THIS IS JAPAN、ひとつの到達点──新ミニ・アルバムにてストレートにメロディで刺す"王道"への挑戦

1980年代のXTCに代表されるポスト・パンク、FUGAZIなどのポスト・ハードコアの血を色濃く感じさせるサウンド。ツイン・ヴォーカル&ツイン・ギターの4人組バンド、THIS IS JAPANより2年ぶりに新作が届いた。いや、これがめちゃくちゃかっこいい! ライヴを積み上げながらそのセンスを磨きあげる中で作り上げられたミニ・アルバム『DISTORTION』は、そのエキセントリックで尖ったリズムも、挑発的なリリックも、エモーショナルなヴォーカルも何ひとつ陰ることがないまま、非常にクリアで耳通しが良い。とかくリード曲の「GALAXY」のストレートさと言ったら。彼らの変化を感じさせる新作、配信と共にインタヴューで切り込みます。

THIS IS JAPAN / DISTORTION
【Track List】
01. GALAXY
02. SuperEnough, HyperYoung.
03. スーパーマーケット
04. カンタンなビートにしなきゃ踊れないのか
05. TELEVISION
06. White City
07. D.I.Y.

【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
単曲 257円(税込) / アルバム 1,750円(税込)

THIS IS JAPAN / GALAXY

INTERVIEW : THIS IS JAPAN

ほかの人と何か違った音楽を奏でたい。その思いを抱いていたTHIS IS JAPANはオルタナティヴやポスト・パンク、ニューウェーヴといったジャンルの音楽に手を伸ばし、それらを自分の一部にしようと実験を繰り返す。そうして2年前に生み出されたのが1stアルバム『THIS IS JAPAN TIMES』だった。

そして2016年8月、彼らは新作『DISTORTION』をリリースする。これは前作のストレンジな要素をさらに突き進めた側面もみせつつ、これまでバンドが見向きもしなかった王道のロック&パワーポップに改めてチャレンジした作品でもある。なぜそうした方向へと進んだろうか。

今回のインタヴューでは改めて4人の結成からの歩みを追うことで、結果的にTHIS IS JAPANの音楽に対するアティテュードに光を当てる内容となった。

インタヴュー&文 : 鶯巣大介

とにかく上がるものをやりたい。ダイナソーJr. とかピクシーズ、キャップン・ジャズとか、いわゆる90年代のオルタナ

──THIS IS JAPANは2011年に大学のサークルの先輩、後輩で結成されたバンドだそうですね。どういうきっかけがあってバンドは誕生したんでしょう。

杉森ジャック(以下、ジャック) : 俺が前にやっていたバンドが卒業とともに活動休止に近い形になったので、そのタイミングでかな。新しいバンドがやりたいっていうシンプルな気持ちがあって。メンバーはプレイヤーとして云々っていうよりか一緒にいて気の合う仲間4人って感じで。

koyabin : 僕らがいたのはコピーバンドのサークルで。そこで一緒にバンドを組んでたんですよ。

this is かわむら(以下、かわむら) : サークルのなかでも僕らは特にオルタナ好きで。

ジャック : koyabinとかわむらと水元の他に、プラスもう1人いたんですけど、当時はその5人でFUGAZIをやったりしましたね。かわむらとはサークルの中で1番バンドを一緒に組んでて、50バンドくらいコピーしたり。俺とkoyabinは先輩後輩の関係だけど住んでるところがお互い下北だし、好きな音楽の趣味が近かったんで仲が良くて。だから新しいバンドを組むときはkoyabinとかわむらとやろうって気持ちが最初からありましたね。

koyabin : しょっちゅう遊んでた。だから一緒にバンドをやるっていうのはあまりに自然でしたね。

水元 : そのころ僕はなんで誘われないのかなってちょっと思ってましたね(笑)。まだかなって。そう言うとなんか可愛いやつみたいですけど、(ジャックが)「誘おうと思ってるけど、どうしようかな」みたいな思わせぶりな感じで言ってくるんですよ。

ジャック : あ、そうだった。俺と水元とkoyabinでブッチャーズ(bloodthirsty butchers)もやったことあるんですけど、ディスジャパを組むとき2人(かわむら、koyabin)はすぐに決まって、そのあとは水元じゃなくて、別の先輩を入れようかなと最初は思っていて。でもこの4人でいるときの雰囲気がいいなと思って最終的には水元に声かけて。

──結成以前から4人の共通項としてオルタナティヴ・ロックがあったと思うんですけど、初めに目指していた音像はどんなものでした?

