“続きは続きを続けて行く”──30周年のTOKYO No.1 SOUL SET、いまを吹き込んだ8年ぶりの新作
それは不思議な体裁のアルバムで、待望の新曲2曲に加えて初期の代表曲──例えば“黄昏'95”など1990年代の楽曲を自ら再録したアルバムとなっている。ベストともセルフ・カヴァーとも言えそうな、今春にソウルセットが8年ぶりにリリースしたアルバム『SOUND aLIVE』。本作は現在、権利上の理由で廃盤&配信できてない、彼らのクラシックな楽曲たちを、いま現在の彼らが新曲2曲とともに新たな息吹を吹き込んだ、そんなアルバムとなっている。『SOUND aLIVE』はいかにして生まれたのかインタヴューをお届けしよう。
8年ぶりの最新作をハイレゾで
INTERVIEW : TOKYO No.1 SOUL SET
1980年代末〜1990年代初頭のクラブ / DJ / サンプリング・カルチャーが生み出したポップ・ミュージックの新たな波、そのまっただ中から出てきたTOKYO No.1 SOUL SET。川辺ヒロシのマジックとしか言い様のないサンプリング・トラック、渡辺俊美の憂いを帯びたメロディ、そしてBIKKEのロマンティックな語りともラップとも言えそうな独自の歌詞。レゲエやヒップホップといった彼らが影響を受け、手法こそ借りているが、どの音楽とも似ていない楽曲たちが生まれた。1990年代以降の華々しい活動の後でも「フォロワーのいない」アーティストと称されることも少なくない。なぜそのようなサウンドになったのか、誕生、そしてその結成譚は、繰り返し語られているようにパーティの「現場」での出来事。下北沢の〈スリッツ〉を舞台に、この3人が集まって自然発生的にスタートしたという以外理由はないのだ。そしてそんな活動もそろそろ30周年を迎えた。本作もまた、その物語の延長上にある。
新作『SOUND aLIVE』では、サンプリングが生んだ新たな制限が彼らにまさかのバンド・サウンドという道を進ませた。今回は唯一のプレイヤーでもある渡辺俊美に加えて、これまでのライヴでのおなじみのサポート・メンバー、さらには渡辺のリーダー・プロジェクト、THE ZOOT16(以下、本文ではズート)の面々を迎えて生演奏で過去のレガシーをリアレンジ・再録している。ライヴのドライヴ感を帯びて生々しく再生される、彼らのクラシカルな楽曲たち。新曲も含めて、彼らのいまを伝える、そんなアルバムとなった。
インタヴュー・文 : 河村祐介
ライヴ・セットの定番曲を中心に聴ける状態にしたい
──今回の作品を作るきっかけを教えてください
渡辺俊美(以下、渡辺) : まず、サブスクとか配信にソウルセット初期の4枚のアルバム『TRIPLE BARREL』(1995年)『Jr.』(1996年)『9 9/9』(1999)『OUT SET』(2005年)がないという状況があって。もちろんCDも廃盤だし。やっぱり聴いてもらいたいから配信もやりたいなと、それでいろいろ調べてもらったらやっぱり出版とか権利の関係でなかなか難しいというのがわかって。だったらリメイクを作ろうよという。さらにスタジオ作業のなかで新曲もできたらいいよねというところでスタートしました。
──30周年の記念作品を作ろうという感じはあったんでしょうか?
