ああ、俺にも挫折ってあったんやなって
──ではその楽曲を〈VIVA LA ROCK 2024〉で披露してみて、手ごたえはいかがでしたか?
焼きそば:僕はあったっすね。こーたろーも春貴もあったんちゃうかな。ライヴでやっていて、楽しいし気持ちいいし。あとは俺らのバンドサウンドをもっと磨いてまとめて、しっかり流れを作るライヴをして、いかにお客さんに馴染ませられるかが鍵かなと思います。〈VIVA LA ROCK 2024〉でもやった"22"と"OH MY GOD"と"そんな日々を生きていく"は今後もからあげ弁当のフェスの定番曲になると思うので、がんがんやっていくのみですね。
──"OH MY GOD"は新機軸ですよね。ヘヴィなアプローチで。
焼きそば:もともとああいうゴリゴリの感じが好きやし、バンドをやっていくうちにこういうサウンドが欲しくなってきたから作りましたね。いつも俺が作るような歌ものっぽいメロディはあんまこういう感じの音には合わないんで、音に馴染むメロディを考えました。
──リズム隊おふたりも、この曲はかなりお気に入りのようで。
焼きそば:あいつら、自分が暴れられる激しい曲やったらなんでも好きなんです(笑)。もともと通ってきた音楽も春貴はスラップばんばんやし、こーたろーはツーバスやし。ルーツを思い出せるんでしょうね。だからあいつらに「このバラードいいね」と言わせるのめっちゃむずいんです。とはいえ、曲を作るうえでメンバーを楽しませようとかは考えてなくて、バンドとしてこういう曲があった方がいいなってものを作ってます。でもあいつら気持ち悪いんすよ。すぐ音楽理論ぶつけてきよる(笑)。
──おふたりともプレイヤーとしての意識が高いから。
焼きそば:あいつら小学校とか中学校とかから楽器やってるから。俺は専門学校からはじめたんで、あいつらが「ここのコードがこうでああで……」とか言いはじめると、難しくてやかましいです(笑)。でもふたりがそういうところをわかってくれてるんで、安心感はありますね。

──"OH MY GOD"の〈自惚れた才能は君を乗せてどこまでも進む〉という歌詞は若者の特権とも捉えられますし、今作は"22"や"ティーンエイジャー"など年齢がキーワードの曲もありますが、焼きそばさんのなかで「年齢」はどういう解釈なのでしょうか?
焼きそば:俺も完成してみて「年齢にまつわるもの多いな」って思ったっすね(笑)。それは俺が今年23になる歳やからかな。周りに新卒社会人1年目の友達がたくさんいるんです。この春から地元を離れて就職する友達に対しての感情が"22"ですね。ほんまにアホみたいなやつばっかなんで(笑)、ずっとそのままでいてくれよ、俺もずっとそのままでいるよって。だから人生の大きな節目みたいなタイミングが、年齢系の曲を多くさせたのかも。普段はそんな年齢のこととか気にせんかな。年上とか年下とか関係ないというか。だからビバラでめっちゃELLEGARDENの細美さん(細美武士)に話しかけて。
──フェスならではの出会い。
焼きそば:そんな機会なかなかないじゃないですか。嫌われてもいいから聞けること聞いとかなあかん! って、初対面ではありえないようなめっちゃ人生の話をしました。刺激になりましたね……。いまだにあれは夢やったと思ってますもん。やっぱりいろんな経験してる人の話はためになりますね。まだバンドはじめて3年目の若手ですけど、音楽業界のセオリーみたいなものもなんとなくわかってきて。「こういうことはやったらあかんねんな」とか、見えてくるんですよ。
──そうですね。社会人もそうだろうなと。
焼きそば:でも人を傷つけるようなことではなくて、なおかつ自分でケツ拭けるぐらいのことやったら、ちょっと道踏み外してもええかなと思ってます(笑)。そういうことをこれからもどんどんやっていって、怒られていこうかなと(笑)。実際"ティーンエイジャー"も完成したのはレコーディングの2日前とかで。ギリギリすぎて「どうしよう、なに書こう」と悩んだ結果、いつも通り自分の送ってきた人生を書きました。やっぱ馴染みのあることは書きやすいですよね。子どもの頃はめっちゃ楽しかったし、戻れない寂しさもあるっちゃあるっすけど、いまをどう楽しく生きられるかが大事やと思ってますね。何歳になっても心さえ若かったら人生おもろいと思うんです。
──「いまをどう楽しく生きるかが大事」。小さい頃からずっと続けてきた野球を辞めて、専門学校に入って音楽をはじめた焼きそばさんが言うと説得力があります。
焼きそば:自分的には野球を辞めた時点で区切りをつけたつもりやったけど、高校卒業してから半年ぐらいは、野球中継も観られへんかったし、草野球の誘いも断ってたんです。でも音楽にのめり込めばのめり込むほど、音楽がその未練を「音楽でさらに上に行く」「音楽で売れよう」という気持ちに変えてくれたんですよね。もともとテキトーなところがあるから(笑)、彼女に振られても落ち込むのは長くても1週間ぐらいやったんで、野球に関してはだいぶ引きずったなあというイメージです。あれは挫折やったんやなあ……。
──しっかり切り替えていたつもりだったけど、心の奥は傷ついていたのかもしれないですね。
焼きそば:挫折してた意識、全然なかったんです。なんなら挫折を経験してるバンドがそれを糧にして突き進んだり、MCで人の心を掴んでいるのを見て、挫折してない俺らがどうやったらあれに勝てるんかなと思ってました。でも甲子園に行くような高校に入って、高1で「うまい1年が入ってきた」と言われていたのが、高3になってベンチすら入れなくなって。「プロ野球選手になることを諦めたのは挫折じゃないか?」と言われて、ああ、俺にも挫折ってあったんやなって。「その人生は自然と曲になるし、それが聴いてくれる人にも伝わるようになる」と言ってもらって、ほんま感動しましたね。
