HANDSOMEBOY TECHNIQUEこと、森野義貴のDJがとても好きで、京都METROでの名物イベントSECOND ROYAL(森野氏はレギュラーDJのひとり)に遊びに行くだけでは飽き足らず、自分のイベントに誘ったり、ボロフェスタに出てもらったりしてきた。

新譜についてはおととしくらいから噂されていて、老舗レコード・ショップ、JET SETのウェブ・サイトではリリースまでの間、彼が毎日一枚ずつレコードを紹介していくという企画が開催されていたりした。とにかく、スピンするレコードもリコメンドする盤も多彩きわまりない。ついていけない知識量と、絶対的に信頼できるセンス。

そんな彼の待望のアルバム。実に4年ぶりになる。サンプルを聴いて「ああ」と思った。やっぱりこの人は凄い。一曲一曲の完成度が非常に高く、筋が通りつつも触れ幅の大きいライン・ナップ。しかもゲスト・ボーカルには外国人の名前が多数クレジットされている。これはHANDSOMEBOY TECHNIQUEによるセレクトCDなのではないか? と、錯覚しそうなほどだった。

聞きたいこと、知りたいことが湧き上がる。この人から、ミュージシャンとして教わらなくてはならないぞ、と僕の中で誰かが言った。

インタビュー & 文 : ゆーきゃん

INTERVIEW

ゆーきゃん(以下Y) :音源制作以外においては、ライブ・アクトではなくDJとして活動されていますよね。でも音源という点においては、なぜ自分で「音楽を作る」ことにされたのか? MIX CDではなく、自作曲という方を選ばれたのでしょうか?

森野義貴(以下M):僕は既に高校生くらいの時に自分で曲を作ってたんです。卒業後すぐバンドを始めて、当時住んでた岡山のペパーランドっていう老舗のライヴ・ハウスで毎月ライヴをしてたんですけど、平行して週1回はクラブでDJをやってて。だから、バンドとDJ、言い換えるとロックとダンス・ミュージック、そして自作曲とMIX CD、そういった区別が元々全然無いんです。

Y : ボロフェスタでも、僕個人のイベントでも、ハンサムボーイにはいつもお世話になっています。個人的な感覚ではありますが、森野さんの音楽はダンス/クラブ・ミュージック・ラヴァーズだけではなく、いわゆる「普通の音楽好き」にも届くことができると思っています。実際にジャパン・フェスなどにも出演を果たされ、すこしずつそうなっているのではないでしょうか。森野さんご自身はクラブ・ミュージックとポップ・ミュージックの壁(それは言い換えるとオール・ナイト・イベントと昼型の遊びの壁なのかもしれません)について、どのようにお考えになりますか。差し支えなければ聞かせてください。

M : 大雑把にその2極で分けなくても、様々なジャンルの間には当然の様に壁が存在しています。でも、「普通じゃないくらいに音楽好き」って人はやっぱり色んな物に興味を持ってるし、壁が無いまでは行かなくても、薄いし低いですね。中学?高校くらいの時、「嫌いな音楽が少なくて好きな音楽が多い方が、絶対楽しいはずだ! 自分なりのこだわりは持ってるけど、こだわりなく何でも聴いてやろう」と思って、それまで聴いてなかった、例えばクラシックとか日本の民謡、全く理解出来ないフリー・ジャズ、さらに大嫌いなメタルとかも無理して聴いて、無理矢理にでも好きになってやろうと思ってました。いま僕はそういう聴き方をしてきて良かったと思ってますが、でも例えば高い壁の中に住んでジャズのみを長年追求して聴いている人っていうのは、そういった人にしか感じ取れない、僕には理解出来ない様なところで感動できたりするだろうし、それはそれで羨ましい。だからまあ、やっぱり人それぞれ好みの問題ですね。ジャンルの壁なんて一生なくならないと思います。好きな異性のタイプが人それぞれ違うのと全く同じですよね。

Y : 2005年リリースの1st Album『ADLIE LAND』から今作まで、構想に3年・制作に1年という長い期間を要されたと聞きます。たとえば僕であればそのときの自分に正直に曲や詩を書き溜めるだけで済むのですが、森野さんの生きておられる世界は常に「新しさ」が要求されると思うんです(これは僕が表現しているフィールドにも絶対になくてはならないにせよ、その比重が圧倒的に違うような気がします)。長い準備期間のうちに、表現がブレることはなかったのですか?

