人間以外の何かが憑りついたような破壊的なヴォイスから流麗なメロディまで幅広く歌い分ける歌姫・西田夏海を擁する、ベース・レス・トリオ、カイモクジショウ。ギターが猛り、ドラムが吠えれば、ヴォーカルが色を浮かび上がらせる。この度、ライヴ・ハウス、新宿ANTIKNOCKから放たれ、半狂乱のグルーヴを撒き散らす彼らの2nd EP『発声・源』から1曲をフリー・ダウンロードでお届けする!! 刺激に飢えたあなたに突き刺さるかどうか。多くを語る前に、まずは「リプレイ」を聴いてみてほしい。
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カイモクジショウ / 発声・源
【Track List】
01. ECDYSIS / 02. 13TH,AUGUST / 03. KURE / 04. 発声 源
05. 海の果て / 06. CRAWLER / 07. リプレイ
【価格】
mp3、WAV共に : 単曲 200円 / アルバム 800円
アルバムまとめ購入のお客さまには、デジタル・プックレットが付いてきます!!
INTERVIEW : 西田夏海(カイモクジショウ)
ブルータル!! カイモクシジョウのEP『発声・源』を耳にして、思わず久々にそんな言葉を吐き出してしまった。あまりに無軌道で展開が予測できないというライヴ・パフォーマンスがにわかに話題を呼んでいた彼らだが、まずこのサウンドにしてベースレス編成という時点で相当にユニークだ。粒子の細やかなノイズをまき散らすギターと、徹底してボトムを低くしたパワー・ドラムによる最小限のアンサンブルは、既にデフトーンズあたりを想起させるスケール感を醸しだしている。この腹の底に響くヘヴィネスは、一朝一夕に鳴らせるものではないだろう。
しかしなによりも耳を引くのは、西田夏海が発する変幻自在のヴォーカリゼーションだ。脳天をスコーンと抜ける透き通ったハイトーンを聴かせたかと思えば、突然どこかがプチっと切れたようなダミ声に変容する歌声は、他の何者とも比べ難いインパクトを備えたものだ。これが前述した演奏とも相まって、とにかくエクストリームの一言。もしあなたがオルタナティヴ・メタル以降のロックに物足りなさを感じていたのなら、是非とも本作をお試し頂きたい。
インタビュー&文 : 渡辺裕也
個々のアクの強い人間が音をぶつけあうなかで起こる反応
――不思議なバンド名ですよね。これはどういう意味を持つ名前なんですか。
西田夏海(ボーカル) : まず、ぱっと見た時に目立つように、バンド名は英語ではなくて短いカタカナ表記にしようということになったんです。そこでまずギターのアイデアから、仏教の“開目抄”っていう言葉がでてきて。これは“信じていれば道は開ける”っていう意味らしくて、それはいいねっていう話になったんですけど、そのまんまだと検索してもひっかからないので(笑)。それで、バンドで音を出すんだから、“耳”っていう字をどこかで入れたいなと思ったんです。そこで、文字を入れ替えたりしているうちに“開目耳SHOW”というふうになっていって。
――サウンドの印象とは裏腹の、ちょっとポジティヴな意味合いがあるんですね(笑)。
西田 : 人間的にはむしろ後ろ向きなんですけどね(笑)。基本的にそういうタイプの人達が集まっているんですけど、私達はコンセプトなんかも特に持ち合わせていないんです。それよりも人間の芯の部分というか、その生々しさを大切にしていて。集団というより、個々のアクの強い人間が音をぶつけあうなかで起こる反応を楽しんでいるんです。そのぶつかっていく過程を見たお客さんがどう思って頂いてもいいと思ってます。自分達も自由にやらせてもらっているので。
――根本的な質問をさせていただきたいのですが、バンド結成の経緯を教えて頂けますか。
