ロストフィルムの2017年、新たな門出──ライヴ2作品リリース、自主企画イベントも

松岡直哉(vo)

約1年間、活動をほぼ休止していたロストフィルムが2016年末、そして2017年のスタートとともに、新たな門出を飾る。名古屋を拠点に、AORやソウル、ファンクといった要素を入れ込み、流麗なポップスを生み出す彼らだが、ひさびさの作品として昨年末にはライヴ作品を2種リリース。そして2017年1発目は、15回目となる彼らの自主企画イベント「めっちゃええかんじ」を1月21日開催する。2017年、確実に名古屋のインディ・シーンを中心に活発な活動へと乗り出しそうな注目のバンドの中心人物、松岡直哉にインタヴューを敢行した。


名物自主企画イベントも再始動

「めっちゃええかんじ15回目」

2017年1月21日(土)
@名古屋鶴舞KD JAPON

出演:tio、HoSoVoSo、ロストフィルム
会場装飾:AZK

open/start 18:00/19:00
adv/door 2000円/2500円
ご予約
lostfilm2016jpn@gmail.com

予約方法
件名「1/21予約」本文「お名前(カタカナ)・人数・メールアドレス」を入力し送信して下さい。
3日程度で確認メールが届きます。イベント前日まで受付しております。

※返信メール(PCメール)を受信できる設定にてお願いします。予約返信メールの受信拒否、または迷惑メールフォルダに振り分けられる可能性があります。

詳細はロストフィルム公式HPにて
http://lostfilmmusic.com/


ライヴ作品2種を昨年末リリース

2014年の5月ライヴを収録したアルバム
ロストフィルム / LIVEウォーアイニー
【Track List】
01. 世界で一番ウォーアイニー
02. バックビートを走らせろ
03. tululila

【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 162円(税込) / アルバムまとめ購入 486円(税込)



2014年の11月ライヴ・アルバム
ロストフィルム / LIVEうつくしいひと
【Track List】
01. うつくしいひと
02. ラブレター
03. オトナなのに
04. あなたに会いたくて生まれてきた
05. そして、風

【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 162円(税込) / アルバムまとめ購入 810円(税込)

INTERVIEW : 松岡直哉(ロストフィルム)

ロストフィルムというバンドが名古屋にいる。“シティポップスバンド”という肩書きを掲げる彼らは、AORやソウル、ファンクの要素を取り入れたポップス・バンド。活動のキーとなっているのは「好きを詰め込む」「いい歌を作る」。今回話を訊いたフロントマンである松岡直哉は、20代の前半に組んでいたバンドで“嫌な頑張り方”をしてしまったとのこと。そこで得た気づきが彼らの根幹をなしているように思う。

そんなロストフィルムが1年間の活動休止を経て、このたび2枚のライヴ作品をリリース。そして2017年1月、次回で15回目の開催を迎える自主企画〈めっちゃええかんじ〉で再スタートを切る。バンドのこれまでの歩みから、今後の活動に至るまで話を訊いた。

インタヴュー&文 : 鶯巣大介

バンド楽しくやれるかもなぁ

──まずはバンドを結成したところから教えてください。

そもそも僕はシンガー・ソングライター的な感じで弾き語りとかをしていて、2009年に1枚ソロのCDを作ったんですね。いま34歳なんですけど、20代の時は「バンドって面倒くさい」ってずっと思ってたんです。20代前半のとき、初めて本格的に組んだバンドが嫌な頑張り方をしてポシャったことがあって。

──嫌な頑張り方っていうのは「とにかく売れよう」とか?

そうですね。「俺たち頑張ろうぜ!!」みたいな(笑)。楽しいとか、この音楽はおもしろいねっていう発見よりは、何人お客さんがライヴに入っているかとかそういうことばっか気にしてたんです。それで「めんどくせえな」とか「バンドはなるべくやりたくないな」って思っちゃって。でもソロを作っていく過程でサポートで参加してもらったり仲良くなった人たちがいて。それで、いまはバンドに居ないんですけど当時のドラマーと2人でロストフィルムっていう名前で最初の作品(『private films』)を2012年に出しました。そのときは今のギタリスト(落合悠)も参加してました。

──めんどくさいと思っていたバンドを再び始めるまでには、大きな心境の変化があったんじゃないですか?

(ロストフィルムは)「こうやって演奏するほうがかっこいいよね」「この音がかっこいいよね」ってことを自然に共有しながら始まっていったっていうか。そこが前とは違ったかもしれないです。そのときに「こういう感じだったらバンド楽しくやれるかもなぁ」って。

──なるほど。ロストフィルムにとって「楽しんで音楽をやる」っていう部分は重要なポイントと言えそうですね。

好きっていう気持ちでやってるバンドにしたいなって思いますね。その時好きなものを、自然に。

──1stの音源は松岡さんがすべて作詞/作曲していると伺いました。“名古屋発シティポップスバンド”を掲げて、ソウルやファンク、AORを取り入れた楽曲を演奏していますが、そういった音楽を小さいころから聴いていたんですか?

