独占ハイレゾ配信 : デイダラス+フロスティによる、US西海岸からのサイケデリックなサウンド・コラージュ宇宙一周
まるで、ザ・KLFの『Chill Out』とデ・ラ・ソウルの『3 Feet High And Rising』を結ぶようなそんなアルバムだね。アドベンチャー・タイム――このユニットはLAを含むカリフォルニア、US西海岸シーンのベテラン、フライング・ロータスのちょいと先輩でもあるビートメイカーで、先ごろ、そのフライング・ロータスのレーベル〈Brainfeeder〉から新作をリリースしたばかりのデイデラス、そして非営利ネット・ラジオ局の先駆け的存在、 LAにてdublub.comを率いるフロスティのユニットだ。2003年にアルバム『Dream Of Water Themes』から、11年ぶりの新作というわけだ。
強烈に楽しい音の旅、時代もジャンルも飛び越えた様々な音楽がカット&ペーストでコラージュされ、行き交うサイケデリックなビート絵巻『Of Beyond』。OTOTOYでは本作をハイレゾ音源で配信。そのキメ細やかなコラージュ・サウンドの”トビ”は、音と音の粒の距離感すらも感じることのできる高音質でこそ、より真価をはっきするのではないでしょうか! またアルバム後半にオオルタイチやヨシ・ホリカワなどの日本人アーティストのよるリミックスも収録しております。
本作をリリースするのはライターの原雅明による新たなレーベル〈rings〉。これまでも著作やレーベル運営などを通じて、LAビート・シーンや国内のシーンを含めて刺激的なサウンドを紹介してきた。本作と同時発売の、日本ジャズ界のレジェンド、鈴木勲と、日本のトップDJ、DJケンセイとのライヴ・セッション音源『New Alchemy』もリリース。今後もその作品のリリースが注目といえるだろう。
ハイレゾのアルバム購入者には、ライナー・ノーツpdfの特典つき!
Adventure Time / Of Beyond
【配信フォーマット / 価格】
(左)ALAC / FLAC / WAV (16bit/44.1kHz) / mp3 : 単曲 154円(税込) / まとめ購入 1,851円(税込)
(右)ALAC / FLAC / WAV (24bit/48kHz) : 単曲 200円(税込) / まとめ購入 2,057円(税込)
【Track List】
01. CountdownToBlastoff / 02. TheMusicWayOutThere / 03. OurPawsApplause / 04. ThisDomeIsOurHome / 05. Teleportation:MarkI / 06. YourWeightontheMoon / 07. S'ilVousPlaitGravite / 08. WeAllAgreeIt'sGrand / 09. Teleportation:MarkII / 10. FirstInSpace / 11. TheSeaofTranquility / 12. SetOnSatellites / 13. Reentry / 14. SpaceBreakinterlude / 15. ThisDomeIsOurHome(SuzanneKraftremix) / 16. YourWeightontheMoon(Dntelremix) / 17. YourWeightontheMoon(Oorutaichiremix) / 18. TheSeaofTranquility(YosiHorikawaremix)
INTERVIEW : FROSTY
フライング・ロータスの話題の新作『You're Dead』、そのサウンドはカリフォルニア、そしてLAという土地だからこそ集まったアーティストたちの参加が、やはりひとつ直接的な影響を作品に及ぼしていると言えるだろう。ビート・ミュージック~ジャズにいたるまで、ゆるやかにアーティスト同士はつながり、新たな音を作り出している。そうしたサウンドといえるだろう。まさに本作もそうしたカリフォルニアの、ビート・ミュージック系のアーティストたちの結びつきがひとつサウンドとして、穏やかなウェスト・コーストのサイケデリック・ムードを伴って結実したそんな作品だ。
