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INTERVIEW : 石毛 輝(the telephones)
コロナ禍で、活動の比重をライブに置いていたバンドたちは、とても苦悩し、新しいやり方を模索するしかなかった。the telephonesもそんなバンドの一つだろう。しかしこの音源を聴くとどうだ! その変化は、彼らの音楽的深みをより際立たせてるし、本質的なダンスミュージックの視点は全く変わっていない。「ライヴハウスで踊れないなら家で踊らせてやろう!」最高じゃないか。やっぱりthe telephonesが最高なことが『Come on!!!』で証明されてしまった!!!
インタヴュー:飯田仁一郎
文:梶野有希
写真:西村満
聴いてくれる人たちの日常に色をつけたい
──the telephonesは2015年に活動休止、2019年には活動再開したもののすぐにコロナ禍に突入しました。その間はどんなモードでした?
石毛 輝 (以下、石毛):コロナ禍になりたての頃は、思うように活動ができないことに対してのフラストレーションから、一度心が折れていた気がします。僕以外のメンバーも含め。
──その状況を経て、いまは?
石毛:いまは僕らがダメージ受けていたらお客さんにも伝わっちゃうと思うので、僕らがガシガシやっていかないとなって思っています。基本的なスタンスは変わらないままで、やり方だけ2022年という時代にあわせていこうと。
──コロナ禍は色々な制限がありますけど、音楽活動自体はどう考えていました?
石毛:第一に暗いことは考えたくない。それから突き抜けたロックが持つ明るさを大切にしたいと思っています。コロナ禍なんて普通に暮らしていたら暗いことばかりだけど、僕らの曲を聴いてくれている時は、「the telephonesの音楽って楽しいな」って思ってもらえたらいいなと。いままでは僕らのエネルギーをリスナーにぶつける感じでしたけど、いまは聴いてくれる人たちの日常に色をつけたいなと思ってます。
──うん。いまのthe telephonesってとにかく楽しそうです。
石毛:楽しいバンドだと思いますね。結成当初は4人中3人がライヴハウスの店員で、各々バンドもやっていたけど、ほぼ同タイミングでみんな解散しちゃって。それで「じゃあ一緒にやるか!」という感じで結成したんですけど、はじまりがラフだったのがいまも楽しい理由だと思います。もちろんプロ意識もありますけど。
──制作は石毛さんが大まかに全体を作り上げてから他のメンバーがアレンジして戻すスタイル?
石毛:そうですね。でも今作は僕の家で2日間くらい集まって曲作り合宿をしたんです。だから僕が大元のデモを作って、メンバー全体で一緒に仕上げていった曲もあったり。ワン・フレーズをメンバーに聴いてもらって、そこからアイディアを出しながら広げていったりとか。活動初期に近い作り方ですね。前作と今作はメンバーの意見が特に多く入っている気がします。
──今作『Come on!!!』は前作『NEW!』から約2年ぶりのアルバム作品ですけど、制作に変化はありました?
石毛:僕らの音源は、基本的にライヴハウスで最終的に完成するとずっと思っていたんです。その場でエネルギーを放出することによって成り立っている曲だなと。でもここ数年で、ライヴに行くのが怖い人もすごく増えたから、家で聴いても楽しめるような曲にしようという変化がありました。だから今作はコロナ禍だからこその作り方をして完成したアルバムですね。
──具体的にどんなことにトライしました?
石毛:BPMを下げる工夫をしました。そうすれば、いまライヴハウスのフロアのマスのなかでも踊りやすいかなって(笑)。あとそれによって個々のプレイを聴く余裕が昔の曲より増えました。だからこれまでとは聴こえ方とか向き合い方が違う気がしますね。あとは、記号的に叫んでいた部分をちゃんと言葉にしたり、歌詞の内容を伝わりやすいものにしようと考えながら作りました。コロナ禍だからこそできた、実験的なバンドサウンドを楽しんでもらえると思います。
──3曲目“Get Stupid”の日本語訳は「馬鹿になろう」ですよね。このアルバムで特に伝えたいメッセージだと感じました。
石毛:そうですね。SNSが普及したり、コロナ禍では色々な情報が特に錯綜していると思うので、ちょっと1回馬鹿になってもらえたらなと。音楽にはそういう力もあると思うし、とにかくフラットに考えていこうと言いたいです。この曲は会場限定シングルとしてリリースしましたけど、コロナ禍でもライヴハウスに来てくれる人へのギフトとして作った意味合いもあります。せっかくライヴハウスに来てくれたなら、いい意味で馬鹿になって踊って帰ってくれよという気持ちを込めて。