INTERVIEW : PIGGS
PIGGSの『RAWPIG』を聴いた時に、「これは売れるかどうかわからないけれど、間違いなくすごいアルバムだ!」と思った。どの楽曲も拳で殴られたかのようにかっこいいし、売れるために... みたいな安っぽさは一切ない。メンバーの声の特性も見事に反映されている。今の世の中で、これがどう評価されるのかは、本当に楽しみだ。そして、万が一、万が一このアルバムがヒットしなくても、このアルバムに関しては、自信を持って最高のアルバムだと言い続けたいと思っている。
インタビュー : 飯田仁一郎
文 : 西田健
撮影: 大橋祐希
かっこいいと思えるものを出さないとやる意味がない
——10月25日にメジャー・ファーストアルバム『RAWPIG』が発売されました。メンバーのみなさんにとって、今作はどういう作品になりましたか?
プー・ルイ:新体制になったタイミングでこのアルバムが出たことで、なにかが変わるかもしれないというワクワク感がありますね。どんな人が聴いてもかっこいいと思えるようなアルバムになったと思います。あとレコーディングのとき、私は本当に全パート自分で担当するつもりで歌っているので、どんな歌割りがきても「私のパート少ないな」って思うんですよ。でも今回の歌割りが来たときには納得できました。それだけ6人の持ち味がはっきりしてきたんだと思います。
BAN-BAN:アルバムを通して聴いたときに、いろんな色が見えました。歌ったときに感じる温度や風景がいろいろあって、自分の内側が膨らむような楽曲がたくさんあります。いまの6人が、もっと大きくなれる可能性を感じれる作品になったと思います。
SHELLME:「アイドルのアルバム?」と思うくらい、素直にかっこいい作品だと思いました。全部の楽曲色が違うので、いろいろ考えながらレコーディングしました。何回聴いても楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。
KINCHAN:これをかっこいいと思わない人の方がおかしいくらい、すごいアルバムになったと思います。こんなにかっこ良くていろんな曲がつまったアルバムを歌わせていただけるのが嬉しかったです。楽曲がかっこいいからこそ、それに食らいついていきたいと思いました。
BIBI:歌詞が心に突き刺さるものばかりで、ちゃんと歌わないと説得力がなくなると思いました。声の出し方とかも難しくて、レコーディングは不安でしたね。でもRyan.Bさんがアドバイスをくれて、新しい自分を見つけながら歌えました。ぶーちゃんズ(PIGGSファンの総称)もワクワクしながら聴いてほしいです。
SU-RING:“ピラニア型人造人間”とか“Fleeting”の歌詞を見ると、本当にアイドルの曲かなと思うんですけど、聴けば聴くほどかっこよくて、ノリノリになっちゃいました。自分の歌のよさをわかっていないままレコーディングしたんですけど、Ryan.Bさんが「この曲はこういう特徴があるからこう歌ってみて」と言ってくださって、自分もこういう風に歌えるんだと気づくことが多かったです。
——今作は1曲目からかなり激しいロックな楽曲が続きます。アルバムのコンセプトはいつ頃から決まっていたんですか?
Ryan.B:4、5ヶ月前からアルバムの話はしていたんですけど、焦点が定まったのは最近ですね。ただ個人的にはPIGGS結成当初から、こういうものを作りたいという思いはあったんです。それを形にしようと思ったのが今回の作品です。
——手元にある今作の資料には「コマーシャルな方向にバランスをとらず、全く流行りに乗らない個性が際立つ」という説明があります。メジャーで出すファースト・アルバムという大切な時期に、あえて今作のような攻めたアルバムを出すという決断をしたのはなぜですか?
Ryan.B:メジャーでファースト・アルバムを出すときには、予算を大きくつけて、すごいスタジオ・ミュージシャンを呼んだり、曲もトレンドに合わせたりすることが多いと思うんですよ。でもPIGGSはずっとチームでやっている感覚があったんです。ビジネス的にバランスをとっていた時期もあったんですけど、「せっかくだから、もっと自分のクリエイティビティを出すべきだ」と思ったんです。自分自身過去にメジャーデビューをしたこともあったんですけど、売れようとしては後悔してきたんですよ。だから自分が聴いてつまらないアルバムにしたくなかった。今回の『RAWPIG』は、例えば自分の憧れの存在であるデヴィット・ボウイに聴かせても恥ずかしくないようなアルバムを作りたいと思いましたね。
プー・ルイ:その想いはRyan.Bだけじゃなくてみんなの共通認識だったと思います。売れることを目標にしているけど、長い目で見たときに自分たちがかっこいいと思えるものを出さないとやる意味がないし、長くは続かないと思ったんです。
METTY:実際『まじ無理ゲー』『負けんなBABY』あたりの時期は、僕がめちゃくちゃコマーシャルな思考になっていたんです。横浜アリーナでライヴをするくらいビッグになるためには、自分たちの魂を売ってでも、流行りのものを取り入れたり大衆に刺さるようなものを作るべきだと。そうしないとPIGGSは大きくなれないと思っていたんですけど、それは結果としてよくなかったと思います。
——なるほど。
METTY:僕はRyan.Bの曲をさらに尖らせる役割だったはずなんですけど、バランサーのポジションになっていました。もともとRyan.Bの曲が好きだったし、インディーズで出したファースト・アルバムの『HALLO PIGGS』みたいなことをやっていくべきだという気持ちが根底にはあったけど、それだと人が動かないという考えになってしまっていて。
プー・ルイ:思い返すと印象的だったのが、「メジャーVSインディー」の企画で作った“BURNING PRIDE”のジャケットは最初は全然違う感じだったんですよ。その最初のジャケットを見たRyan.Bが、「METTYはもっとやりたいことをやったらいいと思う」という内容のLINEを長文で送っていたんです。
METTY:“BURNING PRIDE”のジャケットを作ったとき、Ryan.Bが「今作っているものは誰でも作れるものだから、もっとMETTY色のある良いものを作ってほしい」って4時間くらい電話もしたんです。当時の僕はコマーシャル思考になっていたんですけど、やっぱり色がなきゃ売れないよなってRyan.Bの言葉で思い直しましたね。
プー・ルイ:実は “NOT PIG”の時期もそうだったんです。当初はおしゃれなサウンドに寄せていこうという話があったんですけど、Ryan.Bが「今歌うべきものは、ぶーちゃんズと寄り添って一緒に登っていくような曲だ」と言ってくれて、いまの形になりました。
METTY:川の中でごろごろ回って丸くなった石を、Ryan.Bがトンカチで叩いてもう一度尖らせるみたいな感じですね(笑)。でもそれに助けられていますし、「そしたら尖ったまま行こう!」で作品を出させていただける今のPIGGSの環境もすごく恵まれているなと思います。ここから駆け上がりたい。