KUNIYUKI TAKAHASHIのルーツにして、新たな側面をプレゼンする冒険的な新作──ハイレゾ独占配信
海外のハウス〜テクノ・シーンでも高い評価を受けるレーベル〈mule musiq〉。そのアーティスト・ラインナップは、現在でこそ海外シーンともシームレスなメンツが並ぶが、そのその設立当初から本レーベルを象徴するこの国のアーティストといえばこの人だろう。札幌のマエストロ、KUNIYUKI TAKAHASHI、その人だ。ジャズやソウルが豊かに溶け込んだディープ・ハウスを中心にしたこれまでの作品は、国内外で高い評価を受け続けている。そんな彼が、今回新作を発表するわけだが、そのサウンドはこれまでと趣向の違う質感を宿したものとなった。彼のルーツのひとつであるニューウェイヴやエレクトロニック・ボディ・ミュージック、インダストリアルといったサウンドを前面に出したプロジェクトとなっている。その名も「NEWWAVE PROJECT」。OTOTOYではこちらのハイレゾ独占配信をスタートする。サウンド・エンジニアとしての側面も持つ彼のそのサウンドの冒険をぜひともハイレゾで楽しんでいただきたい。
ハイレゾ独占配信
KUNIYUKI TAKAHASHI / NEWWAVE PROJECT(24bit/44.1kHz)
【Track List】
01. Steam
02. Cycle
03. Newwave Project #2
04. Blue Neon
05. Mind Madness
06. Opposite Meaning
07. Puzzle
08. Newwave Project #11
09. Newwave Project #9
10. Body Signal
11. Machine Signal
12. Newwave Project #7
【配信形態 / 価格】
24bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
アルバムまとめ購入のみ 2,268円(税込)
INTERVIEW : Kuniyuki Takahashi
世界的にも高い評価を受ける札幌のエレクトロニック・ミュージック・マエストロ、クニユキ・タカハシ。本名名義のジャズやハウス、テクノなどが高次元かつ高濃度に結びついたサウンド、さらにはエレクトロニックなKOSS名義、そしてここ最近のモジュラー・シンセを用いたライヴも含めて、これまでもさまざまサウンド・カラーをその作品や活動などでも表現してきた。約4年ぶりとなる新作『NEWWAVE PROJECT』は、あらたに“クニユキ・タカハシ”名義で展開してきたサウンドのイメージを一新しつつ、サウンド・カラーの変化を経ても滲み出てしまう“クニユキ・タカハシの音”の固有の魅力を体現した作品でもある。
本作は、彼がここ十数年あまり、そのプラットフォームにしているmule musiqのレーベル・コンピ『Iʼm starting to feel ok』の10周年記念盤(2014年にリリース)に提供した「new wave project #2」に起因するのだという。それはそのままプロジェクト名が示しているように、1980年代のDAFなどのノイエ・ドイチェヴェレ(ジャーマン・ニューウェイヴ)やエレクトロニック・ボディ・ミュージックの影響を色濃く感じさせる質感を持っている。それはまた彼のサウンドのルーツではあるので当然と言えるが、やはりこれまで“クニユキ・タカハシの音”に慣れ親しんだものとしては、その“コールド”で“インダストリアル”な感覚に一瞬ドキっとしてしまう。そんな感覚を持っている。とはいえ、エッジーなディープなエレクトロニック・ミュージックのアトモスフィアや、パーカッションのグルーヴといった部分ではこれまでの共通の感覚も持ち得ていることは、それこそ“クニユキ・タカハシの音”に慣れ親しんだものであれば、すぐに理解することができるだろう。むしろ、もともとの彼が持っていた電子音への愛情が、そのままエッジーな形を伴った現れた、そんな作品とも言えるだろう。
文 & 取材 : 河村祐介
編集補助 : 阿部文香
自分のルーツに、そしてベースとなるようなエレクトロニック・ミュージック
──今回基本的にはいわゆるmule musiqのコンピに収録されていた「new wave project #2」から派生しているプロジェクトということなんですけど。アルバムとしては4年ぶりになりますよね。
クニユキ名義だと前作が2011年の『Feather World』というアルバムなんですね。
