安月名莉子の表現に灯る、確かな光──ニュー・シングルに込められたアニメ『彼方のアストラ』とのリンク
2018年にメジャー・デビューし、『やがて君になる』『ブギーポップは笑わない』『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』といった人気アニメ作品の主題歌、挿入歌を担当し、注目を集めている安月名莉子。2019年は自身初となるワンマン・ライヴを成功させ、デビュー後の勢いが止まらない彼女が、ニュー・シングル「Glow at the Velocity of Light」をリリース。
今作も注目のTVアニメ『彼方のアストラ』のEDテーマに抜擢されているが、これまでの作品とはまた異なった彼女の魅力が垣間見えるタイトルとなっている。リリースの度に曲調も雰囲気も異なる曲を歌い上げ、表現の幅を広げ続ける安月名莉子に今作へ込めた想いを語ってもらいました。
『彼方のアストラ』EDテーマ「Glow at the Velocity of Light」ハイレゾ配信開始!
INTERVIEW : 安月名莉子
昨年、人気アニメ『やがて君になる』のオープニング・テーマ「君にふれて」でメジャーデビューしたばかりの安月名莉子。シンガー・ソングライターとして活動している彼女は今、アニメの主題歌を通して作品の世界観を伝えることに喜びを感じているという。そんな彼女に与えられた新曲「Glow at the Velocity of Light」はテレビアニメ『彼方のアストラ』のエンディング・テーマ。欅坂46の「黒い羊」でも知られるナスカによる作曲とあって、一筋縄ではいかない奥深いサウンドとなっている。楽曲制作が進むにつれて感じた発見や、自分自身と重ね合わせられるポイントなど、曲やMVに詰め込まれた魅力について語ってもらった。
インタヴュー : 荻原梓
写真 : 西村満
最初に聴いたときから歌うのが楽しみでした
──前回のシングルから今作までというのは、安月名さんにとってどんな期間だったのでしょうか?
安月名莉子(以下、安月名) : とにかく自分のことを知っていただきたいと思ってた期間でした。そのために、声優のお仕事や、初めてワンマン・ライヴなど、いろんなことにチャレンジさせていただきました。特にワンマン・ライヴは、初めてライヴに来てくださった方にすべてを知っていただこうと思って、ストリートで弾き語りしていた時代の頃の曲から、デビュー後の活動で頂いた楽曲まですべて披露しました。そしたら、次何しようってくらいライヴ直後は出し切った感じになって。でも今はもう、こんなことしたい! とか色々思いついて、頭の中は次の段階に進んでいる感じです。
──なるほど、一歩前へ進めた感じなんですね。今回、『彼方のアストラ』の主題歌を歌うことになった時はどう感じましたか?
安月名 : 『彼方のアストラ』が「マンガ大賞2019」を受賞した作品だということはもともと知っていました。ただ、その作品の主題歌を自分が歌うなんて思ってなかったので、主題歌のお話しをいただいたときは「えっ、あの話題作ですよね」って本当に信じられなくて。
──最初に曲を渡されたときの印象はどうでした?
安月名 : 今まで私が歌ってきた曲は、ミドル・テンポからロー・テンポくらいの曲が多く、弾き語りでもそういうものが多かったのですが、今回の「Glow at the Velocity of Light」のようなアップ・テンポで、爽やかさがありつつ、歌詞に熱い言葉が詰め込まれてる楽曲は初めてでした。
──歌詞もあった状態で渡されたんですね。
安月名 : そうです。実は最初歌詞が2パターンあったんです。両方とも歌ってみたデモを聞いていただいて、最終的に今の歌詞に決まりました。でも、その段階では作曲者さんや作詞家さんは知らされていませんでした。作詞がタナカ零さんで、作曲がナスカさんだというのは、レコーディング直前のミーティングで知りました。「あの欅坂46の『黒い羊』のナスカさんですよね、やばくないですか!?」って。
──ホントに曲が良いですよね。ナスカさんだけあってメロディも綺麗です。
安月名 : ですよね。アレンジもすごく綺麗で、最初に聴いたときから歌うのが楽しみでした。
──“銀河感”と言いますか、“SF感”ありますよね。
安月名 : わかります。曲作りで、色んな楽器の音を一つにまとめる“トラックダウン”という作業があるのですが、トラックひとつひとつの細かい音を分解して聴くことができるんです。今回は特に音の量が多くて、こんな音がサビ直前に鳴ってたんだ! と気づくことができて、それでまた好きになったりして。宇宙って空気がないから本当は音がしないと思うんですけど、“隕石が飛んでそうな音”とか、そういう色んな音が詰まっているのを知ることができて。アニメが始まって、エンディングで流れて映像が付いたことでまたさらに好きに…(笑)。
ステージの真ん中にいたいと思っているので
──どんどん好きになれたと。歌詞の方がどうですか?
