元ピチカート・ファイヴ、小西康陽の選曲による、シカゴ・ソウルの名門ブランズウィック・コレクション。先頃、CDでリリースされた“King of Diggin'”ことMUROによるDJミックスに続く、その魅力をより広く、より深く伝えるための企画盤だ。華麗なストリングスやホーンの音が紡ぐ、ライトでスウィートな、これぞ「シカゴ大都会交響楽」。選曲だけにとどまらず、本作はアート・ディレクションを小西康陽がつとめている。
V.A / 小西康陽 presents 大都会交響楽 -READYMADE DIGS BRUNSWICK-
【配信価格】
WAV 単曲 250円 / アルバム購入 1,890円
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 1,500円
【Track List】
01. カリフォルニア・モンタージュ (ヤング・ホルト・アンリミテッド)
02. ディス・ラヴ・イズ・リアル (ジャッキー・ウィルソン)
03. ギヴ・イット・アウェイ (シャイ・ライツ)
04. ストップ、ルック・アンド・リッスン (バーバラ・アクリン)
05. ホエア・ウッド・アイ・ゴー (ジンジ・ジェイムス)
06. アイ・ハド・イット・オール・ザ・タイム (タイロン・デイヴィス)
07. クワイエット・ナイツ・アンド・クワイエット・スターズ (バーバラ・アクリン)
08. アイム・ゴナ・メイク・ユー・ラヴ・ミー (シャイ・ライツ)
09. ウィスパーズ (アーマ・フランクリン)
10. シュガー・シュガー (ウィリー・ヘンダーソン&ザ・ソウル・エクスプローションズ)
11. ルック・オブ・ラヴ (バーバラ・アクリン)
12. ゴー・ウィズ・ラヴ (バーバラ・アクリン)
13. サニー (ヤング・ホルト・トリオ)
14. アップタイト (ジャッキー・ウィルソン&カウント・ベイシー)
15. ガール・アイ・ニード (アーチスティックス)
16. ラヴ・ザ・ワン・ユーアー・ウィズ (ハーマン)
17. シンス・ユー・ショウド・ミー・ハウ・トゥ・ビー・ハッピー (ジャッキー・ウィルソン)
18. ストレイト・アヘッド (ヤング・ホルト・アンリミテッド)
小西康陽のなかに“生きる”ブラウンズウィックの至宝たち
今回の選曲に関して、小西はこう語る。
『MUROさんのDEEPかつDOPEな、あまりに素晴らしい選曲盤を聴いて、ぼくのはライトでスウィートな、快適で都会的な曲を集めようと考えました。ブラック・ミュージックのファンの方、お手柔らかに。でも、これこそがぼくにとっての「シカゴ大都会交響楽」、なのです』
“ポップ・ミュージックの心得”とでもいうような小粋な感覚
軽やかで、スムーズ、そしてなによりも心が弾むようなスウィートなメロディ。ひとことで言おう、とにかく洒落ているのだ。それにつきる。ブラウンズウィック音源のそんな側面をあますことなく引き出してる。さすがとしか良いようのない手腕。抜群のグルーヴを土台に、小粋なポップ・ミュージックとしてカラフルに展開していく楽曲を聴くにつれ、こうした音楽が小西康陽の表現のルーツ・ミュージックとしてゆるぎないものとして存在していたことがわかるだろう。
すでにさまざまなところで検証され、言わずもがなな話だが、小西康陽が手がけていたピチカート・ファイヴをはじめとしたさまざまなプロデュース作品、または例えば小沢健二の初期の作品などは、いわゆる“渋谷系”などと括られるポップ・ミュージックの多くは、この手のすばらしいブラック・ミュージックのポップスとしての側面をそのリソースとして、その多くを負っていたと言われている。それはいわゆるヒップホップやレア・グルーヴ的な“グルーヴの伝承”というよりも、“ポップ・ミュージックの心得”とでもいうような小粋な感覚だ。本作では、こうしたブラック・ミュージックの古典を、そうした視点で小西康陽を解釈し、それがその感覚のなかで生きているという事実のなによりも証明と言えるだろう。
このコンピにピンと来たのであれば、ブランズウィックの至宝をさらにどん欲に掘り進めるべく、ぜひとも同時にリリースされる『ベスト・オブ・ブランズウィック-ラヴソング&バラード』でそのスィートな感覚を、『ベスト・オブ・ブランズウィック-ディスコ&ブギー』で抜群のグルーヴを体感することもオススメだ。ここまでくれば、そこから導かられる各アーティスト・アルバムへのアクセスも、もう、すぐそこだ。(text by 河村祐介)
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ヤング・ホルト・アンリミテッド / ソウルフル・ストラット
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バーバラ・アクリン / セヴン・デイズ・オブ・ナイト
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V.A / ベスト・オブ・ブランズウィック-メロウ&ソウル
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PROFILE
小西康陽
音楽家。1985年、ピチカート・ファイヴのメンバーとしてデビュー。2001年解散後も、数多くのアーティストの作詞、作曲、編曲、プロデュース、リミックスを手掛けている。2011年、PIZZICATOONEの名義で初のソロ作品『11のとても悲しい歌』(ユニバーサルミュージック)を発表。著書に『僕らのヒットパレード』(片岡義男と共著)ほか。
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