そしてダンス・ミュージックの喜悦を──クリスタル、1stソロ・アルバムを独占ハイレゾ配信
インディ・ロック・シーンでは(((さらうんど)))のメンバーとして、そしてクラブ・シーンではTraks Boys、もしくはソロのDJとしてその名前が知られるDJ/トラックメイカーのクリスタル(XTAL)。まさにさまざまな垣根を超えたフィールドで活躍する彼が1stソロ・アルバム『Skygazer』をリリースする。リリースは、この国のクラブ・カルチャーに端を発するインディ・レーベルとしては老舗中の老舗、設立から25年を経て、現在でも海外からも高い評価を受ける〈クルーエル〉より。
透き通るシンセのフレーズが極上の高揚感を煽るハウス〜テクノが並ぶダンサブルなアルバム。そこには単なるDJツール以上の楽曲的な魅力に溢れており、またGonnoやFran-Keyといった朋友とも言えるアーティストたちも参加している。OTOTOYでは本作をハイレゾ独占配信を行う(というかいまのところ配信そのものがOTOTOYのみ)。
ソロ以外にも、ここ数年さまざまなプロジェクトにて、多岐に渡るフィールドにて活動するクリスタルに話を訊いた。
XTAL / Skygazer(24bit/44.1kHz)
【Track List】
01. Vanish Into Light (Album Version)
02. Heavenly Overtone (Album Version)
03. Mirror Made Of Rain (Album Version)
04. Unfamiliar Memories feat. Tomoki Kanda/S.Koshi
05. Red To Violet (Album Version)
06. Pihy feat. Fran-Key
07. Break The Dawn (Album Version) feat. S.Koshi
08. Steps On The Wind feat. Gonno
09. Skygazer feat. Crue-l Grand Orchestra
【配信形態】
24bit/44.1kHz
【配信価格】
アルバム 2,160円(税込)
INTERVIEW : XTAL
名義の綴りも新たに届けられた1stソロ・アルバム。アルバムのオリジナル楽曲とともに、これまで〈クルーエル〉や、NY〈DFA〉周辺のアンダーグラウンド・ディスコの牙城となっている〈ビーツ・イン・スペース〉からの12インチの楽曲も収録(12インチ収録楽曲はアルバム用の別ヴァージョンを収録)。ソロとして歩み出したここ数年のキャリアを、そしてDJとしてはじまった彼のダンス・ミュージック・アーティストとしてのキャリアをしっかりと受け止めることのできる、そんなアルバムとなっている。どこまでもジェントルな楽曲に身を任せていると、ダンスのグルーヴとともに一気に高揚していく、そんなテクノ/ハウスのトラックで構成されている。
ここ数年は文中にもあるように、(((さらうんど)))やJintana&Emeraldsなど、いわゆるDJとして彼が主戦場とするテクノやハウスといったジャンルからは遠い部分での活動も多い。すでにDJとして20年近いキャリアを持っているアーティストが、そうした部分で活動をしているというのはなんともおもしろい。しかし、そうした現在のインディ・ロック・シーンも含めて俯瞰してみるとそのキャリアはそこまで特異なものではないこともわかる。2000年代後半には、彼、もしくはその周辺のDJたちが、いまシティ・ポップと呼ばれるような過去の日本の歌謡曲を、いわゆる和モノのレア・グルーヴというよりも、ニュー・ディスコ周辺のエデット・カルチャーのなかでダンスフロアにて「あり」にした(彼らの前に先駆がいなかったわけではないが)。その功績はゆっくりと雪だるまのように大きくなって、いまのインディ・ロック周辺においてもそうした音楽を「あり」にし、影響を与えているのではないかと思うことも多いからだ。
そんななかで、なにせそうしたインディ・シーンの台風の目となっている〈カクバリズム〉の(((さらうんど)))に属しながら、過去には渋谷系を生み出し、そしてクラブ・カルチャーに端を発っし、現在も海外含めて高い評価を受けるリリースをしている唯一のレーベルといってもいい〈クルーエル〉からソロをリリースする。2016年のインディ・シーンの地図にて、このアルバムが指し示す地点は、かなり、すでにおもしろい。
アルバムについて、そして彼が接するさまざまなシーンについて、話を訊いた。
インタヴュー・文 : 河村祐介
編集補助 : 角萌楓
写真 : Takeshi Hirabayashi
ポップスとかバンド的なもの以外の要素の部分で好きに作ったというか
──月並みな質問からですが、このタイミングでアルバムを作ろうと思ったのは?
