気になる“あの”問題がついに決着!?──YOUR SONG IS GOOD、結成20周年記念作『Sessions』をリリース

祝! 結成20周年! 日本を代表するインディペンデント・レーベルになった〈カクバリズム〉の長兄として、グッド・バイブスを放ち続けるインストゥルメンタル・バンド、YOUR SONG IS GOODが記念盤『Sessions』をリリース! 今作は「Super Soul Meetin'」や「The Love Song」といった彼らの代表曲と『Extended』以降の最新曲をスタジオ・ライヴ形式で一発録りにて収録、バンドの今のモードを感じれるご機嫌な1枚になっております。 OTOTOYでは本作のリリースを記念し、サイトウ“JxJx”ジュン、そしてパーカッションとしてバンドをサポートしている松井泉を招きインタヴューを敢行、みんなが気になってた“あの”問題について迫りましたよ!
祝!! 結成20周年!! 一発録りスタジオ・ライヴ・セッション盤!!
INTERVIEW : サイトウ“JxJx”ジュン × 松井泉

パンク・ハードコアから出発し、レゲエやスカ、カリプソなど南国音楽を取り込みバンドの立ち位置を作り上げた1st『YOUR SONG IS GOOD』と『HOT! HOT! HOT! HOT! HOT! HOT!』、パンクへと回帰した『THE ACTION』、メンバーそれぞれの音楽嗜好を幅広く取り入れた『B.A.N.D.』…と作品ごとに音楽性を大きく変化させてきたのがYSIGの初期10年。そこからバンドはダンス・ミュージックを徐々に吸収し始め、現在の方向性を決定づける1枚『OUT』、タイトル通りそれをさらに拡張させた『Extended』と続いてきた。YSIGといえば雑食かつ多彩なサウンド+歌ものという初期のイメージを持っている方も多いかと思うが、言うなれば『OUT』以降、バンドのムードしては最長と言っていい期間で、どうすれば気持ちいいダンス・ミュージックを鳴らすことが出来るかをディープに探り続けている。
そんな中で迎えた結成20周年を記念する作品となる今作『Sessions』は一発録りスタジオ・ライヴ音源ということで、今のバレアリック、ハウス、ディスコのグルーヴを取り込んだ最新曲+彼らがこれまで代表曲生み出して来た代表曲たちをリアレンジして収録、バンドのこれまでと今が交差する作品に仕上がっている。今回OTOTOYではあえて20周年を振り返らず、バンドのリーダーであるサイトウ“JxJx”ジュンと『OUT』以降のバンドにおける重要人物、パーカッショニストの松井泉を迎えて今のバンドのムードについてたっぷりと話を聞いた。
インタビュー&文 : 高木理太・河村祐介
編集補助 : 松崎陸
インタヴュー写真 : 沼田学
ライヴ写真 : 三浦知也
『B.A.N.D. 』〜『OUT』、YSIGに松井泉参上
──今回、対談相手に松井さんをお呼びしたのは『OUT』以降、レコーディング、ライヴともにほぼ参加されていて、アーティスト写真にも写っている。どう考えてもメンバー…なのにいまだプロフィールにはサポートの記述で。また現在のダンサブルな音楽性を考えても、いわばYSIG20周年の直近の5年の音楽的なキーパーソンでもあるんじゃないかと。ということで、メインはもちろん『Sessions』の音楽なんですが、その裏に潜む「YSIGの松井泉問題」というのが裏テーマでして…。なんとなくVIDEOTAPEMUSICやYogee New Wavesのライヴとかで見ている人もいると思うので、どういう人なんだろうってところも、途中途中で聞けたらなというところです。もしかしてバンドとして、すごいセンシティヴなところをついてしまっているのかもしれませんが。
松井泉(以下、松井) : 恐縮です(笑)。
──YSIG は、『B.A.N.D.』までと、『OUT』以降で音楽性がガラッと変わっていまに至るという感覚だと思っているんですが。そこがちょうど松井さんが関わり始めるタイミングでしたよね。
サイトウ“JxJx”ジュン(以下、JxJx) : そうですね。メンバーそれぞれ好きな音楽が細かいところで違っていて、その感じをノーフィルターでやったのが『B.A.N.D.』というアルバムだったんですけど、この先このままいくと崩壊するだけかもなと思ったんですよね(笑)。でも、自分的にはバンドをもうちょっと続けてみたいというのがあって。そんな矢先に自分がふとしたきっかけで現行のダンス・ミュージックに目覚めてしまいまして。そういった音をバンドに落としこんでみたいな、というのとそこにバンド存続の光明を得たと言いますか。しかも、よく考えたらもともとYSIGがやろうとしていることは細かいリズムのフォーマットなど違えども広義な意味でダンス・ミュージックだった、というのに自分で納得がいって。
── そうしてできたのが『OUT』だと思うんですが、さっき話でましたけど、松井さんがここから参加になるんですよね?
