紅白に出場できて子どもにも孫にも自慢できるなって
──2021年12月24日に発表したときはどんな気持ちになりましたか。
アユニ : 悲しいし、それぞれいろんな思いがありますよね。私は衣食住BiSHっていう生活をしてたので、そのBiSHがなくなったら私は生きていけるのか、何をして毎日息していくのかなって怖さとかもあったんですけど、解散っていうのをずっとひた隠しにしてきたので、発表できたときは覚悟を決めてけじめをつけた清々しさもありました。
──昨年末には紅白のステージにも立ちましたが、どうでしたか。
アユニ : すごかったです。チッチが「紅白のステージには魔物が住んでる」って言ってました。みんなステージに上がった瞬間に死ぬほど緊張してたり、アイナちゃんが今まで何億回もやってきて一度も間違えなかった歌詞を間違えたり、最後にチッチの手を皆でガッてつかむんですけど、そこもみんな信じられないほど力が入ってて、チッチの手もガクガクしてたりして。本当に初めての感覚で、すごい世界だなって思いました。私は北海道生まれ北海道育ちの世間知らずだったので、紅白や紅白に出場する方々が雲の上の存在だと思っていたんですけど、あの場所に行ってみて、やっぱりみなさん人間なんだなって思いました。空き時間にアーティストさん同士で喋ったりとか、楽しげにしてたりとか、一人で緊張して隅っこに座ってる方がいたりとか、みんなそれぞれ生きてるんだって思いました。
──その中でBiSHはどういう風に過ごしたんですか?
アユニ : ずっと楽屋が自分たちの居場所というか。
──いつもじゃないですか(笑)。基本的に楽屋にしかいないじゃないですか。
アユニ : いつもなんですけど、モモコさんとか知らないうちに楽屋からいなくなっちゃったりもするんですけど、あの時はずっと6人楽屋にいて、楽屋から一歩出ると借りてきた猫というか、震えてる子犬みたいな変な感じでした。
──(笑)。でもなかなか経験できることじゃないですからね。
アユニ : 奇行な人たちって目で見られることが多いBiSHだったんですけど、紅白に出場できて子どもにも孫にも自慢できるなって思いましたね。私はBiSHだったんだよって。
──解散を発表して2022年始まりましたけど、「FiNAL SHiTS」、これまたエモソングがやってきました。
アユニ : わぁ。
──エモすぎません?
アユニ : 渡辺さん作詞で、解散への想いしか込められてないというか、今の気持ち、思ってること全部歌詞にぶつけてくださったんだろうなって思ってますね。だから渡辺さんとBiSHは血が繋がっているというか、歌詞を読んで同じ気持ちなのがすごく嬉しかったし、この歌をテレビやライヴでやる度に泣きそうになりました。歌詞が自分たちの裸の心のまんまというか、この曲を作ってくれてありがとうってすごく思います。
──『いつかまたこの場所へ』っていうフレーズは重たいですか?
アユニ : 重たいです。多分捉え方もそれぞれだと思うんですよね。「この場所」がBiSHとは限らないし。言葉にすると難しいんですけど、魂の話というか。私たちの捉え方もそれぞれだし、色んな考え方がある言葉ではあるとは思うんですけど、覚悟を持って歌っているっていうのは6人に共通する事実ですね。
──アユニさんの中で「この場所」のイメージはありますか?
アユニ : どうでしょうね。BiSHなのか、音楽っていう場所なのか、表現者っていう大きい枠の存在のことなのか。でもいろいろ思い出すだけでも、頭の中で再会、夢の中で再会することもあるかもしれないし。
──「FiNAL SHiTS」のMVでは、オレンジでベースを弾いてるアユニさんが映りますよね。他のメンバーも今後を想起させるようなカットがあって。
アユニ : あのMVはBiSHの色をたくさん入れ込んだものだったんですけど、あの一人一人の将来の姿を連想させるようなシーンは、大喜多さんがそれぞれメンバーのことを考えて撮ってくださったものなので、必ずしも私たちがそれをするってわけではないんですよね。この間モモコさんが「自分たちのBiSH解散後とか将来の姿とかを、あの映像であの人はあれをするんだとか、ハシヤスメはテレビに出る人、モモコさんは本を書く人、私はベーシストとか決められたくないし、今の自分たちも実際分かっていないってのが本音です」って言っててすごくハッとしたんです。人生何が起こるか分からないし、未知なことばかりだし、それぞれ口に出してないだけでやりたいことも他にもたくさんあるし、たくさん企んでるというか、計画してたりもするし、どうなるかはやっぱ未知だし、まだ知られたくもないし、自分たちも知りたくない部分もあるって感じですね。
──もう1つのダンスバージョンはセルフオマージュが強烈に出ていますよね。
アユニ : 振付も音楽があってこそだし、私が一番BiSHのアユニ・Dになれてるなって思うときって、BiSHの音楽を歌いながら踊っている時なんですよ。だからかっこいいBiSHの音楽と衣装があって、かっこいいアイナちゃんが作ってくれたBiSHの振付があって、BiSHって全部のピースが埋まっているなって思うときがたくさんある。踊っていると勇ましいというか強い気持ちになれるし、すごく重い鎧をつけている気もしているというか、歌って踊っている時だけは負け知らずというか、本当に無敵な気持ちになれるんです。あとBiSHの振付は初めて見たお客さんもすぐに真似できたり、それこそBiSHのライヴの一体感というのもアイナちゃんの振付ありきで生まれてると思うので、メンバーへのリスペクトの気持ちも込めて踊っていますね。