彼のディープ・エレクトロニクス・サイドを堪能せよ──Seiho、3年ぶりの新作をハイレゾ配信
ソロでの「I Feel Rave」のヒット、Avec AvecとのSugar's Campaign、さらにはさまざまなリミックスやコラボ、プロデュースを経て、3年ぶりにSeihoがアルバムを完成させた。しかも本作にてワールドワイドでのデビューともなる。いま最も頻繁にクラブ・シーンでライヴ活動をしている国内のエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーのひとりでもありながら、さらにはここ数年でメジャーなポップ・フィールドにまでその歩みを進めている。本作では、そんな彼がディープ・エレクトロニクスであえて表現した独自の世界観が広がっている。OTOTOYでは、本作をハイレゾ(24bit/48kHz)と、CDと同等音質のロスレス配信を行う。
Seiho / Collapse
【Track List】
01. COLLAPSE (Demoware)
02. Plastic
03. Edible Chrysanthemum
04. Deep House
05. Exhibition
06. The Dish
07. Rubber
08. Peach and Pomegranate
09. The Vase
10. DO NOT LEAVE WET
11. Ballet No.6
【配信形態 / 価格】
[左]24bit/88.2kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 288円(税込) / アルバム 2,571円(税込)
[右]16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC / MP3
16bit/44.1kHz : 単曲 257円(税込) / アルバム 2,057円(税込)
AAC / MP3 : 単曲 205円(税込) / アルバム 1,543円(税込)
ディープ・アナザーサイド・オブ・Seiho
2010年代のダンスフロアを、恍惚とした表情で走り抜けたアンセム「I Feel Rave」。件の楽曲を含む『Abstraktsex』から3年ぶりに示されたSeihoのアルバム『Collapse』。本作は、フライング・ロータスの〈ブレインフィーダー〉などからもリリースするマシュー・デイヴィッドのレーベル〈リーヴィング・レコーズ〉からリリースされている。〈リーヴィング〉といえば、ラス・Gのようなビート・ミュージック系のリリースから、D/P/Iのようなオルタナティヴ・テクノ〜ヴェイパーウェイヴなどをリリースしている。
『Abstraktsex』以降のSeihoは、とにかくその活動が外へ、外へと広がっていった。Les Sins(Tory Y Moi)に、矢野顕子、東京女子流、Negicco、三浦大知などなど、まさに全方位にてリミックスやプロデュース、共作仕事をこなしている。朋友、Avec AvecとのSugar's Campaignでは、メジャー・フィールドにてポップ・ミュージックを真っ当に展開した。その間で、ソロではしっかりとアンダーグラウンドなクラブ・シーンでのライヴは活発に動き続けており、さらに今年3月には〈SXSW〉、そして〈LOW END THEORY〉への出演と、話題がなかったことはなく、それゆえ、ソロのオリジナルが、3年ぶりといういのは、意外に長いスパンといった感じで驚きさえあった。
『Collapse』、そして、崩壊と名付けられた作品がここに届けられた。ベース・ミュージック、テクノ、さらにはグライムやベース・ミュージック以降のエレクトロニックなR&Bサウンドを今様に接合したのが『Abstraktsex』だったが、そこにあったポップな意匠、色気といってもいいだろう、そういった要素は後退し、ここにはむき出しの電子音楽が横たわっている。「Plastic」「Exhibition」、そして先行でシングル・カットされた「Peach and Pomegranate」といった、これまでの彼のサウンドを彷彿とさせるアップリフティングなダンス・サウンドももちろんあるが、アルバムの大部分を占めるのはさまざまな生楽器の音の断片、電子音の断片、無音の断片がちりばめられたアブストラクトなトラックによって形作られている。さまざまな断片をつなぎ合わせた、得体の知れないメタリックボディの鵺のようなトラックが続く。電子音で作った他の音楽のカリカチュアというか、ジャンクな電子音のなかをクール・ジャズが漂う「Edible Chrysanthemum」、痙攣するスローモー・ファンク「The Dish」、Iブラウン菅の向こう側のアフロ・グルーヴ「Rubber」、切り刻まれたニューエイジ・アンビエント「The Vase」などなど…… それらのサウンドを統べるのはクールで空虚な空気感。しいていえばその空気感は、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの『R Plus Seven』の“質感”と同様のものといってもいいだろう。アルバムとしては最後のトラック、ある意味でセンチメンタルな「DO NOT LEAVE WET」で、現世に戻るまで、どこか浮世離れした現実味のない世界観を見せてくる。電子音響でしか見せられないシュールな世界を行き来する、そんなアルバムだ。
ここ数年、ある意味で“ポップ・サイド”(「I Feel Rave」でさえそうだったのかもしれない)に注目がいっていた彼の、ディープなアナザー・サイド。間やサウンドの減退間も含めて、繊細の電子音響の表現は、ぜひともハイレゾで楽しみいただきたい。
(text by 河村)
リリース・パーティ情報
Seiho
Collapse Release Party
2016年6月30日(木)@SHIBUYA WWW
[SPECIAL BAND SET] Seiho with Kan Sano [Key.] 松下マサナオ [Ds.] (Yasei Collective) and more.
3年ぶりのオリジナル・アルバムにしてワールドワイド・デビュー作となる『Collapse』の発売を記念して同作のリリース・パーティを6/30(木)@渋谷WWWにて行うことが決定! 国内はもちろん海外でもそのアグレッシヴなライヴと、生け花や牛乳パフォーマンスの融合でオーディエンスのド肝を抜く中、記念すべきアルバム・リリース・パーティーではKan Sanoをキーボードに、松下マサナオ(Yasei Collective)をドラムスに迎え、キャリア史上初となるスペシャル・バンド・セットでのライブを披露。
PROFILE
Seiho
アシッドジャズが鳴りまくっていた大阪の寿司屋の長男にして、2013年、中田ヤスタカらと並びMTV注目のプロデューサー7人に選出され、SonarSound Tokyoに国内アーティストとしては初の2年連続出演(2012/2013年)を果たす。他にもMount Kimbie、2 Many DJ’s、Capital Cities、Disclosure、Flying Lotusらの日本ツアー・オープニングまたは共演、そして同郷Avec AvecとのポップデュオSugar’s Campaignでも注目度↑↑↑のビートメイカー兼DJ兼プロデューサー。自身が主催するレーベルより1stアルバム『Mercury』(2012)、2ndアルバム『Abstraktsex』(2013)をリリース。2014年2月にはブルックリン拠点Obey City(LuckyMe)とのスプリットEP『Shochu Sounds』を〈Perfect Touch〉よりリリースしている。またLes Sins(Toro Y Moi)、YUKI、矢野顕子、Ryan Hemsworth、LoFiFNK、東京女子流、パスピエ、さらうんど、KLOOZ、三浦大知などをはじめとする他アーティストへのプロデュースやリミックス・ワークほか、CM音楽やTV番組のサウンド・プロデュースなども多く手掛けている。2016年3月にUSツアー(SXSWやLOW END THEORY含む)、5月に米レーベルより約3年ぶりとなる最新アルバムをリリースする。