「道玄坂の消滅」と、より細分化する現場
yukinoise : 今年一番大きなクラブ・シーンのトピックは道玄坂の消滅というか、〈Contact〉と〈VISION〉の閉店だよね。〈Contact〉が無くなったことによって生じたのが「海外アーティストどこが受け入れるのか問題」みたいなもので。あのキャパシティを受け入れられる箱だったのがやっぱり大きいのかなー。
山本:ロケーションも良かったですよね。駅から近いし。
yukinoise : ジェフ・ミルズが来日した時も、平日夜にあれだけパンパンになっても統制が取れていたのは凄かったと思う。最近だとSkrillex & Bladee緊急来日があった時も「もし〈Contact〉があれば…」って話があったじゃん。大きなアーティストが来てもトラブルが起きないのは、箱として一貫した態度があったのが大きかったんじゃないかなと思う。男女でエントランス料金が分かれてるわけじゃないし、日によってパーティーの色も全然違うし、箱のスタッフも普段からストイックな遊び方をしてるし。
NordOst : 〈VISION〉もヒップホップのイベントが多くて元気なイメージの箱だったけど、なんとなく行った時にDeepフロアに行くと深いことがちゃんと起きてるとか、大きいからこそ出来ないことが出来ていたのかなと思う。好き嫌いはあれど重要な場所だったのは間違いないっすね。
yukinoise : だからといって渋谷のクラブカルチャーが終わったわけじゃないけどね。
NordOst : 行き場が無くなったってことで「クラブ亡国論」みたいなものが出るのは分かるけどね。でも悲嘆に暮れていてもしょうがないってことで、レイヴを気合い入れてやってく層が出現したんじゃないかと思いますけど。〈Contact〉、〈VISION〉の閉店は年明けぐらいに発表されてたじゃないですか? その中でいち早く次の手を模索していた人たちはたくさん居る。
山本:「〈Contact〉無くなったら終わり」論みたいなものすら出てましたね。
NordOst : 無くなること自体は10ヶ月前ぐらいに告知されてたじゃないですか。その上で次を見据えていた人が輝いてたな~と。大箱中央集権的な流れが消えていって小箱に分散してる時代だと思うし、〈AVYSS Circle〉なんかその象徴だったと思うし。その流れの中で小さい箱に僕は遊びに行ってましたね。
yukinoise : 「渋谷じゃなくてもいいよね」って思い始めてる人はいるよね。幡ヶ谷もそうだし、下北も中野もじわじわと盛り上がってきてるじゃん?
NordOst : SPREADを中心に新しい人がたくさん流入して下北で遊ぶのが定着し始めたし、そこに街の文化を長年支えてた人たちも合流していって。それは街としての土壌もあるから分かるんだけど、そういうイメージが無かった中野が盛り上がってるって話はワクワクします!
yukinoise : 中野は〈Heavysick Zero〉もあるけど、〈Bar スミス〉が出来たのが一番大きいよね。松島はオーナーのPortaLさんのDJ好きなはずだよ。
NordOst :あー〈SLICK〉行きたかった……。その日は神戸にいました。
山本:〈SLICK〉はToshio Bing KajiwaraさんやPortaLさん、LIL MOFOさんと凄まじいメンバーでしたね。Limited Tossさんのライヴセットの時の圧倒的な出音とか、KA4UさんがShitmatの”Shopliftin' Gabba”流してフロアが沸騰した瞬間とかが未だに忘れられないです。その前にPortaLさんとKA4Uさんの2マンが〈Heavysick〉で開催されてて、そのアフターパーティがスミスで開催されていたんですけど、個人的にはその日中野で感じた新しい流れの予兆みたいなものが〈SLICK〉で一気に爆発していたような気がして………。最高でしたね。
yukinoise : 〈SLICK〉はクィアのシーンでブレイクコアの熱狂が生まれてたのがかなり印象的だった。おそらくあの時ブレイクコアに初めて触れた人も多かっただろうし、日本のこれまでのブレイクコアシーンの中でも大きな出来事だったんじゃないかな。山本くんが9月に〈SPREAD〉で主催した〈Chronic〉ってパーティあったじゃん。その時に解放さんが「青系トランス」を通過した後に新しいベースの流れが来るんじゃないか、みたいなことをTwitterで言ってて。〈SLICK〉でのLIL MOFOさんのDJの盛り上がりを見て思ったけど、ベースミュージックの新しい時代は来つつあるよね。
TOPIC
ONE STEP FORWARD INTO THE RAVE = 2DJs RAVE JOURNEY =
2022年8月20日(土) 23:00〜
会場 : 中野HEAVSICK ZERO
出演 : KA4U × PortaL, VFX : catchpulse / B2 FLOOR DJ : FELINE, Lily, RECOO, Shinsuke Goto, Zooey Loomer 1979
TOPIC
Chronic
2022年9月9日(金)22:00〜
会場 : 下北沢SPREAD
出演 : LIVE: 7, Itaq, JUMADIBA, Maphie / DJ : Aki Dolanikov, Arow, miute, shakke, Soya Ito, YAYA子
山本:〈Keep Hush〉の日本開催第二弾が京都で予定されているんですけど、京都にはUKでも大きな支持を集めているStones TaroさんやNC4Kの方々だったり、PAL SoundsのようなWest Harlemを拠点に活動してる若い世代のDJたちが沢山集まっている状況もあって、そのシーンが世界に向けて発信される機会があるのは一つの起点として凄く期待出来ますね。「青系」っていうのは要するにハイパー以降のトランス解釈のことだと思うんですけど、その反動でベース・ミュージックが再燃するっていう予想は面白いなと。結局全部地続きで、緩やかに繋がっているところがいいですね。
yukinoise : やっぱりずっとハイ強いのを聴いてたら低い音楽も欲しくなってくるでしょ。ベースに関しては「これだ」っていううちらぐらいの世代がまだ不在なのは事実だと思う。かっけぇ先輩方はいっぱいいるから、〈SLICK〉だったり中野の盛り上がりみたいな流れから新しい動きが起こったら楽しいんじゃないでしょうか。
後編に続く!