渡辺 : 30周年に関して言うと作品というよりも、(コロナの前には)ライヴに関してはなにかやろうと考えていたんですけど、それもなかなか難しくなってしまって。でもそれこそライヴでいつも演奏している曲がいまはなかなかサブスクとかで聴けない状況だったから。ライヴ・セットの定番曲を中心に聴ける状態にしたいなというのはありましたね。
──今回レーベルは最初期のアルバムをリリースしていた〈江戸屋レコード〉ですよね。
渡辺 : 今、ソウルセットまわりを手伝ってくれている清水(利晃)くんはもともと、1990年代、僕らが出していた頃の〈江戸屋〉で働いていて、その後もずっと知っていたんだけど。その後は〈江戸屋〉を離れて他の会社で働いたり、いまは〈江戸屋〉に戻ってきたというところで。作品制作が決まる少し前から、声をかけてソウルセットのライヴなんかのマネージメントをやってもらっていたんですよ。そのへんもあって〈江戸屋〉の社長に相談したら「〈江戸屋〉のスタジオが空いてる時間で良ければ作品を作れるよ、それが良いんじゃない」と言ってくれて。
川辺ヒロシ(以下:川辺) : そう、だから『TRIPLE BARREL』とか『Jr.』やってた頃のスタジオにまた戻ってきたんだよ。スタジオの名前がもともと〈SOUND aLIVE〉で、いまは〈aLIVE RECORDING STUDIO〉という名前で、そこから今回のタイトルに。意味もちょうどおもしろいじゃん。だからタイトルの「a」が小文字なのもそこのスタジオ・ロゴからきてて。
──2020年に制作ということになると思うんですけどコロナの影響は?
渡辺 : ソウルセットは3人でレコーディングしないですからね。3人で会ったのは数えるほどしかない。
──ソウルセットはリレー形式というか、スタジオには一緒に入らず、それぞれが順番に入って音入れとかするんですよね。
川辺 : だからスタジオでは会うとしたら、スタジオの前ですれ違うぐらいの感じ。「これは入れといたから」みたいな話をして終わり。今回はズートのメンバーがレコーディングに入ってもらったり。そのへんはいままでと違ったかな。あとはもちろんハナちゃん(笹沼位吉、ベース)と三星(章紘、パーカッション)というサポートがいて。
渡辺 : やっぱりサンプリングがそもそもいま配信とかできていない問題だったので、そのあたりを生で弾き直すというところが今回の作品でしたね。
ライヴに来てない人には「いまこうなってます」という作品でもある
──俊美さん率いるズートといつものサポート・メンバーが弾き直すということで考えればはじめてのフル・バンド体制ですよね。
川辺 : そう、(今回の編成で)ライヴやろうと思えばできるんだよね。
──その間BIKKEさんは上がってくるのをまってという。
BIKKE : もちろん。ラップ入れるんで送ってもらってそれを聴いてましたよ。
──新曲はどうやって作ったんですか?
川辺 : さっき俊美くんが言ったように、今回、古い曲を録りなおしつつ、一応新曲もできたらいいなという話はしていて。だから新曲のプロトタイプみたいなのは何曲か進行はしていて。そこから良い感じに仮メロができたんで、これは「いけるんじゃないの?」って急に舵を切った2曲という感じかな。
──“止んだ雨のあとに”はどのように。
川辺 : これは今回、俺がプリプロ的にベーシックなトラックを作って持っていて、それを俊美くんが気に入ってくれて。俊美くんが車とかで聴いててくれて、もうすぐにサビができてたんだよね。あの「BABY BABY~」というのが仮歌ですでにできてた。これはもうこの感じでいけるんじゃないかで、そのまま進んだ感じかな。ちょっと要素を足したり引いたりしながら、歌詞はメロディが全部できてから発注した。
BIKKE : 毎回そうですね。トラックが仮でできてる状態でもらって、そこから作ってる。
──結構、ベーシックのプリプロから変わるんですか?
川辺 : いや、これは似てるかな。この感じでリズムとコードでっていうのはやってて。
渡辺 : ちょっとテンポが早くなったぐらい?
川辺 : この曲はスッとできた気がするね、意外と。
──アルバム制作の中ではどのくらいの時にできたんでしょうか?