西田 : もともとこのバンドはギターと前のドラム、あとベース・ヴォーカルがいたんですけど、その人が抜けて募集していたところを私が募集サイトからメッセージを送って、ほぼ新規結成みたいな感じで再スタートしたのが今のバンドですね。ちょうど私も前のバンドを抜けてやり直そうと思っていたタイミングだったんです。
――その前にやっていたバンドも、こういうヘヴィなサウンドを演奏されてるバンドだったんですか。
西田 : それがまったく違くて。どちらかというとダブとかミクスチャーみたいな、西海岸のテイストが強いバンドでした。311とかインキュバスみたい、メジャー・コードで跳ねまわっているような感じでした。シャウトみたいなことをするようになったのはこのバンドに入ってからで。
――音楽性はどのようにして定まっていったんですか。
西田 : 始めた頃はもっと重々しくてネガティヴな感じが強かったんですけど、ドラムが現在の上田に代わってからはすごく幅が広がって、陽でも陰でもない生々しさが出せるようになって。よくライヴを観てくださったお客さんから、少女性とか繊細さみたいなものを感じると言って頂くことがあるんです。すごく嬉しいんですけど、ライヴ中の自分は頭のなかが真っ白な状態なんですよね。だから、きっとその不器用な様を見てもらった結果がその少女性とかにつながるのかなと思って。自分の表現が持っている汚らしさも含めた両面性、悪魔のような刺々しさを見てくれているんだろうなって。心の動揺やうねりもぜんぶひっくるめた感じですね。
――楽曲制作を中心に行っているのはどなたですか。
西田 : とっかかりはギターですね。そこからドラム、ヴォーカルの順に加えられていくんですけど、そこまでいくと、最初の段階とはもはや180度変わっているようなことが多いです。しかもそれがまたライヴごとに変化していくので。アドリブが多いんです。曲も人の気持ちみたいにどんどん変わっていく。私達に一貫性はないと言ってもいいくらいですね(笑)。
――では、西田さんはどのようにして現在の表現方法を築いていったのでしょう。
西田 : たとえば、スーパーの生鮮コーナーで袋詰めされて、きっちりラップをかけて売られているミンチがあるじゃないですか。私、あれをプニプニ触るのが小さい頃から好きで、親からよく怒られてたんです(笑)。あの、爪をクッと食いこませたときに割れるか割れないかっていう感触に、すごくどきどきしていた。その危なっかしさに感じるような高揚感が音楽にもあって。自分が聴いてきた音楽を振り返ってみても、そういうものを感じるバンドが多いかもしれない。日本のバンドだとSuper Junky Monkeyがすごく好きで、影響も受けています。揺さぶれるような、かきむしられるような、音と言葉だけでは表せないものが伝わってくるんですよね。
このままこの人の目を見続けたらどうなるんだろう
――歌にはいつ頃から関心をもつようになったんですか。
西田 : 小さいときから歌や生活音のノイズが好きで。いつもお風呂で歌ってたり、合唱コンクールとかの練習も一生懸命やっていましたね。中学校の帰り道に大声で歌っていたら、近所のおばちゃんに「あら、上手ね」と言われたのが嬉しかったり(笑)。中学校の文化祭で初めてバンドをやったんですけど、その時は吹奏楽部に入っていたから、サックスと歌をやっていたんです。その時がきっかけになるのかな。とにかく、歌っているとしっくりくる感覚がずっとあって、それが続いていまに至っているんだと思います。
――高揚感とおっしゃっていましたけど、その裏にはきっと痛みやコンプレックスなどもあったんじゃないかと思うんですが。
西田 : 99.9パーセントがコンプレックスかもしれないですね。人見知りだし、肌が弱いし、こういうインタヴューされても話がまとめられないこともそう。