――いわゆるクニユキ名義のサウンドイメージ、勝手にこちらが描いているものではあるのですが、オーガニックなジャズ、あとディープ・ハウス的な展開であるとかをクニユキ名義からは想像するのですが、割と今回は『NEWWAVE PROJECT』というタイトルからして、ご自身のルーツでもあるインダストリアルだとか、エレクトロニックなサウンドにかなり特化したアルバムだと思うんですけど。こういった形のサウンドにしようと思ったきっかけっていうのは、何なんでしょうか。
そうですね。普段ライヴで演奏しているときってダンスが主なんですけど、その中でも自分のもともと80年代に聴いた音楽、あとは当時、兄とバンドをやっていた頃があって、当時はすごく、ジャーマン・エレクトロ・ミュージックとかに傾向していたんですね。現在のライヴを続けていながらも、家やスタジオに戻ってくるとそういう昔のもののテイストを、すごく懐かしく感じてしまって。すでに、前のアルバムを作っているときに、そういう感覚も実はあって。2011年の『Feather World』を出した時も1曲、アン・クラーク(Anne Clak)っていう女性のシンガーなんですけど。彼女自身もニューウェイヴ出身の方で、彼女に参加いただいたというのは、ニューウェイヴ、インダストリアル・ミュージックとかの要素を取り入れた時期と言えるかもしれません。
──今回はあえてガッチリと、ある種のコンセプトで1枚のアルバムのサウンドとして、固めた理由というのは何なんでしょうか。
今回の1番新しいアルバムにしても、すでにコンピで出した『new wave project #2』にしても、その名前を決めた時点で、クニユキ・タカハシっていう名義ではあっても、ニューウェイヴという名前のもとに、もっとアフロだったりオーガニックさっていうことより、自分のルーツに、そしてベースとなるようなエレクトロニック・ミュージックを表に出したプロジェクトができるかなっていうのがあったんですよ。さらに、このコンセプトについて〈mule musiq〉主宰の河崎さんと話したりして──そもそも河崎さんもニューウェイヴとかもすごく詳しくて。共通のキーワードとして、自分と河崎さんの間には話題のレベルとしてもニューウェイヴはずっとあって。そんな流れだとこういうアルバムを作るのが、自分のモチベーションとしてもちょうどいいと思って。この流れであれば心にあるものがちょうど作品として生まれるのかなと。こうした流れのなかで、あえて“ニューウェイヴ・プロジェクト”ということを頭において新しいアルバムを作ったという感じですね。
──なるほど。大きく曲作りの部分で、今までの作品と比べると違ったところってあったりするんですか。機材とかDAWとか。
ここ最近世界的にもヴィンテージのシンセやエフェクター、モジュラー・シンセもすごい人気ですよね。元々うちもシンセとかヴィンテージ気味のものが置いていて。1990年代末から2000年代にあたっては、ラップトップだけで音楽が作れるよ、手っ取り早くどこでも音楽が作れたってのが結構集中していた時期でもあると思うんですよ。
ただし、いまはそういう作りかたに関しては少し一息ついて、もっと昔の楽器を触るのも増えてきたという感じで。一時期手放したものをまた購入したりとか。そういうエフェクターとかも、当時はすごい高価でしたけど、前よりは安く手に入れられるものもあるので。そういうものも取り入れてみるとわかるのは、最終的に作り上げられた音楽の粒がはっきりしているだとか、音そのものの魅力が出てくるので。
収められているのは懐かしい音なんですけど、より新鮮に使えて
──モジュラー・シンセに関してはライヴで結構使われていますが、
うちにあるモジュラーシンセ──札幌で手作りで作られている方のものなんですけど──そういうモジュラー・シンセとか、古いローランドのシンセとか、エフェクターなんかも1980年代に購入した古いディレイとか。そういうものを使って作ったりもしましたね。あとはちょっと今までとすごく違うのが、自分のこだわりではないんですけど、これまでサンプル・ファイルとか、サンプリングしたものを元に音楽を作るって言うのをやめていたんですね。パーカッションとかフルートとか、生の楽器も自分であえて録音して構成して、音楽を作るようなやり方だったんですけど。サンプルを今回は使うようになったというか。
立ち返って1980年代の当時のものを考えたときに、サンプリングをすることって重要で。やっぱり自分の手元でそんなにクオリティの高い音って鳴らせない。なのでレコードだったり音のあるものからサンプリングして、よりそういうものに近づけたいという一心で作っていた時代ではあると思うんですよ。その当時、同時期にサンプリング・フリーみたいな作品、ライヴラリ寄りのものもいっぱい出ていて──レコードでも当時はライヴラリーものってありますよね。そういうものも昔あったコレクションから出してきて。そこに収められているのは懐かしい音なんですけど、結構使えるというかより新鮮に使えて。大きな違いとしてはサンプル・ファイル、サンプル・ヴォイスとかも作りましたね。