川辺 : 1曲目は最初の方だよね。
渡辺 : そうそう。仕上げだけ最後だけどね。わりと形は最初から出来てたんだけど、もうちょっとおもしろくしたいねということでいじっていて。
川辺 : 今回はアルバム1枚まるっと新曲10曲と向き合うのとは全然違うからね。基本がある曲、それを練り直すのはわりと得意だと思うから。そこに新曲が2曲加わったという感じで。
──もうひとつの新曲“Let's Get Down”はどのように?
川辺 : これもバックトラックはずっとあって。実は『Jr.』ぐらいからある。いつか使えればなと。でも、そういうトラックは実は何曲もある。今回の“Let's Get Down”は、そういうストックから俊美くんが選んだんだよね。寝かしてたといってもループだけあって、そこにある日、BIKKEがスタジオに入って、そのトラックに仮歌を入れてて。それがすごい歌っぽいんだけど、いままでにない感じの新しい形だったから「これはもういけるな」って完成させていったという感じかな。
──新曲2曲以外は、冒頭のように原盤の関係で弾き直して、録り直すというプロセスだったわけですけど。でも、わりと原曲に忠実なものもあれば、アレンジが結構変わっているものもありますよね。ベーシックはライヴ用のトラックみたいなものが下地にありという感じですか?
川辺 : そうそう。「BOW&ARROW」は長年ライヴをやってるうちにこの速いBPMになってしまって。長年ライヴでやっているのコッチだから、僕らはオリジナル(『9 9/9』)を聴くとすごく遅く感じると思う。でも、いまライヴに来てない人は逆に知らないから。それを「いまこうなってます」という感じ。
──過去の曲を録ってて当時のこととか思い出します?
川辺 : いや、思い出すもなにもそのまま〈SOUND aLIVE〉で録ってるからね(笑)。でも制作以外のいろいろはすっごく思い出すよ。昔はスタジオでの無駄な時間が多かったなとか。(制作の仕組みが)よくわかってなかったからスタジオ代なんてどこからか湯水のようにお金が出ているとか思ってたからね。でも当時のエンジニアはわいそうだったかも。俺が作業終わると俊美くんが歌入れにきて、そのあとにBIKKEが来てという感じだったから、エンジニアは帰れないよね。だからエンジニアが卓とブースの間に布団敷いて寝てた(笑)。
渡辺 : 「風呂入りに帰ります~」ってやっと帰ってたね(笑)。
川辺 : そもそもその日できたラフ・ミックスのダビングだって時間かかってたから。
渡辺 : それぞれカセットに落としてたからね。
川辺 : そりゃ時間かかるよ。スタッフ合わせて、5人分の音源持って帰るのに、ダビングする機械が3台しかないから……。いまのやりかたからすると「あの無駄な時間はなんだったろう」って。レコーディングされた音源と同じ実時間がダビングに費やされてた思うと。当時はMacにしても不安定だったし。今はその日のスタジオ作業終わったらすぐにファイルで音が送られて来るけど。そういう待ちの無駄な時間がないから、いつまでもスタジオにいなくていいからすぐに帰れる。
渡辺 : 当時は「今日録ったの頭から聴きます?」とか言われても「やだよ~」ってなるよね。
元のサンプルに、演奏を寄せていくのか寄せないのかというのがあって
──さきほど出てきたズートのメンバーがレコーディングするというのはやはり俊美さんのアイディア? 以前、例えば『OUT SET』の頃は俊美さんがドラムなんかも弾いていたと聞きましたが。
