伝えたいことをもっとハッキリ言う、その姿勢がパンクだから──CHAIがグラミーへ大きな一歩を踏み出す!
いま最も注目を集めていると言っても過言ではないニュー・エキサイト・オンナバンド、CHAI。「コンプレックスはアートなり」という姿勢を貫きつつも、作品ごとにハッとするようなテーマを持っていた彼女たちが次に選んだテーマは、『PUNK』とのこと! 国内外でまさに猪突猛進な活躍を見せるCHAIの4人が“PUNK”というテーマにたどり着いたワケ、そして「可能性しかない」と語るCHAIの未来についても語ってもらった。
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『PUNK』ひと言セルフ・ライナーノーツ
INTERVIEW : CHAI
『PUNK』とはアティテュードだ。ブラストビートを叩かなくても、モッシュが起こらなくても、「世に言いたいことがあるCHAIは『PUNK』である」という海外メディアの評には非常に合点がいく。国内外の評価、スーパーオーガニズムとのツアー、『PINK』が米Pitchforkの「2018年年間ベスト・ロック・アルバム」に選ばれるなど、いま最も幸せな音楽人生を突き進むJAPAN代表バンドCHAIが次に選んだ言葉は、そう『PUNK』だ!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文&構成 : 鈴木雄希
写真 : 作永裕範
スーパーオーガニズムとのツアーを振り返って
──今作『PUNK』めっちゃかっこよかったです。
マナ(Vo&Key) : よかったー!
カナ(Vo&Gt) : いいよねー!
ユウキ(Ba&Cho) : やったー、うれしい!
ユナ(Dr&Cho) : うれしい、うれしい!
──今回僕が気になったのはサウンド・プロダクションで。前回からエレクトロの要素は増えていってるけど、今回はその要素がさらに増しているな、と。そのイメージは誰が決めていったの?
マナ : 誰だろう…… みんなで決めたかな。
カナ : そもそもエレクトロはずっと好きだからね。
マナ : そうだね。エレクトロっぽい曲がちょっとずつできるようになってきたからこういう感じになっていったのかも。
──なるほどね。今回ベースがすごく低音でブリブリ鳴っているけど、そのイメージは自然にできていった?
ユウキ : ブリブリしてるのはかっこいいよね! やっぱりね、低音が聴きたい。
マナ : もともと低音は好き。
カナ : 好きな音楽も全部低音が歪んでいるし、やっぱり歪みの入っている低音はCHAIの音楽に絶対必要だよ。
──今回シンベ(シンセベース)は誰が弾いてるの?
カナ : 私もシンベ弾いてたかな? だれがなにを弾いたか、もうわかんない(笑)。
ユウキ : カナも私も弾いてるね。
──今回のキーワードとして「シンベ」はある?
マナ : ある!
ユウキ : シンベ好きだもんね。なんか雰囲気出るし。
マナ : それこそベースの歪みだったり、シンベを使うことだったり、モーグ・シンセサイザーの独特な音だったり、そういうところはスーパーオーガニズムからめっちゃ影響を受けたかな。
編集部注「モーグ・シンセサイザー」 :
シンセサイザーの父と呼ばれたロバート・モーグ博士によって開発されたシンセサイザー。LPFに使われているトランジスタの非線形特性が理由で独特の歪みが発生する。
──やっぱりそうなんだ。
マナ : 実際に演奏を生で見たらもっと好きになって。今回のミックスとかでもかなり影響を受けちゃった。
──スーパーオーガニズムの演奏は具体的にどんなことがすごかったんですか?
マナ : ドラムはすごかったよね。
ユナ : トリガーを使ってて、心臓みたいな音とかして、全部いろんな音に変化しているの。ドラムじゃないみたいだった。
──今回はトリガーも取り入れたの?
ユナ : CHAIは、まだトリガーを持っていないから今回は使ってないけど、そのうち欲しいなって思っちゃった! 私もやりたい! あと、ドラムのビート感にはすごいインスピレーションを受けたかな。
──ユウキさんはスーパーオーガニズムから影響を受けたことはありますか?
ユウキ : うわ〜、なんだろう。音作りやリズムみたいな音楽的な面でも、ステージ上のパフォーマンスでも、全部に影響を受けた! スーパーオーガニズムは「ステージ上だからかっこつける」みたいなことはなくて。怒ってるときは怒ってるまんまやるし、悲しいときは「悲しい」って言うし、ありのまますぎてびっくりした。「あぁ、このままでステージに立っていいんだ」って思えた。
──精神的なところで影響を受けたんだね。マナさんはどうですか?