――(笑)。そんなことないですよ。よく伝わってますよ。
西田 : (笑)。だから、心配性ですね。いちいちこの世の終わりみたいに感じちゃうというか。明日や、今日これからのことなんかを考えるとつらくなったり。でも実際に次の日を迎えるとけろっと忘れてるんですけどね(笑)。
―――不安定さと楽天性が表裏にあるんですね。
西田 : あぁ、そうなのかなぁ。それがタイミングよく入れ変わってくれないんですよね(笑)。でも、そのどちらもリラックスして解放できるのがライヴなのかもしれません。楽曲に合わせて歌っているつもりはなくて、ライヴ1回毎に新しく作り直しているような意識なので、音源とは私の歌もまったく違ったものになるし、メンバーもそれを理解して寄り添ってくれているので。ライヴもとにかくプロセスがめちゃくちゃなんです。セットリストも当たり前のように変わるし。メンバーにも告げず、そのへんにあるパイプ椅子を持ってきて一人で歌いだしちゃう時もあったり(笑)。その瞬間はメンバーも「え!?」とはなるんですけど(笑)。私自身もなにか意図があってやっているわけではなくて。
――ステージ上にいるとお客さんやメンバーも意識になくなるのかな。
西田 : お客さんの目を見ると燃えるタイプではあるんです。だからコミュニケーションを取りたいっていう気持ちはあるんですけど、いつの間にかとんでもないところに登っていたり、ドラム・セットに突っ込んで足の皮が剥けていたりして(笑)。だから、たしかに意識がなくなっちゃうのかな。
――お客さんの目を見ると燃えるっていうのが興味深いですね(笑)。
西田 : このままこの人の目を見続けたらどうなるんだろうって思うんですよね。そこもスリルなんだと思う。それこそ、自分がお肉のビニール・パックになっちゃったかと思えば、それを突く立場になっていたり、ロールプレイングが曲中でコロコロ変わってしまうんです。
――(笑)。なるほど。
西田 : 私はバンドが好きなので自分ではやらないんですけど、弾き語りをやっている知り合いとかを見ると、自分のモチヴェーションも上がります。音楽に限らず、モノづくりをやっている身近な知人に感化されることは多くて。ライヴ・ハウスにもお客さんとして行くのが好きなので。
――それは自分の表現に還元したいっていう気持ちもあってのこと?
西田 : 還元しようと思っても出来ないんですよ(笑)。刺激されたことでまた想像力を広げてみるんですけど、結局はいまの私みたいな感じになっちゃう。表現のアイテムを増やしたいとは思っているんですけどね。たとえば、私には絵を描いている友達がいるんですけど、その子はもともと私と同じ音楽学校に通っていて、バンドもやっていたんです。でも最終的にその子は「私は音が聴こえてくるような絵が描きたい」といって、ライヴ・ハウスのスタッフをしながら、自分のアート・チームをつくって、いろんなバンドのジャケットや広告を制作したりしていて。つまり、絵の方向にいっても、音楽からは切り離されていなかったんですね。そういう考え方もあるんだなって思った。そういうものを見せつけられると、私もこうしなきゃってつい思っちゃうんです。詞を書いていても、すごく義務感を感じることもあって。
――その作詞という作業にはどうやって接しているんでしょうか。
西田 : 日本語と英語が半々くらいで、とりあえず自分が歌った感じと人が聴いた感じがどちらも気持ちいいポイントを探しているというか。聴覚的な部分を意識していますね。共感してもらおうという意識はまったくないです。自分の曲を並べても一貫性がないし、その時々の妄想やインスピレーション、願望、不満がもとになっていくから、ぜんぶバラバラで。
――理解してほしいとも思わないんだ?