渡辺 : そうですね。自分で弾くという選択肢もあったと思うんですけど。今回制作する上で全体的にひとつ方向性としてあったのは、もともとのオリジナル、元のサンプルに、演奏を寄せていくのか寄せないのかというのがあって。自分の癖もあるので、寄せて作る方が自分も慣れてるしやりやすいんだけど、せっかくリメイクするなら新しい人の音が欲しいなと。実際僕よりもベースの子の方がギターうまいしって言う、うまさでいったらそう言うところなんですけど。今回は、まずは録ってみて、それをヒロシ君に聴いてもらってジャッジしていきましたね。「ちょっと違うな」ってなったら、「この曲はハナちゃんに弾いてもらう」とか。自分のギターは自分の裁量でやりましたけど。
川辺 : 今回ベースをやってもらった高橋トムは、マコイチ(高橋一、思い出野郎Aチーム)の高校の先輩で、マコイチが言うには、当時高校の頃からスタジオ・ミュージシャンとかやってて有名だったみたい。
渡辺 : お父さんが有名なギタリストで。さらにトムのベースの師匠は、細野晴臣さんとかのツアーでサポートしていたベーシストみたいです。ただやっぱりね、ハナちゃんのベースは特別なんだよね。
──これまでも生ベースが入るときはライヴもレコーディングも基本、ソウルセットは笹沼さんというイメージがありますが。
渡辺 : そうですね。
川辺 : レコーディングの仕方も独特だからね。
渡辺 : 普通はヘッドフォンしてスタジオの別室のブースで弾くというのが普通だと思うんだけど、ハナちゃんはヘッドフォンしないの。そうじゃなくて、スタジオのミキサーのところにあるラージ・モニターで爆音にして、そこで弾くんだよ(笑)。もう、ずっと爆音で引き続けるから。
川辺 : そんなレコーディングするべーシスト、聞いたことないよ。
渡辺 : しかも短ければいいんだけど、これがめっちゃ長いんですよ。
川辺 : すごい細かいんだよね(笑)。
渡辺 : サンプリングして修正するよってもちろん言ってるんだけど、細かく納得いくまで最後までやるんだよ。もう低音がすごくて、みんなこんな顔(眉間に皺を寄せて)聴いている。
──それは昔からなんですか?
渡辺 : 今回やってくれたエンジニアの子が若いんですけど、その子がそんなレコーディングの仕方ってはじめてなんでしょうね。もう長いし、逆に気持ちよくなって寝てましたからね(笑)。
──基本的にアレンジとか、ジャッジを川辺さんがという話がありましたが全体の指揮も?
川辺 : いや割と俊美くんから入れたものをボンともらう感じで。特に“JIVE MY REVOLVER”とか「これ何? 初耳なんだけど」っていうようなアレンジが出てきて。スタジオで入れ替わり作業してるから、勝手に俊美くんがいろいろやっててくれて、スタジオに行って聴いてみると、もう本当に最初は「えっ?」ってなるぐらいいろいろやってて、でも聴いていくうちに「こっちの方がいいかもな」って。
渡辺 : 俺も実はやりながら「ここまでやって大丈夫かな?」とは思ってたけど(笑)。この前の11月にライヴやったんだけど、そのアレンジではじめてやった時に「お、コレでいいんじゃない」という手応えもあって。
川辺 : でもあのオリジナルに入ってたホーン・アレンジが途中に入ってきて、しかも別のネタのホーン・アレンジがくっついて入ってくるというのは思いつかないからね。よく思いつくなと思うったよね(笑)。
渡辺 : もうね、なんかやけくそでしたね(笑)。正解がわかんないんだよね。元の楽曲があるだけに一番難しい。だけどリミックスとは違うじゃないですか。
──わりとBIKKEさんはおふたりの音の制作のやりとりを一番はじめに客観的に見ている立場にいると思うんですが、今回どうでしたか?