JxJx : はい。
松井 : その前にライヴに呼んでいただいて。
JxJx : 『OUT 』を作る前に、ダンス・ミュージックをやるならパーカッションが必要だなというのをぼんやり思ってたんです。そんなとき、いつも入っている練習スタジオで、ものすごい量の楽器がロビーを占領していて。休憩のときにたまたま見たら「松井私物」って書いてあったパーカッションの山だったんですよね(笑)。それで「あ、もしかして、これイーちゃんかな」と。で、その後の偶然にスタジオでバッタリ会ったときだったと思うんですが、閃きまして、「あ、パーカッション! いた(笑)!」と。前からそれなりに仲が良くて、リハのときに大変なパーカッションの出し入れも、ここならしなくていいし。すべてが運命的にすでにここ に集まっていたという(笑)
一同 : (笑)
JxJx : で、広い意味でイーちゃんも、ダンス・ミュージック大好きで、あとは細かいところでレゲエとかベース・ミュージックも好きだったんで、お願いしてみました。
松井 : そうですね。JxJxさんからまずは「何月何日空いてる?」みたいなメールが来て。
──目的とか内容言わないで日にちだけのオファー・メール、一番怖いやつ(笑)。
松井 : 返事に一番困るやつ(笑) 。当時僕もまだDJもやっていたので、そういうイベントの誘いかなと思ったんですよ。「空いてますよ」って返したら、返ってきたのがユアソンのライヴの手伝い! すごいびっくりして。そのメールは印象に残ってますね。それまでYSIGって、6人の一枚岩でやってきたバンドの印象が勝手にあって。そこにサポートを入れるということは、結構大変なことなんじゃないかと。もちろんめちゃくちゃうれしかったんですけど、慎重になってくださいねということをすぐにメールで返しました。ちゃんと他のメンバーの皆さんにも確認しているということだっで、よろこんで参加させてもらって。

JxJx : 一番はじめの練習は誰よりも早く来てて、スタジオをガチャって開けたら、すでにパーカッションがフル・セットが組まれていて、要塞みたいになってた (笑) 。
松井 : まず爆笑されるっていう(笑)。一番やる気がすごかった(笑)。
JxJx : もともと無茶ブリっていうのはわかっていたので、はじめの練習でハマらなかったらハマらなかったで、そこは別にお互いしょうがないという大人な対応をしてたと思うんですけど、扉を開けたら、本人はものすごいやる気十分な感じで(笑)。最高でした。
松井 : やる気は見せないと。初めての現場で、しかも楽器の指定がなかったんで何を持っていけばいいかわからなくて。なにを言われてもすぐに出せるような準備をしておこうと思ってたら、フル・セットになったんですよ。そういうこともあっていじられまくりましたね (笑) 。
JxJx : あれは、楽しかったね(笑)。でも、一緒に音を出してみたら「本当に足りないのはこれだった!」という感覚になりまして。他のメンバーもそう思ってくれたみたいで。むしろ「なんで最初からパーカッションいなかったんだ!」という反省までしました(笑)。それからライヴがあるからっていうのもありますが、自然と練習にも来てもらうようになって、今に至るという感じです。
──なるほど、そこから徐々に松井さんが入ってくると。
JxJx : そうだ、『OUT』の時の話になっちゃいますけど、気になりますよね、クレジット上はサポート・メンバーだけど、アー写とかに写り込んでいたこと(笑)。一応流れとしては、最初に声をかけさせてもらった時は、さっき言ったように、いわゆるサポートっていう話だったんです。で、ライヴは決まってたんで、そこに向けて練習をして行きつつ、『OUT』の制作が控えてまして、その時に先行してライヴでやっていた新曲がすでにあったんですよね。そのあたりの曲をまず合わせてもらって、バンド的にすごく手応えがあり、レコーディングにも参加してもらうことになって。で、レコーディングに参加しているので、必然的にもちろんライヴにも、そしてその練習にも来てもらうパターンになっちゃった。多分そうだよね。
