kiki vivi lilyが贈る幸運のお守り──新作ミニ・アルバム『Good Luck Charm』に秘めた遊び心
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スウィートな歌声とR&Bやソウルを下地にしたメロディーセンスで話題のSSW、kiki vivi lily。前作『vivid』から一年半ぶりとなるミニアルバム『Good Luck Charm』は、WONKの荒田洸がプロデュースし、Sweet William、nobodyknows+、Kan Sanoらと共に作り上げた全6曲が収録されています。今回オトトイでは、今作に込めた想いと制作秘話を伺いました。2020年12月22日にはワンマンライヴの開催も決定している彼女。インタヴューもライヴも必見です。
遊び心に溢れた新作ミニ・アルバム
INTERVIEW :kiki vivi lily
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kiki vivi lilyの新作ミニ・アルバム『Good Luck Charm』は、彼女の持ち味である甘い歌声と耳馴染みのいいトラックが結びつきながらも、遊び心がつまった作品だ。収録されている曲たちもnobodyknows+の代表曲“ココロオドル”の大胆なアレンジや、イギリスのロックバンド、The Libertinesを意識した楽曲などバラエティに富んでいる。今作を「お守り」のように聴いて欲しいと語る彼女に、制作についてじっくり話を訊いた。
インタヴュー&文 :西田 健
写真 : YURIE PEPE
コントラストを楽しんでいただきたい
──前作から引き続き、WONKの荒田洸さんがプロデュースを担当している今作『Good Luck Charm』ですが、今作のコンセプトは?
タイトルにもある “Good Luck Charm” はお守りという意味なんですけど、今回は6曲っていうコンパクトさもあるし。デジタルでのリリースなので、みんながお守りのように携帯に入れて、聴いたらちょっと元気がでるような、そんな一枚になるといいなと思って作りました。
──制作はどのように進んでいきましたか?
前作は11曲入りで、全部楽器陣とかも入れて作っていったので、かなり切羽詰まってたんですよ。とにかく期限に追われていて。「じゃあ次回もっと余裕をもって、こういう風に作りたいね」という話はそのときからしていて。
──今回はスケジュール的に余裕があったんですか?
あったんですけど、結果的には結構ギリギリやばくなるというところは変わらないですね。(笑)でもこれは正解がないので、どこかで妥協しない限り続くんですよね。その時に良いと思っても、次の日に聴いて「やっぱここはこうだよね」となって、それは一生終わらないので。だから結果的には最後の最後まで詰めていくという感じになりました。
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──今作はいつごろから作り始めたのでしょうか。
“ひめごと”や“Radio(Intro)”辺りの曲自体はかなり前から作曲していました。ただ、それをまた形にしようと制作し始めたのは緊急事態宣言が開けたときくらいからです。
──いちばん古いものはどの曲ですか。
いちばん古いのは“ひめごと”ですね。2015年頃から曲もリリックもありました。ライヴでやってた時期もありましたけど、kiki vivi lilyという名義ではやったことがない曲です。封印されし曲でした。
──なぜ、このタイミングで入れたんでしょう。
封印されし曲は結構たくさんあるんですけど、その時々で引っ張り出して、アレンジしたいなと思えるものは少しずつ出していたんです。この曲もずっと入れたかったんですけど、前作『vivid』に入れるのはちょっと違うなと。“カフェイン中毒”とか “80denier”とかも入っていたので、そこと同じアルバムに入れてしまうにはもったいないなと。今回、この曲がいちばんフューチャーされる形としてここに入れたという感じです。
──曲自体はポップですが、叶わない恋を歌ったような切ない歌詞にドキッとしました。
ありがとうございます。サウンドと歌詞のコントラストを楽しんでいただきたいなと思っています。
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──他にも以前に作っていた曲はありますか?
“The Libertines”がそうですね。これも数年前にサビのワード自体はすでにあったんですけど、今作に収録するにあたって歌詞を変えたり、新しくBメロとかは書き直してメロディを変えたりしました。
──この曲のモチーフはどのようなところから?
