この曲がタイムリーになってしまうのがつらい
——楽曲の話に移ります。まず先行リリースされた“永遠少女”はメッセージ性の強い歌詞が特徴でした。
向井: “永遠少女”は、2つのギター・コードだけをずっと繰り返すリフなんですね。それが私の中でグサグサきまして、非常に刺々しい音なわけですよ。このギターリフにどういう言葉を乗っけるか考えたときに、ちょっとやそっとの言葉じゃ対抗できないと思ったんですね。この世は嘘だらけだし、この世はこういうもんだとはっきり言ってやろうという気持ちになったんですね。以前からそういうことはずっと歌っているわけですけども、言葉の圧力をより一層高めないとなと。“自問自答”という曲を作るときと同じテンションになったわけですね。言葉をしっかり前に打ち出さなければいけないという責任感を感じて、同じような気持ちで“永遠少女”を作りました。
——「1945年」と歌詞にあるため、戦争をテーマにし、現在起こっているパレスチナでの戦争や、ウクライナをめぐる戦争についても思いを巡らしながら歌詞を書いたのかなと個人的に考えましたが、いかがでしょうか?
向井:これはウクライナ侵攻が始まる前に出来上がっていたので、制作時期からしてそれは少し違います。ただ、この曲がタイムリーになってしまうのがつらいんですよね。歌うのがつらいし、つらく聴こえるだろう。でも殺し合いは人がいる限りおこなわれているわけで、この世はそういうものであるというのは事実なわけですよ。そういうことをはっきり言葉にしたいと思ってこの曲を作りましたね。反戦メッセージとしての“永遠少女”があるとすれば、戦争に賛成する人なんているのかよ、と思います。みんな反戦だろうし、戦争をいいと思う人はいないと思います。“永遠少女”の中で戦争の風景を描いていますけど、私がこの曲で戦争をやめてほしいとみんなに思ってほしいわけではないんです。戦争をやめてほしいなんて全人類が思っているわけで。こうあるべきだというメッセージは何も言っていない。ただ人間はこうじゃないかというのを私は思っている。そういう曲です。
——その他にもいくつか歌詞についても聴かせてください。新曲“ブルーサンダー”の「ブルーサンダー」とは何を指しているんですか?
向井:「ブルーサンダー」は1983年公開の、ロイ・シャイダー主演の映画ですね。それをうちの兄貴と観に行って、すごく興奮した当時小学生の自分に瞬間的に出会ったわけですね。自分自身はここにいますが、そういった思い出に取り憑かれている自分がいるという歌です。人間は年齢を重ねるとそういう記憶がノスタルジーになるかもしれないけども、私の場合はそれが瞬間でフラッシュバックする現象になる。昔の自分とすれ違った感覚を歌にしたいと思って作ったんです。1988年、1996年というのもフラッシュバックしたんでしょうね。ここには描かれていないわけですけども、いろんな風景とすれ違うわけです。
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——なるほど。4曲目の“チャイコフスキーでよろしく”はどういう情景を描かれたんでしょう?
向井:2021年開催の東京オリンピックの女子射撃の競技を、「こんな競技もあるんだ」とオンラインで見ていたわけですよ。女子射撃は体育館の中で的に淡々と当てていくだけで、実況もないわけだ。非常に厳かに流れていく。ただしその選手たちは研ぎ澄ました集中力で的をねらうわけです。その緊張感が、空調が壊れて冷房が効かないMATSURI STUDIOの中で見ていると、心地よかったんですよ。そこで中国人選手、ロシア人選手がメダルを獲るんですね。でもそのときは、ロシア選手はロシア代表として出ていないんです。表彰台でも国歌が演奏されない。そこで高らかに鳴り響いたチャイコフスキーの曲に感動したんです。さっきまで集中していた女性が、表彰台に立ってみるとどこにでもいるような、あどけない笑顔をしていて、ちょっと誇らしげにチャイコフスキーをバックに立っている。その姿に、うだるような真夏の熱気も相まって感動したわけです。
——6曲目「杉並の少年」で1番最後に「すみませんー!」という音声が入っているんですが、あれはどなたの声なんでしょう?
向井:あれはギターの吉兼聡だね。どこを間違ったか知らないけど、自分なりにミステイクがあったのね。ただ私はどこを間違ったかわからない、でも自分なりにあったんだと思う。それを録音の停止がされた後に謝ればいいものを先走って言っている。生でレコーディングしているから、もうしょうがない。だから消しようがないよね。
——アルバム最後に収録されている「胸焼けうどんの作り方」で、終盤に向井さんの声が聴こえるんですが、あれはどういうことを言っているんでしょうか?
向井:「どげんだっちゃよか」と言っています。「どげんだっちゃよか」というのは、博多弁で「どうなってもいい」みたいなニュアンスやね。「ヴォーカル・レコーディング、これで勘弁してくれ!」って自分自身の気持ちかな。きっとヤケクソで言ってしまったんだな。
——そういうふうに言っていたんですね。
向井:結局こうにしかならない。これが俺だ。まあ、そういうことだな。
——なるほど。ありがとうございました。
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ZAZEN BOYS、12年ぶりの最新アルバム!
LIVE INFORMATION
〈ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION 2024〉
2月3日(土)熊本B.9 V1
開場17:00/開演18:00
2月4日(日)福岡DRUM LOGOS
開場17:00/開演18:00
2月28日(水)東京TOKYO DOME CITY HALL
開場18:00/開演19:00
3月10日(日)大阪なんばHatch
開場17:00/開演18:00
3月20日(水祝)名古屋ダイアモンドホール
開場17:00/開演18:00
4月5日(金)新潟CLUB RIVERST
開場18:30/開演19:00
4月6日(土)郡山HIPSHOT JAPAN
開場17:30/開演18:00
4月12日(金)水戸ライトハウス
開場18:30/開演19:00
4月14日(日)盛岡CLUB CHANGE WAVE
開場17:30/開演18:00
4月20日(土)那覇桜坂セントラル
開場17:30/開演18:00
5月9日(木)京都磔磔
開場18:00/開演18:30
5月10日(金)福井CHOP
開場18:30/開演19:00
5月18日(土)鹿児島CAPARVO HALL
開場17:00/開演18:00
6月8日(土)札幌PENNY LANE24
開場17:00/開演18:00
https://mukaishutoku.com/live.html
ZAZEN BOYS ディスコグラフィー
PROFILE:ZAZEN BOYS
向井秀徳(Vo. G, Key)を中心に結成されたロックバンド。
2004年1月1stALIZAZEN BOYS」を発表。幾度のメンバーチェンジを経て、現在のメンバーは、向井秀徳:(Vo, G, Key)/吉兼:(Gu) / MIYA :(Ba) /松下 :(Dr)。
来る2024年1月24日約12年ぶりの6thAL「らんど」をリリースする。
【公式HP】https://mukaishutoku.com/zazenboys.html
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