松井 : そうでした。
JxJx : それで、レコーディングに関してなんですが、すでにある曲に合わせてもらってるうちはまだ良かったんですよ。それが、そのうちにまだしっかり曲として固まっていない新曲も流れで体験してもらうことになっちゃって…。 いわゆるできるまでの悶々といろいろ試すような、泥臭い、あのバンド内で異常に煮詰まる時 間、そこにもずっと居てもらう感じに(笑)。いわゆるサポート・メンバーの人だったら、そこは普通いないですけど。
──いきなり(笑)。
JxJx : そうなんです。それで『OUT』を頑張って作り終えて、なかなかな経験を一緒にしたので、これはもうほとんどメンバーみたいだなって思ったんですよね。で、さっきの『B.A.N.D.』の頃の話に戻っちゃいますが、個人的にあの頃バンドに対して「さて、これからどうしたものかな…」という感じがあったわけなんですが、次に向かうタイミングで、イーちゃんがすごい良い役割としてやってきてくれたっていうか。イーちゃんがやって来たことによってバンドの風通しがすごく良くなったんですよね。なので、これはもうメンバーになってもらおうかな…って思ったんですよ。それである日、夜ふたりきりで話す機会があったよね? その何ですか、「俺たちの関係ってなんだっけ?」みたいな。
──「俺ら付き合ってる…よね?」みたいな質問(笑)。
JxJx : で、最初は自分の中ではメンバーになってもらいたいなっていう気持ちがあったわけなんですが、でも、ちょっと待てよ、と。一旦、冷静になったんです ね。さっきイーちゃんが、一枚岩の6人という話をしてくれてましたけど、そういう活動にこだわることで良いとことと悪いところがあって。誰が悪いとかではないんですが、ずっと同じ人間関係でやってくると煮詰まってくる時は、なかなかスゴいんですよ。なので、メンバーになってもらいたい…でもいつでも他の誰かにパーカッショニストとして呼ばれたときに自由に他にも参加できるような存在というか。そのときの風通しの良さという状態はそういうスタンスっていうのも関係してるんじゃないのかなって。で、そのとき出した結論は「あの…“料金体系の違うメンバー”っていうのどう?」っていう(笑)。
一同 : (笑)
JxJx : 新しい形(笑)。
松井 : でも、そう言われた時はでもめちゃくちゃうれしかったですね。個人的に一番ライヴを観てるバンドが当時YSIGだったんですよ。大好きなバンドで、そうやって声を掛けて頂いて参加できることだけでもともと光栄で、その上、そんな新しい提案までして頂いて。でも、あの時は本当にうれしかったですし、方々で言いふらしましたね(笑)。でも当時、それまでの経験から「ひとつのバンドに所属するのはしないでおこう」と思っていて、あ、これはいまでも思ってるんですが。なので、そのグレーゾーンというか、僕のルールの合間をぬったご提案を頂いて、ありがたかったです。
JxJx : こちらとしてもバンドを続けていく上での、良いスタンスの答えみたいなのを探ったところでの一つの形ができたかもっていうのはありました。
松井 : それでいてアー写とかも撮らしてもらえて。これファンの方とか見てどう思うのかなって心配しましたね。

JxJx : 気持ち的には完全にメンバーです。それで、理想の形態のイメージとしては基本通常のバンド・リハに参加してもらって、空いてる時間で別のミュージシャン現場に行ってもらえたらという感じを想定したんですよね。それで、入りたての頃は、いーちゃんもタイミング的に他の活動が止まっている感じの時期だったのか な? だから自分たちのバンドに参加してもらうことによって、他の現場に呼ばれるようになったらすごく良いんじゃないかなって思ってて。って、今考えると、本当 に自分たちのバンドの立ち位置は謎なんですけど(笑)。