実はイギリスのバンドThe Libertinesからとってるんですよ。歌詞のなかの「Don't Look Back Into The Sun」なんかは曲名そのままですね。「リバティーンズみたいな衝撃をちょうだい」という歌詞も、そういうのが好きな女の子というのを主人公として想定していますね。実もこの曲は間奏もThe Libertinesに寄せてて。「ギターもあんまり上手に弾かないでいいから。自分をThe Libertinesだと思って弾いて!」ってリクエストして(笑)。
ひとつのアルバムというものをどうにか表現したくて
──おもしろいですね。このアルバムのなかでいちばん新しいのはどの曲ですか?
いちばん新しいのは最後に入っている “See you in Montauk”です。これは今回の作品を制作するにあたって作りました。もともとWONKの荒田君とギターの小川 翔さんが、ふたりでジャム・セッションして一緒に作った元の曲があって、その曲のトラックを聴いて私がすごく気に入って、さらに歌をつけて作った曲なんです。
──この“Montauk”はどのような意味なのでしょう。
アメリカの地名なんですけど、『エターナル・サンシャイン』という映画のなかのセリフで「See you in Montauk」っていうのがあって。ずっとそれが心の中に残っていて、それから広げた歌詞になっています。すごく好きな映画なので、心に刻みつけられていますね。
──モチーフとして映画からインスパイアされることがあるのでしょうか?
結構多いですね。前作の“Copenhagen”という冨田恵一さんと作った曲も、『コペンハーゲン』という映画からそのまま引用したりとか、結構映画から影響は受けてます。
──なるほど。実際にMontaukに行ったことは…?
ないです(笑)。コペンハーゲンもないです。旅行が趣味なので自分が訪れた所からインスパイアされて曲を書くことも多いんですけど、今回の制作中は旅行もなかなか行けなかったので、自分が見たものとか、自分が聴いたものから制作しました。
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── “See you in Montauk”はアルバムの最後に入っているのがいいですよね。
曲順を決めているときに「アルバムの最後に“See you”っていうのはなんかいいね」ということになって。歌詞も「さよならだけどまた会おう」みたいな感じだし。これでまた1曲目の “ Radio(Intro) ” に戻ってきてくれたらいいかなって。
── “ Radio(Intro) ” も以前からあった曲なんですよね。
この曲も昔あった破片を持ってきてアレンジし直したり、歌詞を書き変えたりしたものですね。ひとつのアルバムというものを通して聴くのが自分自身結構好きなので、今回は6曲だけどそれをどうにか表現したくて。「アルバムを聴くぞ」っていう感じを意識して作りました。
──この曲はアレンジをSweet Williamさんが手掛けられていますね。
2016年に彼が出しているアルバムがあって、そのときからの付き合いですね。曲自体はかなり前からあったんですけど、今回はアレンジをそのまま丸投げしたので、元のデモとはかなり違うものになりました。
「ご本人登場!」みたいな感じで出てきたら絶対アガるよねって
──Sweet Williamさんも含め、今作には様々ミュージシャンの方とともに制作されています。このアルバムのなかでフックになっているのは、“コロオドル with nobodyknows+”だと思うのですが、どのような経緯でアルバムに収録されたんですか?
“ココロオドル”をアルバムに収録した理由として、もともとどなたかをフューチャリングで迎えた曲を入れたいなという思いはずっとあって。どうしようかなと荒田君と相談していたら、ギターの小川さんが15年前くらい前にnobodyknows+のアルバムで弾いてらっしゃったという話を聴いて。そこで、「nobodyknows+いいね。それ、おもしろいね」ってなったんです。
──もともと『ココロオドル』のカバーをやる予定だったんですか?
