〈たゆたう〉が目指していること
──そもそも〈たゆたう〉というイベントをやろうと思ったきっかけは?
岩崎淳(以下、岩崎) : 僕はFunLandRyCreationというレーベルをやっているんですけど、そこに所属している谷口から「野外で演奏したいんですよね」って言われたのがきっかけですね。
谷口和彦(以下、谷口) : 淳さんと「今後のライヴはどうしていきたいか?」みたいな話をしていくなかで、「森でライヴがしたい」と思っていたんですよ。そこで、場所を探していたら淳さんの友達から「奥多摩にOKUTAMA+っていう学校をリノベーションした施設ができたらしいから紹介するよ」って言われて、実際に行ってみたらすごく良い場所だったんです。
高山皓平(以下、高山) : みんな満場一致で「ここでイベントをやりたい」って思いました。
──それから〈たゆたう〉というイベントは、どういう想いで動き出したんですか?
谷口 : ライヴハウス以外にも国内インディーを楽しむ場所があってもいいと思っていたんです。僕は今年30歳になるんですけど、自分がYOLVEというソロプロジェクトで活動していくなかで、売れる路線に乗らなかったからといって音楽を辞める必要はないと思うようになったんです。ずっと音楽を続けていくために、なにをしたらいいか考えるなかで、自分の居場所を作ることが大事なんじゃないかと思ったんですよね。その居場所作りをしていくなかで考えたのが、自分でイベントを作るということでした。自分の周りのアーティストにとっても、遊びに来てくれる友達にとっても「自分を表現して良い場所」みたいなものを作りたかったんです。自分に近い環境にある人たちに「そういう居場所があるんだったら、自分たちの役割を与えられた感じがしてやりやすいね」って思ってもらえる場所があれば最高じゃないかなって。そういう思いもあって、今回この〈たゆたう〉というイベントをやろうと考えました。
──なるほど、岩崎さんはどうですか?
岩崎 : One Music Campを筆頭に、岡山のhoshiotoとか北海道のGANKE FESとか、ローカルフェスと言われるものはたくさんあるけど、東京でそういうものってないなと思ったんです。ローカルっぽいものはないんですよね。そういうなかで、自分の周りのミュージシャンや知り合いを集めてやってみたらどうなるのかなという興味があったんです。
──高山さんと山下さんは、なぜこのプロジェクトに関わろうと思ったんですか?
高山 : 僕はフェスそのものが大好きな人間なので、いろんなフェスに行っているんです。たくさんのフェスに参加していくうちに、思ったことや感じたこととかをなにか具体化したいと思っていました。そんなときに、谷口くん、岩崎さんに出会って、彼らの言う “場所作り”というところにすごく共感したんです。それから一緒にメンバーとしてやるようになりました。
山下貴史(以下、山下) : 僕は、大阪で6年くらい自営業をやっていたんですけど、ビジネスをたたんで地元の関東に帰っていたときに、たまたま見つけたのが〈たゆたう〉のHPでした。こういった野外フェスを盛り上げていくために、なにか自分が携わることで今後新しく展開する可能性があるのではないかなと思って参加しました。
──〈たゆたう〉はイベントを通して、どういうものを目的としているんでしょう?
谷口 : 最終的にいちばんやりたいことは、やっぱり居場所作りですね。「他の人はどうかわからないけど、俺はこの音楽が最高なんだ」と思ったら、周りに友達がいなくても観に行ける場所にしたいです。客にとっても演者にとっても居場所みたいなのができていくといいんじゃないかなと思っています。あとは、周りのみんなが〈たゆたう〉みたいなイベントを、ほかのところでもいろんな人がやりだしてくれたら嬉しいですね。それこそが、僕たちのやりたいことであり、ゴールなのかもしれないです。
──〈たゆたう〉というイベント名や、「ゆるり、ゆらり、たゆたう、あなたと」というキャッチコピーには、どういう想いが込められていますか?
高山 : “たゆたう”っていう表現は、風に揺れるさまとか水面が揺れるさまだとか、いろんな捉え方があるんですよ。いろんな自由な表現があるなかで、僕らが作る居場所はいわゆる形式的なものにしたくないという想いがありました。いろんな人が自由に楽しめる居場所作りが目的なので、それにいちばん合うワードが“たゆたう”でした。いろんなカルチャーの居場所作りというテーマに、いろんなカルチャーがいろんな人と自由に“たゆたう”ようなイメージを込めてこのキャッチコピーに決まりました。
──いろんなカルチャーの場所作りとはどういうものを目指しているんでしょう?
高山 : いまは、いろんなカルチャーが狭い空間のなかに留まっているんじゃないかなって思ったんですよ。そこに対して、実際に体験できる場所を作って、ある意味解放してあげたかったんです。いろんなカルチャー同士が結び合って、「全然こんな文化知らなかったけど、体験してみると意外といいものなんだな」という気づきが生まれてほしい。やってみると楽しいのに、知らないから全然体験してこなかったというものにも興味を持ってもらえるような場所作りをしたいと思っています。