M : 「新しさ」というのは「革新性」と「今っぽさ / 最新感」という意味があると思うのですが、僕にとっては前者の方が重要で、後者はあまり気にしていません。今作の制作中、新譜は一切買わず、聴かない様にしていました。それはうまく説明できないのですが、同時進行形の音楽からの影響は今回邪魔だと思ったんです。なんとなく。ゆーきゃんさんの言った、「僕が生きている世界」というのは「クラブ / DJ」の世界の事だと思うのですが、僕は確かに「クラブの住人」のひとりではありますが、それ以前に「ただの音楽好き」であり、さらに「その自分の趣味に従順な表現者」でありたいと思っています。最新のダンス・ミュージックも60年代の音楽も、あらゆる物が同列に好きなので、そういうのが純粋に作品に反映されればいいなと思っていて、だから僕もゆーきゃんさんと同じ様に、その時の自分に正直に曲を作っているだけです。刹那的な「時代の音」って、それはそれで凄く魅力的で美しいと思うんですけど、僕は「ずっと残る音楽」が作りたいと思ってるんです。

Y : 作品内に、はじめてヴォーカル・チューンが登場しました。作曲者自身ではない、他の人が歌う「うた」という要素を持ち込むことは、自分の箱庭の手入れをひとに委ねるような冒険が要るように思えるのですが、そこにはどのような狙いがあったのでしょうか。抵抗はありませんでしたか?

M : 昔やってたバンドでは自分で歌ってたんですけど、別に上手くもないし自分の声も好きじゃなくて、自己満足というか、「自分で曲作って歌う」という行為に陶酔していたというか。そういうのに見切りを付けて今の1人でやるスタイルになったっていう所もあるんですけど。とりあえず今の目的は「良い作品を作る事」であって、昔の様に「自己表現」をしたい訳ではないんです。だから、これまでは全てを自分ひとりで作って来た訳ですが、そこでサンプリングではない「うた」が欲しいと思ったら、残念ながら僕には歌の才能は無いので、他者に頼むしかないと。今回は自分でメロディを作って、声や歌い方がその曲に合うと思ったヴォーカリストに歌って貰った訳ですが、元々彼らの作品と歌とセンスが好きで頼んでるので信頼していたし、実際うまくいったと思います。確かにちょっと不安もあったんですけど、まあもし曲に合わない感じだったら、その歌に合わせてトラックを作って別の曲にすればいいや、と思って。実際1曲そうやって出来た曲があるんですけど、そういう感覚も楽しかったし。ヴォーカリストごとサンプリングしてる感覚っていうか...って、最後ちょっとカッコ付けようとして強引な事言いましたけど(笑)

Y : ゲスト・ヴォーカリストはヨーロッパのミュージシャンたちを起用しておられますね。データのやり取りだけでも相当大変だったと思います。「うた」のプロダクション/ディレクションは、どのように行われたのでしょう? メロディや歌詞はどんな風に生まれていきましたか?

M : いや、全然大変じゃなかったですよ。時間が掛かったのはトラック制作の方で、ヴォーカルの方はほとんど苦労無く。先にトラックを完成させて、そこに口笛で歌のメロディを入れた音源を相手にmp3で送って、「口笛のメロディを歌って」って伝えて。勿論ラップは向こうに任せましたけど(って今思ったけど、口笛でラップしてる曲とかあったらいいですね。口笛で”SOUTH BRONX”のカヴァーとか)。話がズレましたが、歌詞は、各ヴォーカリストに考えて貰いました。歌い手が書いた方が絶対良い物になると思ったので。それはさっきも言った「良い作品にする」為に。とりあえず相手にこっちのイメージとかテーマっぽい事を伝えて、あとは信頼したコイツに任せよう! と。ただ、向こうからヴォーカルを入れ終わった音源が送られてきたのを聴いてみたら、なんか皆、こっちが口笛入れてるのに歌っていないパートがあって。 「なんなんだろう、この部分気に入らないのかな....ここは歌要らないだろっていうアピールなのかなあ...でも要るけどなあ」って結構悩んだのですが、向こうに「ここ歌ってないけど、ここはヴォーカル無い方が良いって事?」っ て聞いたら「あ! そこ歌うの忘れてた! 」って(笑)。全員ですこれ。ほんとに。 「ああ、やっぱり外人だなあ」と思いました。

Y : JET SETのサイト内で連載を持たれていますが、一日一枚レコードを紹介していくという企画は、どういう経緯ではじまったのでしょう? 「アルバムが出るまで」ということで、ここで紹介されてゆくレコードが新作の謎を解く鍵なのかな・・・と思っていましたが・・・。あのセレクションはどんな基準でなされますか? 実際にDJで使用されることの多いレコードなのでしょうか。

