「メジャーとは? インディーとは? for PIGGS」──その定義や違い、メリットについて考える
【メジャーとは? インディーとは? for PIGGS vol.3】第一部
これまでOTOTOYでは、PIGGSの企画『#PIGGSメジャーへの挑戦』の動向を追いかけてきたけど... しかし、そもそも「メジャー」や「インディーズ」とは、いったいなんなのだろう。そういえば、先日、公開したPIGGSメンバーへのインタヴューのなかでも、メンバー自身がメジャーやインディーズについて、はっきりわかっているわけではなさそう。
そこでOTOTOYでは、2022年の今、メジャー、インディーズにどのような違いがあるのか。その疑問を解消するべく、まずは情報を集め、「メジャー」や「インディーズ」の定義、そのメリット、デメリットについてまとめてみました。
取材&文 : 西田健
「レコード会社」「レーベル」や「プロダクション(事務所)」って何?
「メジャー」や「インディーズ」について知る前に、音楽業界の用語としてよく聞く「レコード会社」とか「レーベル」とか「プロダクション(事務所)」とは? まずは、そこから調べてみた。
Answer
レコード会社とは...
文字通り、レコード(録音物)を出す会社のこと。主な機能としては、企画、制作、宣伝の3つ。どのようなレコード(録音物)を発売するかを企画し、楽曲をレコーディングして音源となる原盤を制作し、宣伝をするのがレコード会社の仕事。基本的に、「レーベル」という「部署」をいくつか持ち、そこで作ったレコード(録音物)を発売するためのプロモーションなどの戦略を担当しているのがレコード会社だ。
1つのレコード会社にはたくさんのアーティストが所属しているが、その音楽性やターゲットは大きく異なっている。そこで、レコード会社は、「ロック系」や「若者向け」など、それぞれのジャンルやターゲットに特化した「部署」を作り、そして、その「部署」の特色に合致するアーティストが所属する。
レーベルとは...
前述のレコード会社に存在する「部署」が、それぞれのレコード会社の傘下にある「レーベル」だ。レコード会社が持っているレーベルは、それぞれの特徴ごとに分かれているのだ。「レーベル」は所属アーティストの音源を発売して、その売り上げを得ることを目的とした組織であり、レコード会社から発売するレコード(録音物)を作るためにある部署。レコード会社とレーベルの関係は簡単にいうと、レコード会社はレーベルへ投資を行い、投資を受けたレーベルは音源を活用してビジネスを行い、レコード会社に還元していくという仕組み。
●メモ
「レーベル」のいう言葉のもともとの語源は、日本国語大辞典によれば、レコードに貼られているラベル(レコードの中央部に貼ってある曲名・演奏者名などを記した円形の紙)から。そこから転じて、レコードやCDを制作する会社やその商標となったらしい。
プロダクション(事務所)とは...
「プロダクション(事務所)」は、アーティストをマネジメントする組織のこと。主な業務は、アーティストを育成したり、スケジュールを管理したり、イベントの企画・制作をしたり、多岐にわたっている。プロダクションは、これらの業務を行うことにとって、収益を大きくしようとしている。
プロダクションとレーベルが分かれている場合もあるが、カクバリズム(YOUR SONG IS GOODや思い出野郎Aチームが所属)のように、プロダクションとレーベルを兼ねているところも多くある。PIGGSのパターンだと、プロダクションであるプープーランドが、インディー・レーベルも兼ねている。
他にも、アーティスト個人でプロダクションを構えることもあるが、事務作業をはじめ、とにかくやることが多い。だからこそ、多くのアーティストは、プロダクションに所属することで、時間と労力がかかる業務から解放され、アーティスト活動に専念することができるというのが実情のようだ。
参考:安藤和宏 著「よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編」
「メジャー」、「インディーズ」とは?
「レコード会社」、「レーベル」、「事務所」については、なんとなく理解できたけど... では「メジャー」、「インディーズ」とは、どういう意味なんだろう?
Answer
「メジャー」とは...
音楽業界における「メジャー」とは、日本レコード協会に入会している大手レコード会社と、そこに入っているレーベル(メジャーレーベル)のことを指している。日本レコード協会に正会員として登録されているレコード会社は18社。
日本コロムビア株式会社
株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
キングレコード株式会社
株式会社テイチクエンタテインメント
ユニバーサル ミュージック合同会社
日本クラウン株式会社
株式会社徳間ジャパンコミュニケーションズ
株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
株式会社ポニーキャニオン
株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
株式会社バップ
株式会社ビーイング
エイベックス・エンタテインメント株式会社
株式会社フォーライフ ミュージックエンタテイメント
株式会社ヤマハミュージックコミュニケーションズ
株式会社ドリーミュージック
株式会社よしもとミュージックエンタテインメント
株式会社バンダイナムコアーツ
参考:日本レコード協会:https://www.riaj.or.jp/about/member.html
「インディーズ」とは...