安月名 : 作詞されているタナカ零さんも、言葉選びのセンスが素晴らしくて。宇宙にまつわるワードが詰め込まれてるのですが、〈永劫回帰〉とか〈絶対零度〉とか私の知らない言葉もあったりして。辞書で引いて調べるのが楽しかったです。
──そのタナカ零さんが作詞作曲されたカップリング曲の「たたくおと」も言葉選びが光る曲ですよね。
安月名 : そうなんです。「たたくおと」は曲自体がひとつの物語になっていて、音楽の世界に憧れを抱く女の子の歌になってます。がむしゃらに頑張っていた頃の自分が書いたメロディや小さな思い出が、今の自分の心を叩いてきて「また頑張ろう」となれるっていう。昔の記憶が蘇って今の自分の心を奮い立たせる私とは別の子のストーリーなんですけど、やっぱり自分も同じように音楽という夢を追い続けているので。
──自分自身と重ね合わせられるんですね。
安月名 : はい。タナカさんには「莉子ちゃんのために作った曲だよ」と言われました。〈物語のセンターを飾った主人公〉というフレーズが出てくるんですけど、自分も夢を追っている以上は主人公でいたいですし、ステージの真ん中にいたいと思っているので。
──そういった自分とリンクする歌詞のカップリング曲に対して、表題曲の「Glow at the Velocity of Light」の方はどういった楽曲なのでしょうか?
安月名 : レコーディングの当日になって、歌詞のこの部分と『彼方のアストラ』の原作のこの部分とが繋がっているという話を教えていただきました。ネタバレになるので今は言えませんが、あのキャラクターのセリフをそのまま言っているんだとか、あのことを言っていたんだとか、アニメとの繋がりが見えてきます。
──結構“仕掛け”の施された歌詞なんですね。
安月名 : そうなんです。なので、自分が最初に考えていたものと印象が変わったりして。歌い方もそれで丸々変わりました。あと、ハイテンポの楽曲が自分の中では挑戦でした。速いリズムでもしっかり言葉を当てはめて、ちゃんと歌詞を伝えるっていうのを意識しました。
──アニメとの接点に気づけたことで、歌い方や意識にも変化があったと。
安月名 : 他にも、自分では絶対に使わない喋り言葉みたいな歌詞だったり、2番のサビの〈手を離せよ〉とか、心の叫びみたいなのは、すごく感情を込めやすくて。
──一番共感できるポイントはどこでしょう?
安月名 : 〈ほんとは、ほんとは、変わりたい その自分がすぐそばにいるんだ〉のところですね。そこがアストラの鍵になるポイントでもありますし。唯一の自分の心の叫びに近い部分でもあります。常に自分ってそういう思いがあって、「こうなりたいな」とか。
──自分の変えたいところはどこですか?
安月名 : え〜なんだろう……。しっかりしたい(笑)。私、ひとつのことに集中すると周りが見えなくなって、つい舞台の上でコケたり、ライヴでいつも何かやらかしてしまいます。マイクに歯をぶつけたり、ライヴ中にペットボトルを倒したり……。あと、私って“なんでなんで星人”なんですよ。
──なんでなんで星人?
安月名 : 人が何を考えているのか気になっちゃって。なんで? どうして? って気にしすぎるというか。思っていることをうまく伝えられなくて空回りしたり……何事にも理由や理屈を知りたくなってしまうのです。
一番大事なのは『彼方のアストラ』の世界観に寄り添うこと
──ところで、今回のMV撮影は監督さんからどんなイメージで撮ろうみたいな話はありましたか?
