前島亜美、『POLYPHONY』が導いた新たな表現論──いくつもの「私」が重なり、ひとりの表現者に

声優、俳優、そしてアーティスト。前島亜美は、そのどれかひとつでは語れない表現者だ。7月22日にリリースされるセカンド・アルバム『POLYPHONY』では、「多声性」というテーマを掲げ、自分の中に存在するさまざまな感情や人格、そしてこれまで歩んできたすべての人生を一つの作品へと昇華した。今回のインタビューでは、アルバムタイトルに込めた哲学や、半数の楽曲で作詞を担当した理由、TVアニメ『才女のお世話』エンディングテーマの制作秘話、さらには憧れ続けたつんく♂との夢のコラボレーションについて、たっぷりと語ってもらった。
声優アーティスト、前島亜美の2ndアルバム!!
INTERVIEW : 前島亜美

インタビュー&文 : 西田健
写真:つぼいひろこ
「私の中には、いろんな自分がいるんです。」
インタビューの終盤、前島亜美はそう笑いながら語った。その言葉こそが、セカンド・アルバム『POLYPHONY』を象徴しているのかもしれない。本作で掲げたテーマは「多声性」。声優、俳優、アーティストとして歩んできた経験、自ら作詞した楽曲、憧れ続けたつんく♂との夢の共演、そして内なる自分との対話。そのすべてが重なり合い、これまでで最も「前島亜美らしい」作品が完成した。今回は、『POLYPHONY』に込めた想いはもちろん、作詞家としての成長、表現者として大切にしている哲学、そしてこれから描いていきたい未来について、じっくりと話を聞いた。彼女の言葉に耳を傾けることで、一枚のアルバムが生まれるまでの物語が、より鮮やかに浮かび上がってくるだろう。
これはいまの自分に必要な言葉だ
──2026年7月22日にはセカンド・アルバム『POLYPHONY』がリリースされますね。今作にはどんな想いを込めたんでしょう?
前島亜美(以下、前島):このセカンド・アルバムで私の声優アーティストとしての個性を確立したいという想いが大きいですね。前作は声優アーティストとしての本格的なデビュー作だったので、自分の音楽性や個性をどう表現すればいいのか、わからない状態から始まっていたんです。今回はタイアップやライブを経て、自分の輪郭が見えてきてからの制作だったので、かなり意気込んで作りました。
──タイトルの『POLYPHONY』はご自身でつけられたんですか?
前島:そうです。アルバムを作るときは、前作もそうだったんですけど、タイトルから決めて、そこから方向性を決めていきます。
──『POLYPHONY』は「多声性」という、文学的な意味で様々な個性を内包する意味なんですよね。
前島:わたしは読書が好きなんですけど、本を読んでいるときに「ポリフォニー」という言葉に出会ったんです。元々は“Jeanne d’Arc”の歌詞の中に入れていた「Maverick」にしようと考えていたんですけど、「ポリフォニー」に出会ってしまってから、もう「これだ!」と思って、急遽変更して進めました。
──「ポリフォニー」という言葉には、どこで出会ったんですか?
前島:「ポリフォニー」は、とあるエッセイ集の巻末に収録されていたおふたりの小説家さんの対談のなかで出てきた言葉です。お二方とも『罪と罰』などを書かれているドストエフスキーさんが好きだという話をされていて。そのドストエフスキー作品の書き方として使われるのが、「ポリフォニー」なんですよね。それを知った時に「これはいまの自分に必要な言葉だ」と思いましたし、いちばん表現したい言葉だと感じました。
──今回のアルバムは一幕・二幕構成になっていますよね。前半の5曲を、第1幕としてさまざまな方が作詞を手がけ、後半の5曲を第2幕として、前島さんご自身が作詞を担当するという構成になっています。
前島:私は、舞台女優としても活動してきたんですけど、それも個性だと思っていて。舞台やミュージカルの一幕・二幕構成をアルバムに落とし込んだらおもしろいかもしれないと思ったんです。それに、もともとは5曲も作詞する予定ではなかったんですよ(笑)。でも気づけばアルバムの半分まで自分で書くことになっていたので、それなら作詞曲をまとめたほうがわかりやすいかなと思って、分けてみました。
