CENTが描く、さまざまな“愛”のかたち──メジャーデビュー作『らぶあるばむ』完全解説

BiSH解散から3年、ソロ名義の「CENT」として音楽活動を続けてきたセントチヒロ・チッチ。そのメジャーデビュー作『らぶあるばむ』が完成しました。今作には、リード曲“ラブシンドローム”をはじめ、“堂々らぶそんぐ”や、敬愛し合う仲である詩羽(水曜日のカンパネラ)と作り上げた“Linda”など、どの曲にも異なる形の「愛」が息づいています。彼女が今表現したいものを詰め込んだ全ての曲に物語がある『らぶあるばむ』。その一曲一曲に込められた想いを、たっぷりと語ってもらいました。
INTERVIEW : CENT

CENTのニュー・アルバム『らぶあるばむ』は、完成度の高いポップ・アルバムだ。その核にあるのは「愛」。BiSH時代から彼女が追い続けてきたテーマであり、その歩みの果てにたどり着いた表現だ。アルバムは「愛」という一点に焦点を当て、さまざまな形で描き出している。構造はシンプルだが、聴けば聴くほど奥深い。最初は耳に心地よく、気づけばその深みへと引き込まれていく。この作品に触れると、彼女がここまでの表現力を持つアーティストに成長したのだと実感し、感無量になる。
インタヴュー : 飯田 仁一郎
文&構成 : 西田 健
写真 : 大橋 祐希
リンリンが私を変えてくれました
──CENT名義での活動を始めてから3年が経ちましたが、現在のチッチさんの心境はいかがですか?
チッチ:気持ち的には楽ですね。ソロになってすぐの頃は、自分だけに向き合わなきゃいけないことが、しんどかったんですよ。自分のことがいちばんわからなくて。でも今は音楽一本ではなくて、お芝居やいろんな表現をさせていただいたことで、気持ちが楽になってきました。どのお仕事も自分のペースを大切にしながらやっていきたいと思っています。
──BiSHの解散という大きな起点から、今に至るまでの間で、チッチさんの中でターニングポイントになった出来事はありますか?
チッチ:解散の次の日に、アイナ以外のみんながWACKから移籍を発表したじゃないですか。そのとき私は急に焦っちゃって、「私これでいいのかな?」って思ったんです。その時は「音楽やるならWACKでやろうよ」って渡辺(淳之介)さんが言ってくれたのがすごく嬉しかったんですけど、私はやりたいことが他にもあったんです。そんな時に、BiTE A SHOCKのデビューライブ(2023年7月17日に開催された〈Why don't you BiTE??〉)で私がMCをやる日があって、そのときリンリンが楽屋に遊びに来てくれたんですよ。リンリンに「チッチはこのままWACKにいるの?」って聞かれて、「どうしようって思っている」って話しました。それから「チッチはこれまでBiSHのことも背負ってたし、WACKのことも考えているかもしれないけど、自分の人生は自分でしか決められないよ」って言われたんです。その時、すごくハッとさせられて、そのあとのことをじっくり考えたんです。リンリンが私を変えてくれましたね。
──リンリンさんがアドバイスを! そこから実際にスターダストに事務所移籍を決意されたわけですよね。WACKを出るのはご自身にとって思い切った決断だったのでは?
チッチ:そうですね。渡辺さんに「音楽もやりたいけど、お芝居にも挑戦したいし、いろんな表現をしたい。だから移籍を考えています」って素直に伝えたんです。そのあとは前向きに「じゃあプロダクションを探そうか」っていろいろ調べてくれて、そして一緒にスターダストに話をしに行ってくれたんです。
──環境が変わったことで、ご自身にどんな変化がありましたか?
チッチ:シンプルに話し合いの時間がすごく増えました。今はなにをやるにも、とにかく打ち合わせが多いし、私も全部に参加しています。それがすごく大きな変化ですね。チームとディスカッションして、最終的には自分で決断する。それでもひとりじゃないから、苦しくはないです。
──そのなかで、これまでで一番「思い切った決断だ」と思ったことは?
チッチ:ライブのときに“スパーク”を歌ったことですね。私は頑固だから「BiSHの曲は絶対歌わない」って思っていたんです。でもeastern youthとCENTのツーマンライブ(2024年7月5日に開催された〈ライブナタリー “eastern youth × CENT”〉)が決まって、ライブハウスでは鳴らなくなった曲を、もう一度届けたいって思ったんです。“スパーク”は、私にとってもBiSHにとっても、はじまりの曲だったし、「ここでまた一歩踏み出しなさい」って言われてる気がして。だから変にアレンジしないで、歌うことを決めました。
──実際に歌ったときの感覚はどうでしたか?
チッチ:震えていました。お客さんのどよめきが体に響いて、今まで味わったことのない感覚でした。この曲をこれからも大事にしていきたいって心から思いました。
──BiSHのメンバーとも連絡取ったりするんですか?
チッチ:つい最近、アイナの誕生日のお祝いで6人全員でカラオケに行ったんですよ。
──久々に会ってみて、いかがでした?
チッチ:別に変わらないですね。「アユニ、ツアー頑張ってるな」とか、「アイナ、テンション高いなー」とか思ったりしてました。カラオケでモモコが、BiSHの曲を入れて「これ、覚えてる?」とか言って遊んだり、踊ったり、TikTokを撮ったり。なんか、友達みたいだなって思いました。まあ、もはや完全に友達ですよね。BiSHをやってたときは、みんな必死だったし、そんな日が来ると思わなかった。単純に楽しかったですね。
──今回のアルバム『らぶあるばむ』で、ビクターからのメジャーデビューを果たしますが、メジャーが決まったのは、どういう流れだったんですか?
チッチ:担当の方がライブを見に来てくれていて、「ぜひ一緒にやりたい」って言ってくれたんです。最初はちょっと怖さもあったけど、やっぱり音楽が好きだから、もっと音楽を探求できる場所に行けるのがすごくうれしかったです。