オールディーズ・ポップスから、ジャズ、ファンク、AOR、シティー・ポップ、ムード・ミュージックに映画のサウンドトラック、民族音楽、果ては日本のアイドル・ポップス+オタ芸までもが飛び出すサイケデリックなカット&ペーストのコラージュ・ビート。その道のりはどこまでも好奇心に満ちた遊び心でいっぱいだ。そのジャケットに輝く綺羅星の正座図の間を飛び回るような愉快な宇宙旅行がサウンドによって用意されている。
さて、本作に関して、LAに関して、世界中を飛び回る事情通で来日中のフロスティに話を訊いた。
インタヴュー&文 : 河村祐介
今作はサイエンス・フィクション・アドベンチャー
ーーアドヴェンチャー・タイムのユニットとしてのコンセプトにひとつコラージュというのはあるのかなと思ったんですが。それはいわゆるサンプリング・サウンドということ以上の、文化とか時代とかも含めて。
フロスティ : ブレンダーに物を入れるような、そんな感覚で作っているんだ。前作は『ナショナル・ジオグラフィック』の、あの様々な場所の要素が入っているポータル・スペースみたいなものというかね。アフリカのサバンナと他の景色を組み合わせて、いろんなものを作っていくというか。そこで生まれた音で、違った空間に連れていってあげるというのが僕たちの目的なんだ。アドヴェンチャー・タイムのひとつの要素として、子供の本みたいな要素があって。純粋な好奇心と楽観主義みたいなものが、豊かな文化とともに合わさったものが僕らの音楽なんだ。
ーー今回のアルバムには前作における『ナショナル・ジオグラフィック』みたいなモチーフはあったんですか?
フロスティ : 本作に関していえば、サイエンスフィクション・アドヴェンチャーみたいなものかな。今回は地球だけでなく、そのアドヴェンチャーの行き先は宇宙にも広がっている。アルバム全体は宇宙のマップみたいなものというか。各曲は、テレポーテーションできる窓をあけてみえる違った場所の風景というか。それは直線的な旅ばかりではなくて、いろんな世界を覗き込んで、いろんな世界を冒険して体験する。そして最後の「Re-entry」で戻ってくるというような感じのものなんだ。
ーーSFとかは好き?
フロスティ : いや、僕よりもデイデラスだよね。もちろん僕も好きだけどね。彼のお父さんはとてもたくさんのSF本のコレクションを持っているんだ。幼い頃からずっと触れていたらしいよ。僕自身も想像力の豊かな世界観というのも好きだけど、どちらかといえば普通の生活のなかの方に興味を持っていて。普段の生活のなかでもSF的なストーリーを考えることもできると思うから、どちらかといえば、そちらで想像力を豊かにしていく方が僕は好きかな。
ーーおふたりの役割分担みたいなものはあるんですか?
フロスティ : あまりちゃんと考えたことはないかな。長年友だちだからね。そこにリスナーのひとたちが音を媒介に加わるというか。プロダクション面では、お互いの役割みたいなものはちょっとあったりするんだけど、一緒に集まって自分たちが聴いて楽しいを作っていくというのがひとつのスタイルなんだけど。同じ部屋にあつまって作業をするんだけど、例えていえば宇宙船のパイロットがデイデラスで、僕は地図をなんとなく知っている冒険心溢れるナヴィゲイターという感じかな。どこに着くのかわからないんだけど、デイデラスが優れたパイロットだから、ちゃんと着地できるという感じかな。非常に才能のあるエンジニアでもあるし、お互いのアイディアみたいなのを重ね合わせるというような作業をするんだ。
ーー元ネタみたいなのを持ってくるのは両方?
フロスティ : 両方だね。彼も僕もレコード・コレクターだしね。今回のアルバムはわりと、いろいろなところに実際に旅をしたというのがひとつアイディアの源泉になっているかな。僕自身、インドやタイ、ブラジルとかいろいろ行った影響が色濃く出ていると思う。LAの外で見つけたものを、ひとつの音楽として紹介していくというのを発展させていったのが今回のアルバムかな。
ーー海外を回っていて、今回の作品に影響を与えたような印象的なことってなんかありますか?