マナ : いろんな意味で「自由さ」かな。それは音も、人間性も、行動も、発言も、音楽の作り方も──自分たちの生活と人生をなにひとつ切り離していない。すべてが繋がってる感じだった。
──カナさんは?
カナ : すこしマナとかぶっちゃうんだけど、アルバムをはじめて聴いたときに、「なんでこの人たちは、生活のすべてを芸術にできてるんだろう」って思って。いろんな音色とか声、生活の中で感じる音とか、そういうものが全部芸術作品みたいになって音楽で表現されていて。たとえば、鳥のさえずりとか水の音、ドアの音だったり、電話や電車の音とか。私たちは音楽に“生活”をつなげることってないから、私たちもこういうことがしたかったんだ、と思ってすごい悔しくなって(笑)。だからライヴを観たときに、みんながすごく自由で、「音楽ってこんなに自由でステキなんだ」って感じて泣けたもんね。
CHAIはパンクだ!
──なるほど。これまでもCHAIは、自分たちのアティテュードをハッキリ出していたけど、そこも変わってきたの?
マナ : うん。だから『PUNK』にした。
カナ : 海外のメディアがみんな声を揃えて、私たちのことを「ジャパニーズ・パンク・バンド」って言うの。私たちはひと言もパンクなんて言ってないのに。
ユナ : 「曲をパンクだと捉えられた! やばい!」ってなっていたんだけど、よく見たら「『コンプレックスはアートなり』とか『伝えたいことがめっちゃあります』みたいな発言や姿勢がパンク・バンドなんだ」って書いてあって。
ユウキ : 「これだ! CHAIはパンクだ!」ってなった(笑)。海外メディアに教えられたの。
カナ : あとは、スーパーオーガニズムのオロノを見て、自分らしく、自分を飾らない姿勢がすばらしいって思って。そこで、私たちはもっと我がままで、もっと自由になろう、って思ったの。“PUNK”はこの1年の目標なの。
マナ : そう、生き方の目標!
──CHAIのみなさんが思うパンクとは?
マナ : なりたい自分になることだったり、より我がままになることだったりを、さらに極めていきたい。私たちの伝えたいことをもっとハッキリ言う。その姿勢がパンクだから。だからもっといろんなものを創造をしていって、自分たちのなりたい方に向かうような生き方をしたい。
──なるほど、「コンプレックスはアートなり」という姿勢は変わらずに、その上で「もっと自由にパンクに生きてやる」というアティテュードになってきた、と。
マナ : そうだね。
──『PINK』(2017年)をリリースしてから、個人的に変わったことはありますか? ユナさんはどうですか?
ユナ : 『わがまマニア』を出したときに、「いい意味で“我がまま”になろう」とか言ってたけど、オロノちゃんとかCHAIのメンバーを見てて、まだまだ“我がまま”じゃなかったって思って。もっと、子供でありながらも、人間として成熟したいって思った。あと、去年〈SXSW〉でアメリカに行ったときも、隣に何気なくいた黒人ドラマーからすごく刺激を受けて。プロかアマチュアかわかんないけど、グルーヴがバシバシで、なにか違うビート感があって。あれを見て、もっと出せるグルーヴがあるし、まだ伸びしろがあるって気づいた。まだまだ上手くなれる!
──なるほどね。カナさんはどうですか?
カナ : ギターでもコーラスでもベースでも、空間の使い方を大事にした!
──なんと。すごいね!
カナ : あざーす(笑)!
ユナ : 拍手!
一同 : あははは!
カナ : 洋楽の隙間がある音楽を聴いていたし、『PINK』のときから思っていたことではあったんだけど、今回はさらに空間の使い方を意識した。
──空間の考え方が『PINK』から『PUNK』に変わるうえで、もっと繊細になったんだ。
カナ : ホンネとかフェニックスとかも綺麗な楽曲が多くて。CHAIの音楽を綺麗にやろうとは思ってないけど、あのロマンティックな空間をちょっと取り入れたいなって思って。
──そうなんだ。そういえば、あんなにうまいのにこれまでよりもギターを弾かなくなったのはなんで?
