只野 楓、音楽をドライブさせる次の一歩──2nd ONEMAN LIVE「Driving!?。」
2026年8月29日、東京・代官山UNITで開催された只野 楓の2nd ONEMAN LIVE「Driving!?。」。ボカロP「A4。」として楽曲を生み出し、自ら歌う只野 楓が、精緻なトラックと生身の歌声を重ね、音楽を「ドライブ」させたこの夜。その模様をレポートする。
LIVE REPORT : 只野 楓 2nd ONEMAN LIVE「Driving!?。」
取材&文 : ニシダケン
photo by Hideyuki Uchino
アクセルを踏んだからといって、目的地が決まっているとは限らない。
どこへ向かうのか。何が待っているのか。走り出してみなければわからない。それでも只野 楓は、前へ進む。
2026年8月29日、只野 楓の2nd ONEMAN LIVE「Driving!?。」が東京・代官山UNITにて開催された。初ワンマンから会場の規模を大きくし、前売りチケットも完売するなかで迎えたこの日のステージは、さらなるステップアップを予感させるものだった。
2025年11月、渋谷clubasiaで開催された初のワンマンライブ「zeal」で、只野 楓は自身が歌う理由をステージ上に刻み込んだ。ボカロPとして「A4。」名義で活動しながら、自らの声で歌うシンガーソングライターとしても表現を続けてきた彼にとって、「zeal」は、そのふたつの活動をひとつの身体に宿した「表現者」としての第一歩だった。
それから約9ヶ月。今回の「Driving!?。」というタイトルが示すのは、文字通り「走り出すこと」なのだろう。運転すること、駆動すること、そして前へ進むこと。初ワンマンの「zeal=熱意・情熱」を経て、今度は自らの音楽をさらに遠くへ運んでいく。
そんな意志を感じさせるライブは、エンジンの起動音を思わせるSEから幕を開け、「エレファント・インザ・ミュージアム。」へ。バンドメンバーが生み出すタイトなビートに、フロアも一気に熱を帯びていく。続く「Rabbit!?。」では、演奏をあえてストップさせ、バンドメンバーやオーディエンスに「調子どうですか?」と声をかけるなど、自由奔放なパフォーマンスで会場を沸かせた。
さらに「MOON」、「COMEDY。」と続き序盤から只野 楓らしい言葉遊びとジャンルを横断するサウンドを存分に響かせていく。HIPHOPをルーツとするビート感に、J-POPならではのキャッチーなメロディ、そして先の読めない展開。楽曲に仕掛けられたさまざまな要素が、バンドの生演奏によって肉体を持ち、代官山UNITのフロアを躍動させていく。
さらに印象的だったのが、ステージ背後のスクリーンに映し出された映像である。序盤のブロックでは、車のフロントガラス越しに景色が流れていく映像が投影され、まるで観客自身も車に乗り込んでいるかのような感覚を演出。タイトル「Driving!?。」が掲げる「走り出す」イメージとライブの躍動感が重なり、音楽と映像の両面から、会場全体をドライブへと誘うような没入感を生み出していた。
只野 楓の音楽において特徴的なのは、精緻に作り込まれたトラックと、生身の人間が発する歌声とのコントラストだ。高音域までクリアに伸びる独特の歌声は、音源ではどこか無機質にも聴こえる一方、ライブではそこに息遣いや声の揺らぎといった生身の感覚が加わる。完璧に制御された音像のなかに、息遣いや揺らぎ、そしてある種の泥臭さが入り込むことで、楽曲が別の表情を見せる。そういった自分自身の身体性を持って表現を届けることこそ、只野 楓がステージに立ち、音楽を鳴らし続ける意味なのかもしれない。
MCでは、集まった観客へ感謝を伝えながら、8月19日にリリースした3rd EP『HAPPY COMMUNITY』について語った。
「今月『HAPPY COMMUNITY』っていう作品を出したんですが」と切り出した只野は、タイトルに込めた思いを説明。「世の中っていろんな人がいて、絶対分かり合えないって思うやつも、どこかで出会うじゃないですか」と、価値観の異なる人々が共に生きることについて自身の考えを語った。
そのうえで、「結構気楽に適当に生きても、人生はなんとかなるんじゃないかな」と、無理をせずに生きることの大切さにも言及。「みんなから好かれるって無理じゃん」としたうえで、カレーやラーメン、パクチーを例に挙げ、「好きなものも人それぞれ」と語った。
そして、「俺にとってのハッピーコミュニティっていうか、居やすい環境」とは、互いに違いを認め合い、リスペクトを持って支え合える場所だと説明。自身が思い描く「ハッピーコミュニティ」について、飾らない言葉で観客へ語りかけた。
只野はその後、「そんなところは存在しないんですけど」と冗談めかして笑いを誘いながら、「もう不良になっちゃおうかなと思ってるんですけど」と続け、『HAPPY COMMUNITY』収録曲「不良になっちゃった feat.水槽」へ。
ここで本日のスペシャルゲスト、水槽がステージに登場。これまでも楽曲提供などを通じて接点を持ってきた水槽との共演を通して、音楽を通じてつながった人との関係性そのものを、ライブの物語へと組み込んでいく。そこには、ひとりで完結する「アーティスト」から、誰かと音楽を交わしながら世界を広げていく「表現者」へと進んだ、只野 楓の音楽の「イマ」が表れていた。