安月名 : 『彼方のアストラ』はギャグ・シーンや明るいシーンもありますが、判断を間違えたら死んでしまうみたいな結構シリアスなシーンもあるんです。なので、そこまで明るすぎも暗すぎもせず、前向きにひたすら真摯なものを撮ろうという話になって。それでダンス・シーンでは、自分の中にあるもので、歌詞に照らし合わせられるものを表現できればと思って。
──パントマイムのようなダンスが含まれてますよね。
安月名 : 振り付け師さんがひとつひとつ細かく教えてくださいました。踊るというよりは“感情を引っ張り出す”感じで。
──いや、すごかったです。ロープを引っ張るような振りとかおもしろいですよね。教会のシーンは見入っちゃいましたよ。
安月名 : スカートを持って引っ張る振りとかは、自分の物だけどもう一人の自分が……っていう“自分の中の葛藤”を表現しています。そうやって、ひとつひとつの振りが歌詞に当てはまっていて、たとえば〈銀河〉だったら光に手をかざしてみたり、〈みえない〉のときには目を隠して見えない動きをしてみたり。
──なるほど、かなり歌詞に沿った振り付けになってるんですね。前回の「Whiteout」のときは言葉の意味というよりは曲の全体的なイメージで踊っていたと思うのですが、今回のMVではひとつひとつの踊りにちゃんと意味があって、伝えたいこともはっきりしてるんですね。
安月名 : そうです。同じコンテンポラリーダンスですが、感情表現の仕方は全く違ったものだったなって思いますね。それと、レコーディングを終えた後だったので感情も込めやすかったです。体の動きに感情がしっかりリンクしたというか。
──完成したものを見てみてどう思いましたか?
安月名 : 自分じゃないみたいな(笑)。教会での光が通る色味とか本当に格好良いですし、世界観がすごくて。私ってダンスももちろん好きですが、ギターを弾くことも大好きなんです。
──ギターもしっかり映りますよね。
安月名 : そうなんです! 監督さんがMVの中に自分の好きなものを詰め込んでくださっていて。私のために考えてくださったんだなって思えて嬉しかったです。選ばれたカットも良い表情のものばかりで、私じゃない誰かが憑依してるみたいな(笑)。それと、ロケ地が星の王子さまミュージアムだったのですが、私『星の王子さま』が大好きなんです。撮影場所を選んだ方がそれを知っていたのかは分からないのですけが、運命なのかなって思っちゃいました。
──ご自身にとっても特別な作品になったんですね。
安月名 : でも、今まで私のことばかり喋ってしまいましたけど、一番大事なのは『彼方のアストラ』の世界観に寄り添うことだと思ってます。リスナーさんもアニメからの視点で聴いてくださる方が多いはずなので、アニメの話数が進むに連れて、曲とアニメが繋がっていくのを楽しんでいただければと思います。きっと「このこと言ってたんだ!」と気づけることがたくさんあると思います!
安月名莉子「Glow at the Velocity of Light」の購入はこちらから
編集 : 伊達恭平
過去の安月名莉子インタヴュー記事もあわせてチェック!
安月名莉子の作品はOTOTOYにてハイレゾ配信中
PROFILE
安月名莉子
幼少よりミュージカルやTVへの出演を通し、役者としての表現を学ぶ。
大学進学と同時に自身の思いを形に残すためシンガーソングライターとしての活動を開始。 2018年10月放送TVアニメ『やがて君になる』のOPテーマ「君にふれて」でメジャーデビュー。同時に『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』の挿入歌「Memories」の歌唱に抜擢される。
さらに2019年2月、TVアニメ『ブギーポップは笑わない』のEDテーマ「Whiteout」をリリース。本作のMVではコンテンポラリーダンスを自ら踊り注目を集める。
その才能はアニソンシンガーにとどまらず、シンガーソングライターとしてもギターテクニック、繊細な歌唱力が認められオーストラリアのギターメーカー Cole Clarkとエンドース契約を果たし、2019年3月Cole Clark Guitar presents東名阪のツアーを敢行する。また、2019年初夏にはCole Clark 安月名莉子シグネチャーモデルの発売を予定。
2019年6月13日発売予定の新作ゲーム『夢現 Re:Master』では「ニエ」役として初のCVを担当する。
卓越したギター演奏と寄り添う声で、こころを歌い上げる。
>>>公式HPはこちら
https://www.azuna-riko.com
>>>公式ツイッターはこちら
https://twitter.com/azuna_riko