カナ : エレクトロニカとかのギターがリズムでちょこちょこ入っている曲が好きだからかな。キーボードとベースがガーンって前に出ている方が好きだから、私もリズムをとるギターにしたかった。
──なるほど。マナさんはどうですか?
マナ : ドンと構えること! 1曲、1曲が独り立ちする曲にしたかった。「アイム・ミー」と「フューチャー」がアルバムに入るのはもともとわかってたし、この2曲が明るいから、今回はより暗い曲を作ろうと思って頑張って。普通に曲を作っても差が生まれないと思ったから、今回は暗いけど明るいことが重要だと思った。
──具体的にどういうこと?
マナ : 私たちが暗い曲をやっても絶対性格に合わないから、暗い中でもどうやってポジティヴに明るく見える曲を作れるか、ということがテーマにあったの。「カーリー・アドベンチャー」や「ファッショニスタ」、「GREAT JOB」、「THIS IS CHAI」もそうだけど、もともとは自分の中で暗い曲だった。
──それはサウンド的にも?
マナ : メロディーをあんまり入れないとか、カナも言ったように空間とか、自分の中で自然に暗くなっちゃうんだよね。そこをドン! と見せるには、暗い中にある“明るさ”と“光”と“ポジティヴ”がすごい大事だと思って。青がオレンジになる、そのイメージがすごい大事だったの。聴いたときの印象としてすべてを青にするようなことはしたくなかったから、もともとが青いイメージのある暗い曲でもオレンジに見せることをすごい考えた。
──青をオレンジにするためにどんなことをやったの?
マナ : テンション感とか空間を大事にした。たとえば、クールな見え方はいやだから、なるべく子供っぽく歌うとか、英語を英語っぽく歌わないとか。馬鹿っぽく見えて明るいから。
“可能性しかない”CHAIの未来
──今回の収録曲はすべてユウキさんが作詞されていますが、作詞をするうえで気をつけていることはありますか?
ユウキ : 気をつけているのは、絶対応援しないことかな。「大丈夫だよ」「頑張れ」って応援するのは簡単だけど、歌で応援されて頑張れることってないと思ってて。結局私たちはその人のことを直接見ていないし、歌で応援するとか無責任じゃん。だけどコンプレックスって、ちょっと見方を変えたらその人の魅力になるし、チャームポイントだし、もしかしたらそれが武器になって仕事になるかもしれない。そういう“コンプレックスの違う目線”を伝えて、「あとは自分次第だぞ」って感じにしたいと思ってる。
──なるほど。ユウキさんの歌詞は、ちっちゃい世界を書いているけど、それが不思議とおっきく伝わりますよね。
カナ : そうだね、わかる。
ユウキ : うれしい! CHAIの曲は、壮大でどこまでも広がっていく曲が多いので、それを聴いて、パッと出ちゃう。
──それで言うと「フューチャー」は決意表明ソング?
ユウキ : そう、CHAIの決意です。
マナ&カナ&ユナ : 見事だよ。
ユウキ : イーエイ! よかった!
──ユウキさんはCHAIの未来をどのように考えているの?
ユウキ : 可能性しかないと思ってる! 好奇心とやりたい夢とが有り余っていて、もうだれにも止められないって感じ。
──具体的な夢とは?
ユウキ : 遊園地を作りたいし、動物園でライヴをしたい。
マナ : みんなで触れ合えるように自分のペットを連れてきてもらってね。
ユウキ : 動物もみんなでダンスしたい! あと、UFOから出てきたい。
──UFO?!
ユナ : ステージ上にUFOがあって、上からポポポポッて出てくるの。
ユウキ : UFOからCHAIが降りてきて、ライヴが終わったらUFOに乗って帰るって、おもしろくない?
──うん…… ええ……。
CHAI : あははは!
カナ : お菓子の家でもライヴしたいし。
マナ : CHAIフェスもやりたい!
──夢が広がってますね(笑)。「フーチャー」の歌詞に〈泣いた過去にも少しのウインクを〉とユウキさんは書かれています。CHAIはこの2、3年で悔しいことや落ち込むことはあったんですか?