いや、そうでもないんです。中学生くらいのときに最初に買った洋楽アルバムはジミヘンで。まぁ普通にロックですよね。僕は1982年生まれなんですけど、メロコアブームみたいなものがちょうど高校生くらいのころにきていて、最初はグリーン・デイのコピバンをやったり。でもズッタンズッタンってリズムにちょっと飽きちゃって、それから世界各国の怪しい音楽をいろいろ聴いてみたり、サンバチームに入ってシェーカーを振ったりとか(笑)。でも今のギタリストと出会って、明るいソウル、ファンクが好きだなって思うようになって。

──落合さんにいろいろ教えてもらったんですね。

そうですね。落合くんの影響は大きいと思います。僕は「これじゃないと嫌だ!」っていうタイプではあんまりなくて、みんなの様子を見ちゃう人なんですよ。「どういう曲を持っていくとみんながノリ気になるかな」とかって考えたり(笑)。

──ご機嫌を伺うと(笑)。このバンドは松岡さんのソロからスタートしているので、結構ソロ・プロジェクトに近いところがあるのかなって思っていたんですが。

確かにそういう所もあるかも知れないですけど、音楽の中身に関しては割と皆の話を聞きながらですね。メンバーから出てきたアイデアはなるべく拾って作りたいなと。

──ちなみにほかのメンバーの方はどんな音楽が好きなんでしょう。

ベース(菊田隆太朗)とドラム(菊田大二朗)は兄弟なんですよ。ベースのお兄ちゃんの方はずっと吹奏楽をやっていて、優秀で。イギリスの大学でアレンジを勉強してきたんです。なのでコーラスとかハーモニーに強い。メロディーやアレンジにムダがあると修正してくれます。ドラマーの弟はお兄ちゃんと比べるとGRAPEVINE、くるりなどのロックや、シューゲイザーも好きですね。と同時に青山純さん(山下達郎、MISIAに参加)などセッションドラマーの影響も大いに受けています。

──みんな好きな音楽がバラバラですね。それだとみんなを満足させるのって大変じゃないですか(笑)?

そうそうそう! そうなんですよね(笑)。でもそういう制限があったほうが書きやすいっていうか。

バンドは特に休止とかって言ってなくて、気づいたら意外と時間が経っていた

──前作を制作する際に“自分が「間違いなくいい」と思えるもの”を作りたいという思いがあったそうですね。松岡さんにとって「間違いなくいい」音楽は一体どういうものなんでしょうか。

シンプルに「いい歌」ですかね。分かり易くしてダサくしないって難しいと思うんですよね。例えば、今回のライヴ盤にも入ってる「あなたに会いたくて生まれてきた」っていう曲があるんですけど、これ以上ないくらいシンプルな言葉ですよね。でも音楽的な工夫をすることで、シンプルなんだけどちゃんと刺さる曲にする。それが結構テーマになっています。音楽が好きな人にも、特別音楽が好きじゃない友達とかにも、同時に聴いてもらえるように。

──ロストフィルムは1年間の活動休止を経て、今回ライヴ盤を2作品リリースします。こちらは大所帯編成での録音ですが、いつのライヴなんですか?


時期は2014年の5月(『LIVEウォーアイニー』)と11月(『LIVEうつくしいひと』)かな。毎回同じメンバーじゃなかったんで、ミックスが終わってみたら、音の手触りが違って並べて聴くのはちょっとなと。なので別のタイトルとして出したほうが自然かなと思いました。

──2015年にいまの編成になったそうですが、現メンバーはこのライヴには参加していました?

ドラマー以外は演奏してますね。2016年からは、バンドは特に休止とかって言ってなくて。でもメンバーの仕事の都合とかもあって、気づいたら意外と時間が経っていたんです。ずっとライヴ盤出そうと思ってたけど「あれ? タイミングいつだろう」って感じで(笑)。新しいメンバーで新譜を出した後だとややこしいから、その前の精算です。

──そして自主イベント〈めっちゃええかんじ〉で再スタートを切るわけですけど、この日もサポート・メンバーを加えた編成に?

