今作では「そうじゃない」を一緒にたくさん探しました
──なるほど〜。そもそもRyosei君はひとりで作るのとバンドで作るのは、どっちが好きなの?
Ryosei:どっちも大好きですね。ただ考え方が違うなとは思います。
──どう違うの?
Ryosei:ひとりとかふたりで作るときは、自分のグッドを積み上げる作業を繰り返していて。それが高くなっていって、これ以上積み上げると倒れるからそこでバツッとやめる、ということをしています。でも人数が多いバンドでのクリエイトは、みんなで「違う」を探す作り方をするんです。「そうじゃなくない?」を何回言えるかを大事にしていて。
──どうして?
Ryosei:「そう」があるから、「そうじゃない」が言えると思うんですよ。試して、お互いに「これは違うよね」っていう作業を繰り返すんです。
──お互いが納得した「そう」が出たときに、はじめて形になると。
Ryosei:その方がグッドの価値が上がると思うので。この感覚はメンバーも理解してくれていて、今作では「そうじゃない」を一緒にたくさん探しました。例えばギター・リフを僕とKeishoで作っているとしたら、「これは違うよな」っていう意見が被ることはすごくいいことで。お互いの「いい」を信用しつつ、「そうじゃないよね」をどれだけ作れるかっていう。
──ストイックだし、おもしろいバンドだね。"I cross my fingers all the time"はどう作っていきましたか?
Ryosei:この曲はふたつのデモを組み合わせています。「No matter what kind of day」の部分はもともと"No Matter"という別の曲のフレーズで。その"No Matter"と"I cross my fingers all the time"を同じコード感でスタジオでセルフ・リミックスしてみたら、全員が「これや!」って納得できました。
──そこでメンバー全員一致の「そう」が出たんだ。
Ryosei:はい。そこからさらに「セクションごとの移り変わりを表現したい」という話になって、ドラムのAndoがコードを提案してくれて。そのコードが高校生の時に聴いていた楽曲のアンセムのようなもので、そのおかげでひとつの曲にまとまったんです。
──へえ、すごい! 歌詞についてはいかがでしょう。
Ryosei:タイトルは、人差し指と中指をクロスするポーズのことなんですけど、これを子供の時に通っていた英会話教室の先生がお祈りポーズとしてやっとったんですよ。それで考えたら、僕はずっとお祈りしているなと思って。「やりたい音楽と真摯に向き合っているだけで、僕らは間違ってないよね。報われたらいいな」ってずっと願っているんです。それに世界では地震もあって、戦争もまだやっているし──生きるのってほんま辛いと思うんですよね。
──うん。
Ryosei:それでクヨクヨしているときに、母と電話をしたんですよ。「最近亡くなっている人も多いし、ほんま嫌になるわ」って愚痴をこぼしたら、「生きている人の方が多いねんで!」って喝を入れられまして。それでこんな世界で僕ができることは、祈りながらも、音楽をやるっていうことだけだと思って。だからいまできることをやろうという純粋な気持ちで「I cross my fingers all the time」という歌詞を書きました。
──3月には京都を皮切りに、ファイナルは渋谷WWWまで4箇所を回る、はじめてのツアーが開催されます。どんなライヴになりそう?
Ryosei:the Mcfaddinとして完成形にかなり近いものになると思います。それぞれの公演を違うニュアンスでやろうという話もしていて、古い曲もやる予定です。バンドはツアーを通してよくなると言いますけど、すでにそんな予感がしていますね。それと今回は物販も頑張って自分たちで作っていまして。
──本当に全部自分たちでやるんだね。
Ryosei:とにかく"作ること"が楽しいので。FreeFromKnowledgeというコレクティブにデザインしてもらって、Tシャツやパーカーを1点ものとして全部オリジナルで手作りしています。今回のジャケットは宝ヶ池公園で撮影した風景写真をマスターにして、シルクスクリーンで版を作ったんですけど、そのデザインを使っています。パフォーマンスもライヴもグッズも気合十分です。
──ファイナルが渋谷WWWというのがいいよね。音もいいし、映像がドーンと映るからthe Mcfaddinにマッチしていて。
Ryosei:でも僕、渋谷WWWがいちばん緊張するんですよ...(笑)。あんなにお客さんの顔が見える箱はないので。前回はgatoとのツーマンでしたけど、今回はワンマンなのでめちゃくちゃ楽しみです!
編集:梶野有希
the Mcfaddinの好奇心がつまった新作!
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ライヴ情報
WH3Nwhere TOUR 2023
日程:3月25日(土)
場所:livehouse nano(京都)
出演:the Mcfaddin
日程:4月8日(土)
場所:ell.FITS ALL(名古屋)
出演:the Mcfaddin / NIKO NIKO TAN TAN
日程:4月22日(土)
場所:LiveHouseANIMA(大阪)
出演:the Mcfaddin / gato
日程:5月12日(土)
場所:Shibuya WWW(東京)
出演:the Mcfaddin
PROFILE : the Mcfaddin
フィジカルなバンドサウンドとDTMで作り上げるデジタルなアプローチを融合させた次世代のロック・バンド。ライヴではVJによる視覚でのパフォーマンスにも定評がある。共同生活を営みながら、京都を拠点に活動中。2019年7月にファースト・フル・アルバム『Rosy』リリース。2020年6月には、ポストコロナに向けてフリーイベントの開催を目的とするドネーションEP『neighbors projects』を始動。2021年1月より4ヶ月連続で新曲「DRAW IN A HEAD」「SHIVER」「SPIRITED AWAY」「SOUTH」をリリース。同年6月に女性シンガー、こゑだに「Straw」を楽曲提供。2022年2月、大阪心斎橋ANIMAにてワンマンライブ、4月に東京渋谷WWWにてリリースパーティー(w/ gato)を開催。同年7月、配信シングル"Whales"公開。京都CLUB METROにてdip.3を開催 (w / どんぐりず, Jugem)。同年9月、下北沢BASEMENT BAR, THREEにてフリーイベント"neighbors"を開催。2023年3月に『WH3Nwh3re』をリリース。
■公式ホームページ:https://themcfaddin.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/the_mcfaddin