僕も詩羽もポイントを掴めている
——それぞれの楽曲について訊きたいです。まず、1曲目の“赤ずきん”から。
ケンモチ:この曲はABEMAオリジナル恋愛番組「隣の恋は⻘く見える4」のタイアップなんですけど、心理戦を繰り広げる内容から狼がおばあちゃんに変装する部分を連想しました。で僕は子どもの頃から「赤ずきん」に対して「狼がおばあちゃんに変装する設定って無理あるよな」って思っていたんです。その疑問を歌詞にしてみました。切り口としては、狼がおばあちゃんを食べてしまうことは咎めずに、うまく騙す気がないことを赤ずきんが怒るというものがいいかなと。
——この曲はMVもおもしろいですよね。
詩羽:MVは監督の渡邉直さんがやりたいことを詰め込みましたね。
ケンモチ:なんなら「ストーリーが収まらないから、曲を長くしてくれ」って言われて、MVで使われているものは音源よりも1ループ長くなっています(笑)。
——詩羽さんは“赤ずきん”の好きなポイントはありますか?
詩羽:「やってんな 完全にやっちゃってんな」の部分は本当に普段の私の喋り方なんですよ(笑)。テレビで聴いた友達が「詩羽のまんまじゃん」っていうくらいには自分でした。
ケンモチ:今までのカンパネラのラップは無機質で、ただの言葉の羅列だったんですけど、この曲は口語の羅列で作りたかったんです。そこで詩羽が普段から喋りそうな語尾や言い回しを使ってみました。
——サウンド的にはどういうものをイメージしたんですか?
ケンモチ:2ステップですかね。僕はベースミュージックが大好きなんですけど、ベースが鳴りすぎていると、逆にスカスカの部分で気持ち良くなっちゃうんですよ。だから鳴っている部分はちゃんと鳴っているけど、ベースがぬけた瞬間にラップが前に出てくるようにしたいと思って作りました。
——詩羽さんはこういう曲を歌ってみて難しさを感じることはありますか?
詩羽:あんまりないですね。気になったら調べるんですけど、本当に音楽に詳しくないんですよ。「なんかいいな」でいつもやっています。
ケンモチ:最初のテイクでいけちゃうこともあるくらい、最近早いんですよ(笑)。僕も詩羽もポイントを掴めていると思う。
詩羽:何が難しいのかわからないからいいんじゃないですかね。仮歌のときに勝手に歌いやすい歌い方にすることもあります。
ケンモチ:メロが前後逆になっていることもたまにあるんですけど、詩羽のやりたいようにやってもらって、上手くハマったらそれでいいのかなと。

——2曲目の“七福神”はどうですか?
ケンモチ:大枠でいうとEDMですね。そこにパラパラやユーロビートの要素を入れてみました。
詩羽:ちょっとアホっぽさがあるところがこの曲の良さだと思うんです。頭を使わずに聴いてほしいです。
——歌詞はどういうイメージで書いたんですか?
ケンモチ:元々、えびす様で作ろうとしたんですが、えびす様の設定が少なすぎたんですよ。それで、“七福神”をテーマにして歌詞を作ることにしたんです。「毘沙門天」「弁財天」「大黑天」で韻が踏めるから、そこをベースにメロを組んでいきました。途中で七福神の船のイラストがどれも小さいことに気づいて、「七福神って実は6人乗りの船に乗っているんじゃないか」という部分を膨らませていきました。
——発想がやっぱりすごいですね(笑)。楽曲制作をしているときに、そういう話は共有しているんですか?
ケンモチ:曲が完成して聴いてもらっている時に軽く説明する感じです。
——めちゃくちゃおもしろくないですか?
詩羽:でも笑わないかもしれないですね。大爆笑するものでもなくないですか(笑)?
——結構ドライなんですね(笑)。3曲目の“金剛力士像”についてはどう思いますか。
詩羽:この曲は直感で「好き」と思いましたね。
ケンモチ:レコーディングが終わって、帰るときに詩羽が鼻歌を歌っていたので「お、ハマっているな」と思いました(笑)。
詩羽:好きな曲はすぐ覚えますね。ラスサビ前の「たまにはこういう日も悪くない」からの部分が切ない雰囲気なのでポイントです。
——この曲はどういうイメージですか?
ケンモチ:同じ目的、夢をもって、同じ作業を勤しんでいる友達同士でやがて生まれる友情を描いた歌ですね。文化祭の前夜は放課後まで残るじゃないですか。作業を黙々と進めているうちに恋バナしたり、友情が生まれる感じです。「阿吽の呼吸」で息をあわせるという意味と、運慶、快慶が力を合わせて像を掘ることがシンクロするなと。
——「快慶がお会計」の部分はもしかして…。
ケンモチ:ダジャレですね(笑)。どうしてもこのフレーズを入れたくて、店に入る設定を急に作りました。いい歌詞書いたなと思いますね。ヴォーカルも声重ねないで歌わせたいなと思っていたんですが、詩羽もバッチリといいテイクをとってくれました。