只野 楓の楽曲には、「普通=幸せ」という固定観念への違和感や、日常のなかで抱える弱さ、うまくいかない自分自身への戸惑いが描かれている。それは、いわゆる「前向きなメッセージ」とは少し違う。苦しさや迷いを無理やり消すのではなく、それらを抱えたまま、それでも先へ進もうとする。その姿勢こそが、彼の音楽の根底にあるものなのだろう。
そして本編を締めくくるのは「Let’s Boogieeeee!!!」。ここまで積み上げてきた音楽を、最後は理屈ではなく身体で楽しむ。HIPHOP、ファンク、J-POP、エレクトロニックなサウンドを自在に横断してきた只野 楓だからこそ辿り着いた、祝祭的なフィナーレだった。
本編終了後、アンコールでは「Oh…」を披露。さらに最後は「満員御礼」で締めくくった。温かな空気に包まれた代官山UNITには、楽曲を最後まで噛みしめるように聴き入る観客の姿が広がり、終演後には大きな拍手が送られた。
ボカロP「A4。」として楽曲を作り、自ら歌う「只野 楓」としてステージに立ち、トラックメイカーとして音を構築し、誰かと音楽を交わしながら新しい表現を生み出していく。そのすべてをひとつの音楽として提示することで、只野 楓は少しずつ、自分だけのポジションを築き上げている。
そういえば、「Driving!?。」というタイトルの末尾に付けられた「!?。」もまた、只野 楓らしい。
進んでいるのか、迷っているのか。驚いているのか、楽しんでいるのか。断言しきれないまま、それでもアクセルを踏む。
きっと、只野 楓の音楽はそういうものなのだ。
完璧な答えを見つけてから走り出すのではなく、走りながら答えを探していく。
次にどこへ向かうのかは、まだわからない。ただひとつ確かなのは、只野 楓の音楽は、これからも止まらないということだ。

セットリスト
只野 楓 2nd ONEMAN LIVE「Driving!?。」
2026年8月29日 東京・代官山UNIT
M1. エレファント・インザ・ミュージアム。
M2. Rabbit!?。
M3. MOON
M4. COMEDY。
M5. 無料生配信
M6. Mud princeeeeeess!!!
M7. ライフ・イズ・ビューティフル
M8. tokorode。
M9. 違うよ〜^^
M10. 不良になっちゃった feat. 水槽
M11. 会話中の映像
M12. ねこふんじゃった。
M13. ハロー、幸せさん。
M14. みんなのうた
M15. Let's Boogieeeee!!!
ENCORE
M16. Oh...
M17. 満員御礼
LIVE INFORMATION

只野 楓 pre 2MAN LIVE 「OVERLAP」
2026/10/4(日)
OPEN 18:00 / START 18:30
@Shibuya PIT ZERO
TICKET ¥3,900(+1Drink)
出演:只野 楓 / エイハブ
チケット販売: ZAIKOにて先着販売中
https://tribalcon.zaiko.io/e/overlap
PROFILE:只野 楓
2021年10月よりボカロPとして活動を開始。
HIPHOP、J-POPなどをルーツにした、 現代ポップスを探求するトラックメイカー。
斬新な展開やノリの良さが特徴。
MAISONdes『ダブル・プッシュ・オフ。』(水槽)や、すとぷり莉犬「8月5840日。」への楽曲提供。
FUJI ROCK FESTIVAL‘23ではDJとして出演した。
X:https://x.com/A4_official_
YouTube:https://www.youtube.com/@a4_official_
Instagram:https://www.instagram.com/a4___official___













.jpg?width=72)








































































































































































































































































































































.jpg?width=350)