渡辺 : さすがにもうBIKKEもちょっとやそっとじゃおどろかいないでしょ。
BIKKE : やっぱりリミックスみたいな感じでもないし、いわゆるセルフ・カヴァーとも違う再録だし、改めてリミックスみたいな作り方を目指してやれば違った方向性になったんでしょうけど。でもそこに対して、なにか新しいチャレンジをもちろんしつつってことだから、難しいなとは思うよね。
川辺 : 普通はこういうのって難しく考えるもんなんだろうけど、そこはもう俊美くんは考え込む前に「やっちゃう」。それがソウルセットでよくあることで、そこに対しては俺らは慎重ではないから。
──それがソウルセットのある時期からの変わってない作り方ってことですよね。
渡辺 : もうね、抜き放題(笑)。
川辺 : もう俊美くんがたくさん入れた楽器のトラックを抜くのが楽しいというか(笑)。もう俊美くんは山盛りだから。100トラック突っ込んであって、最終的に20トラックを使うという感じかな。
渡辺 : ソウルセットはそれでOKなんです。
──そこはずっと変わらずという。ズートといつものサポート系のアーティストを除くとYOUR SONG IS GOODのJxJxさんが“否応なしに”参加してますよね。
川辺 : あの曲はJxJxとか、あとはMU-STARSの藤原ダイスケとかも好きみたいで。会うと「あのサンプリング、ちょっとサックスが入ってますがわざとですか?」みたいなことを聞かれてて(笑)。JxJxはDJとかでもかけてくれていて、前にライヴ用のインスト盤とかもあげてたんだよね。そうやって好きなのは知っていて、さらにもともとのサンプル元も好きみたいだし。だったらもうオルガンだし、アイツしかいないという感じでお願いして。なんかレコーディングのとき「アレをやりますか……」って震えたらしいよ(笑)
──さらに“SALSA TAXI”(原曲はシングル「ヤード」収録、原曲はクボタタケシの英語のナレーション的な語りが入っている)は、新しいラップ・パートがあって登生(トーイ)さんなんですね。ぎぎぎのでにろう名義で。
川辺 : 最高でしょ、俊美君の20年前の声みたいなんだよね。もう少し幼くて、中性的……でもやっぱり似てるんだよね。
渡辺 : 仮でなにかを入れてという感じでやってもらって。もともと“SALSA TAXI”はBIKKEのラップが後半しかなくて、もう少し曲を伸ばしたい感じもあって、「こんな感じでなにか新しく入れてくれない?」ってBIKKEにオファーしようとしてトーイに作ってもらった仮歌なんですよ。そしたらやつが本気だして入れてきたんだよ(笑)。結果「これでいいんじゃないの」ってことになって。前にも(森山)直太朗の曲をプロデュースしたときに、息子に仮のラップを入れさせたら、そのときも直太朗が「これでいいんじゃないの?」って話になって、その曲は鎮座(ドープネス)と一緒に入ってる(森山直太朗「話がしたい」)。それと同じパターン。
川辺 : トーイ、いま『ヒプノシスマイク』の仕事でノッてるみたい。もともと“黄昏'95”の最初のガヤの赤ん坊の声がトーイ。
渡辺 : もちろん『Jr.』はもろにだし。
川辺 : だからあのスタジオで録音するのは2回目なんだよ(笑)。本人1回目覚えてないだろうけど。25年ぶりとかで。
初期の若い頃の歌詞に振れて思ったことがあって
──例えば最近のビンテージ・ソウルみたいな、あえて昔のアナログなサウンドを目指すみたいな音ってあるじゃないですか。サンプリングの元ネタの弾き直しというところで、そっち方面に音作りとして寄せるみたいなことはしなかったんですね。
川辺 : 最終的に今回はバンド・サウンドっぽくなったから、いまの音にしようって。元がヴィンテージな音だから、そっちには持って行かず、生のもう少しいまのバンドの音にしようって。それはなにかを考えたというよりも勢いだよね。“JIVE MY REVOLVER”とか“BOW&ARROW”をレコーディングしはじめたときに「もうこっちだな」っていう。
──冒頭でも言われてますけど、やっぱりライヴのアレンジに引っ張られている感じはあるんですね。
渡辺 : そうですね。
川辺 : “黄昏'95”はラテン・クォーター(DJ、トラックメイカー)が勝手に作ったエデットがあるんだけど、その構成をまるごといただいた(笑)。あのイントロとかリズムの打ち方がおもしろくてそのまま。
──それでクレジットが入ってるんですね。サンプル・ループで作った曲を、また他人のDJがリエデットして、それをさらにバンドで演奏し直すってなんかすごいですね。
川辺 : そうそう。
──ライヴでずっとやっている曲ですが改めてそれぞれ触ってみてどうですか?