松井 : でも実際にそうなってるんですよ。VIDEOくんもだし、一時期はceroも手伝って、という感じで〈カクバリズム〉界隈があって、いまだったらヨギーもやらせてもらえるのもその延長だと思ってます。だからユアソンで僕の活動の範囲も広がったというか。本当に感謝してもしきれないというか、いい人生だなーって思い ますね(笑)。
JxJx : ただそのかわりに煮詰まった時間は今でシッカリと付き合ってもらって(笑)。
松井 : でもすごいんですよ。煮詰まり方が(笑)。例えば、煮詰まるとずーっとある曲のAメロだけを2時間みんなで練習したりするんですよ。ギターのフレーズを変えたり、今度はベースラインを変えたり。僕自体はパーカッションなんで、やってることはアレンジ変えてもそんなに変わらないんですよ(笑) 。
JxJx : そうそう、ごめんなさい(笑)。
松井 : だから僕、その曲のAメロめっちゃ上手くなるんですよ(笑)。同じ場所を繰り返し練習するっていうのは、やっぱり上手くなるんですよね。そういうことを経験しているから、他の現場に行った時も、YSIGで鍛えられた分、反応が早くなったという感覚はある。
JxJx : では、遠慮なく今後もそうさせていただいて…(笑)。
松井 : でも、さすがに「長すぎるな…」って思うことはありますよ(笑)。

JxJx : 申し訳ないと思いつつ「頼むから居て欲しい! 俺たちだけにしないで」って(笑)。でも、いい感じです。他のメンバーにとってもそうなんじゃないかなって思ってます。みんなイーちゃんのことが好きなんで。
松井 : 皆さん僕のこといじってくれるんですよ。僕いじられて輝くタイプなんで(笑)。
『Extended』〜『Sessions』にいたるまで
──JxJxさんが、YSIGをバンマスとしてダンス・ミュージックにフォーカスさせていく、どんどんそれが加速していくというのが『OUT』から、『Extended』を経て、今作『Sessions』までの大まかな音楽性の流れだと思うんですけど。松井さんのパーカッション加わったバンド・サウンドがダンス・ミュージックに近づくというところで、スピード・アップした感がありましたか?
JxJx : それは、めちゃくちゃありました。ハウス的なグルーヴの新曲たちはもちろんなんですが、例えば参加以前の昔の曲に入ってもらうことによって、その曲がもともと持っていたグルーヴの大事なところをパーカッションがあらためて教えてくれるっていう現象がすごくありました。で、なるほど! と思ったのが、そうなる ことによって過去と現在が繋がるみたいな、そういう大事な役目をしてくれてます。アメーバみたいな感じ(笑)。
松井 : アメーバって、もうちょっと綺麗な表現はなかったんですか(笑)。
──なるほど。ちなみにちょっと気になってたんですけど松井さんってパーカッションのルーツって何なんですか?
松井 : 元々ドラムをやってたんですよ。高校卒業がするときに、ドラムは下手だけど音楽の仕事がしたくて、音響、エンジニアを勉強しに専門学校に入ったんです。その学校にパーカッションがいろいろ置いてあって、趣味で触ってみたらめちゃくちゃ面白くて。そこから、独学で勉強しつつ楽器集めつつしてたら、 bonobos に出会って、誘われて。だからbonobosをやりながら、自分なりにいろいろ。なので、直接の師匠みたいな人はいないんですけど、いろんな方のレッスンに行ったりちょこちょこしてました。
──JxJxさんから見てその音の魅力って何かありますか?