ソロ名義の12インチ・シングルが〈クルーエル〉から2枚出ていて(2011年「Heavenly Overtone」と2013年「Vanish Into Light」)。2枚目を出したあたりから「アルバムを作りたいな」というのがなんとなく。アメリカの〈ビーツ・イン・スペース〉からも1枚12インチ(2013年「Break The Dawn」)が出て、これも含めてまとめたいなと。それが2015年の頭くらい。瀧見さんに「こんな感じでアルバムを作りたいんですけど」とメールして。(((さらうんど)))とかJintana&Emeraldsとか他のやつもあって、そういうプロジェクトがタイミング的にひと段落したので、ここでまとめたいなと思って。内容的にも、半分はコンピレーション的な意味合いがあるんですが、アルバムでもあるというか。シングルでリリースした楽曲もアルバム用に変えていて、アルバムを念頭にして作った曲も3曲ぐらいあって、そこの整合性は取れているんですけど。
──具体的にその3曲というと?
8曲目「Steps On The Wind feat.Gonno」と、9曲目「Skygazer feat. Crue-l Grand Orchestra」と、Fran-Keyとやった6曲目「Pihy feat. Fran-Key」 その辺がアルバムのために作った曲ですね。なんとなく曲順も見えていて、こんな感じの曲があったらなっていう感じで作った。
──ここ3年くらいは、(((さらうんど)))、Jintana&Emeraldsみたいなのがあって、DJミュージックではなくて、リリースに関してはポップスやインディ・ロック・シーン寄りの活動がわりと非常が多かったと思うんですけど。そこからのフィードバックって何かありますか?
自分の中で、ポップスとかロックとかクラブ・ミュージックとか平行して聴いてきているので、その要素がいろいろ混じっているんですけど、ポップスとかバンド的なものをそっちでやっているので、割と今回の自分のソロはそれ以外の要素の部分で好きに作ったというか。
──またソロ・リリースがはじまったからの、大きい変化でいうと、プライベートでも東京を離れて長野に移住ということがあったと思うんですけど、音作りって何か変わりましたか? 環境が変わって。
最初は、別に変わんないと思っていたんですけど、最近はやっぱり変わったなと思いますね。見ている風景がやっぱり違うんですよね。山とか、空が広いとか、空と山の関係というか、そういうのがバッと見えるヴィジョン、広いというか、開放的というか。そういうのが実は音的にも出ているんじゃないですかね。なんとなく自分の音楽で良いところを考えていくと、風景が広いというか、それがアルバムのタイトルにもかかっているんですけど、『Skygazer』っていう。なので、それは結構あるなと思いますね。
──ソロとしてのブレイクスルーみたいな話をしたときにご自身で考えるものはどれ?
やっぱり最初の「Heavenly Overtone」ですかね。井上薫さんだったり光くんだったり、NOBUくんとかフランソワ・ケヴォーキアンもかけてくれていたみたいで。自分の好きなDJの人たちがかけてくれていて。もちろん一番最初に出せたっていうのはやっぱりある。「自分で作っていけるかな」って思えたので。
──あの曲があって、ある種ソロの方向性が決まったというか、そういうことはある?
そうですね。あの曲は、自分のハウス的な部分とか、ちょっとトランシーなところとか、それをバチっと全部だせたというか、一番最初に。
──いまトランシーって言葉が出ましたけど、DJプレイのときには構成としてもうちょっとドープなミニマル的なものもかけるわけじゃないですか、クリスタルさんの作品は割とある程度メロディであったり、トランス感覚であったりっていうのがどの曲もひとつの特徴としてあると思うんですけど、それっていうのはやっぱりご自分で意識はしているんですか?
そうですね。うーん。そういう風になっちゃうんですよね。でも、そこはやっぱり意識しているのかな……。たとえば単なるDJツール的なものを作ろうっていう風にはならない。もちろん好きで使うんですけど、なぜか自分で作るときにはそうはならないんですよね……。自分が一番好きな人たちというか「こういう音楽を自分も作りたいな」という人たちの音がやっぱりそういう音なので、そう考えると意識的とも言えますね。
アルバムのコラボレーターたち
──今回わりとコラボーレートしているアーティストも多いのでそれぞれその経緯みたいなものも。Fran-Key。久々に世に現れたというか。
たまにFran-Keyから、急に音源ファイルが送られてくることがあって。唐突に、断片が(笑)。そのなかのひとつをつかって一緒に作ったというか。だからわりと今回は自分から誘った感じで。やっぱり、もともと〈クルーエル〉との関わりでできたのがFran-Keyとの縁だったりするので、そういうのも含めてやりたいなと思いましたね。Fran-Keyから送られてきたパーツを僕がまとめる、組み立てるというか、それを元に作りました。
──リミックス的な感覚の方が強い?
