていなかったそうですね。ロックには興味がなかったんですか。
高山和久(以下、高山) : やってもいないのに、うるさい音楽だと思って卑下していたんです。美しいと思えなかったんですよね。父はギターをやっていて、レッドツェッペリンがどうとかビートルズがどうとか言っていたんですけど、下品だなと思っていて。いま思うと、僕がただ格好つけていただけなんですよね。中2病だったというか。
ーーでも、どこかのタイミングでロックに出会い、自分でもやるようになるわけですよね。
高山 : バンドを組もうと思ったのは、真空ホロウっていうバンドがきっかけなんです。どうしても対バンしたくて。
ーーそれはどういうきっかけなんですか。
高山 : 高校1年生のときに、三味線を弾けるならベースも弾けるだろうってことで、同級生から文化祭に出てほしいって誘われて、ベースを買いにいったんです。そのときにASIAN KUNG-FU GENERATIONだったりNUMBER GIRLに出会って、僕のなかでなにかがはじけて。そこからいろんなバンドを探すのが趣味になりました。そうしてバンドを掘っていくなかで、真空ホロウとも出会って。調べたら同じ地元の茨城のバンドなんだってことがわかって、じゃあ観にいってみようと思って新宿ロフトにいったんです。
ーーそこでなにかきっかけがあったんですね。
高山 : 僕はひとりのお客さんにすぎないのに、時間を取って話してくれて、握手もしてくれて、「お前も茨城なのか? じゃあ後輩だな」って言ってくれたんです。YouTubeのなかでしか見たことのなかった存在が目の前にいる。それだけじゃなく「いつか対バンしような」ってお世辞でも言ってくれて、素晴らしい人たちだなって思ったんですね。そこに感動して、絶対に対バンしようっていうことが目標になったんです。すごく影響されました。
ーーそのあと、実際に対バンを実現させているわけですし、とてもいい出会いだったんですね。僕ぐらいの世代って、音楽の歴史軸を元にいろいろ掘り下げていく感覚があるんですけど、おふたりにはそういう感覚はあったりしますか。
飯沼亮太(以下、飯沼) : ないですね。どの時代のどの軸の音楽を聞いてもいいものはいいと思います。ビートルズのこの曲が好きってことはあっても、ビートルズが好きじゃなくてもいいんですよ。ぼくはそういう聴き方なので、自分たちの曲も軸とか関係なく、そのときの感情、その場で出たものが多いです。
ーー高山さんはどうですか。
高山 : ないですね。逆に、最近全部かっこよく聴こえちゃって。後輩バンドの音源を聴いてもすげえなって思う。40歳、50歳のお父さん世代のコピバンを見てもすげえなって思うし。これっていう軸はなくて、みんなかっこいいですよね。
ーーぼくは、そういう感覚が羨ましいんですよね。田舎に住んでいたこともあって、雑誌に載っているバンド=かっこいいってすりこみがあって。
飯沼 : 昨日、YouTubeでジャズおばあちゃんっていうのを観たんですけど、83歳のおばあちゃんがジャズの本場に行ってドラムを弾くっていう夢を孫娘が叶えてくれる動画なんですね。それを観ただけでも、すごいなこのおばあちゃんってなるし。本当によい音楽はよいんだなって思います。年齢も時代も関係ない。いい音楽はいいんですよね。
バンドをやってる理由って、褒めてもらいたいからだと思うです
ーー今回1stアルバム『五線譜で踊る』をリリースしたわけですけど、room12の楽曲には明らかに特徴があって、ソリッドなサウンドが際立っている。ひりひりするというか。そういう部分は武器として意識しているんじゃないかなと思ったんですけど。
飯沼 : 最近は、ちゃんとドラムの音作りからはじめて、ベースの音を作っていくように心がけているんですけど、結局好きな音で演奏できないと気持ちよくないので、そこの擦り合わせですよね。揃えたほうがいいっていう気持ちと、自分たちの出したい音を出したいっていう気持ちの擦り合わせがあって、そのうえで、いまの音ができているのかなって思います。
ーーちなみに、room12は、音楽で食っていきたいと思ってバンドをやっていますか。
高山 : とりあえず目先のことをちゃんとやって、それに付いてきた結果がゴールかなと思っています。それこそバンドを始めたときは、真空ホロウさんとやりたいとか、武道館でやりたいとか、夢の印税生活だとか思ったんですけど、いまはこの5人でやれることで満足していて。
ーーそこで満足できているのはなぜなんでしょう。
高山 : 喧嘩もあったり、辞める辞めないって話もあったし、そんな感じで4年目に入ってるんですね。そうなったときに、5人の他に、自分たちのまわりにいて支えてくれるスタッフさんもいるんだってことに気がついて。だって、僕らがやってきたお遊びだったものに対して、いろんな大人の方が時間を押さえてくれているわけじゃないですか。それってすごく不思議なことで、そのなかで精一杯やったものがゴールだと思うようになったんです。だから、明確に次はこうだっていうものがなくて、やれるだけやろうって思っています。すごく子供じみた言い方なんですけど。