次に音楽業界における「インディーズ」とは、その逆で日本レコード協会に入会していない中小レコード会社やレーベルのことを指す言葉だ。例を挙げれば、1975年設立の老舗レーベルP-VINEや、スペースシャワーネットワーク内のSPACE SHOWER MUSIC、タワーレコード内に設立されたT-Palette Recordsも「インディーズ」に含まれる。また、アーティスト個人で流通サービス(ディストリビューターと呼ばれる)を使って、インディー・レーベルを作ることも可能だ。
●メモ
インディーズとして初めて日本武道館公演を実現したのは、1998年 11月のヴィジュアル系ロックバンドDIR EN GREYなのだそうだ(しかも結成からたったの1年9ヶ月!)。また、彼らが同年にリリースしたシングル>『-I'll-』は当時のインディーズ史上最高記録を樹立している。ちなみに、アルバム部門では、2001年にMONGOL800が発表した『MESSAGE』が、国内のインディーズ最高の280万枚の売上枚数を記録しているとのこと。
「メジャー」、「インディーズ」の違い
「メジャー」も「インディーズ」も大きな括りでは同じ音楽業界だということで間違いはないし、もちろんメジャーはプロ、インディーズはアマチュアというわけではないはず。では、具体的には、どういう違いがあるのだろう。
Answer
「メジャー」のメリット、デメリット...
メジャーは、大手企業なだけあって、1組のアーティストの活動に多くのスタッフが関わって宣伝をすることができる。CDは初めから全国リリースがほとんどで、各地に存在するプロモーターが大規模な宣伝を行って、多くの認知度の確保を目指して活動をしていく。もちろん各社の方針にもよるが、クリエイティヴに関して、多くの予算を動かすこともできるだろう。しかし、多くの人を動かすということは、多くの収益を生み出す必要があるということでもある。そのため、活動のペースから音楽性に至るまで、大きな制約が課せられることが多い。例えば、年間契約というような形でメジャーレーベルと契約を結んだ場合、「1年で1枚アルバムを出してください。」「2年間で必ず2枚アルバムを出してください」のような条件があり、当然その上で結果を残すことが必要となる。
またメジャーレーベルから音源をリリースする場合は、流通する場合に広範囲に展開するため数社の業者を通すことが多い。そうなると、配分先の会社が多くなってしまい、音源1枚のうち数%しかアーティストやプロダクション側には還元されないというケースもある。
「インディーズ」のメリット、デメリット...
インディーズは、大手のメジャー・レーベルと比べると、関わる人数が少ない。だからこそ、制約が少なく自由な活動ができると言われている。レーベル運営とアーティストの距離が近いので、クリエイティヴにおいても、アーティスト自身やプロダクションの意思が反映されやすい。もちろん、個人でレーベルを持っている場合は、アーティストの意向がそのまま反映される。しかしその一方で、プロモーションの部分では、大手のメジャーレーベルと比べると、相対的に弱くなってしまう。例えば、テレビの音楽番組の枠を、インディーズで勝ち取っていくのは、至難の業である。また、クリエイティヴや宣伝費で、「こういうことをしたい!」という気持ちがあっても、使える予算は限られてくるだろう。
また、インディーズレーベルの場合は、間に挟む業者の数が少ないのでその分、1作品あたりのアーティストやプロダクション側の取り分は大きくなるだろう。しかし、流通量が少なくなるので、総合的な売り上げは下がってしまうことが多いとされている。
参考:
【今更聞けないメジャーとインディーズの違い】"売れる"ってどういうこと?!
https://wakiwaki.life/2018/11/09/
【音楽生活11年】これで簡単にわかる。メジャーとインディーズの違い
https://sakamotoakihiro.com/essay-05/
以上が、インターネット等で紹介されている「メジャー」や「インディーズ」に関する情報の一部だ。もちろん、レコード会社やアーティスト本人の動き、所属するプロダクションにとって、ケースは様々であり、事情はそれぞれ異なってくることもあると思う。特に、音楽を聴く方法がCDだけでなく、ストリーミングやYouTube、TikTokなど多岐にわたる昨今、「メジャー」や「インディーズ」の役割も大きく再編されているはずだ(その辺りもぜひ今後聞いてみたい)。
さて、ここまで調べてきたが、実際に現場で働いている人々にとっては、どのような違いがあるのだろう... そんな疑問が湧いてきたぞ。というわけで次回は、各分野の音楽関係者にショート・インタヴューを行い、実際の現場で見たそれぞれの目線から、「メジャー」と「インディーズ」のリアルな違いについて探っていこうと思う。
次のページからは、PIGGSの街頭インタヴュー調査のレポートをお届けします