くぎ式流“ヘンテコ・ポップ”──先人たちのオルタナを咀嚼した独自グルーヴに迫る

L→R:川本(Gt./Vo.)、春香(Ba.)、島津(Dr.)、清水(Gt.)
くぎ式。実につげ義春チックな名前のバンドだ。ピクシーズやペイヴメント、ダイナソー・ジュニアなど往年のいわゆるUSオルタナティヴ・ロックを思わせるサウンドを従えて、早朝のベッドで、電車の中で、仕事中に、道を歩きながら、頭の中に浮かんでは消えていくよしなしごとのような歌詞を、人懐っこいメロディに乗せて歌う。そのユニークなスタイルを彼らは「ヘンテコ・ポップ」と呼んでいる。
成城大学の「アメリカ民謡研究会」(サークルではなく部活で、大学から助成金が出るそう)の部員だった川本(Gt./Vo.)と同級生の島津(Dr.)は卒業後もいろんなバンドで活動していた。2019年、当時のベーシストの呼びかけで結成。2023年に部活の先輩だった清水(Gt.)が加入し、2026年に初代ベーシストの脱退をうけてメンバー募集で春香が加わり、現在の4人組になった。
2026年4月にリリースされたファースト・アルバム『兎に角』は清水と春香が加入する前、前任のベーシストとの3人で作った音源。原朋信(シュガーフィールズ)がディレクションとミックス、小泉由香がマスタリングを担当し、前に述べた通りの「ヘンテコ・ポップ」を爽快に響かせている。これをイントロ的に楽しみながら、現在レコーディング中だというセカンド・アルバム(2027年初頭にリリース予定)での4人の本領発揮を待ちたい。
40曲あまりのストックから厳選された9曲を収録。
くぎ式の初手にして、今後の展開を期待させる一作
くぎ式の初ライブが決定!
2026年8月23日(日)
下北沢LIVEHOLICK『GOODDAY』
出演:サンサロサンセット / がつぽんず / Dolly Varden / くぎ式
12:00open 12:15start
ADV2,000 / DOOR2,500(+1Drink)
※各アーティストにて取り置き予約受付中
INTERVIEW : くぎ式

■くぎ式
2019年9月結成、逗子発のローファイ・オルタナティブロックバンド。
90年代USオルタナ/ポストパンクに影響を受けたギターサウンドに、日本語詞による独特なポップネスを融合。
ノイズとメロディ、静寂と爆発を行き来する“ヘンテコポップ”を鳴らす4人組。
女性ベースを含む編成も特徴。楽曲では“意味”や“メッセージ性”を過度に重視せず、日常の些細な出来事や、どうでもいいような感情をそのまま切り取るスタンスを貫いている。
「子供達が何気なく歌う鼻歌のような、純粋な歌」を理想に掲げ、洋楽的な感覚をベースにした自由な表現を追求している。
取材・文 : 高岡洋詞
大学で出会った“不思議と気の合う”仲間たち
──大学時代のアメリカ民謡研究会では、どんな曲をやっていたんですか?
川本(Gt./Vo.):僕は最初スーパーカーをやりました。あとはGO!GO!7188とか。自分から「これをやりたい」と言ってやったのは、ナンバーガールですね。
──他の人たちもそんな感じですか?
清水(Gt.):僕はビートルズが好きなんですけど、当時は誘われて人のバンドを手伝うことが多くて、自分の音楽性としてはあんまり一貫性はなかったですね。学生時代は島津とは一緒に演奏したことがあるんですが、川本とは仲は良かったものの、一度も同じバンドを組んだことがなかったんです。
川本:一緒にバンドをやったこともないし、音楽性もそれほど近かったわけではないのに、不思議とずっと仲は良かったんですよ。
清水:学生時代って、なんとなく気が合って話せる人とそうじゃない人がいるし、バンドに本気で取り組んでいる人とそうでもない人も自然と分かれていくんですよね。そういう意味では、川本も島津も「あり」な人ではありました。
島津(Dr.):僕も大学時代は自分の好きな音楽をやるというより、頼まれてドラムを叩いたり、ベースを弾いたりすることが多かったですね。その経験がふだん自分が聴かないような音楽に触れるきっかけになったと思います。川本とは部活とは別にオリジナルのバンドを組んで活動してて、仲もよかったですし、「面白い曲を書くな」と思ってたんで、そのままずるずると一緒に続けてきた感じです。
──くぎ式の結成までは、それぞれ大学を出て社会人になって、ときどき一緒にやるみたいな感じですか?
川本:まぁそうですね。島津とは前身となるバンドを長く続けていたんですけど、20代後半になるとけっこう人生の岐路というか、「アウトローとして生きるのか、真面目に働くのか」みたいな選択を迫られるじゃないですか(笑)。そこで「やっぱり一度ちゃんと働こう」と思って、バンドをいったんやめました。