ユウキ : ぜんぜんあるよ。日本でたくさんのフェスに出れて、全部はじめてだったしすごいうれしかったんだけど、そこで「私たちが言っている“我がまま”とはなんだ?」ってことに悩んだかな。“我がまま”を出し切れているのか、それを表現する方法がこれで合っているのか、わからなくてモヤモヤしてたね。それがいちばん悔しかったかな。でも、スーパーオーガニズムと一緒にツアーを周って、ライヴを観たときにこれだ! ってものに気づけた。
──そうだったんだ。前回インタヴューをしたときに「『CHAIは、ミュージシャンですよ』って感じを出したい」と話していたけど、それは叶えられたのかな?
前回のインタヴュー :
大躍進をみせるCHAIがコンプレックスを持ち続けるワケ──「我がまま」な自分らしさを肯定する新EPリリース
https://ototoy.jp/feature/20180509
ユウキ : そこはもう飛び越えたかも。
マナ : そんなのはもうどうでもいい(笑)。いま私たちは音楽をやっているし、いまはわざわざそこを証明するつもりもない。音楽をやっているからいい!
──そっか(笑)。でもそれは叶っている感じがあるよね。最も世界で活躍している日本のバンドのひとつだもんね。
CHAI : ほんとに〜〜?!
ユウキ : 海外も日本も変わらずに活躍してグラミー賞を獲るぞ!
──このアルバムで獲ります?
マナ : 近づきたいね!
ユウキ : でもいまのCHAIのベストだと思う。CHAIがやりたいこと、CHAIが好きなことができた。
──『PUNK』をリリースしたうえで、次の目標を教えてください。
マナ : PUNKに生きる。
ユナ : そうだね。
ユウキ : 実際にPUNKになる!
編集 : 鈴木 雄希 / 編集補助 : 松崎陸、千田祥子
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過去の特集ページ
・“NEOかわいい”最強オンナバンドCHAIが、7inchを作りにレコード工場にゴー!!
https://ototoy.jp/feature/20170125005
・NEOかわいい”最強オンナバンドの結成話やルーツを深く掘り下げる!
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・3週間に渡る、CHAIのドタバタ全米8都市ツアーを現地レポート!
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・【REVIEW】USツアーを経てパワーアップしたCHAIの2nd EP『ほめごろシリーズ』をハイレゾ配信!
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・足りないぐらいがいいんだよ!──CHAIが「NEO」な魅力満載の初アルバム『PINK』をリリース
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・CHAIがコンプレックスを持ち続けるワケ──「我がまま」を肯定する新EP『わがまマニア』
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LIVE SCHEDULE
CHAI JAPAN TOUR 2019「PINKなPUNKがプンプンプン トゥア!」
2019年6月08日(土)@名古屋 DIAMOND HALL
2019年6月09日(日)@大阪 なんばHatch
2019年6月13日(木)@札幌 PENNY LANE 24
2019年6月15日(土)@新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
2019年6月16日(日)@仙台 Rensa
2019年6月21日(金)@岡山 YEBISU YA PRO
2019年6月23日(日)@福岡 DRUM LOGOS
2019年6月29日(土)@新木場 STUDIO COAST
【詳しいライヴ情報はこちら】
https://chai-band.com/category/live
PROFILE
CHAI
ミラクル双子のマナ・カナに、ユウキとユナの男前な最強のリズム隊で編成された4人組、『NEO – ニュー・エキサイト・オンナバンド』、それがCHAI。誰もがやりたかった音楽を全く無自覚にやってしまった感満載という非常にタチの悪いバンドで、いきなりSpotify UKチャートTOP50にランクイン、2017年〈SXSW〉出演と初の全米ツアーも大成功。〈FUJI ROCK FESTIVAL“ROOKIE A GO GO”〉超満員を記録など、破天荒な活動を繰り広げる。そして期待値最高潮のなか17年10月に1stアルバム『PINK』をリリースし、オリコン・インディー・チャート4位、iTunes Alternative ランキング2位にランクイン。また日本テレビ系「バズリズム02」の『コレはバズるぞ2018』では1位にランクイン。第10回CD ショップ大賞2018にノミネートなど、注目度が更に増す中、2月に「PINK」US盤をアメリカの人気インディー・レーベル〈BURGER Records〉よりリリースし3月にはアメリカ西海岸ツアーと2 度目のSXSW 出演を大成功に収める!
彼女たちに触れた君の21世紀衝撃度No.1は間違いなく『NEOかわいいバンド』、CHAIだよ!
【公式HP】
https://chai-band.com
【公式ツイッター】
https://twitter.com/CHAIofficialJPN