フロスティ : まずは日本を訪れたときの印象はとても大きいかな。それは僕たちの音楽に自然な形で共存していると思う。印象では、バランス感覚みたいなものを持つのがすごくうまい感じがあって、それが新しい形で音楽に作用していると思うんだ。あとはインドのボリウッド音楽、ひとつの音楽のなかでいろいろな変化が起きるようなもので、それぞれの曲のなかに瞬間的な変化があって、それがすごくおもしろいなと思って。
ーー3曲目は日本語の楽曲で、アイドル歌謡、しかも後ろにいわゆる「オタ芸」の掛け声がありますよね。あれはどこで見つけてきたの?
フロスティ : あれは10年位前に録ったネタだんだけど、あんまり詳細覚えてないんだけど…、まずはあるどこかの宇宙にある失われたジュークボックスが発見されて、そこに入っていたどこからきたのかわからないポップ・ソングっていう感じを妄想して作ったんだ。ガムランっぽい音もしたり、日本のポップ・ソングっぽかったり、よくわからないけどどこかでなっているというイメージなんだ。
ーー周辺人脈も含めてLAという土地柄は本作のサウンドに反映されていると思いますか?
フロスティ : LAがこのレコードに与えている影響はすごく大きいと思う。LAは幅広い影響源みたいなものが街中にあって、街もすごく多様で、タイの甘味どころがあったり、インド料理があったり、ドイツのパン屋があったり、ペルシャ語が飛び交っているところがあったりとか、食べものだけじゃなくて、もちろん音楽も含めて、そこにはいろんなものが混在する土壌があるんだ。そういったものが混ざったりしながら発展していく場でもあるから、とにかく幅広い場所だよね。いろなものを鍋に入れて混ぜたような、そんなところにいて、多様な人々がいて、考え方としても多様な考え方ができるようになる土地だから本当にラッキーだよね。
ーーちなみに、いまあなたから見て、LAのおもしろスポットってどこ?
フロスティ : ライヴ・ハウスやクラブではないところでも、おもしろい音楽が聴ける場があることがいまのLAのおもしろいところかな。ギャラリーで音楽がかかってたり、自然のなかでかかってたりとか、予想もつかないところで音楽が流れていたりというのが結構あって。音楽サロンみたいなところで、なにかのテーマにそって、悲しい音楽をちょっと悲しい雰囲気のあるサロンでかけるとか、あとはルドルフ・シンドラーという建築家がいるんだけど、彼の建築はミニマルなんだけど、その建物にあうような音楽をかけたりするんだよね。そんなイベントなんかもやっている。あとはね、〈バブル・アップ〉っていうパーティをこの前やったんだけど、水のなかで聴こえるスピーカーを利用したパーティなんだ。水のなかにある音楽が聞こえているんだけど、水に上がるとまた別の曲がかかっているという。今回のアルバムのアートワークを手がけているKozyndanっていうデザイン・チームが、水のなかで写真を作ったりして、とてもおもしろいパーティを企画したんだ。
ーー今回、Kozyndanデザインを担当している人たちはどんな人なの?
フロスティ : ジャケットは、いわゆる12星座みたいで、 けど存在しない架空の星座なんだ、それがテーマになってて。彼らは15年ぐらい活動してる、夫婦のアート・ユニットなんだけど、世界を見る見方みたいなものになってるのが、とてもおもしろいんだ。彼らは、現実をちょっと変えたりとか、他の人が見えないところまでみているんだよね。それをイラストにしているという感じかな。
ーーアルバム・タイトル『Of Beyond』は、まさに宇宙へといくトリップをひとつのテーマにしていると思うけど。
フロスティ : 国や現実を超越して、旅をする空間をもっと広げていくようなそういうような感覚だね。
ーー多くのアーティスト、サイケデリックな音楽は宇宙のヴィジョンと結びつきますよね。この音楽もサイケデリックだと思うんですが、そうした宇宙趣向みたいなものってどこからくるんだと思いますか?
