2024/06/25 19:00

Khruangbin 『A LA SALA』

待ってました、魅惑のサイケデリック・トリオ、クルアンビンの4年ぶりとなる新作『A LA SALA』。帰郷や家族をテーマに制作された本作はバンドを内に向かせ、エキゾチックなサウンドはあたたかみを増した。アルバム・ジャケットの象徴的な窓が車窓のような役割を持ち、目にしたことのないような美しい桃源郷の数々が映し出されていく。先行公開されていた“A Love International”や、Laura Leeのタイトなベースが光る“Hold Me Up (Thank You)”はミュージック・ビデオもアップされており、楽曲イメージの手助けになるかと思いきや、どちらも独特の世界観を持った内容となっている。このバンドは凡人の私には理解の及ばない価値観を持っているのだと降参状態。しかし、理解できずに惹かれるものがいちばんドキドキさせられるのだ。

BANDCAMPページ

Camera Obscura 『Look to the East, Look to the West』

グラスゴー出身のインディー・ポップ・バンド、カメラ・オブスキュラがなんと11年ぶりに新作を発表。〈Merge Records〉からリリースしたのは11曲が収められたフル・アルバム、『Look to the East, Look to the West』だ。甘酸っぱくあたたかなバンド・サウンドと、どこか諦めと後悔を抱く歌詞の語り口とのコントラストに心が揺さぶられる。それでもタイトル曲でありアルバムをしめくくる“Look to the East, Look to the West”において「In a strange kind of way, life it, goes on and on」「Look to the east, look to the west / Be a good girl and try your best」とあるように、いびつにも続いていく人生において指差し確認できる余裕と、来たる明日はきっとときめきに満ちているかもしれないという希望を失わずに持ち続けていたいと思わされるのだ。バンドの新たな出発を祝う1枚。

The Lemon Twigs 『A Dream Is All We Know』

ニューヨークのダダリオ兄弟によるデュオ、The Lemon Twigsの5枚目となるアルバム『A Dream Is All We Know』。無邪気な子供のようにくるくると変わる表情と比類なきメロディー・センス、すべての曲が存在感を放つ怒涛の展開は、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』やゾンビーズの『オデッセイ・アンド・オラクル』に匹敵するほど。しかしそれは決して真似事ではなく、ダダリオ兄弟は文句のつけどころのないオリジナルの音としてアウトプットしている。若き才能が放つ鮮烈な輝きをこの先も見続けていたい。

BANDCAMPページ

この記事の筆者
石川 幸穂

REVIEWS : 105 インディ・ポップ / インディ・ロック  (2025年8月)──OTOTOY編集部

REVIEWS : 105 インディ・ポップ / インディ・ロック (2025年8月)──OTOTOY編集部

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第6回】ゲスト : 上村汀(上村一夫オフィス代表)

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第6回】ゲスト : 上村汀(上村一夫オフィス代表)

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.341 my masterpiece

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.341 my masterpiece

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第5回】ゲスト : イ・ラン(マルチ・アーティスト)

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第5回】ゲスト : イ・ラン(マルチ・アーティスト)

REVIEWS : 101 インディ・ポップ〜ロック (2025年6月)──OTOTOY編集部

REVIEWS : 101 インディ・ポップ〜ロック (2025年6月)──OTOTOY編集部

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.332 何しに来たんだっけ?

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.332 何しに来たんだっけ?

空想に潜ませた、ほんのちょっとの“本当”──motoki tanakaが高知で描く、ノスタルジックな景色とは

空想に潜ませた、ほんのちょっとの“本当”──motoki tanakaが高知で描く、ノスタルジックな景色とは

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第4回】ゲスト : 長谷川陽平(ミュージシャン)

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第4回】ゲスト : 長谷川陽平(ミュージシャン)

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.324 芋っぽさ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.324 芋っぽさ

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第3回】ゲスト : 横山雄(画家、デザイナー)

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第3回】ゲスト : 横山雄(画家、デザイナー)

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.316 こんなに一遍の春

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.316 こんなに一遍の春

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第2回】ゲスト : 北山ゆう子(ドラマー)

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第2回】ゲスト : 北山ゆう子(ドラマー)

OTOTOY各スタッフ+αがそれぞれ選ぶ、2024年の10作品

OTOTOY各スタッフ+αがそれぞれ選ぶ、2024年の10作品

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.305 脱・よもぎ餅

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.305 脱・よもぎ餅

純度100のその人の音を聴きたいから、まず自分がそれをやりたい──ミズノリョウト(GeGeGe)インタヴュー

純度100のその人の音を聴きたいから、まず自分がそれをやりたい──ミズノリョウト(GeGeGe)インタヴュー

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第1回】ゲスト : 山下敦弘(映画監督)

対談連載『見汐麻衣の日めくりカレンダー』【第1回】ゲスト : 山下敦弘(映画監督)

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.298 人間だった

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.298 人間だった

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.287 ほとんど無の覚悟

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.287 ほとんど無の覚悟

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.279 好きなものの話

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.279 好きなものの話

REVIEWS : 080  ロック、ポップ・ミュージック(2024年6月)──石川幸穂

REVIEWS : 080 ロック、ポップ・ミュージック(2024年6月)──石川幸穂

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.272 敬愛なる角刈りメガネ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.272 敬愛なる角刈りメガネ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.264 整体音楽療法

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.264 整体音楽療法

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.258 “先日”のお菓子のお礼です

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.258 “先日”のお菓子のお礼です

過ぎ去ったもののなかに忘れてきたものを見つけたとき、心が躍る──見汐麻衣インタヴュー

過ぎ去ったもののなかに忘れてきたものを見つけたとき、心が躍る──見汐麻衣インタヴュー

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.250 白い息の向こうにはツイン・ピークス

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.250 白い息の向こうにはツイン・ピークス

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.242 秋空と猫

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.242 秋空と猫

REVIEWS : 064 ロックetc. (2023年9月)──石川幸穂

REVIEWS : 064 ロックetc. (2023年9月)──石川幸穂

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.230 年を重ねるほどに増えていくネタバレ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.230 年を重ねるほどに増えていくネタバレ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.223 赤エビ半額、サンキュ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.223 赤エビ半額、サンキュ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.215 個人的ドラマチック

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.215 個人的ドラマチック

TOP