最初はnobodyknows+となにか1曲やりたいねっていうところからスタートだったんです。新曲っていうのも一案としてあったんですけど、『ココロオドル』という曲を私なりに解釈してやったら、すごくいいよねって話になって。
──正直、kiki viviさんが『ココロオドル』をカバーすると訊いて、かなりびっくりしたんですよね。しかも、がっつりカバーというわけではなく、途中でkiki viviさんが書かれた歌詞が入ってくるのもおもしろいなと思いました。
学生時代、カラオケでもみんな歌ってたし。ドンピシャに世代の曲なんですよね(笑)。サビのフックの部分は使おうかなと思ってたんですけど、それ以外は何の制約も設けずにつくっていきました。最初にトラックを作ったんですけど、Aメロをわたしなりに歌ったらおもしろいんじゃないかって思って。その後でいきなり「ご本人登場!」みたいな感じでnobodyknows+さんが出てきたら絶対アガるよねって話して作りました。その驚きも含めて楽しんでもらえたらと思っています。
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──nobodyknows+さんも新たにレコーディングされたんですよね。
完全に新録なので贅沢なんですよね。まさか、本当にやってくださるなんて。nobodyknows+はいまも現役で活動してるし、「楽しんでやってる大人」な感じがすごくいいなと思ってます。ライヴもめちゃくちゃ楽しいですし。そこが魅力的だし、そういう人たちとやれるっていうのは幸せですね。名古屋のHIPHOPの重鎮ですし。あと、実は今回名古屋をフィーチャーしたいなと思っていたんです。kiki viviのバンド編成の時にお世話になっている小川 翔さんと宮川 純さん、あとMELRAWさんがみんな名古屋出身なんですよ。わたしはHIPHOPのクルーでもあるPitchOddMansionに所属してるんですけど、そこのメンバーもみんな名古屋だし。そういうストーリーもあって今回、nobodyknows+とご一緒させていただきました。
──なるほどそういうことだったんですね。“Touring”はKan Sanoさんが作曲された曲ですが、この曲を制作することになった経緯を教えてください。
Kan Sanoさんの方もわたしのことを知ってくださっていて、ずっとご一緒したかったと言ってくれていたんです。以前から、イベントで会うか会わないかでニアミスしてたんですけど、ようやくご挨拶させていただいて話がまとまりました。めちゃくちゃ素敵な方でしたね。優しいし柔らかいし。
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──制作はどのようにして進みましたか?
Kanさんがトラックとメロディーラインを載せてくださっていたので、そこに歌詞をつけていきました。今回、私が歌ったデータをそのままKanさんにお渡ししたんですけど、修正もなく一発でOKでした。すごくやりやすかったし、スムーズでした。大先輩だったので、すごくうれしかったですね。また機会があれば、ライヴもご一緒したいなと思っています。
──12月の22日には渋谷WWWでワンマン・ライヴが行われます。有観客でのライヴは久しぶりですよね。
かなり久しぶりですね。先日、11月27日に久しぶりにJinmenusagi君のリリースパーティーで客演で、歌わせていただたんですけど、お客さんがいるのにすごく感動してしまったんですね。手を挙げたりしてくれるのが本当に嬉しかったですね。
──今回のワンマンは実は4月の振替という形になるんですよね。どういうライヴになりそうですか?
セットリストも想定していたものから少し変更して。でも、『vivid』の時にやりたかったことというのは消化できていないので、そこは残しつつ。でも、今作の曲もやりたかったこと盛り込んだセットリストになりました。SUKISHA君とのコラボの作品『Over the Rainbow』の曲も含めて、全部盛り込んだ感じでやれればと思っています。
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編集 : 片野 妃茉里
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新→古
LIVE INFORMATION
kiki vivi lily one man show “LILY HALL“ vol.1 〜a musical romance 〜
日時:12月22日(火)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:Shibuya WWW
料金:前売 4,200円 (ドリンク代別)
PROFILE:kiki vivi lily
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福岡県出身
スウィートで魅惑的な歌声とブラックミュージックを下地にした類稀なるメロディーセンスで独自のポップミュージックを展開。
確かな音楽感覚は軽やかに様々なシーンとクロスオーバーしながら、玄人のみならず幅広い音楽愛好家を魅了し、kiki vivi lily 中毒者を世界中に増殖中。
夢はロードトリップのようにして世界中を旅しながらバンドでツアーをすること。
【INFO】
■kiki vivi lilyオフィシャルHP:
https://kikivivilily.com/
■kiki vivi lilyオフィシャルTwitter:
https://twitter.com/ki_vi_ly