喜怒哀楽すべての感情を詰め込んだ、怪獣たちの咆哮──MAPA〈怪獣ちゃん大行進グヮーオーッ!グヮオーッ!ツアー〉東京公演
4人組アイドル・グループMAPAが、浅草花劇場で〈怪獣ちゃん大行進グヮーオーッ!グヮオーッ!ツアー〉東京公演を開催。大森靖子が手がけた楽曲の世界を、喜怒哀楽すべての感情を詰め込んで表現したこの日のライヴ。今回OTOTOYでは、ツアーの大事な初日の模様を、当日の熱気や観客の高まりとともにレポートでお届けします。
MAPA最新シングル『怪獣GIGA/レディースコミック』ハイレゾ配信中
LIVE REPORT : MAPA〈怪獣ちゃん大行進グヮーオーッ!グヮオーッ!ツアー〉東京公演
取材&文 : 西田健
撮影 :Masayo (@Masayo_rix)
2023年2月11日。4人組アイドルグループ、MAPAの『怪獣ちゃん大行進グヮーオーッ!グヮオーッ!ツアー』東京公演が浅草花劇場にて開催された。この日のライヴは東名阪を回るツアーの初日。今後の活動を占う上でも重要な1日となるため、開演前にはメンバーの気合いも会場に集まったファンの期待も高まっていた。
定刻を迎え場内BGMが大きくなると、セットリストの1曲目“聴く薬”のイントロに合わせて、メンバーがひとりずつ登場。グループ名の由来でもある「MAD PARTY」という耳に残るフレーズで、今宵の宴の幕が開く。開始早々に会場全体の空気を掌握すると、間髪入れずに2曲目の“四天王”を叩き込む。老若男女を笑顔にするような元気いっぱいのパフォーマンスで、オーディエンスの熱を一気にあげていく。
つかみは完璧とばかりに2曲を終えるとMCの時間に入る。それぞれの自己紹介を終えると、客席に光るペンライトが緑とピンクに彩られていた。実はこれはお客さんからの神西笑夢への誕生日サプライズ。神西本人が「あれ?笑夢の色だー!」と気がつくと、客席から「お誕生日おめでとうー!」の大合唱が響いた。
その声になぜか古正寺恵巳が泣き出してしまった。彼女の話によると、お客さんからの声が聞こえたことで、本当に嬉しさのあまり感情が溢れ出したとのこと。コロナ禍にデビューしたMAPAにとっては、声出し可能なワンマンライヴはこの日がはじめて。特にMAPA以前にもアイドル経験のある古正寺にとっては、「あの頃のライヴの光景が戻ってきた」という感動も大きかったのだろう。
ライヴはここから、“運命テッテレー”、“MAPA応援歌”、“麒麟♡タイム”とアップテンポな曲を続け様に。客席からの声援や歌声も飛び回り、ステージと客席との結束もさらに高まっていく。なかでも自己紹介ソング“MAPA応援歌”での、それぞれのブロックで客席から響き渡る「かっとばせー!」の大声は圧巻だった。この曲はタイトル通り、客席からの応援によって高い次元へと進化を遂げたのだ。
冒頭で行われたMC以降は本編最後までノンストップで駆け抜けていったこの日のライヴ。途中にMCを挟まないことで、まるで1本の映画を見ているかのごとく、ひとつの物語へと没頭することができた。アッパーかつハイな曲から、ダウナーでヘビーな曲へと徐々にグラデーションするセットリスト。こういった楽曲の振り幅は、MAPAの持ち味のひとつでもある。
“レディースクリニック”からのブロックでは、スクリーンに心象風景を投影したような映像が映し出され、楽曲の世界観を演出していく。続く“いもうと”では楽曲の持つ不穏さが全面に押し出され、童謡のようなメロディーラインに乗る確かな狂気が会場中を支配していた。音源を聴いただけではわからなかった奇妙な感覚が、ゾクゾクと体中を駆け巡る。この曲でしか味わうことのできない、新たな感覚の扉を無理やりこじ開けられてしまった。ラストで「ハハハ」と不敵に笑う神西笑夢の姿は、この日のハイライトだったと思う。
本編のラストに披露されたのは、このツアーのタイトルでもある最新楽曲“怪獣GIGA”。この曲は非常にキーが高く、歌いこなすのにはかなりのスキルが要求される。彼女たちはこの曲に対して本気で向き合い、無理をしてでも歌っていくことで、ボロボロになっても辛い現実と戦う姿を表現しようとしたのだと思う。4人が喉が擦り切れそうなほど力を振り絞って必死に歌う姿に、自然と感情が揺さぶられる。「君を迎えにきたよ これからもどこまでだって迎えにゆくよ」という、アイから産まれた魂からの叫びが、誰しもが抱える不安や孤独を優しく包み込んでいた。
4人が去った後のステージには手拍子だけでなく、特大の「アンコール!」の大合唱が送られた。そして、その声に導かれるように再び現れた彼女たちは“蒼夜ミルキーロード”を披露。続いて行われたMCのコーナーでは、ひとりずつこの日のライヴに対する想いを述べていく。古正寺が「もうすぐアイドル生活10周年なんですよね」と語ったその後に披露されたのは、代表曲“アイドルを辞める日”。なぜ彼女たちがアイドルをやっているのか。その理由がこの曲には込められている。生身の感情全てを歌に託して、彼女たちはステージを後にした。
喜怒哀楽すべての感情を詰め込んだ狂乱の宴は、こうしてフィナーレを迎えた。客席からは万雷の拍手が贈られる。彼女たちのパフォーマンスは、ここからますます研ぎ澄まされていくことだろう。このツアーが終わる頃には、さらに生々しく表現力を増しているに違いない。怪獣ちゃんたちの大行進の足音は、これからますます大きくなっていくのだ。