M : あの連載は、JET SETの方から依頼があって始まりました。当初アルバムは5月リリース予定で連載が1月だったので「5ヶ月かあ、長げぇー」 と思ってたのですが、結局完成したのは年末で、1年以上やるハメになりました。暇な時間も無いし結構辛かったのですが、自分のルーツというか過去を振り返る事も出来て「ああ、そういえば忘れてたけどこれメチャクチャ好きだったなあ」とか、そういうのがいっぱいあったので、今作にも良い影響があったかもしれません。選んだ基準としては、自分のルーツ的な物+その時の気分で聴いてたもの。DJでプレイしてる物もありますが、そこはあまり重視してませんでした。所謂レア盤みたいなのは敢て外して、結構定番とか名盤とされてる物が多いですね、今振り返ると。「こういうのを聴いて来た人間がアルバム作ったらこうなった」って感じで、今作を楽しんで貰える1つの要素になれば良いかなと。

僕は、誤解していたようだ。
HANDSOMEBOY TECHNIQUEは、「クラブ・ミュージックのクリエイター」ではない。
(それは僕が「うたうたいであって、ミュージシャンではない」と言うのと同じように間違っている)
彼は、「ジャンルの壁なんてなくならない」と言うが、壁が守る音楽の素晴らしさも知っているので、不平を鳴らしはしない。かわりに、その壁を軽々と越えて、全ての音楽に共通する「美味しい部分」を刈り取ってゆく。

ただ音楽が好きで、自分の中から沸き立つ情熱とアイディアでもって、音楽をつくろうとしている表現者なのだ。そのカテゴリーのなかには、僕もいる。僕と彼の世界の線引きなんて無用だった。
よい音楽を聴く。よい音楽を奏でる。僕らがしなくてはならないことは、それだけだ。
森野さん、ごめんなさい。不躾な質問をたくさんしました。
そして大事なことを思い出させてくれて、ありがとう。
でも、次回作はまた4年後になるのでしょうか。そんなに待たされてはイヤです。

LIVE SCHEDULE

  • 2月7日(土)@新宿OTO
  • 2月20日(金)@京都METRO
  • 2月27日(金)@鰻谷sunsui
  • 2月28日(土)@MONDO CAFE
  • 3月7日(土)@鹿児島CAVE
  • 3月13日(金)@京都METRO
  • 3月14日(土)@松江NAKED SPACE
  • 3月19日(木)@渋谷SECO
  • 3月20日(金)@名古屋VIO
  • 3月21日(土)@梅田KARMA
  • 3月27日(金)@岡山MARS
  • 3月28日(土)@福岡KEITH FLACK
  • 4月3日(金)@神戸TROOP CAFE
  • 4月4日(土)@新宿OTO

LINK

所属レーベル SECOND ROYAL RECORDS website http://www.secondroyal.com/

Handsomeboy Technique ブログ http://www.secondroyal.com/sr_web_new/

Handsomeboy Technique MySpace http://www.myspace.com/handsomeboytechniquejpn

JET SET ウェブサイト内 ブログ http://www.jetsetrecords.net/blog/handsome/

Handsomeboy Technique

'04年、デビュー12"シングル『SEASON OF YOUNG MOUSS E.P.』をリリース。即完売。'05年、ファースト・アルバム『ADELIE LAND』をリリース。国内は勿論、海外でもロングセラーを記録し、各国のメディアが絶賛。イギリスではBBCラジオがヘヴィー・プレイし、『NME』誌のクラブ特集チャートにもランク・イン。スウェーデンでは国営放送が特番を組み、最先端ファッション&カルチャー誌『BON MAGAZINE』が大々的に特集を掲載する等、ヨーロッパを中心に一気に人気が加熱。また、アーティスト / クリエイター・サイドからの評価も高く、アルバム発売後はリミックス依頼が集中。PETER, BJORN & JOHN、PIZZICATO FIVE、DIANA ROSSから、その他、国内外のアーティストを多数手掛ける。DJとしては、京都、新宿、神戸のレギュラー・イベントを中心に全国各地のクラブでプレイ。『COUNTDOWN JAPAN』、『ROCK IN JAPANFESTIVAL』といった国内大型フェスにも出演し、'06年のスウェーデン・ツアー時には、本国最大の屋内フェス『UMEA OPEN』に出演。'08年、12"シングル『MAGNIFICENT MASS EP』をリリース。イギリスの老舗レコード・ショップ『ROUGH TRADE』でも展開され、日本では即完売。'09年、セカンド・アルバム『TERRESTRIAL TONE CLUSTER』2月11日リリース予定。

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インタヴュー

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