川辺 : ほぼ初期の作品、それこそ26年前とかに自分たちが作った作品が、その言葉の力がまったく古びてない、それがすごいなと。当時の時代感がそこにはないというか。
BIKKE : いやぁ、でもまあ新曲に関してもなんですけど。割と初期の若い頃の歌詞に振れて思ったことがあって。普通はたぶん、それなりに歌詞も成長したり大人っぽくなっていくと思うんですけど、でも、なんか、自分が作るものはいまも若いというか、中2みたい感じなんで(笑)。わりとテイストが似ていると思ったんですよね。当時作った歌詞の雰囲気といま作った曲も近いものがあると言うか。前に一時期は「大人になる、大人を気取っていないといけない」と思ったいたときもあったんですけど、だんだんそういうものは面倒で嫌になってしまって。結局「俺はそうはなりきれない」と、そういうことがわかってなかったと(笑)。
──諦めというか、そのままで良いというのが受け入れられたというか。
BIKKE : なんというか、ネット社会の感じも関係あると思うんですが、昔は大人の付き合いできないと仕事とか成立できない感じだったけど、いま自分たちで勝手にやっていろいろ世には出せるし。そういうことも関係ないかなって感じがするんですよね。おもしろいかおもしろくないか、それだけですし。昔は大人の言うこと聞かないとCDとかアナログとか作れなかったからね(笑)。
──たしかに。
BIKKE : いまはさらに自由で、そういう時代で自分の感覚的にもそうなってるのかなっていう。そういえば、できたら俺のパートとか完全に若い子にやってもらったらおもしろいなと思ってて。ほら、ソウルセットは誰もカヴァーしてくれないからさ(笑)。
川辺 : ああ、自分たちがプロデュ―スしてってことか。
BIKKE : そう、俺らやらないで(笑)。
川辺 : トラックを指しだして、コレで遊んでくれと。
BIKKE : 俺もおっさんになったからわかるんだけど、俺みたいな若い奴がいたら、ざわってすると思うし、というかとっくにいると思うんだけど、そういうひとたちと混ざれるかなと。
渡辺 : BIKKEはBIKKEで、ヒロシくんはヒロシくんでとかそれぞれのパート選んでやってもらったらおもしろいかもね。
BIKKE : 曲ごとに変えてもいいと思うし、人選変えたりとかね。いや、いま笑ってますけど、もう俺らも数年後は笑えない体調になってたりとかしているかもしれないからね。
渡辺 : 「俺、ギター弾けないよ」とかね(笑)。
BIKKE : そうなんだよ、意外と笑いごとじゃないからね。10年語のソウルセットなんて。若い子にやってもらったらいいと思う。俺らもやるけど、そっちもやるというね。
まだやれてないやり方はあったなとは思ったよ
──今回コロナじゃなかったら30周年でやろうとしてたこととかあったんですか?
渡辺 : ライヴはやろうと思ってたよね。あとはアーカイヴの展示をちょっと考えてて、今準備してます。いままでのソウルセットの写真とかグッズなり資料を集めてるんで、そういうのを見せられるといいなと。単にライヴというよりかはこれまでの歴史的なものを見せたいなという感じですね。グッズは僕もだいたい持ってるので、そういう展示は節目としてはいいのかなと。しばらくコロナは続くと思うので、ライヴは状況によってキャンセルになったりするけど、ある程度の期間で見れるようになっているといいかなというか。
──ひさびさに3人で作ってみていかがでしょうか?