JxJx : あるんですよ、これが(笑)。コンガ、ボンゴの革モノに、タンバリンとか、シェイカー系の振りモノを複合的に良い感じにやってくれるっていうのはもちろんなんですが、イーちゃんのポイントは、ここにアムデック(AMDEK)っていうシンセパーカッションから繰り出される飛び音、これが必ずセットで鳴らされるん ですよね。それが入ってくる感じは、レゲエのピュンピュンマシーン的な、プリミティブで粗野なエレクトロ感のかっこよさがあってアガるんですよね。しかも、近 年の自分たちの音楽性で大事にしたいなと思ってるオーセンティックなグルーヴがありながらも、もうちょっと違うものに転じて欲しいっていうところで、アムデッ クの音がしっかりその役目をやってくれてるんですよね。
松井 : 今作でも全部それが入っていますね。
JxJx : そこが、イーちゃんのスタイルなんじゃないでしょうか。
松井 : 僕もアムデックが大好きなんですよ。 BOSSの前身のメーカーが作ってた、手作りキットで。 1台目はHakase-Sunに売ってもらって。これだけだと「ピューン」っていうだけなんで、そこにディレイを繋いでダブをできるようにして。それを面白がってbonobosとかでも使ってたんですけど、そのときは不評で。YSIGに持ってきたらすごいよろこんでくれて。大体の曲に入れてますけど、でもよく考えたらこれ特にパーカッションじゃないんですよ。シンセなんですよ(笑)。
一同 : (笑)
──そろそろ『Sessions』についていきます。今回の選曲はどんな感覚からなんでしょうか?
JxJx : いろいろあるんですけど、ひとつちょうどVIDEO君と去年の秋ごろにツアーに行ったんです。そのセットリストを考えていた時に、この『Extended』で目指したバレアリック的な感覚で昔の曲をもう一回見つめてみたらどうなるのかなというのがあったんですよね。あとは野音ワンマンがあるということで、せっかくだからそこに合わせて20周年の記念盤として何かを出してみようかという『Sessions』の基になるアイデアがありまして。そことリンクさせながら選曲しようとしていた気がしてます。で、そうなると昔の曲を引っ張り出さなきゃいけないんですが、ただ「単なる昔の曲をやりました」だとバンド的にも違うし、かと言って、そこを完全に無視するのも違う、その落としどころを探っていったっていう感じですね。最初はリアレンジ・アルバムみたいなことかな、とザックリ言っていましたが、リアレンジといっても無限の選択肢があるので、そのなかでどういうものが良いのかってアイデアをメンバーで出し合いつつ、悩みつつ、でした。
松井 : でも僕にはスッとまとまった印象があるんですけどね。いっても悩んだ曲ってそんなになかったんじゃないかな。
JxJx : 例えば、バレアリックというアイデアのところで言うと原曲に対して「どこまでユルめるか」というのがあったんですよね。で、当初は原型をとどめないくらいユルくしてみようというアイデアがあったんですが、でもそれをやってくとアイデア先行だけっていう感じになりそうで、曲によっては何か大事な部分を失うだろうな、と。昔の自分たちだったらそこはかまわずアイデア先行でGOしてしまっていた気がするんですが、元々の曲の大事なところは失わないようにする、という選択 は、地味ながらも実はバンド的に進歩的なことだなと思うところがありまして。思い返すと、自分たちはアルバムごとに出す音がいろいろ変わってきているバンドで、メンバー的には全部地続きっていう感覚があり面白がってバンバン試しちゃってましたが、時にリスナーの皆さんにはその感覚がうまく伝わらなかったり、混乱 させてしまった部分もけっこうあったよな、と。なので、いい意味で頑張りすぎない、その曲の大事なところだけにフォーカスして、とにかく「いい感じ」に調整することを目指す、となったんですよね。大胆なアレンジ変更の曲もありつつ、そこを目標にしての地味なアレンジ調整はいろいろ試しました。コードを再検証したり、テンポのベストを探ったり、テンションの設定だったり、質感を追及したり、といった感じで。