ジャック : このバンドはやってる側がとにかく上がるものをやりたいって思ってました。ダイナソーJr. とかピクシーズ、キャップン・ジャズとか、いわゆる90年代のオルタナというか。ギターがでかくて疾走感があってっていうイメージがありましたね。

曲を書く人が1人でも2人でも、なんなら4人でも俺は全然抵抗がない

──2014年リリースの1st『THIS IS JAPAN TIMES』に収録されている「TAXI DRIVER」は1回目のライヴからやっている曲だそうですね。バンドが始まった当初はこういうタイプの曲が多かった?

かわむら : 最初はもっとゴチャゴチャしてて、コミックバンド寄りの音だったと思うんです。

ジャック : ギターの音はすごくでかかったし、ラップもやるし、思いつきをどんどん形にして、やれることは全部やるって感じで。ぐちゃぐちゃしてたかな。最初はちょっとずつ見つけた武器を磨いていくっていう作業でした。

──ラップや語りのような歌い方は今作にも残っている部分ですよね。そこも何かの影響を受けた?

ジャック : 俺はヒップホップっていうと、Shing02とTHA BLUE HERBとかしか聴いてないんです。FUGAZIもそうですけど、この2つには「いままでに聴いたことがない、なんか新しいぞ」って部分があって。俺の好きなバンドに近いなと思っていたんですね。ECDさんとかもそう。ヒップホップだけどオルタナティヴだなぁと。この感じでラップをやってみたらできるかもしれないって思って。

──THIS IS JAPANはジャックさんとkoyabinさんの2人がソングライターで、ともにヴォーカルも担当している点も大きな特徴のひとつですよね。

ジャック : 最初から2人で曲を作るっていうコンセプトがあったというより、koyabinに「曲を持ってきて」って言ってみたら、その曲が意外としっくりきたので、そのまま続いてる感じですね。俺、XTCが好きなんです。XTCにはソングライターが2人いるじゃないですか。曲を書く人が1人でも2人でも、なんなら4人でも俺は全然抵抗がないタイプです。

かわむら : それもやってみておもしろくなったから続いてるんだよね。

ジャック : うん。それもkoyabinに「自分の曲だから自分で歌ってみなよ」って言ってやってみたら意外と良くて。それでツイン・ヴォーカルになったし、なんでも試していくっていうところはあるよね。だから実験してばかりだったかな。

──前作である1stはリフとリフが絡み合っていたり、ひねくれていてストレンジなアルバムだなという印象でした。積極的にいろんな要素を試して取り入れていくバンドのスタイルを思えば、その魅力がしっかりと反映された作品と言えるかもしれませんね。

ジャック : これは当時のベスト盤かな。アレンジに関しては、やっぱり俺は元々ギタリストだし、koyabinもギタリストなので、ギターのフレーズに絶対のこだわりがあったんです。

かわむら : ベースとドラムは完全にアレンジを一任されていますね。もちろんデモの段階で、コードとかある程度は決まってて原型はあるんですけど。

水元 : 前作のころは普通にルートだけ弾くのはあんまり… って感じで。ベースだけを聴いてもおもしろくしたくて、ギターに合わせて動いてみたり、ほかの人がやらないようなことをやりたいなと思ってました。

かわむら : 逆にドラムはそこまで凝らずにシンプルにやろうと心がけたのを覚えてます。自分はとにかくキレと疾走感があればいいかなと思って。ほかの3人は曲に対して足して足してって感じで、引くことを知らないから(笑)。そこから一歩引いていくのが僕の役目なのかなと。

「このバンドはメロディでぶっ刺せる可能性があるのかも」って気づけた

──では新作の話に移りましょう。結成から辿ってみると、『DISTORTION』はこれまでと比べて音楽性が変化した部分があるなと感じていて。1曲目「GALAXY」から歌メロが立ったキャッチーな楽曲になっていますよね。

ジャック : さっきストレンジって言っていたように、前はとりあえず曲でびっくりさせないとかっこよくならないって思ってた部分があって。でも前のアルバムの制作中、最後にできたのが「アメリカのカー」だったんですけど、これが自分のなかで転換点になったんですよね。元々自分はブッチャーズ、eastern youthみたいにストレートに刺さる歌っていいなって気持ちがあったので、そういう曲も作ってみようとして。それまではこのバンドでやったら違和感が出ると思ってたんですけど、いわゆる歌モノをやっても、ちゃんとディスジャパの音になるんだなっていうのが「アメリカのカー」でわかって。だから前作の最後の最後に「このバンドはメロディでぶっ刺せる可能性があるのかも」って気づけたんです。


THIS IS JAPAN / アメリカのカー

koyabin : いろいろゴチャゴチャとやったあとだからこそ、わりと王道な曲をやっても、それまでのものが活かされるというか。ディスジャパ感が出るんだと思います。

──逆に言えば、以前は歌を前に出すような曲から逃げて、変わったアレンジの方向に走る部分があった?