──なるほどなるほど。じゃあ具体的には、クニユキさんが音楽制作を始められた頃の感覚を今の感覚でさらにアップデートしたみたいな感じがちょっとあるんですかね。
そうですね。実際制作していて楽しかったのは、昔のことを思い出すことが結構多かったですね。上手くいかないけど、この方が面白いとか(笑)。そういうテイストが生まれてきたりだとか。緻密なことはできないのかもしれないですけど、機材とか音色からのグルーブとかは、より素直に出せたかな、と思っています。
──なるほど。じゃあ今回は作り方としてはDAWでいじくりまわすというよりも、割とライヴに近い感覚で録ったり、ってことが多かったんですかね。
そうですね……音色を作るとかに関しては、ハードウェア上というか、ディレイとかリバーブを使う場合はソフト内のプラグインではないものが多かったですね。実際にエフェクターを通したものを使っていました。それをDAWを使って編集したりもしてはいましたけど、基本的に8割方はシーケンサーを走らせてマルチでレコーディングをして録っていくというやり方の方が今回は多かったと思いますね。
──なるほど。じゃあいわゆる昔からの作り方というか、シーケンサーを走らせて、宅とヴィンテージのエフェクターとかで、ダブ・ミックスをするような感覚でミックスしていくというか。
そうですね。
当時の音にしかないトリッキーさ
──率直な感想なんですけど、僕今回の作品ですごく面白いと思ったのが、エレクトロニックな質感なんですが、遠くの方にアフロ・パーカッション的な感じはそれでも残っているというか。どこかエイドリアン・シャーウッドのやってるインダストリアルというか。インダストリアル~エレクトロニック・ボディなんだけど、どこかでレゲエやアフロ・ミュージックの感覚がふと入っているというか。
そうですよね。僕もまさにシャーウッドとかすごい好きで、往年の作品とかいっぱい聴いてました。当時のインダストリアル・ミュージックって色々な要素がすごく混ざっていたと思うんですよ。たとえばすごいアバンギャルドであっても、そういう人たちって内面をすごく音楽に表現したりだとか。でもわかりやすいものってわけでは決してないと思うんですけど。そういう要素の中に、民族音楽を取り入れた当時のインダストリアルって結構多かったんだと思うんですよ。それはダンス・ミュージックのアフロの要素とは違うんですけど。でも今回の『ニューウェーヴ・プロジェクト』に入っているリズムとか、自分の中ではすごいジャングル、密林という印象が強いんですよね。音楽ではあるんだけど、なんかよりワイルドな自然というか、躍動感というものが表現したくて。
──限られた機能を使うことによって、そこに立ち現れる音像を大事にするというのが、制作の中ではあったという感じですか。
そうですね。当時はこの音しかない、KORGはKORGの音、RolandはRolandの音しかないみたいな、そういう世界があったと思うんです。あとはあるリズムマシンみたいなものが生まれたことで、生まれ出たシーンとか音楽も当時はあったと思うんですけど。やっぱり80年代に使っていた音色とかライヴラリっていうのはレンジが広いわけでもなく、雰囲気もあって、それを足していくことによってすごく当時のバランスを思い出す。
だからわりと当時はモノラルの音色だったんだけど、今回もちょっとやりましたけど、あえてモノラルの音源を右と左で、ちょっとディレイで左だけずらしてあげて、ステレオ感を出すとか。当時はそういうのがすごくトリッキーで、普通にそれしか選べなかったと思うんですけど、今はいろんなことができる。プラグインで綺麗な音響とか、有名なホールのシミュレーションができますよっていうものもありますけど。もうあえて古いディレイ使って、ステレオ化にしようとか。そういう当時の音にしかないトリッキーさっていうのを、少し気を付けてやったりしました。
──クニユキさんはアーティストであると同時に、マスタリングなどサウンド・エンジニア的なところも含めて制作されていると思うんですが、今回、いまのような話も含めてエンジリアニング的なところで、全体として留意した点はありましたか。
そうですね。でも今回はエンジニアの部分というよりはやっぱり作曲、アレンジのの部分ですね。普段だったらリードに使えるよなって音だったり、ベースだよなって音を普通の考え方でなく、今思うと単にこの音「変だ」「変わってる」とかそういうところから選んで、曲を作っていることが多かったと思うんですよね。当時のそのサンプルの音源だったり、リズムもそうですけど、空間のバランスがあまり固まらずにそれぞれがちゃんと分離していて、面白く飛んだ音になるとか、そういうことを気を付けていた気がしますね。
