濃いものを作るにはインディーズのほうが良いという気持ちが強かった
——そしてフラカンは2008年にまたメジャーに戻ります。ここでメジャーに戻ったのは、なぜだったんですか?
マエカワ:ある程度までは自分たちでもできるようになって。でもこのままやっていても、結局頭打ちになってしまうなと思ったんですよね。フラカンの活動に対してもっとアイディアをくれる人を入れないと、この先自分たちの思うようにいかないと思いました。
プー・ルイ:同じと言って良いのか恐縮ですが、そこはPIGGSも同じですね。
マエカワ:そうそう。それで、いろんな人と会ううちに最終的にソニーの方にも会って。元々繋がりのある方でもあったので、「この人が付いてくれるならもう1回ソニーに戻るのも面白いかな」と思ってソニーと2回目の契約を結びました。

——DIYで活動していた頃、例えば2004年には“深夜高速”といった名曲の誕生もありましたよね。
マエカワ:その時声かけてくれた方が「ARABAKI ROCK FEST.」での僕らのライヴを観て、以前(90年代)とは違う印象を持ったらしいんです。それでもう1回ソニーでフラカンと何かしてみたいと思ってくれたんですよ。自分たちも「まだここでは終わらない」と思っていました。
——株式会社フラワーカンパニーズを立ち上げたのは、どういう理由だったんですか?
マエカワ:当時のソニーは、事務所が会社になっていないと契約できなかったので、そのタイミングで自分たちの事務所を会社として立ち上げたんです。
——なるほど。それから2017年にフラカンは自主レーベル「チキン・スキン・レコード」を立ち上げ、活動の場を再びインディーズへ移します。
マエカワ:2回目のメジャーも契約終了という形だったんですよ。その時他のレコード会社を紹介してもらったりもしたんですが、メジャーを2回も経験しているからもういいかなと思って。あとこれは僕の考えかもしれないですけど、ヴォーカルの鈴木圭介という男は、少数でやっていたときの方が良い曲を作るんじゃないかと思っていて(笑)。
プー・ルイ:…なんとなく納得できます(笑)。
マエカワ:そうそう(笑)。いろんなアイディアが欲しいからメジャーにいったのに、たくさんアイディアがくるとぼやけちゃうんですよ。いいこともたくさんあるけど、活動の中心は曲を作ることと、良いライヴをすることなんですよね。だから結局鈴木圭介の作る歌詞、曲が濃くならないと良くないなと思って。バンドとして「濃い」ものをやりたいという思いが再び自分たちでやることにした1番大きな理由ですね。
プー・ルイ:PIGGSも同じような話をしていて。PIGGSはこの前メジャーからインディーズで活動するようになったんですけど、それは今のPIGGSが濃いものを作るにはインディーズのほうが良いという気持ちが強かったからなんです。企画や曲、デザインに関しても、いろんなアイディアがほしくなってメジャーにいったんですけど、いろんな関係者が増えるわけじゃないですか。そうすると「こっちの方が売れる」とか、「これだったら通る」とか、混乱するようになっちゃって。

マエカワ:なるほど。言っていることはわかるよ。
プー・ルイ:もちろんみんなPIGGSをよくしようと思って頑張ってくれているので、私たちからもあまり言えなくて。それで体調崩しちゃったりもして、すごく大変でした。
マエカワ:でもひとつ言いたいのが、「関係者が増えると薄くなっちゃう」っていうと、メジャーを否定するように聞こえちゃうけど、それは違うんだよね。
プー・ルイ:そうです、そうです!
マエカワ:メジャーで吸収したこともたくさんあるんですよ。最初のメジャーのときに言われて、大切に守っている言葉もある。フラカンもずっとDIYでやっていきたいとも思ってるわけではないし、縁があればこのあとまたメジャーにいってもいいと思う。結局自分たちがカッコよく楽しくできるには、どれがいいのか考えているだけなんですよ。
プー・ルイ:私も自分たちがかっこよく、楽しくできることを大事にしたいと思ってます。それに私、自分が楽しくないと「プーちゃんいま楽しくないでしょ」って、周りの人とかお客さんとかにバレちゃうんですよ。
マエカワ:それはプレイヤーでもあり社長でもあるから、出ちゃうんだろうな。人一倍疲れる部分もあるじゃん。そういう部分では大変だよね。
プー・ルイ:メジャーに行ってから結構悩んで体調崩したりもしたし、それだけじゃダメだけど、やっぱり楽しいって思えることは大事だなって思うようになって。そこからメジャーを離れる決断をした感じですね。
マエカワ:PIGGSは潔いね。僕たちは契約終了って言われるまで待ってるわけだから。自分から辞めたことはないですもん。
プー・ルイ:あとは自分は社長でもあるので、お金の流れも理解できていたんです。だから離れることへの怖さはなかったですね。