ジャック : 逃げるっていうとちょっと響きが悪いけど、でも歌モノやってもつまんないなって思ってました。歌がめっちゃ上手いバンドでもないし、普通のことをやっても全然おもしろくないし、どのバンドでも替わりが利くでしょって。

──転機となった「アメリカのカー」のあとにどの曲ができましたか?

ジャック : 次にできたのは「カンタンなビートにしなきゃ踊れないのか」ですね。これは「TAXI DRIVER」みたいに、自分のなかの勢いから生まれた曲をもう1回作りたいと思っていて。だけどデモの段階ではどストレートで青臭すぎるかなと感じていたんです。でもバンドに持っていったらアイデアが出てくるんです。たしかメロをラップにしろってかわむらが言った。「そうしたほうがバランスが取れるでしょ」って。

──その“バランスが取れる”っていうのは?

ジャック : ストレートな曲だけど、その青臭さがいい感じに消えて、ディスジャパのストレンジ感が入ったものになるというか。この曲ができてから、俺はガチャガチャとした曲の方向よりも、ストレートな曲にディスジャパの成分を入れて聴かせる方向でやってみてもいいんじゃないかなと思えた。つまりいわゆる王道な曲に寄せても戦えるっていう自信がこのころに生まれました。

かわむら : その自信が「GALAXY」に繋がったかな。

ジャック : そう。そのあとに「SuperEnough, HyperYoung.」を作って、次に「GALAXY」。これはディスジャパのなかで最もストレートな曲だと思うんですよ。前はこういう曲じゃ勝負できないと思ってたけど、いまはむしろ自分のなかの何かをぶつけられる曲ができたなと。

水元 : 曲自体がシンプルになったし、僕もそれに合わせて変わってきたというか。全編でおもしろいベースを弾くよりも要所でそれを出していったほうが、際立つなと思うようになってきました。

koyabin : うん。曲がシンプルになったからといって、こだわりを捨てたわけじゃなくてね。

ジャック : アレでしょ、自分のパートの変なこだわりをずっと「どや! どや!」って見せるんじゃなくて、ここぞというときにちょっと出す。そうすると刺さるっていう話だよね。武器を磨いて磨いて、鋭くしていく感じに近い。

あのころ追いかけていたものをいまの自分たちならやれる

──なるほど。今作は前半4曲をジャックさん、後半3曲をkoyabinさんが作曲していますよね。おもしろいことに2人の曲の雰囲気は全然違うんですよね。後半はポストパンク調のものが入っていたり、前作のストレンジな部分を踏襲する面が見られて、結果として幅広い作品になっているなと思いました。

koyabin : そうですね。でもむしろ後半は最近の曲なんです。

ジャック : いままで2人で同じような曲を作ってたんですけど、俺が王道寄りの曲を持ってくるようになったから、koyabinはサウンドで魅せるものを作ってきたんじゃないかなと思っていて。棲み分けが前よりできてきた感じはするよね。

koyabin : あ、そうかもしれないですね。今回は杉森さんがメロディアス、キャッチーな歌モノをやってるから、じゃあ僕はヘンな曲を作ろうと思ってた部分はあるかもしれない。

──そうか、そこでもバランスをとっているんですね(笑)。ちなみに歌詞についてですが、以前「言いたいことはない」とおっしゃってましたよね。でも「カンタンなビートにしなきゃ踊れないのか」を聴くとそうは思えなくて。これはタイトルからも強い意思を感じるんですが。

ジャック : どうだろう(笑)? でも、これはいま思えば踊ることについて何か言いたいっていうより、「踊りたいんだったら、どんな曲でも踊ればいいじゃん」って気持ちで。例えばこういう曲調がウケるとか、みんなが聴いてるから聴こうとか、そういう意思とか意図とかに縛られた曲じゃなくて、自然な曲がいいと思ってるんです。俺は映画が好きなんですけど、ほとんどヒューマン映画は観ないんです。なぜかと言うと「はい、ここで感動してください」って部分があったり、「いい話でしたよね」って感じでBGMが流れ始めると「おい!」ってなるわけですよ。そこに狙った意図だったり、見えなくていいものが見えてくるから鬱陶しくなるんです。

