大多数がぱって動くときは、疑ったほうがええんちゃうかな
──2曲目の“青”はどういうイメージで作ったんですか?
“青”のイメージは、心の状況のブルーと一緒です。センチメンタルでメランコリックな感じ。時間でいうと、夜から朝になる間、夕方から夜の間のブルーアワー。終わった後、始まる前の何にもないイメージです。
──“青”のMVは、まさに海の映像ですね。
リゾートの海じゃなく、近所の海の青。エメラルドブルーじゃなくって砂利を含んだ青。それがゆっくり寄せては返すだけ。何度も何度も終わる事なく永遠に。そんな感じ。
──“青”は“東京”、“火花”と比べると、そんなに長尺ではないですが、池永さんのなかではどういうイメージで楽曲を表現しようとしたんでしょう。
“東京”と“火花”が先にできてたから、間に何か作りたいなと思ったんです。立ち止まって振り返るようなイメージですね。振り返ってるんで、センチメンタルです。
──順番としては、“火花”は“東京”の次にできたんですね。“火花”はどういうイメージで作られたんですか?
タイトル通り、バーンと爆発しているようなイメージかな。「盛大に火花を散らした」みたいな。「ポンヌフの恋人」の花火のシーンみたいな感じです。
──池永さんの場合は、タイトルが先にできるんですか?
基本的に後からです。付けた後にタイトルに合わせてアレンジ変える時もあります。東京はタイトル先行です。なんか色々です。
──この曲はギターフレーズが印象的ですよね。
カッコいいですよね。オータケ君はノってくるといろんなギターが溢れ出てくるんです。惜しい!ってフレーズでも、ここでこうしてあーしてって固めていっちゃうと一気にノリがなくなっていっちゃうんで、まずはグルーヴ優先で。惜しいところは帰ってから組み替えさせてもらってます。
──なぜ、“火花”みたいな曲を作ったんですか?
オルタナがやりたかったんです。コロナ禍で鬱屈としていたんで。ライヴもない、人とも会えない。鬱屈としながらも夢みたいな曲を作りたいと思って。だから楽曲途中(ケンハモが入るところ)で一気に現実に戻るみたいな。ど頭、現実の生活音から始まり、最後も現実の生活音で終わるのも夢から醒めて、、、みたいな物語感を入れるためです。
──制作期間中、池永さんはどんな生活をされていたんですか?
もともと家での作業が多いので、あんまり外には出ないんです。でも、コロナ禍は2年目がきつかった。なんかボーッとして何にもやる気が起きなくなった。3曲とも録音も終わって、ほぼほぼ形はあんねんけど、なんか合わへんなって思っていました。今回の“東京”は特にそうでしたね。
──アルバムに収録されている3曲は、コロナ禍の最初の1年目の2020年には、もう録っていたんですか?
そうそう。でも今年に入ってから、やっと状況にはまった感じかな。細かいところやと思うんですけどね。
──いまになって、作品として出来上がってきたんですね。
世間や社会の感じと作ってた音楽が、はまってきた感じがしたんよね。これやったらいけるなと。自分にもフィットしてるし、恥ずかしくなくなった。そこからミックスをやり直して、アレンジもちょこちょこ変えて、細かいところを作り直しました。雰囲気は昔と変わってないと思うんですけど、いまの世間の感じと合致したっていうか。ちょうどいい温度ではまるようになってきました。
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──タイトルの『燃えている』については、どのように捉えたらいいんでしょう。
もう色々と燃えているじゃないですか。炎上もそうだし。その燃えているには当然自分も含まれているし、やっぱり恐怖心があるんです。多数決の大多数に。ゴワッと大きく渦を巻いているでっかいほうに。なんなのか分かりませんけど。そういう燃えている状況の中で作ったので「燃えている」です。
──『燃えている』については、ロシアとウクライナの戦争のことも関係があるのかと思ったんです。
もちろんその影響もあります。そのために作ったわけではないですけど、いま起きてることなので、その部分も当然入っています。
──戦争について、池永さんがこのアルバムを作る中で繋がっていった部分はありますか?
まず、被害を受けている人らのことを考えたかな。いくらかっこええ理想があっても、権力者同士がもめて結局バカみるのは、一般市民やんか。「いけ!やれ!」っていうのは上の人間で、やりに行くのはうちらみたいなペーペーでしょ。やられんのもペーペー。やり返すのもペーペー、やり返されるのもペーペー。なんか物凄くかなしい。ああいうのを見てると、踊らされたらあかんな、惑わされたらあかんなって思う。戦争にしても、そのほかの話にしても、どっちが事実かとかわからんけど、人気が集まるような端的な分かりやすい良いことをみんな言うてるわけで、そこにあんま踊らされへんようにしたいなと。左でも右でもどっちに行くにしても、大多数がぱって動くときは、疑ったほうがええんちゃうかな。その意見の良し悪しではなく、数字持ったらやっぱちょっと調子乗ってまうやん。ミュージシャンも売れたら調子に乗ってまう人もいるやんるやん(笑)。調子に乗ったら大体が周りを少し下に見る傾向あるでしょ。俺ら下に見られてるよ、上の人間から。だから上下やと思う。敵は上やと思うよ。だから一般市民同士、仲良く行こうよって、たまには音楽楽しもうよって思う。その為にも自分の意見に酔いしれんようにして、他人とやんややんや言いながら、しっかり一歩ずつ踏みしめて、歩いていきたいなって思います。
──ありがとうございます。最後に、言っておきたいポイントはありますか?
とにかく、ほんとに良い作品ができたので、聴いて観て読んでほしいですね。CDは44ページの小説ブックレットが付くので、フィジカルならではの良さがあるので是非チェックしてください。あと、久々ワンマンライヴやるんで、是非遊びに来てください。また会いましょう。
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編集 : 西田健
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LIVE INFORMATION
「Dubbing XIII」レコ発ワンマンライヴ
出演 あらかじめ決められた恋人たちへ
公演日 2022年9月21日(水)
会場 新代田 FEVER
料金 ¥4,000 1Drink別
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PROFILE:あらかじめ決められた恋人たちへ
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1997年、池永正二のソロ・ユニットとして活動がスタートした叙情派エレクトロ・ダブ・ ユニット。2008年に大阪から東京に拠点を移すと、バンド編成での活動を開始。現在は池永(鍵盤ハーモニカ、エレクトロニクス)、劔樹人(ベース)、クリテツ(テルミン、 パーカッション etc)、オータケコーハン(ギター)、GOTO(ドラム)、石本聡(DUB PA)の 6 名に、PA を加えた 7 名がコアメンバーとなっている。 鍵盤ハーモニカによるノスタルジックなメロディと、ニュー・ウェーヴや UK DUB、 さらには 90’ s オルタナティブに影響を受けたサウンドが持ち味。ライヴでは、池永の 咆哮やフィードバックノイズを伴った轟音のパフォーマンスで、全国のフロアを沸かせている。映画「窓辺にて」(稲垣吾郎主演・今泉力哉監督)、「連続ドラマ W 鵜頭川村事件」(松田龍平主演・入江悠監督)の音楽を担当するなど劇伴作家としても活躍する池永のほか、メンバーの個人活動も非常に多彩。
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