松井 : 確かに。
──今回、オリジナルと今回の楽曲で交互に再生されるプレイリストを作ったんですけど、例えば「2,4,6,6,1,64 Number」とかも、イントロのドラムがスッと入ってくる感じがあったりとか。
JxJx : 昔は何も考えずにとにかくドラムをぶっ叩くのを良しとしている感じがありました(笑)。パンク・バンドがカリプソをやってみるっていう、そういうアイデアが僕らのアイデンティティになっていたと言いますか、面白さとしてあったような気がするんですが、 20年くらい経って、いろいろ解けてきたんでしょうね。まさに「スッとはいってくる」をやってみて、これはこれで今のYOUR SONG IS GOODにしっくりくるな、と。今回の『Sessions』は、ほとんどの曲がそういう感 じになってますよね。
──「The Love Song」は、エネルギッシュなオリジナルから、まさにガラッとアレンジも変わってすっと入ってくるメロウなラヴァーズ系の方に。
松井 : 車庫入れって感じの(笑)。JxJxさんが歌うのも相当久しぶりなんですよね。
JxJx : あの曲はガラっと方向性を変えることになりましたが、ライヴで余興的に試すっていうをけっこうやっていたので、けっこうスムースに作業できました。また細かい話になっちゃいますが、『OUT』以降レコーディングに関してはクリック有りっていうのがバンド的な大きな変化だったんですよね。ハウスのグルーヴの面白みを感じるために、そうなっていったんですが。それで今回、昔の曲、例えば「Super Soul Meetin’」や「Nettai Boy」あたりの勢い任せでやっていた曲をあえてクリックのスクエアな感じにハメていくのを試したんですよね。適正なテンポを発見できたら、新たなるユルさを手に入れられるかなと思いまして。そしたら、面白いくらいクリックをはじいていくんですよね(笑)。とにかく全然ハマらない。ようするにそんな単純な話じゃないんだなっていう。結果、ノークリックで録音したんですが、この発見も面白かったですね。それで、どの部分のせいでクリックがハマらないのかっていうところまで解剖していくことになったんですが、今回のレコーディングで、昔の自分達にもう一回出会うみたいな不思議な感覚がありました。
松井 : 元のメンバーの皆さんの中に馴染んだタイム感みたいなものが出来上がっている曲だと思うんですよ。だから余計にクリックとか相性悪いかもですね。僕的には、YSIGの名曲たちにレコーディングで参加できたのはすごいうれしかったですね。
JxJx : あとは今回ゴセッキー(後関好宏)にもいろいろ入れてもらって。

──YSIGは、今まで管楽器がトロンボーンだけというのがひとつの個性だったり、重要なポイントだったりするのかなって思ってたんですけど、今回がっつりサックスでゴセッキーさんがいるっていう。ライヴでも最近はゴセッキーさんがいるパターンも何回かあったりしてると思うんですけど、今回『Sessions』にがっつり参加してもらってる理由ってのは何ですか?
