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2013/7/10~7/16の注目2作品をレビュー!!
今週もたくさんの新譜が入荷しました! 全部は聴いていられない! そんなあなたのために、このコーナーでは、OTOTOY編集部がオススメする今週の推薦盤を2~3枚ピックアップし、ライターによるレビューとともにご紹介いたします。 音源を試聴しながらレビューを読んで、ゆったりとした時間をおたのしみください。あなたとすてきな音楽の出会いがありますよう。
Her Ghost Friend『恋する惑星、果てしない物語』
Her Ghost Friend / 恋する惑星、果てしない物語
【配信形式】
HQD(24bit / 48kHz)、mp3
【価格】
HQD 単曲 200円 / まとめ購入 1,500円
mp3 単曲 150円 / まとめ購入 1,300円
※まとめ購入には歌詞ブックレットがついてきます
Her Ghost Friendが新作『恋する惑星、果てしない物語』をリリースする。
「YMOジュニア」と称されたコスミック・インベンションより、細野晴臣作曲の楽曲カヴァー、自身の楽曲「ルミナスモス」のカノン・ヴァージョン、国内外で話題を呼ぶcokiyuとエレクトロニカ界注目の新人metomeのremixを収録するなど中身の濃い、15曲入りのデラックス・ミニ・アルバムとなっている。
今作全体を見渡すと、惑星、プラネット、月や相対性理論など宇宙を想起させる言葉が多く目につく。 前作『Looking for wonder』リリース時のインタヴューで彼らが、「人と人との出会いも見方を変えれば宇宙的なことと結びつく」と語っていたように、今作で歌わんとしていることの軸は宇宙についての事柄というよりも、その巨大な宇宙を存続させてきた、私たちの身の回りにある恋だ。
Shinobu Onoの可愛らしく純粋無垢な声やファニーなラップに乗って届けられる、わたしからきみへのストレートな言葉、Her Ghost Friendのメルヘンな世界観を支えるキラキラした電子音と心地よいビートが宇宙を漂っているような気持ちへと導いてくれる。どこか切なく甘酸っぱい恋の物語にあふれたアルバムだ。(texy by 鶯巣大介)
デヴィッド・リンチ『The Big Dream (Bonus Tracks Version)』
デヴィッド・リンチ / The Big Dream (Bonus Tracks Version)
【配信形式】
WAV、mp3
【価格】
WAV 単曲 250円 / まとめ購入 2,000円
mp3 単曲 200円 / まとめ購入 1,500円
前作『Crazy Clown Time』からおよそ2年の歳月を経て発表された2ndアルバム。ボブ・ディランのカヴァー「The Ballad of Hollis Brown」以外は、すべてデヴィッド・リンチ本人がプロデュースを担当。本作に対する彼の意気込みの強さが伺える。
シンプルなシーケンスを展開する打ち込み、鈍く沈み込むようなリンチの加工ヴォーカルや淡々とつま弾くギター・サウンドは、うつうつとした印象をリスナーに与える。しかし、つぶやきながらもハスキーなリンチのクセのある唱法や、小気味よいリズム・ビートが、都会的な渋さやうつろに漂う空間描写を巧みに練り込み、不思議と感情を押し殺す無機質さは感じられない。むしろ生き生きとしたリンチの姿を浮かび上げる、繊細ながら絶妙なバランスを誇る快作となった。クラブ・サウンドからのインスピレーションを感じさせる残響効果は、作品全体のコンセプトをより高濃度に作り上げており、閉じきった暗所での、いくばくかの解放感をイメージさせてくれる。日本盤にボーナス・トラックとして収録されている「And Light Shines」では、女性ヴォ―カルをフィーチャー。よりアルバム全体の世界観を強調させる感傷的ナンバーでありながらも、本作品の終わりを告げるのにふさわしい。ここには映画監督はいない。瑞々しくも、どこか寂しげな感性を持ち合わせたミュージシャンが待ち構えている。(text by 高橋拓也)