西田 : やっぱりライヴあっての歌なので、詞というよりも、ライヴで歌われた時の響きが大事なんです。だから、やっぱり楽器の音と同じなんですよね。もし歌詞の内容を気にしてもらえたら、それはそれですごく嬉しいんですけど。
――今日はいらしてないメンバーお二人との関係性はどのようなものなんでしょう。
西田 : 最初は苦手でした(笑)。でもいまは、3人それぞれの息遣いとか、会話ではない部分での波長があって。それが合わないときも面白いんです。それぞれがレスポンスし合っている感じが面白くて。こういう相手はなかなか他にいないだろうなと思っています。いまは最高のメンバーが揃っていると思う。なにより、私が自由にやらせてもらえているのは二人がいてこそのものなので。
――では、そんなカイモクシジョウにとって、音源をリリースするということはどのような意味をもつことでしょうか。
西田 : 前にも自主制作で出してはいるんですけど、そのときとはやっぱり気持ちが違いますね。でも、楽しんでほしいっていうのもなんか違くて。やっぱりライヴに来てほしいから、そのためのツールなのかな。やっぱり人の気持ちが常に変わっていくことと同じで、毎日向かい合う度に違う表情が見えてくるんですよね。それでも、この音源は限りなくいまの自分に近い姿を収められたと思っています。これから先はまったく見当がつかないです。さっきのお肉の話を同じで、それがスリルや高揚につながるから。そういう危なっかしい一面って、誰にでもありますよね。そこを私達の音楽から感じてもらえたらいいなって。それがポジティヴでもネガティヴでもかまわないから。私ももっと自分のいろんな面をもっと見つけていきたいです。
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デス、ゲス、オペラ声による3ボーカル、ツイン・ヴァイオリン、ヴィオラ、ピアノ、ツイン・ギター、ベース、DJからなるブルータル・オーケストラ、Vampillia。圧倒的なライヴ・パフォーマンスは国内外に話題を呼び、現場での混乱を巻き起こし続ける彼らの、貴重な音源。必聴。
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Napalm Death / From Enslavement To Obliteration
怒濤のようなブラストビートに歪んだベースとギター、そして猛烈なスピードのボーカル。他のバンドにはない、圧倒的な強度。Napalm Deathが、長い間、第一線で活躍し続ける所以を堂々と発揮した渾身の一枚。
LIVE SCHEDULE
2012年9月14日@新宿 Live Freak
2012年9月21日@新宿 ANTIKNOCK
2012年9月26日@関内 B.B.STREET
2012年10月3日@両国 SUNRIZE
2012年10月10日@立川 BABEL
2012年10月12日@新松戸 FIREBIRD
2012年10月19日@新宿 ANTIKNOCK
2012年10月21日@群馬 SUNBURST
2012年10月25日@稲毛 K's Dream
2012年10月31日@四谷 Outbreak!
2012年11月9日@甲府 KAZOO HALL
2012年11月11日@越谷 EASYGOINGS
2012年11月17日@池袋 Adm
2012年11月29日@吉祥寺 CRESCHENDO
2012年12月5日@四谷 Outbreak!
PROFILE
ソノ手の映画を観た時に感じる背徳的な美感覚と自らをかきむしりたくなる程の衝動。まさか所謂ロック・バンドに再現可能だとは思いも寄らなかった。驚愕のレンジを誇る夏海のウルトラ・ヴォイスはまるで暗号化された宛先不明のポエトリーを読んでる気分だ。そこには外タレも裸足で逃げ出すパワー・ヒッター、上田のドラムスと対照的にエフェクト要塞を巧みに操る高橋のギターが音の螺旋をつむぐ。本人らが意図してるかどうかはわからないが、国内でいうところのCOCCO、鬼束ちひろなどに代表されるであろう"やや病的"な歌唱力を持ちながらも90年代以降のオルタナティヴ・メタル・ムーヴメントの先駆けであったKORNやDeftonesから受け継いだ強烈なウネリが渾然一体となっている。 カイモクジショウは特定のシーンを持たずに活動してきた為、あらゆるイベンターからはその異質なパフォーマンスを"対バン殺し"とまで言わしめた。確かに彼らのサウンドの核を占めるのは到底、理屈では敵わない"念のようなモノ"なのだから、そう呼ばれても無理はない。それは例えるなら高い塔に幽閉されたままの少女、森の奥の湖に浮かぶ無人のボート、七色の羽粉を振りまく蝶々とつむじ風、、、あらゆるモノを聴き手に連想させながらも浮世 (現世)とファンタジーを何度も何度も行き来している内に、段々とトリック・アートの世界を彷徨っているような感覚に陥るだろう。そもそも僕らが何を求めてカイモクジショウに触れるべきかはハッキリ言ってこの際どうでも良いのである。音塊の迷宮へと彼らは手招きしている。そこに出口はない。