たとえばですけど、今回のアルバムの中でも、「body signal」って曲があって。普段だとあまりやらない、BPM141ぐらいの曲なんですけど。BPM141で、普通「これは昔のポップスで使うリードの音だよな」というのでリズムを刻んだり。そういう変わった音色の選び方をしていくと、制作した曲に自分の意図していないようなユニークさが出てくるので。あえて頭の中にあるものを構築することではないところとか、常に実験ですね。そういうところが多かったと思います。
──今回の作品は音楽的な実験そのものの楽しさみたいなものがにじみ出ている感じがすごいして。割とそういった作り方に忠実に作った部分が多いということなんですか。いわゆる、音楽実験の愉しさみたいな。
そうですね。なんかこう、頭に描いているものを出すのであれば、自分の頭、能力にかかってきますけど、やっぱり「色々な機材とか色々な音色を掛け合わせていくとどうなるのかな」ということとか。あと機材のセットアップもそうですね。普段だったらリズムにはそんなにエフェクターかけないよってところに無理やりエフェクターかけたりだとか、あとは今はゲートのリバーブは使わないけど、80年代はゲートのリバーブがすごい使われた時代だったので、その感覚でやってみるとか。ひとまわり1990年代、2000年代、2010年代と色んな音楽を聴いた上で、当時のニュアンスをまた改めて考えたり。いままでの通過点を考えた上でのユニークさってのは、ひとつひとつ、「これがやっぱり面白い」みたいな実験っぽさを保っていたとは思います。
──もうちょっと大きい目で見て、かたやテクノとかの界隈でここ5、6年“インダストリアル”が復活している部分があるじゃないですか。そういうものに触発されたところはありますか。
特にないですね。でも僕の考えなんですけど、世の中って、これだけネットが常にお互いを共有しているので、どこから発生したのかわからないんですけど、全体がその雰囲気というか、いま皆の気になっている音楽とか、少しずつどこかで耳にはしていると思うんですよね。もちろん同時期に色々なリリースされている音楽を聴いていく上で、同じように1980年代を通ってきた人たちと、20歳くらい下の人たちのインダストリアル・ミュージックの聴き方の違いや同じところとかもすごく興味ありますけど。世界の音楽のテイストってすごいリンクしているところがあると思うんですよね。だからニューウェイヴがここ5年くらいみんなが気になっているっていうのもわからないでもないというか。逆に、僕にとっては「やっぱりみんなもそうなんだ」という風に思えたので、たぶん時代が求めている音楽エネルギーの一つなんじゃないかな、と思っています。
――なるほど。いわゆる完全に切り離すことはできないかもしれないけど、基本的には外からの影響というより内からの欲求でこういうスタイルになった、ということですよね。
そうですね。僕が札幌で、1980年代くらいの、ローカルのDJだったりだとか、当時僕がよく遊びに行っていたクラブとかでも、ボディ・ミュージックだったりとか、インダストリアルとかエレクトロとか、普通にテスト・デプトだとか、SPKだったりとか、きわどい音楽が普通にクラブの1日では流れていてそういうものに親しんでいて。そういう先輩たちが多かったので、やっぱり心にそういうものがあるんですよね。
その機材でしか出てこない独特な音楽の世界がある
──色々な音楽の驚きと同列に、今はクニユキさんのモードでこういう音が自分で作る上では面白いということで、今回こういうプロジェクトになったと。
そうですね。最近の楽器なんかもそうですけど、RolandのAIRAという機材を使い始めてから、当時のリバイバルのシンセも結構出てきているんですけど。実際本当によく作られていて、もっと手身近な機材から1980年代のテストが生まれるっていう環境になったのは大きいと思いますね。
──いわゆるAIRAのような、ガジェット機材みたいなものの面白さを久々に思い出させてくれたみたいな部分はあったりするんですか。
はい。実際に若い子たちが作っているものでも、たまにすごく面白い曲を聴くんですよ。ガジェットってまさに仰る通り、ガジェットから出てくる音ってそんな複雑なものじゃないんですけど、その機材でしか出てこない独特な音楽の世界があるんで。しばらくこのまま面白い感じでいってもらいたいなと、すごい思ってます。