その曲はそうですね。Fran-KeyはたぶんいまiPadしか持っていないから。
──なるほど(笑)。あと、Gonnoさんはどんな感じで作ったんですか?
3年前くらいに、一緒にやろうって思っていて。僕から投げたパーツというのがあったんですけど進んでなくて。それでこのアルバムを作るにあたって、僕がもう1回やろうよって。自分がベーシックなものを作って、Gonnoくんに投げて、そこからGonnoくんから返ってきて、そのあと1回Gonnoくんの家にも行って、最後に自分がまとめて。
──あとは〈ビーツ・イン・スペース〉の曲で一緒にやっているKoshiさん。
彼は……高校の同じクラスの同級生で(笑)。地元の友だちです。一緒に僕のうちで作業するっていう。〈Human Race Nation〉というミニマル・テクノのレーベルをやってて。彼がモトとなる素材を持ってきて、それをいろいろいじって仕上げていくんですよ。
瀧見憲司(同席していたレーベル・オーナー) : コシくんってキーボーディストじゃないんだ? 彼が参加している曲、大体ピアノが入ってるからそうだと思ってた。
違いますね。単に、サンプルしたいCDを持ってくる人(笑)。作業は僕がしていて、彼は後ろで聴いている。でもその視点が意外と必要というか。こいつをちょっと笑わせるにはどうしようかなとか(笑)。ひとりでやっているとやっぱりそういう発想にはならないので。重要なんですよね。
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──なるほど。神田さんとの4曲目の「Unfamiliar Memories feat.Tomoki Kanda/S.Koshi」でも一緒にやられていますけど。
なんか「こういうのは自分だけだったら持ってこないだろうな」というのを持ってくるんですよ。たとえば4曲目は、自分でいちから作ってもこうはならなかったかなって思うところがあって、そういうところが、刺激というか、コシくんと一緒にやる理由ですね。
──この4曲目がアルバムを通して聴くと印象的。この曲についてもっと詳しく聞きたいんですけど、ブラジルっぽくもあり、ラテンっぽくもあり、それでいてアクフェンみたいな、カットアップ・ファンクみたいな部分もあって、謎の曲なんですけど、あれはどういう風にうまれたんですか?
コシがもってきたネタがあって、それがちょっとスパニッシュみたいなギタリスト。まったく自分の趣味にない、普段聴かないものをいきなり持ってきて。そこからいろいろいじっているうちにこうなって。そのとき、自分とコシの間ではデリック・メイの顔が頭に浮かんでいて。彼すごくデリック・メイが好きなので、「デリック・メイがプレイしてくれたらいいよね」みたいな感じで作っていて。あとは〈クルーエル〉から出ている神田さんのアルバムがすごく好きで。あの神田さんの雰囲気をここにいれたらいいんじゃないかと思って、神田さんに投げて、それでいろいろ入れて戻ってきたら、すごくかっこよかったっていう。
──なんかやっぱりこの曲は引っかかりますもんね。アルバム全体を通して聴いて、テクノであるとかハウスであるとか、そういうもののなかに突然入ってくることで、差し色になるというか。
そういう曲を入れたくなるんですよね……。ずっと四つ打ちじゃないというか。
──表題曲の9曲目の「Skygazer feat. Crue-l Grand Orchestra」。これもノンビート系で、どういうところから着想を得たんですか?
これは完全にアルバムを念頭に置いて作った曲なんですけど、〈クルーエル〉からせっかく出すので、〈クルーエル〉の過去の作品をもとにして作るというのがアイディアとしてあったんです。これはクルーエル・グランド・オーケストラの『III』に入っている曲をもとにしていて。わりとストリングスとかギターとかはまんまというか、それぞれのフレーズ・サンプルをして、最初にリエディットみたいな感じで構成を作る。そこからビートを入れたりという感じで。だから作業的にはリミックスに近いですね。
インディ・ロックとダンス・シーンをDJの側から結ぶ存在
──なるほど、アルバムの中身から、それを取り巻く状況みたいなことも話もしたいんですが。もともとはDJカルチャーにその活動の端を発して、(((さらうんど)))であるとか、Jintana&Emeraldsみたいなところでも活動をしているわけですが、いま(((さらうんど)))がある意味で足場にしているインディ・ロック・シーンみたいなところでダンス・ミュージックが必要とされている感じみたいなのって感じます?