JxJx : ゴセッキー参加のきっかけは、2、3年前になるんですが、ちょうど2日後にTHA BLUE HERB と対バンが控えていたところに、ハットリ君(ハットリ”SHORTY”ヤスヒコ、Tb)がインフルエンザになるというとんでもない状況に陥ったことですね。その連絡をもらった時にたまたま奇跡的に目の前にいたのがゴセッキーで(笑)。ダメもとで声を掛けたらやってもらえることになりまして。で、実際に一緒に音を出してみたら、これまたバンドが新鮮になっていく感じがあって。それ で、もはやイーちゃんがいることで、バンドの一枚岩というのはすでに崩れ去っていますから(笑)、是非!って感じで『Extended』では1曲参加してもらって、さらに去年出した7インチの『Motion』では、ほぼ主役な感じでフルートをめちゃくちゃ吹いてもらっているという。イーちゃんの加入を体験したことによって、バン ド内の「アリ」が増えました。
松井 : でもトロンボーンとサックスって全然違う楽器なんで、THA BLUE HERBの時もどんな感じになるんだろうって思ってたんですけど、そこはさすがゴセッキーさんなんで、めちゃくちゃ上手いんですよ。サックスの音なんですけど、YSIGの音になった。そこはしっかり合わせてくれてるなってのは感じましたね。
JxJx : ここ最近のライヴでは、いつ終わった後、「なんか良いソロ聴けちゃったな」って、その演奏にメンバーみんなで惚れ惚れしてて(笑)。またゴセッキーが入ることでハットリ君が上手くなるんですよ(笑)。
松井 : ハットリさんも個性的なプレーヤーですけど、二管になることで、より精度が上がるというか。
JxJx : ただ、イーちゃんには最初からバンドの裸を見せてしまった感じがあるんですけど、イーちゃんがやってきた時とバンドの状況が違うこともあってか、まだゴセッキーには、かっこつけちゃってるところがある(笑)。

松井 : JxJxさん、ちょっとよそいき感まだありますよね。
JxJx : バンマスとして「頼むからこのバンド嫌いにならないでくれ」っていうのはある(笑)。
松井 : でもゴセッキーさんも楽しみながらやってくださってると思いますけどね。
JxJx : ありがたいことに、結局、全曲参加してもらうことになりまして。トロンボーンのユルい音色も最高なんですが、サックスは輪郭がバキッとするので、曲がわかりやすくなる。という事実に気がつきって、本当に今さらなんですが(笑)。
松井 : 20年経ってもまだまだ伸びしろがあるっていう。
JxJx : ゆっくりゆっくり成長しているって思ってます(笑)。
──そういった意味でも、野音の〈SOFT LANDING〉も最高なタイトルなんじゃないかと思います。
JxJx : ありがとうございます。〈SOFT LANDING〉はタイトルを考えるときに、20周年です! という感じを大声で言う感じに照れを感じてしまい、この何とも言えない感情を表現できないかなってなった時に、パッと閃いたのがフワフワと20年飛んできたモノが「スーッと着地」して「スーッといなくなる」ようなイメージで。そうだ、バンドのライヴを、今までで一番観てもらいたいなってのがあるんですよね。そういうのをあんまり意識したことはなかったんですけど、季節もちょうどいいですし、今だったら皆さんを楽しませる自信があります(笑)!
『Sessions』のご購入はこちらから
YOUR SONG IS GOOD過去作はこちらにて配信中!!
LIVE SCHEDULE
“SOFT LANDING” - 20th Anniversary Oneman Live Show at 日比谷野外大音楽堂 -
2019年4月21日(日)@日比谷公園大音楽堂
開場 : 16:15 開演 : 17:00
前売 4,320円(前売/全自由席)
ペアチケット 7,560円(前売/全自由席)
※中学生以下無料(要保護者同伴) / キッズエリアあり
※来場者特典あり!
PROFILE
YOUR SONG IS GOOD
1998年東京で結成。カクバリズム所属。通称YSIG。サイトウ“JxJx”ジュン、ヨシザワ“MAURICE”マサトモ、シライシ“JICHO”コウジ、ハットリ“SHORTY”ヤスヒコ、タカダ“DAATAKA”ヒロユキ、タナカ“ZEERAY”レイジに、現在、サポート・パーカッショニストの松井泉、サックス&フルートに後関好宏を加えた8人体制。はじまりはパンクロック、今はあえて言うならダンス音楽を演奏するインストゥルメンタル・バンド。2018年4月にALOHA GOT SOUL(From Hawaii)とカクバリズムとの共同リリースでの12inch「Coast to Coast EP」をリリース、10月には7inchシングル「Motion / PalmTree」をリリース、いずれも即日完売。感度良好な音楽愛好家達からの賞賛を浴びつつ、2018年に結成20周年を迎えた。WAH! WAH! WAH! WAH! WAH! WAH! WAH!
公式HP : http://yoursongisgood.com/
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