ーーバンドをやる動機として、現状に対する不満とか、自分でなにかやってやろうって人も多いので、そういうことを話すバンドは珍しいですね。
高山 : 自信がないんですよね。
飯沼 : 圧倒的にね。
高山 : 後輩バンドから「かっこいいですね」って言われても、「おまえらのほうがかっこいいよ」って思っちゃうし。お客さんから「また来ます」って言われると「いいの?」「大丈夫?」「なんで?」って思っちゃうし。
ーーかなり謙虚というか(笑)。実際、いままで出してきたCDは完売させてきたわけじゃないですか。それは自信になってないんですか。
飯沼 : まったくないですね。
高山 : 「何で?」って。ラッキーだったと思ってます。そもそも周りの人が手伝ってくれているから。
飯沼 : いい人に恵まれたなって思う。
ーー自分たちの音楽がいいから買ってくれた、ってところに気持ちはいかないんですか。
高山 : それって、ちょっと違うと思っていて。むちゃくちゃかっこいい音楽をやっているバンドでも、ぜんぜん露出していないバンドもいるじゃないですか。僕らが自分たちだけで何百枚売ったとしても、林さんがいなかったらこの取材の時間もないわけで。周りの人に支えられるって。キレイごとに聞こえるかもしれないんですけど、スタッフの方が宣伝してくれているんですよね。
ーー5人で完結しているように見えてそうじゃない、林さんとか事務所のひととかもいれてroom12はチームなんだと考えているわけですね。
高山 : それを「チームroom12」って言っているんです。僕はお客さんことも「チームroom12」って言っていて、毎回来てくれる子とかもいて。そのなかに「カメラマンになりたいです」って子がいて、ずっと撮り続けてくれて何万枚も撮ってくれていて、だんだん写真がよくなってきたりとかってこともあるんですよ。PVを撮りたいって言ってくれたりする人もいて。そういう人たちも含めて、room12って最強だと思ってます。
ーー実際、見に来てくれて気に入ってくれたひとが手伝ってくれて輪が大きくなってきてるんですね。
高山 : お客さん同士がライヴに来て、友だちになって飲みに行ったりもするので、僕らにとってお客さんっていう認識がなくて。距離感をちゃんとしなさいよって怒られることもありますけど、ぜんぜん遊びにいっちゃうし、飲みに行ったりもしちゃう。その場で「この曲どう思う?」って聞いたら「こうしたほうがいいよ」って言ってくれたり、こういうグッズを作ったらどうかな? って言ってくれたりする子もいるし。
ーーじゃあ、自分たちの内側に入ってきてくれた人が言ってくれたものに対しては自信を持てるわけだ?
高山 : 僕らは距離感がすごく取りづらいというか、下手なんです。どんどん踏み込んできて、「かっこよかったよ、でも今回こうだったよ、こうしたほうがいいんじゃない」って言ってもらうと「すごいこの人。もっと教えて!!」ってなっちゃうんですよね。そういう人たちに言われると「わかったそうする」って鵜呑みにしちゃうといいますか…。どうしましょう?
ーー知らないですよ(笑)。逆にバンドとしての主張とかはないんですか。
高山 : 主張と言いますか、5人だとこういう音楽だよってくらいですかね。
飯沼 : 一緒に楽しもうよって気持ちが強いというか。
高山 : 「楽しんでくれたら幸い。僕らは楽しいけど、君らは楽しいかな?」って。「楽しい? ああ、じゃあOK! OK!」みたいな。「楽しくない? じゃあ頑張るね」っていう感じです。
ーーそれで反響があったりいろんなひとが喜んでくれたりすると嬉しいわけなんですね。
高山 : そうですね。バンドをやってる理由って、褒めてもらいたいからだと思うですよね、親だったり友だちに。バンドマンってみんなそうだと思うんですよ。自分のやっていることを認めてもらいたいからやってる。「がんばってるじゃん」とか一言だけで「おかん… ありがとう」ってなるのがすごい嬉しい。
飯沼 : おかんが地味に周りに広めてくれるんですよ。「うちの息子が…」って。オヤジとかも「うちの坊主がやってるんだよ」って車でかけてくれたりするのが嬉しい。周りの人に認められたときに、やっていてよかったって感覚になります。リスナーの方もそうですし、周りの人たちが言ってくれると、やっぱりやっててよかったなって。それが原動力でやってますね。
刹那的瞬間を生きるエクスタシー
ーーただ、あくまでもroom12のフィルターを通した上での表現だと思うんですよ。なにを言われても絶対に曲げない部分って少なからずあるはずで。そうじゃなきゃ、操り人形みたいになっちゃうじゃないですか。僕が知りたいのはそこの部分で、それがroom12の個性というか肝だと思うんです。それって一体なんなんだと思いますか。
飯沼 : 感覚でしかないかな。
高山 : 友達から言われたら「おお、なるほど」って思うし、感覚なのかな。