そりゃあ、やっぱり少数じゃないですか? どっちも行っている人っていうのもいますけど。あとはクラブ・ミュージックにもいろいろあるじゃないですか。ドーブなものからカジュアルなものまで。
──多分、普通のインディ・ロックを聴く子からしたら、(((さらうんど)))ってむしろそういうポップなクラブ・ミュージックに聴こえるというか。
ただ、(((さらうんど)))とかをやって思うのは、やっぱりまだロックバンドを中心に聴きに来ている人たちにとっては、この打ち込みっていうスタイルが、なにかいつも聴いているバンドとは違うものとして捉えられているっていうのを感じるんですよね。その辺の意識がまだ、固定観念みたいなのがあるのかなっていう感じはしますね。そもそも(((さらうんど)))はちょっと異端だけど。
──たとえば、ソロで、さっき言ったみたいな楽曲性のあるトラックを作るみたいなところで、いろんな人に振り向いて欲しいみたいな意味があったりもするんでしょうか。
もちろん聴いて欲しいですね。(((さらうんど)))聴いている人には。ただ、歌はないですけど、結局作っている人は同じなので。(((さらうんど)))好きな人だったら、気に入ってもらえるものが必ずあるだろうとは思うので。それは思いますね。ぜひ聴いて欲しい。それでクラブにも人が来てくれたらめっちゃうれしいっていう。
──最近思っているのが、ここ数年、インディ・シーンでこの1年くらい、シティポップという言葉がすごく流布されている。でも、そういうもののルーツって実は2000年代後半にクリスタルさんとか、あとはやけのはらさん、PPPなんかもそうかもしれないですけど、DJやトラックメイクなんかでやってたようなことがわりとインディ・ロック周辺にも伝搬していったのかなっていうのが自分のなかで仮説としてあって、それはどう思いますか?
そういう感じはしますよ。別に当時トラックス・ボーイズを聴いていたとかではなくて、うちらがやっていたようなことの総体があって、そこから波及していった部分っていうのはあるのかな。
──そう、すごく遠くではあるんですが、原義的な意味でのバリアリック感、DJカルチャーが持ってきた音楽性が、ロックに伝搬していくという意味でのバリアリック感が、ここ数年、すごい遅い速度で10年後に結実したっていうか。それは、シーンのなかにいて思うこととかありますか。
そうですね、そういうバンドを聴いて思うのは、ダンス・ミュージックのエッセンス、踊らせるとか、グルーヴするみたいなのっていうのが必ず念頭にあるんだなと。だとしたら、そういう状況があるとしたら、そういうものを聴いている人たちの意識っていうか、趣味というか、興味の範囲をさらに深くするような音楽を提供したいなと思うんですけど。
──このアルバムはタイミング的にすごく良かったんじゃないかなと思うんですけど。ダンス・シーンの中心にしっかり訴求する音楽性で、なおかつインディ・ロックのシーンでも活躍しているっていうクリスタルさんが作ったアルバム。インディ・ロック・シーンで象徴的な〈カクバリズム〉というレーベルに属したユニットにいながら、同時にDJカルチャーを根元にした老舗で、ある種の象徴的な〈クルーエル〉から出すというのは結構インディー・シーンの地図みたいなところで、なんかそれだけでおもいしろいことになるんじゃないかと思ってしまう。
そうですね。自分がやりたいことがまさにそういうことだったので、そういう意味では良かったなと思いますね。
──逆にこう、DJの方について聞いていくとすると、ソロのトラックメイカーとしての活動との並行でDJプレイが変わったみたいなことってありますか?
