もしPIGGSがこの映画の主題歌を歌うとしたら
──歌詞の部分には、どういう想いを込めたんですか?
Ryan.B : 前作のEP「1ミリでも」と、地続きですね。EPは推進力のある歌詞が多かったんですけど、ソリッドな感じの表現はなかったんです。だから『SUPERBAD』では、あえてその部分を出したかった。最初のアルバム『HALLO PIGGS』で使っていたような言葉遊びの手法も使って書きました。
──タイトルの『SUPERBAD』はどういう意味合いなんでしょう?
Ryan.B : 『SUPERBAD』はスラングで、「超イカしてるね」みたいな意味があるんです。でもそのまま訳して「超悪い」っていう意味もあるし、『SUPER_BAD』だったら、「BADを超えろ」という感じになる。つまり悪い時期はあったしこれからもあるかもしれないけど、「BADになっても、常にひっくり返して超えていこうぜ」というメッセージですね。
──なるほど。
Ryan.B : あとは、「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(2007年公開)って、アメリカのコメディ映画があって、そこから取りました。この映画は、イケてない3人の男子学生が女子生徒のために奮闘する様子を描いているんですけど、久しぶりにそれを見た時に「PIGGSってこういう感じあるよな」と思ったんですよ。笑っちゃうんだけど泣けるし、絆を感じる。「もしPIGGSがこの映画の主題歌を歌うとしたら」と思ってサビとかアレンジを作ったんです。
──もう一曲の“デジャブー”はどうですか?
Ryan.B : “デジャブー”は実はメジャーデビュー曲の候補として作っていた曲です。元々はウルフルズの"ガッツだぜ"の今版みたいな曲でメジャーデビューを、という打診が関係者からあり、それを元に僕が作ったデモがありました。ただ、あのタイミングでこの曲を出しても、そこまでハマらないなと感じていて、封印していました。でもこれも“1ミリでも”や“ラフレシア”という曲を出して、「誰の真似でもない自分の道を行く」って決意をちゃんと示した後だったら、出す意味があるかなと思って。今回新たにデモをブラッシュアップしました。

──楽曲としては、かなりポップな方向に振り切っています。
Ryan.B : こういうポップな曲ってすごく盛り上がりやすいけど、この曲調で感情を湧き上がらせるのは難しい気がするんです。でも、いまのPIGGSのライヴのクオリティーだったら、バラエティー系の曲調でもそれができるかなと。要は、みんなで踊って楽しい曲だけど、この曲でも泣いちゃうような気持ちになる人がいる、みたいなことが僕は理想的だなと思うんです。例えば、BiSの“nerve”のときの、笑顔で振りコピしてる人と泣いてる人が共存しているようなフロアの状態。それがPIGGSが目指すことなのかなと。だから逆に歌詞の部分は結構エモーショナルに踏み込んでます。
──確かに。「あの場所にきっとじゃなく絶対立つのさ」とか「あの時誓った約束はブレない」という言葉が入っていますね。
プー・ルイ : 私が好きなものって、泣きながら笑っちゃうとか、ちょっとバカバカしいものだったし、本来PIGGSが目指しているものだったんですよ。確かにこの曲には、それが詰まっていますね。
Ryan.B : いまぶーちゃんズのなかにも、“豚 HAVE THE POWER”みたいな曲で、超楽しいって満面の笑みの人と、思わずグッときて泣いちゃってる人を会場で見て。こういう、圧倒的な楽しさの中に刹那的な切なさを秘めているような曲を表現できるのがPIGGSの強みだから、そこに可能性があるのかなと。
──『SUPERBAD』のジャケットはどういうイメージで作ったんですか?

METTY : テレビの中からオバケがこちらを見ているんですけど、このオバケは優しいんですよ。でもオバケってだけで怖がる人もいるから遠慮して外に出てこないオバケで。「悪いとか怖いと言われているものって、本当にそうかな?」が今回はひとつのテーマです。
──このオバケはなにを持っているんですか?
METTY : これは「デジャブー」という空想の銘柄のタバコの箱です。タバコって体に悪いこともあるけど、吸うことで日々を頑張れる人もいるじゃないですか。それは吸えばいいと思うんですよね、犯罪じゃなければ。タバコの箱には四葉のクローバーが入っているんですけど、よく見ないとゴミに見えると思うんですよ。見ようとしないと見えないものって多分たくさんあって。
──なるほど。
METTY : 配信で音楽を聞くことが主流の時代だから、ブックレットは絵本のようなストーリー性を持たせたいと思っていて。今回はCDディスクを取ると、つまりはPIGGSの音楽を聞くと、オバケが外の世界に飛び出します。なぜそうなったのか?はブックレットや楽曲から皆さんに色々考えてみてもらえたら嬉しいです。
──今回の衣装はどういうイメージで制作されたんですか?
METTY : 色はブライアンと話して、赤よりも熱い青い炎を意識しました。ただ青色って個人的には良い思い出がなかったので避けてたんですよ。本当に結構悩んで。でも「今のPIGGSだったら乗り越えられる」と信じて決めました。あとは細胞を意識しました。
