INTERVIEW : tacica
このイベントのあと、柏のワンマン・ライヴに行って『singularity』の世界に酔いしれた。素晴らしい演奏、こだわりの楽器たち、そして一言一言が伝わる歌詞。日本のロック・バンドで、最上級に好きなバンドだ。彼らの音楽に救われる人は本当に多いだろうな。だからこそ、世界にはtacicaが必要で、彼らがずっと音楽を創り続けて欲しいと願うばかりだ!!!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 梶野有希
写真 : 大橋祐希
極めて特異な環境で作った作品
──アルバムのタイトル、「singularity」は特異点と訳していいのでしょうか?
猪狩翔一 (Vo/Gt)(以下、猪狩):今作は、独立という僕らの活動する環境の変化がまずあって、そこにコロナ禍も加わったので、僕ら的にも世の中的にも、「変わろう」と思っていなくても「変わらざるをえなかった」という状況で作った曲です。特異点というタイトルにも表れているように、通常モードではない感覚が歌詞にも顕著に出ていると思うし、今後の活動を踏まえても、極めて特異な環境で作った作品になる気がしています。
──どんな特異な環境が?
猪狩:僕、犬を飼いはじめたんですよ。実はすごく大きいことで。たぬきちって名前なんですけど。
小西悠太(Ba)(以下、小西):僕はたぬきちの話、もうずっと聞かされてます...
──たぬきちって犬ですよね?たぬ...き?
猪狩:保護犬なんですけど、施設のスタッフさんに名前を聞かれたときに「たぬきちです」と伝えたら、「たぬきって入ってる!!!」ってナチュラルに驚いてました。出会った当時は毛並みもあまりよくなかったので、たぬきっぽかったんですよ。いまはもう毛並みもツヤツヤですよ。
──ツッコミどころしかないっす! 今作はジャケットも素晴らしいですね。
猪狩:すごく綿密に打ち合わせをしながら、デザイナーの方に作ってもらいました。このデザインは、中身も含めて、NASAが無人探査機に積んでいるゴールデンレコード(※)を模しているんです。だから実現するにあたって、全部英訳してNASAに直接交渉してもらって。質感も、古い新聞っぽい感じにしたり、バンドの過去現在未来を彷彿させるようなデザインにしてもらったりとか。後ろの絵はCGで作ってもらったんですけど、tacicaのゴールデンレコードがどこか知らない星に辿り着いたという体なんです。
※1977年に打ち上げられた2機のボイジャー探査機に搭載されたレコード
──すごいです。今作はいつ頃から制作をはじめました?
猪狩:コロナ前か、コロナに少し差し掛かった時期くらいからはじめました。コロナ禍になる半年前くらいから弾き語りをはじめたんですけど、今作の収録曲の2/3くらいは、その時から歌っている曲で。だから人前で歌ったあとにアルバムの収録曲として仕上げていった曲が今作は多いですね。