──作詞曲もかなり増えましたが、作詞のスタイルに変化はありましたか?
前島:変わりましたね。最初に作詞した“Determination”は、本当に自分自身のことを書いた曲だったんです。そこからチームのみなさんと相談するなかで、「内省的な自分の話だけではなく、誰もが共感できるような歌詞も書けるようになっていこう」という話をしていったんです。今回作詞した“完璧じゃないわたし”は、プロの作詞家さんのように、どこまでキャッチーな歌詞にできるかをすごく意識しました。
──“完璧じゃないわたし”はTVアニメ『才女のお世話 高嶺の花だらけな名門校で、学院一のお嬢様(生活能力皆無)を陰ながらお世話することになりました』のエンディングテーマですね。タイアップ楽曲の作詞を担当されるのは、今回がはじめてですが、これまでとは書き方も違ったのでしょうか。
前島:全然違いましたね。原作の魅力を詰め込みながら、私自身の歌としても成立するように、そのバランスを取るのが難しかったです。以前、同じレーベルの先輩である水樹奈々さんに作詞についてお話を伺ったとき、「タイアップ曲を作るときは、キャラクターソングにならないように心がけないといけない」とおっしゃっていて。その言葉をすごく思い出しました。
──どんなことを意識して歌詞を書いたんでしょう?
前島:曲の中にはセリフが入っているんですが、それも雛子ちゃん、美麗ちゃん、成香ちゃんという3人のメインヒロインそれぞれの人格を感じられるような言葉を意識して書きました。この曲はElements Gardenのみなさんに作曲・編曲をお願いしたんですが、これまでよりも、もう少し遊び心のある楽曲になったかなと思います。
──前島さんは『才女のお世話』には声優としても出演されています。見どころを教えてください。
前島:『才女のお世話』は、とてもキュートな作品ですね。タイトルの通り、才女ばかりが集まる学院に主人公の男の子が入学することになって、メインのヒロインの3人を中心に、特に主人公の雛子ちゃんのお世話をしていく物語なんです。私は、ヒロインたちのクラスメイト・旭可憐(あさひ・かれん)を演じています。なので“完璧じゃないわたし”の歌詞には、こっそり「可憐」という言葉も入れています。
──今回、タイアップ曲の作詞を経験してみて、いかがでしたか?
前島:ぜひ今後も挑戦したいと思いました。同じレーベルの愛美さんから「タイアップの作詞は楽しいよ」と以前から聞いていて、「いつかやってみたいな」と話していたんです。そんな中で今回、「やってみる?」とお声がけいただいて。本当にうれしかったですね。
──アルバムの話に戻りますが、今作は「多声性」というテーマで、声の面でもまさにいろんな声で歌われていますよね。
前島:一曲一曲、振り幅を出したいというのが、今回の目標だったんです。特に“優良物件証明歌♡”においては、声優アーティストらしく、七色の声で歌えるようにがんばりました(笑)。
──この曲、すごかったですよ。歌詞もまさか前島さん本人が歌詞を書いているとは(笑)。
前島:この“優良物件証明歌♡”は、アルバムの最後の方に制作した曲だったんです。前作の“職業:あみた”のような「あみた曲シリーズ」を続けたいなと思って、私が歌詞を書きました(笑)。
──どんなイメージで書かれたんですか?
前島:私は「優良物件」であるということを、笑顔で明るく言いたかったんです。ふざけてるようにきこえるかもしれないんですけど、実は私の芯の部分を言葉にした曲ですね。愉快な曲なのに泣けてくるようなものを目指して作りました。
──最後に「熱海に住みたい」までいくのも楽しかったです。
前島:「物件」というワードから連想して「どこに住みたいかな」と考えたら「あっ!熱海がある」と思って(笑)。「あみた」と「あたみ」って似てますし(笑)。














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