OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.354 トリビュート盤好きに捧ぐ
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
トリビュート盤好きに捧ぐ
先日リリースされた『Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-』が、とにかく素晴らしかった。RADWIMPSというアーティストへの深いリスペクトが隅々まで行き届き、ひとつの作品として強度がある。OTOTOYでカバーソングを追い続けてきた身としても、久々に “全身が歓喜する” ようなトリビュート・アルバムだった。
というわけで、このコラムでは、本作で感じた魅力を軸に、「こういうカバーの形もある」という視点で、過去の優秀なトリビュート例を紹介していきたい。
今回もっとも圧巻だったのが、米津玄師による「トレモロ」だ。驚くほどアレンジを加えていない。それでも成立してしまうのは、圧倒的な「米津玄師力」ゆえ。音の配置を変えずとも、声の存在感が曲の表情を一変させてしまう。これこそ、シンガーの本質的な強度が試されるカバーだった。
過去のトリビュートでこの系譜に連なるのは、たとえば以下の2曲。
- theウラシマ’s「正しい街」(椎名林檎・トリビュート)
スピッツ・草野マサムネの声が持つ清涼感が、原曲の繊細さをまったく別の角度で照らし出す。 - B’z「Get Wild」(TM NETWORK 40周年・トリビュート)
こちらも大幅なアレンジなしで、稲葉浩志の声そのものの凄みで曲を “B’z化” させてしまう一曲。
歌声の説得力だけで原曲をアレンジしきるという、カバーの醍醐味が詰まっている。
今回のRADWIMPSトリビュートで、アレンジ面でもっとも冴えていたのはiriの「ふたりごと」。原曲のラップ的なフロウを、iri流のR&B解釈で滑らかに再構築。「こんな角度でアレンジできるのか」と驚くような、見事なリフレーミングだった。
過去のトリビュートでも、このアレンジ巧者の系譜は多い。
- ミツメ「駆け抜けて性春」(銀杏BOYZ・トリビュート)
銀杏BOYZの疾走感を、そのままミツメの淡々としたテンポに落とし込むセンスが秀逸。 - 氣志團「Body & SOUL」(SPEED・トリビュート)
カバーの名手・氣志團が、90年代の名曲を彼らならではのユーモアと愛で別物に昇華している。
原曲の屋台骨はそのままに、アーティストの色で大胆に塗り替える。この “再解釈” こそ、トリビュートアルバムの醍醐味の一つだ。
そして今回のRADWIMPSトリビュートでは、VaundyやYOASOBIの参加曲も素晴らしかった。原曲への敬意は保ちながら、フレーズや歌声の節々にしっかり “自分らしさ” を残している。このバランス感覚があるアーティストは、やはりカバーも強い。
過去の名例としては、以下の2曲が思い浮かぶ。
- 浜崎あゆみ「Movin' on without you」(宇多田ヒカル・トリビュート)
歌姫としてのエモーショナルさを残しつつ、宇多田楽曲のクールさを丁寧に踏襲。あの頃の歌姫対決などの当時のストーリーもあって、エモい。 - UNISON SQUARE GARDEN「イト」(クリープハイプ・トリビュート)
イントロからもろに、自身の大ヒット曲のフレーズを入れ込む大胆さに驚かされる。
“敬意” と “自分の色” の同居は簡単ではないが、それが成功したとき、カバーは最も美しく輝くのだと思う。今後もトリビュート盤には、注目していきたい。










































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