ひとつ変わったのは、ソロ・ライヴをやるようになったんですよね。それが一番でかくて。いちど、ライヴをはじめたあたりの時期で、自分のDJがあんまり納得いかなくて。そこからDJを積極的にやらない時期が少しあって、その時はライヴをある程度やっていたんですけど。でもしばらくして、いまはDJも普通にやっているんですけど。改めて自分はDJだなって思ったことがあって。(((さらうんど)))とか、いろんな経験を通してバンドもやっていても、自分の根本がDJなんだっていうのはわかりますよね。改めて大事だなと。DJやることが本当に好きなんだなというのは思ったかな。
フォー・テットとか、DJコーツェとか、ああいう人が好きなんですよね
──いま一番共感できるアーティストって誰かいますか? 単純に曲が好きでも、この人はやっぱりすごいでもいいけど。
ずっと好きな人は、フォー・テットとか、DJコーツェとか、ああいう人が好きなんですよね。
──いわゆるクラブものでDJたちにも支持されているけど、決してツールだけじゃなくて楽曲性も豊かな感じですよね。
うんうん。もちろんDJでもプレイできるんだけど、その狭間にいるというか、どこにも属していない感がある人が好きですね。
──確かに、神田さんとコシさんの曲とかはそういう感覚がにじみ出ているのかなと思いますね。
フォー・テットの活動とかを見ていると、本当に好きにやっているというか、そういうところが好きなんですよね。昔の作風が好きな人からすごくディスられたりする(笑)。そういうのを恐れているんじゃなくて、彼らはやりたいことをやっているだけっていう。そういうのも含めて好きですね。
──さて、アルバムがひとつ形になったわけですけど、こうして終わったことでやってみたくなったことというか。そういうのは明確にあったりするんですか?
次はアルバムを作る。いわゆるコンピレーション的なものではなくて、頭で考えた上で1枚のアルバムを作りたいですね。そういう風に作って、自分から何が出てくるかっていうことを見たいというか、聴きたいというか。そういうものですかね。
──ありがとうございました。
瀧見 : じゃあ僕からも質問しようかな(笑)。90年代から、クラブ・ミュージックを取り入れましたっていう、いわゆる”J”がつくポップやロックが出てきたじゃない? で、その結局のところ、そこから25年経ったなかで、で、”J”の壁と、いわゆるクラブ・シーンの壁っていうのは、どうなったと思う? 結局崩せなかったっていうのがあるとは思うんだけど、それはやっぱりなんでなんだろう?
うーん。やっぱりその、最終的にクラブ・ミュージックに行く人の割合というのが一緒なんでしょうね。結局は割合的に増えないというか。その割合のまま人口が減っているっていう感じなので、どんどん減っていくというか。なかなか崩れないですよね。
瀧見 : ”J”側で自称クラブ・ミュージックを取り入れましたみたいなアーティストっていうのは、いまでもいるわけじゃない。でも、90年代と大きく違うのは、クラブ・ミュージックの認識が、単なるアレンジだったりビートのフォーマットだけだったりして。例えば日本語ラップとか電気グルーヴとか、クラブ側の人間がJ-POPの側に行くっていうことはあったけど、2000年代以降はクラブ・メンタリティーを理解しているアーティストがJ-POPのマーケットで受け入れられる方向に行くみたいなのはあまりないよね。
──そういう意味ではクリスタルさんの存在って、J-POPじゃないにせよ、インディ・ロックの側にいくクラブ・ミュージックの人たちっていないので、かなりおもしろい位置にいるんじゃないかと思いますけどね。
瀧見:そうかもね。それを期待したいところだね。
プライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』でも電気グルーヴの『ビタミン』でもいいんですけど、壁が崩れる瞬間ってやっている側の闇雲な音楽への没入があると思うんです。だから自分の音楽により深く没入して強度を上げていくことで、向こう側に突き抜けたいと思いますね。
RELEASE TOUR INFORMATION
2016年2月13日(金)松本KAWARA RECORD : DJ
2016年2月19日(金)京都METRO : Live
2016年2月20日(土)岡山YEBISU YA PRO with Kenji Takimi : Live
2016年2月27日(土)長野ROOTS with Gonno : Live
2016年3月04日(土)名古屋MAGO Vio (Nagoya) : Live
2016年3月26日(土)渋谷CIRCUS TOKYO with Gonno,Kenji Takimi : Live, DJ
2016年4月08日(土)名古屋MAGO : DJ
PROFILE
XTAL(クリスタル)
95年からDJを開始。トラックメイカーとしてはk404とのTraks Boys(トラックス・ボーイズ)名義で、2007年7月に1stアルバム「Technicolor」、2008年10月に2ndアルバム「Bring The Noise」を発表。また川崎工場地帯の某工場屋上にて行われているインダストリアル・レイブ・パーティー「DK SOUND」では、Traks BoysとしてレジデントDJを勤める。2010年7月に、日本産のエレクトロニック・ミュージックを中心に構成したオフィシャルDJミックス「Made In Japan “Future” Classics」を発表。2011年12月には、Crue-L Recordsより12inchシングル「Heavenly Overtone」をリリース。ポップスバンド「(((さらうんど)))」のメンバーとしても活動中。