川辺 : まだやれてないやり方はあったなとは思ったよ。
──さっきも出てきましたがズートのメンバーに手伝ってもらえれば、フル・ライヴのバンドもできるということですよね。
川辺 : そうなんだよね。どんどん参加する人が増えていくっていうのもやろうと思えばやれるんじゃないかな。
──ターンテーブルというかDJブースと前におふたりというスタイルがもちろんソウルセットの真骨頂というかオリジナル・スタイルの由縁でもあると思いますが。
川辺 : そう、でもDJブースと最小限で狭いところでもできるし、ゲストを呼んで広いところでもどっちでもできるような感じではやりたいよね。そういうの面白いと思うし。
渡辺 : あとはビルボードみたいな座席があるところでやりたいですけどね。メインのお客さんもそれなりに歳いったと思うので、だから座って見てもらう(笑)。そこから楽曲にもアレンジとかで生まれるものもあるかもしれないし。とにかくやってないことはやりたいなと。
BIKKE : 作品で言えばさっき言ったように知らない世代にカバーしてもらいたいかな。というのは本当に死ぬ前にやっといたほうがいいなと最近思っていて。あとライヴはいま状況がちょっと厳しいですけど、いままでのスタイルに加えて、さっき出たように今後は楽器も増やして、エンジニアに音を加工してもらったりとかも含めていろいろアレンジにさらに幅があったら楽しいかなと。と言いながら、ソウルセットはこのあとこういう話は1回も出てこないだろうからどうなるかわからないですけど(笑)。
編集補助 : 津田結衣、安達瀬莉
LIVE INFORMATION
無観客配信ライブ 「SHIMOKITAZAWA ZOO」@CLUB QUE開催決定!!
実に7ヶ月ぶりにライヴが決定! 今回は〈CLUB QUE〉にて行われるライヴを、無観客で配信ライヴ!
TOKYO No.1SOUL SET/無観客配信ライブ
「SHIMOKITAZAWA ZOO」@CLUB QUE
2021年6月25日(金)
開演: 20:00 配信 :¥3,000
●配信チケット購入ページ
購入ページはコチラ
https://clubque.bitfan.id/events/927
購入期間:6/2 19:00~6/25 20:30(アーカイブなし)
info : QUE 03-5433-2500
INFORMATION
原田郁子(clammbon) ヴァージョンを収録した「止んだ雨のあと」を7インチ!
RSD限定で7インチ「止んだ雨のあとEP」発売決定! 『SOUND aLIVE』から、新曲「止んだ雨のあと」を7インチ・シングル・カット!オリジナル・ヴァージョンとAA面には、本作用にヴォーカルに原田郁子(clammbon) を加えてレコーディングされた新たなヴァージョンも収録。
Record Store Day詳細はコチラ公式サイトへ
https://recordstoreday.jp/
アルバム『SOUND aLIVE LP』リリース決定
7年ぶりとなったアルバム『SOUND aLIVE』が、12インチ2枚組LPとしてもリリース決定。リリースは7月21日を予定。新曲2曲と今回新たに取りなおされたソウルセット・クラシックによる16曲に加えて、上記7インチに収録される予定の「止んだ雨のあと(原田郁子(clammbon) on vocal)」を加えた全17曲収録。
詳細・ご予約は下記、ディスクユニオン販売サイトにて
https://diskunion.net/portal/ct/detail/1008303668
PROFILE
TOKYO No.1 SOUL SET
BIKKE(写真右:ヴォーカル)
渡辺俊美(写真中央:ヴォーカル&ギター)
川辺ヒロシ(写真左:DJ)
1990年当初結成。フォロワーが存在しない奇跡のオリジナル・バンド。
現在までにシングル15枚、アルバム8枚、その他ライヴ、ベスト・アルバムなど多数リリース。
独自のトラックにメロディアスなヴォーカルとトーキングラップが交差する唯一無二のサウンドスタイル。2020年結成30周年を迎えた。^
■TOKYO No.1 SOUL SET
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