──なるほど。THIS IS JAPANは意図して流行りにのったりするより、自分たちの好きな音楽を自然に出していくバンドだなって見ていても思いますよ。

かわむら : そうですね。僕らは話し合いを重ねたり、何か意図してどこかの方向に進んでいくというよりも、2人の作曲のなかで自然に生まれたほうへ進んでいく。そうしていま形になってる部分はあるかな。

──自然と出てきたものはやっぱり、みなさんが好きなオルタナティヴっていう音楽なんですよね。

ジャック : やっぱりロックと初めて出会った10代のころにかっこいいなと思ったものをいま送り込みたいと思っていて。あのころ聴いていたものってなんでかわかんないけど最強だなって。年々その気持ちが強くなってきてる。思わず拳が突き上がるほど音が死ぬほどでかくて、でもメロディは良くてっていうもの、あのころ追いかけていたものをいまの自分たちならやれるっていう気持ちがあるんですよね。オルタナティヴロックが原点なんです。いろんな音楽を自分なりに聴いてきたけど、結局自分のなかの揺るがない芯はそこだから。

水元 : 僕はやっぱり感情がこもった音楽が好きで、オルタナティヴって季節感だったり人の気持ちだったり、そういうものがすごく伝わりやすい音楽だと思うんですよ。そういうところが好きなんですよね。だからそれをいまやりたいなと思っていて。

ジャック : わかる。オルタナなバンドって「俺はこれ好きだからやってんだよ」っていう気持ちがすごくあるんです。だからさっきの映画の話じゃないけど、意図的な部分がなくて自然だし、すごく伝わりやすいと思うんです。今回はそういう作品になったと思いますね。

LIVE INFORMATION

『DISTORTION』発売記念アウトストアライヴ
2016年8月20日(土)@下北沢SHELTER
開場 12:00 / 開演 12:30
出演 : THIS IS JAPAN
※『DISTORTION』購入者対象。CD帯+2drinkで参加OK。

POLTA × THIS IS JAPAN CD発売記念イベント
2016年︎9月9日(金)@dues新宿
開場 19:00 / 開演 19:30
出演 : THIS IS JAPAN、POLTA
※diskunion対象店舗でPOLTA『HELLO AGAIN』またはTHIS IS JAPAN『DISTORTION』をご購入の方に先着でイベント参加券を配布。

NOT FORMAL vol.2 『DISTORTION』release party
2016年9月25日(日)@渋谷O-NEST
開場 18:00 / 開演 18:30
出演 : THIS IS JAPAN / ハラフロムヘル and more

Next Music From Tokyo vol.9
2016年10月5日@Montreal Divan Orange
2016年10月7日@Toronto Soybomb
2016年10月8日@Toronto Lee’s Palace
2016年10月10日@Vancouver Biltmore Cabaret
出演 : THIS IS JAPAN / Maison book girl / jizue / 羊文学 / 虎の子ラミー

KITAZAWA TYPHOON 2016
2016年︎10月16日(日)@下北沢SHELTER / CAVE-BE / MOSAiC / CLUB251 / LIVEHOLIC / rpm / ReG / BASEMENT BAR

PROFILE

THIS IS JAPAN

THIS IS JAPAN、通称ディスジャパ。

2011年大学の先輩後輩である4人が、在学中にTHIS IS JAPANを結成。ツインヴォーカル、ツインギターが特徴的なバンド。

2012年9月30日、1stミニ・アルバム『ジャポニカ学習装置』、2013年10月26日、2ndミニ・アルバム『URUSEI BOKURA』発売。2014年8月14日には全国流通の1stフル・アルバム『THIS IS JAPAN TIMES』を発売。

ライヴは年間40〜50本行い、「下北沢サウンドクルージング2014」、「CONNECT歌舞伎町Music Festival」、「パナフェス!! 2015」、「でらロックフェスティバル2016」、「Beat Happening! CIRCUIT PANIC」など、フェスにも多く出演。今年7月に開催したハラフロムヘルとの共同企画〈トーキョーイルマティックス〉では151人の動員を記録し、現時点で2016年の新宿Motionの最多動員を記録。

XTCやFUGAZI他、90年代の日本のオルタナティブ・シーンに影響を受けたサウンドに、ストイック且つロマンティックなディスジャパマナーを盛り込み、2010年代のオルタナティブ・ロック・シーンに一石を投じる。ディスジャパのサウンドはバンドマンを中心にじわじわと拡散中。

2年間の制作準備を経て、2016年8月3日全国流通2枚目となるミニ・アルバム『DISTORTION』をリリース。

>>THIS IS JAPAN Official HP

この記事の筆者
鶯巣 大介

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