技術があって足し算引き算が上手い人たちがこのバンドに集まった
──楽曲制作はどこからはじまるの? 基本的にネギくんが歌詞を創っているんだよね?
藤澤:そうですね。ネギさんがデモを何曲も持ってきてくれるんです。弾き語りだけのデモや、全パートが入っている完成度の高いデモまで。それをブラッシュ・アップしたり、みんなで崩しあってガラッと変えたりして制作しています。
──他の人がデモを持ってくるってことはないの?
藤澤:ネギさんは持ってくるデモの量が異常なんです(笑)。みんなで「インスト投げてみる?」という話をしてても、そうこうしているうちにネギさんがデモを20曲くらい投げてくれて。将来的にはありえるかもしれないけど、今のところは他の人がデモを作る予定ないですね。
ネギ:正直そこは申し訳なくも思っています。苦なくやっていますけど、メンバーの反応が薄かった時にもっと良くさせたろうって感じで、デモがめっちゃ多くなってしまうので…。そうすると他のメンバーは「まだ聴けてないです」って溜まっていく状態になってしまって。
──今回初のフル・アルバムをリリースされたわけですが、失恋をテーマにした曲が多い印象がありました。でもどの曲も明るくて「失恋=悲しい」ってイメージではなさそうですね。
ネギ : そうですね。でもそれは、アレンジですごい変わったんですよね。メンバーにデモを渡してから、みんながそれぞれの解釈をしてくれたんです。例えば “KITTO”でいうと、デモでは「俺はまだできるけど、前に進む気はないなぁ。」みたいな感じだったんですけど、アレンジが入ると「毎日ダラダラ過ごしているままでもいいけど、ほんまはもっといきたいよね」くらいのテンション感になっているんですよ。“SUNDAY -album ver.”もそうで、失恋して干渉に浸ってるけど前に進もうとしてる感じはアレンジで生まれました。WANG GUNG BANDでアレンジすると、全体的に前向きで向上心みたいなものが盛り込まれて、歌詞のなかに隠れてる感情が演奏であらわになるんです。それこそ“HOLIDAY!”のサビを抜いたところとかもそう。1サビを抜いたところとか、僕がデモで出せへんかった感情が頭の中にグーっと入ってストンと抜ける感じがします。
藤澤 : 逆に“HOLIDAY!”のデモはもっと明るかったですもんね。デモは南国感とか休日感がめちゃくちゃあったんですけど、最終的には感情的な曲になりました。
──”HOLIDAY!"のSAXソロとかすごくかっこよった!
藤澤:かっこいいですよね。僕的にはおっくーのキーボードの抜き差しもそうだし、バッキングの感じもちょっとの違いで変わってきて、“HOLIDAY!”でそういうのが全ての楽器で絡み合った気がしてめちゃくちゃすげえってなってます。これまでは新曲を固めるのに1回、2回のスタジオでは中々進まなかったんですけど、"HOLIDAY!"は、おまたくんと奏太くんとでアレンジの土台の大部分を作ってくれたので、スタジオ内で合わせながらフレーズが整備されていったんですよ。最終的にはサビを無くして、その部分をサックスにしたときに、この曲本当に自分達で作ったのかと衝撃でした。
──アレンジの面でいうと“SPICE”は衝撃的でした。ネギくんのスタイルにしては珍しいなと思って。
ネギ:“SPICE”は鴨川で友達と3人くらいでセッションしたやつをデモで持っていったんです。そしたら信次郎くんが「1回持ち帰りますわ」って言って。
藤澤:SPICEを聴いて何回かスタジオで合わせた時にフレーズをかなり固めているメンバーもいて、そのおかげでかなりコードアレンジやユニゾン・フレーズ・歌詞の展開が広がるイメージが湧きました。当時のキーボードの子とアレンジしたデモをみんなに投げて、スタジオでアレンジ前の良さとアレンジ後の良さを相談しながら融合させていきました。
ー他にアレンジが印象的だった曲はありますか?
藤澤 : “素敵な相棒“のおっくーのキーボードがめっちゃいいんですよ。ちょうど"素敵な相棒"のアレンジを固めている時にサポートとして、おっくーがスタジオに入る機会があって、その時に“Isn’t She Lovely?”みたいなノリを出したいねって話をしたらすぐにノリを合わせてくれたり、この曲で少しづつおっくーの良さがバンドに滲み出てきたような気がします。あと華波ちゃんの存在も大きくて。前の編成だとギター2本だったので、どうしてもロックになってしまいがちだったし、ギター2本とキーボード、アコギのバッキングもすごい渋滞しているような感じだったんです。でもサックスが入ってきてくれて、ずいぶんスッキリ整理されたと思います。
ネギ : 最後の楽器の掛け合いも、愉快ですごくいいよね。あと”SUNDAY”は難航した気がするな。
藤澤:したね。ネギさんのデモに対しておまたくんが考えてきたベースラインが最高だったんですけど、そのノリは僕のキーボードと当時のドラムの子が出せなくて。そもそもの原因は、しっかりバンドの音楽性や方向性について話してこなかったことや、どういうバンドにしたいかのビジョンの違いではあったんです。そこで色々話し合って悩んだ結果、キーボードのメンバーを増やそうとなって。そのタイミングでドラムに田中くんが加入してくれたんですけど、そしたらむちゃくちゃグルーヴが生まれ出して、バンドの音楽性や方向性について話し合いをしてよかったなと思いました。おまたくんも奏太くんもそうですけど、その後加入したメンバーも皆技術があって足し算引き算が上手いくヤバイ人達がこのバンドに集まったなと思います。
──奥田さんと浅岡さんは、新しく創る曲に関して、アレンジはどうやって考えていますか?
浅岡:ネギさんの歌詞には多くを語らない、どこかすました感じがあって。そこに隠された感情や言葉を補うようなイメージでサックスを入れています。
奥田:メンバーが7人いるので、全員が全力でやると音量の大きい楽器が常に勝っちゃって、キーボードとかギターは音的に薄いから消えちゃうなと思って。わたしは大学生のとき、17人編成のビッグ·バンドにいたんです。そのときに「こういう時に前に出たら自分は目立てる」っていうのを教えてもらい、吸収していたので、その知識を引っ張り出してやっています。