INTERVIEW : プー・ルイ、Ryan.B、METTY

インタビュー : 飯田仁一郎
文 : 西田健
撮影: 大橋祐希
KINCHANの眉毛が八の字になるくらい
──ニューシングル「生きて帰る、ばっか。」がリリースされました。まず表題曲の“生きて帰る、”はプロレスラーの葛西純選手とエル・デスペラード選手のデスマッチからインスパイアされて作った楽曲とのことですが、どんな想いを込めたんですか?
Ryan.B:EP『1ミリでも』を出した頃は、メジャーからインディーに戻ったばかりで、PIGGSとしての軸やメッセージ性、アイデンティティを改めて練り直すタイミングだったんですよ。ちょうどその時期に、葛西純選手とエル・デスペラード選手のデスマッチを観たんです。その試合後のインタビューで、葛西選手が言っていた「俺たちは、死んでもおかしくない、大怪我してもおかしくないリングに上がって、生きて、生きて、生きてリングをおりなきゃいけない」という言葉に、自分の甘かった価値観を叱咤されたようにハッとさせられて。PIGGSのライヴに来てくれるぶーちゃんズ(PIGGSのファンの総称)は、何かを発散するために来てくれていると思うんですけど、だからこそ「家に元気な状態で帰るところまでがPIGGSだ」というイメージと一致したんです。ライブから帰って、仕事や学校や家庭のどんな時も、PIGGSがそばにあること、「生きていく」という覚悟をもっと明確に掲げるべきだと感じて、この曲を書きました。
──Ryan.Bさんのなかで、いまのPIGGSのライヴはどう見えてるんですか?
Ryan.B:全員に共通して言えるのは、しみじみして聴き入るというより、自分も前のめりに入り込んでくれているお客さんが多いイメージです。お客さんも演出の一部、演者でもあるくらい、他のアーティストに比べて双方向な感じがある気がして、一体感を感じます。ステージとフロアが50:50の熱量で前のめりになっている印象ですね。

──おふたりは“生きて帰る、”のデモを受け取ってどういう風に感じたんですか?
プー・ルイ:ASPの武道館公演(2024年10月に開催された〈We are in BUDOKAN "The floor is all ours!!"〉)を観させていただいた後、私とMETTY、Ryan.Bの3人で「最近かっこいい曲が続いていたから、ライヴで盛り上がる曲がいいな」って話したんですよ。実際“生きて帰る、”は、かなりライヴでも盛り上がりますね。
METTY:去年くらいから、「前向きにみんなを引っ張っていきたい」という想いが強くありました。その中で“生きて帰る、”のフレーズは、PIGGSが歌うからこそ意味がある曲だなと思いました。あとこの曲は特にフロアとステージの熱量が合わさって凄いんですよ。マイクなしとは思えないくらいのヴォリュームで、「生きて!」ってコール&レスポンスをくれて、大好きですね。

──“生きて帰る、”のサウンド面での推しポイントを教えて欲しいです。
Ryan.B:音楽的にはシンプルなパンクに聴こえているかもしれないんですけど、実は転調がかなり多いです。AメロでもBメロでもサビでも転調しているので、結構難解なプログレになりそうなところを、あんまりそう聴こえないようにこだわりました。キーが1曲のなかでかなり変わっているんですけど、これが同じキーだと長く聴こえちゃうかもしれない。転調することによって、皆さんが飽きずに何度も人生で繰り返し大切に聴ける楽曲になるようにこだわりました。
プー・ルイ:天才じゃん!
──他にこだわったポイントはありますか?
Ryan.B:「1! 2! 3! 4! 5! 6! 7!」は7拍子なんですけど、僕の好きなハノイ・ロックスというバンドの“High School”って曲のオマージュになっています。この曲には、そういうオマージュをたくさん散りばめました。他にもリリースしたあと、布袋寅泰さんの“バンビーナ”みたいだという感想もありました。生っぽいアレンジだけど、デジロックの要素のノリが入っている。80年代末期からも90年代初頭の、あの頃の日本のロックの持っている熱量も入れ込みたく作りました。
──この曲は、KINCHANの歌うBメロ「亡霊のように酔っ払いのように」がすごく印象に残ります。
Ryan.B:PIGGSのロック感は、うまくできるかどうかより、そこにどれだけ真摯に向き合って頑張っているかに懸かっていると思うんです。この曲のレコーディングのとき、KINCHANは眉毛が八の字になるくらい不安そうな顔をして一生懸命歌っていたのが、すごく良かったんです。
METTY:狙ってできるわけじゃないからね。KINCHAN本人は悩んでる部分もあるだろうけど、悩み続けながらも逃げずに向き合って立ち向かう姿がみんなを勇気づけられると思うんです。KINCHANのいいところですね。