いまは考えてないですね。なるべく4人でできたらいいなと思ってます。

自分らの居場所を自分らで作りたい

──次で15回目の開催となる自主イベントもかなりの回数を重ねています。過去にはOLDE WORLDE、HARCO、赤い靴、SOURが出演したりと、共通項があるゲストを呼んでるんじゃないかなと。何かこだわりはありますか。

単純に自分がすげぇ好きってことです。その人を呼んだらお客さんが入りそうとか、そういうことも大事かも知れないですけど、それよりもまずCDを買って超聴いてたとかがあって。やってみたら赤字になっちゃうこともあるんですけど、それでもやって良かったなと思えるものですね。あとは自分らの居場所を自分らで作りたいなって感じです。

──過去のイベントやバンドの流れを追っていて、ゆるやかな共同体で楽しく音楽をやられてる感じがすごくしたんですよ。そういえば休止してた間に出したソロのEP『誰?ep』(https://soundcloud.com/naoyatee/sets/naoyatee-ep-2016-1)も周りの方々が多数参加してましたよね。この作品にもその流れがあるなと思いました。

そうですね。身近な、気になる人を誘って作っていますね。

──ちなみにそのソロ作ではバンドのサウンドとは打って変わってヒップホップをやっていました。

時間がたっぷりあるからこそ出来ることをトライしようと思ったんです。バンドではシティ・ポップスっていう危険なワードを使ってるんですけど(笑)。でもAORと考えれば、ベニー・シングスとかメイヤー・ホーソーンは重要な人物だと僕は思っていて。実は2人ともヒップホップやクラブに近いところにルーツがあるんですよね。そういうこともあって、僕も個人的にヒップホップを掘りたいと思っていたんです。それまで80年代以降のものを聴いてなかったので、ちょっと自分を調教しようと思って(笑)。バンドとは別の研究を作品にしておこうかなって気持ちがあったんですよ。

──バンドとは無縁ではなかったんですね。じゃあ逆にそういったヒップホップの要素をロストフィルムに反映させたりっていうことはありますか。

そういう意味でいうと、引用ですね。今回出したライヴ盤に「うつくしい人」って曲があるんです。まずジェームス・ブラントっていうイギリスのシンガーソングライターの「You're Beautiful」って有名な曲があって。CMでも使われたし、結婚式でもよくかかるんですよ。友達の結婚式に出た時もそれがかかったんですけど、それにムカツいて(笑)。なんでかってあの曲、本当は嫉妬の曲なんです。結ばれることのない女性に思いを寄せている曲なんですよ。でも皆サビしかみんな聞いてないから、それが結婚式で普通にかかっていて、おかしいなと思って。

──たしかにそうですね(笑)。

で僕も「You're Beautiful」ってことで「うつくしい人」って曲を作って(笑)。オードリー・ヘップバーンの「誰かの美しいところを見つけられる目が美しい」って名言があって、歌詞に引用してるんです。それまでも引用は何となくしてたんですけど、ヒップホップをやってみて意識的になりましたね。

2017年、ロフトフィルムは新作を

──では2017年のバンドの動きについても伺いたいです。まずは再出発となる次の自主企画ですね。

ゲストはtioとHoSoVoSoです。tioはNabowa、jizueもいるレーベル〈bud music〉のインスト・バンドで、僕は好きでよく観に行ってたんですよ。HoSoVoSoくんはいま23歳のシンガー・ソングライターで、ギターの落合くんから紹介してもらったんです。

──そのあとロフトフィルムは新作をリリースっていう流れ?

予定では、3曲くらい録ろうと思っています。曲自体はもう出来てますね。

──どんな曲か教えてもらってもいいですか。

いいですよ。ちょっと聴きますか(笑)? (曲を流しながら)一応僕のなかでは“ディスコ・ファンク3個パック”みたいな感じで。最初は弦とかも入れようかなと思ったんですけど、音数少ないほうが面白いかなと思って、ここからコーラスを足そうかなと。で次の曲はワンループのギターのフレーズがあって、あと間奏でラップしてますね(笑)。ほかにもテンポの遅いものもあって。大体こんな内容になりそうです。

──今日話を聞いていて、すごく楽しんで活動している空気を感じました。一番最初に嫌な頑張り方をしていた時代の話が出てきましたけど、よくある「上京してなんとか売れてやる!」みたいなところとはちょっと違って。

そういうロック・バンド成り上り神話とかはピンとこなくて。いまのロストフィルムに関しては生活するお金はそれぞれ何とかしてくれっていう感じです。貧乏くさいことしたくないし。限られた時間をうまく使って、自分たちが充実した気持ちになれる作品を作って、前よりも多い人に聴いてもらえる知恵を出したいです。

──今後も自分たちがいいと思える音楽を作っていくと。

そうですね。そこは変わってないかもしれないです。20代のときにギターの落合くんと飲んでいて「“いい歌”がいいよね」って話をしてたんです。今も、いい歌だったら、何でもアリかなって思います。

PROFILE

ロストフィルム

名古屋発シティポップスバンド。松岡直哉(vo)、落合悠(gt)、菊田隆太朗(ba)、菊田大二朗(dr)の4人。2012年、アルバム『private films』リリース。2014年、シングルCD「LIVE2014」リリース。2015年9月より現在の編成になる。2016年11月~12月と2か月連続・配信リリース。

>>ロストフィルム アーティスト・ページ

この記事の筆者
鶯巣 大介

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