フロスティ : 宇宙はごく限られた人たちしか行ったことない場所だよね。みんなが夢見ているものであって。サイケデリックなものというのは音楽であったり、ときによってはケミカルなドラッグのことを指すこともあるかもしれないけど、瞑想であったり、自分自身のなかからちょっと距離を取るというか、違ったところにいくということだよね。日常的に、ラッシュアワーのなかで音楽を聴くというのもひとつのエスケープだし、エスケープするということはある意味で普通のことで、健康的なことでもあると思うんだ。そのなかで、夢見ているものということで宇宙へとつながっていくんじゃないかな。
ーーちなみに、宇宙というテーマで一番好きな音源は?
フロスティ : サン・ラーだね。『he Night Of The Purple Moon』だね。彼はとてもすばらしいスペース・トラヴェラー・サウンドの偉大なアーティストだよね。彼の思想は、僕らの宇宙旅行なんておもちゃみたいなもんに見えるくらい、ぶっ飛んだものだよね。とにかく宇宙というテーマなら彼の音楽をあげるよ。彼の音楽はまさに”Of Beyond”な音楽だよね。アドヴェンチャー・タイムの音楽を聴けば、そういう音楽に出会えるように、そう思って僕たちはこれを作ったんだ。多分僕たちの『Of Beyond』を聴いてくなかで、自然にサン・ラーみたいな人は登場すると思う。自然を超越したファンタジーの世界へ連れていってくれるようなね。
ーーサン・ラーも、そうだけどあとはこのコラージュ感で思い出すのはザ・KLFの『Chill Out』だよね。
フロスティ : ありがとう、それはうれしいね。まさしくだよ。サン・ラーも『Chill Out』も偉大な作品だから、その前にいたら、僕らは本当に小物だよ。僕の友達がLAでやってる『Chill Out』をテーマにしたパーティがあるんだけど、それは本当にチル・アウトしてないと注意されるんだ。起きていると、セキュリティーが「ちゃんと寝て、目を閉じてチル・アウトして!」って言われるんだ。
RECOMMEND
The Light Brigade / Daedelus
今作は1853~56年のクリミア争をテーマにしているという(?)、新作はフライローの〈Brainfeeder〉から。きめ細やかなアコギを中心に描かれた、すばらしきダウナー・サイケデリック・チル・アウトの傑作。透明感あふれる歌声が妖精にように飛び回る。南米サイケデリアとも近しい、涅槃な音。
Flying Lotus / You're Dead!(24bit/44.1kHz)
フライング・ロータスの最新作はまさにこれもまたLA人脈が色濃く発揮された作品で、サンダー・キャットを含めてやはりカリフォルニアという土地柄を彷彿とさせる。こちらもハイレゾでぜひとも。
Ariel Pink / pom pom
あんまり関係ないですが、このゆるやかでポップなチル・アウトということでいえば、彼のサウンドもちょっと近いですよね。アニコレ周辺人脈のローファイ・ポップおじさん。少々気持ち悪いんですが、なぜか胸キュンなそのメロディ・センスとサイケデリック・ムードにやれてください。
PROFILE
アドベンチャー・タイム
Brainfeederから新作アルバム『The Light Brigade』のリリースも間近の音響冒険家デイデラスと、世界に熱心なリスナーを持つトップ・ネットラジオdublabの主宰者フロスティ。LAの音楽シーンを牽引する二人のユニット=アドベンチャー・タイムの新作アルバム『Of Beyond』が遂にリリース決定!!
デイデラスとフロスティは、90年代半ばに南カリフォルニア大学の音楽オタクのたまり場だったカレッジ・ラジオ局で出会い、すぐに意気投合し、卒業後の1999年に非営利 ネット・ラジオ局dublabを設立した旧知の仲だ。フロスティはdublabの運営とDJ活動を、デイデラスはアーティスト活動を続けているが、二人のユニット、アドベンチャー・タイムとして、アルバム『Dreams of Water Themes』(Plug Research)を2003年リリースしている。