──じゃあ結構そういった機材を触る楽しさっていうのがここに思い切り出ているということですよね。
そうですね。あとはさっきお伝えしましたけど、札幌でDOPE REALというアイソレーターを作っている僕の友人が作ったモジュラー・シンセなんかの音も、ところどころ入っています。
──世界にひとつかふたつしかないってやつですよね。
そうですね。現時点ではそうだと思いますけど。DOPE REALの友人の木村くんがこの先作るか作らないかは、木村くん次第だと思います(笑)。
──ちなみに、モジュラーシンセのライヴも最近やられているわけじゃないですか。モジュラーシンセの面白さも最近再発見されているという感じですかね。
そうですね。今まで実を言うと、モジュラーシンセを手に入れるきっかけがすごくなくて。一杯種類があるんです。本当に細かい、一つ一つのパーツであるので。しかもガレージメーカーの数を考えると、すごい沢山のモジュラーがあって。幸いにも札幌の友人がモジュラーシンセを作っているというのを聞いて、お邪魔したときに、これが自分にとっての一番のきっかけだと思って。木村くんが作られてるモジュラーも、モジュラーのことを知れば知るほどにすごくちゃんと考えられているので。正直驚きながらも、楽しみに没頭している最中ではあります。ライヴでもモジュラーを使ってどこまでできるか、色んな表現法を試行錯誤している段階ではありますね。
──そのあたりも含めて、今作はつねに耳に面白い音楽がずっと続いていたので、アルバム全体が刺激的でした。
そうですか。アルバムに入ってない曲も何曲もあるんですけど、そこから選んでいて。
──ちなみにクニユキさんにとって、ニューウェイヴとかインダストリアル、もしくはノイエ・ドイッチェベレとかで「この人」っていうのは誰でしょうか?
たとえばMute Recordsから出ていたブルース・ギルバートとか。僕もそういう風に言われますけど、ちょっと実験音楽ですね。その人の作品なんかは今聴いてもすごい面白いなって思う。ただ当時は素直に、D.A.F.だったりフロント242とか。ちょっとポップスになりますけど、ディペッシュ・モードもすごく好きだったので。かなりそっちのほうにいってた時期もあって。わかりやすくそういう音楽がすごい好きだった時期もありますけど。でも今はインダストリアルとかニューウェイヴの中でも、ブルース・ギルバートだったりとかハンティング・ロッジとか。ちょっと違うんですけど、ソビエト-フランスという人もすごい好きですね。
──なるほどなるほど。でも本当に、すごく新鮮なアルバムというか。とはいえ、一番最初に言ったようにクニユキさんの音響的、音楽的な面白さってずっとあったと思うので、そこもすごくちゃんとあって。
ありがとうございます。
──音が本当に面白いというのが、すごく作っている楽しさが伝わってきて、聴いてて楽しいアルバムだなと思って。
そうですよね。ただ単に自分の好きなものだけで作ってしまうと、多分すごいアバンギャルドでノイズになってたと思うんですよね。当時はやっぱり1980年代、1970年代後半ぐらいから、ロンドンだったりとかドイツだったりとか、色々なところで同時発生していたジャンルだと思うんですよね。その中でもドイツはドイツ特有のニューウェイヴというか。シンセがベースラインを走りながらドラムを走ってるけど、なぜかラテンのリズムが入っているとか。すごいポップスっぽかったりとか、いろんな要素が混ざっていた時期なので。なんかのニューウェイヴって言葉を使うことを考えると、そういうユニークさだったりとか、あまり型にはまらないで楽しく音楽を作る。出来たものからそういう風な感情が生まれればいいな、っていうのはありますね。
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PROFILE
Kuniyuki Takahashi
札幌を拠点に活動するKuniyuki Takahashiこと高橋クニユキ。彼の音楽は、国境を問わず常に独特の世界観を持ち、世界各国のプロデューサー、DJから高い評価を得ている。Joe Claussell主宰[Spiritual Life]傘下の[Natural Resource]から自身のホームタウンであり、札幌の名クラブをトリビュートした曲「Precious Hall」をリリース、4Heroの2000Blackのコンピ参加、Ananda Projectの名曲「Cascade of Colour」のリミックス・リリースなどジャンルレスな音楽形態を持ちながら、日々新しい音楽の形をクリエイトしている。
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