飯沼 : ほんとに感覚的にいいものはいい、悪いものは悪いって誰しも決めつけると思うですよ。みんな個人個人ものさしがあると思うですけど、そのフィルターは、そのものさしでしかないですね。5人で話し合ったときに、そのものさしでいい悪いを決めて、いいものは通そう、悪いものはちょっと… ってしていると思うんですよね。何回も言ってるけど、いいものはいいじゃないですか。そういうものさしで通す通さない決めてると思ってます。
ーー今は近い人たち、狭い範囲の意見だと思うんですけど、活動をしてバンドのスケールが大きくなっていくと、room12のコアな部分がはっきり見えてくるじゃないかと思っています。もっと大きな場所でやったらおもしろいんじゃないかと思いました。
飯沼 : それは、恐怖でしかないよね…。
高山 : 楽屋でみんな吐きそうになってますから。
飯沼 : 緊張しいなんです。
ーーまた、弱気な(笑)。そもそも、お腹が痛くなってまでステージにあがるのはなんでなんですか。
高山 : それは、スリルですかね。アドレナリンが出るじゃないですか。日常生活はすごくフラットで、喜怒哀楽があまりないんですけど、ライヴの緊張感は非日常的なものがあって。何百人の前に立つとかってこと、普段はないじゃないですか。
ーーまあ、ないですよね。
飯沼 : 俺、できるなら出たくないです。ライヴが始まる前は大変で、「ああ無理、無理」とか、そういう感じなんです。だけど、求めている人たちもいて、聴きたいって人もいて、期待に応えないのはダメかなって、腹をくくって出て行く。高山さんが言ったアドレナリンとかエクスタシーもなきしにもあらずで、出ちゃえば関係ないので。知ってる顔がちらほらあると安心はします。ただ、あまり出たくはないです。
高山 : がんばろうな。
ーーあははは。そういう正直なところがいいですね。ワンマンも控えてますが、しばらくはお腹痛くなりっぱなしですね。
飯沼 : ワンマンが決まったときから緊張してます。地震でいうと余震が続いているというか。
高山 : 若干、みんなピリピリしてます。
飯沼 : 初の試みなんで。未知数なのでこわいです。
高山 : はやく終わってほしい。はやくほっとしたい。
ーー不思議ですね。そこまで赤裸裸にいうバンドはあまりいないから。
高山 : みんな言わないだけで、でかいイベントって、楽しみだけど早く終わってほっとしたい気持ちがあると思うんです。言うとカッコ悪いから言わないだけで。
飯沼 : それを言うのって、カッコ悪いんですかね?
高山 : バンドマンはみんなかっこつける生き物だよ。
ーーライヴをやっている時間は一瞬じゃないですか。ライヴが始まるまでは緊張しているけど、ライヴでアドレナリンがでるのは一瞬、それが終わるとまたお腹が痛い時間がはじまる。room12は、刹那的な瞬間を生きているんですね。
高山 : 刹那的な瞬間を生きている、room12。
飯沼 : それもらいましょう!!
ーーどこで使うんですか(笑)。
飯沼 : Twitterです。あとでつぶやこう。
高山 : 同時につぶやこう。僕たち、すぐ影響されるから。
ーーこういうことなんですね(笑)。
高山 : みんなスポンジ野郎なんで。あたかも自分発信のように言うんです(笑)。
飯沼 : パクってなんぼでしょう!! これが僕らのフィルターってやつです。
高山 : 刹那的瞬間を生きるエクスタシーですね。言葉選びが好きなんです。
飯沼 : でも、そんな刹那的な瞬間生きたくないよね。平和に生きたいです。
ーーでも平和な分、反転して大きなエクスタシーがあるから。
飯沼 : その快感は鳥肌ですね。
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LIVE SCHEDULE
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出演 : room12 / The cold tommy / カミヒカルス
Coast of the SUISEN pre.『home amay from home』
2013年9月3日(火)@下北沢SHELTER
出演 : room12 / undersign / Coast of the SUISEN
『Anniversary of 19th CLUB Que Shimokitazawa』
2013年9月24日(火)@下北沢CLUB Que
出演 : room12 / She Her Her Hers / asobius
PROFILE
room12
凛とした風が吹き、でも何処かの誰かが泣き叫んでる音を奏でる
聴く人々の頭の中で反響し続ける泣き声は全ての思考を停止させる…
平野 太樹 Hirano Daiki 4月14日 typeBblood Vo.
飯沼 亮太 Iinuma Ryota 7月3日 typeOblood Gt.
武内 亮 Takeuchi Ryo 7月17日 typeABblood Gt.
高山 和久 Takayama Kazuhisa 6月9日 typeAblood Ba.
官野 舎 Kanno Yadoru 12月29日 typeAblood Dr.