──その後、くぎ式でバンド活動を再開したのはいつですか?
川本:春香(Ba.)の前任のベースがいまして、その子が「ベースをやりたい」と言い出したのがきっかけでした。ところが始めてすぐにコロナ禍になっちゃって、ライヴはできないし、練習も中止になる。それでも解散はせず、「とりあえずレコーディングだけは続けよう」と曲を録り溜めてました。その後、いろいろあってベースが抜けまして。
──そこでメンバー募集に応じて春香さんが加入されたと。
春香(Ba.):川本さんから音源をいただいて「スタジオに入らないか」と誘われたんですけど、それが自分の好みにドンピシャで。「これは絶対に楽しそうだ」とワクワクして、「ぜひ!」ってすぐに返事をして、スタジオに入った記憶があります。
──どんなところがドンピシャでしたか。
春香:曲の雰囲気ですね。私はもともと日本のメロコアやハードコアが好きだったんですけど、いろいろな音楽を知っていくなかで趣味が広がっていって。あと、川本さんの声も好きで、「このバンドでベースを弾きたいな」と直感的に思いました。

──ベースは前からやっていたんですね。
春香:中学生のとき吹奏楽部でコントラバスをやってたんですけど、部室を掃除してたらプレベ(プレシジョンベース)が出てきたんです。それを触ってみたのをきっかけに、20代前半くらいまでずっとバンドをやってました。結婚と出産で10年くらいブランクがあったんですけど、子どもが大きくなって自分の時間ができたので、「またバンドやりたいな」と思ってSNSのメンバー募集に登録したら、川本さんが声をかけてくださいました。
──みなさんお仕事をしながらバンドをやっているんですよね。
川本:僕はケアマネジャーです。介護関係ですね。いまは現場を卒業して、運営側にまわってます。
島津:僕はITエンジニアです。まだ2年目なんですけど、それまでいろんな職業を転々としてきまして、前職は探偵の仕事をやってたり、若いころは飲食店のキッチンで働いていたこともあります。
清水:僕は飲食系の会社員です。某県庁の食堂で働いているので、土日祝はしっかり休めるという。むかしはバイトをしながらバンドをやってた時代もあるんですけど、バンドがなかなか軌道に乗らないと、時間の融通が利くというアルバイトのメリットも薄れてくるんです。だったら正社員でもあまり変わらないなと思って。
──大人のバンドですね。『兎に角』、とても楽しいアルバムでした。何が楽しいかというと、まず、歌詞のなかでほとんど何も起こらない。
川本:そうですね(笑)。なるべくそうしてます。
──狙い通りなんですね。
川本:意味をあんまり持たせたくなくて。内容をまとめようとすると、どうしても何かしら意味が入ってしまうんですけど、できる限り「何も言いたくない」、みたいな。洋楽って、意味が分からないまま聴いていることも多いじゃないですか。それに「俺ごときが何を偉そうに言うんだ」っていう思いもあります(笑)。のらりくらり、フラフラ~っと歌いたいんです。子どもが楽しそうに口ずさんでいる、意味のない鼻歌みたいな歌が理想ですね。
──むかしからそういう曲を作っていたんですか?
川本:むかしっからですね。言いたいことなんて何もないんで(笑)。
──アルバムに入っている曲も、むかし作ったのがけっこうある?
川本:全部20代のころに作った曲です。アレンジはいまの経験に基づいて変えましたけど。

















































































































