CDを出せばみんな変わるだろうと思うけど、変わらない
飯田 : 湿っぽくなっちゃうんですけど、そんな中でカクバリズムは大丈夫?
角張 : メジャーとは違うマイペースさを保とうとすると、どうしてもリリースとかライヴに対する助走期間を延ばしたくなっちゃうんですよね。
—それなのに、アーティストを増やさないのはなぜですか?
角張 : 増やさないんじゃなくて、単純に手が足らないのもある。レーベルってCDを出すわけじゃないですか。でもうちは全然出していなくて、今年はイルリメ、ユアソン、キセル、SAKEROCKの4タイトルだけ。あ、今年はでてますね(笑)。僕はレーベルもマネージメントもやっているから、それを同居させて組み合わせをしながら、助走してジャンプしようってやり方なんです。
飯田 : カクバリズムみたいなスタイルって昔もっと多かったのに最近あまりないですよね。
角張 : 何が苦しいかっていうと、今まで50万円で出来たものが、なんだかんだ150万円とかかかってきたりするんですよね。バンドそれぞれですが…。で、150万円かけるには、3000枚〜4000枚は売れないといけない。ハードルが出来ちゃう。それなのに、お金をかけてあげたいのはなぜかといえば、いい音や環境でやってもらいたいんですよね。そのために4000枚くらい売れる環境づくりをつくれたらいいなーと。それを達成するために、いいライヴ、いい曲を書かなきゃってバランスになってくる。そうなると、自ずとリリース数が減ってくるというか、しっかり一個一個を考えられる規模になってくるんですよね。
—確かに、そうですね。
角張 : 昔、STIFFEEN RECORDSってパンク・レーベルをやっていたときに、出すだけだったんですよ。そうすると、結局一枚目出して、次二枚目出しても、規模が変わんないんですよね。それは出した後の事をしっかりサポートできてなかったんですよね。宣伝もしっかり出来ていなかったというか、レコ発は満員だけど、それ以降のお客さんの数は増えないというか。で、観てる人が変わらないから、CDの売り上げも変わんない。そうすると宣伝や制作のお金も変わんないわけですよ。だったら、ライヴの売り上げとかも貯めて、次の制作費を上げようと思った。要はリリースが潤滑油になってほしかったんだけど、出すだけだと潤滑油にならなかった。CDを出せばみんな変わるだろうと思うけど、変わらないんですよ。
飯田 : 変わんないですよね。
—たしかに、新代田FEVERで行われたイルリメのレコ発はすごく感動的でした。横にはマネージャー(?)の小林さんもいて、二人三脚の成果が形になった瞬間でしたよね。
角張 : そう。ある一定の二人の結果を見せられて俺は号泣してた。なんていいライヴなんだって。
飯田 : いいライヴでしたよね。
角張 : イルリメ兄さんは、フジロックの苗場食堂で凄い沢山のお客さんがめちゃめちゃ盛り上がった次の日に、UG MANとかと静岡でやったライヴで、お客さんが10人とかの経験をしてるわけですよ。天と地みたいなライヴをやっていて、そこをわかっている。そういうのをわかってるバンドとかアーティストは強いですよね。
飯田 : 20歳前半で売れたらわけわかんなくなっちゃうよね。いまのインディー・レーベルって、ほとんど原盤持ち込みというか、制作費を出せるレーベルが少ないじゃないですか。だから、そんな中インディー・レーベルとして制作費を出しながらやっているのがえらい。
角張 : 全部賭けですよ。だから150万円使って300万円の売り上げがあったとしても二倍にしかなってないでしょ。その間の人件費を加算するとゼロみたいなもんだから、売れないと負けなんですよ。
—でも、そういいながらも賭けに勝ってきてるわけですよね?
角張 : そういう石橋の叩き方しかしてないんですよ。だから遅くなるんです。リリースとリリースの間に如何に何をするかってのが勝負なんです。クアトロを売り切ったら、次はブリッツ1200人だって感じで。
飯田 : クアトロとブリッツの間にやることって何なんでしょう?
角張 : やっぱりいいライヴといい曲を、ひたすら色んな人の前でやることじゃないですか?(笑)。かっこいいライヴをして、いい曲を作っていれば、人が来るって俺は信じていたりするんだよな〜〜〜(塩)
飯田 : なるほど。その間どれだけライヴをするかだよね(笑)。
角張 : うん。キセルは2008年に『マジックアワー』を出したんだけど、2006年11月にカクバリズムに来て、2007、2008年の前半はライヴとRECをしてた。あとはフジロックや朝霧に出て、フェスにもいっぱい出演させてもらって、ライヴもいろんな対バンをさせてもらって、東名阪のツアーも年に二回やったんですよね。そうやっていたら、少しずつ動員数が増えてきてくれた。何のリリースもないけど少しずつっていう。
飯田 : 何のリリースもないのに増えるんですか?
角張 : 増えて欲しい! と思って、少しずつ。
飯田 : それはいいライヴだからですか?
角張 : それもそうだし、ワンマンを見たいって要望もあったんじゃないかな? 彼らはメジャーで5年間やってきたんだけど、ライヴをあまり出口にしてなかったんです。だから、いっぱいライヴを組めばいいと考えた。でね、ただライブを沢山やればいいじゃなくて、お客さん目線で嬉しいライブというか客観視できる良いライブを組みたいと思った。お客さんも青春時代に聞いている人とかが多かったから、そのニーズを考えながら、一緒にこの先もキセルを聞いてほしかったから現場でしか買えないCDを1年に1回、2年連続で出したんですよ。そこにしかないものを提案していったら900人のキャパが埋まるようになって、さらに口コミでキセルがいいライヴをするって広まって、観てみようかって人が来てくれた。でもそこでダメだったら、次は来てくれないから、一回一回命かけていけよ! みたいな感じですよね(笑)。もちろん、これは一個のフォーマットで、向いている人といない人がいて、SAKEROCKとかはライブをそんなにやってないんですよ。バンドそれぞれのいい感じのやり方があるなぁ〜って。
飯田 : 彼らは色々やってますよね。
角張 : そうそう。色んなところで頑張ってくると、最後はSAKEROCKに集約してくる部分がやはりあるんじゃないかな? もちろん、それは在日ファンクとか源くんのソロとか、グッドラックヘイワにも流れていくわけで、それを囲い込むつもりもないし、自由にやっていいと思ってます。
「インディーズだから金ないんだよなあ」とか言って、ごまかしていた
—今年のボロフェスタの人選はどうやって行ったんですか?
飯田 : 今年は、ボランティアの子とか若い子に「何がやりたいの? 」「何が呼びたいの? 」って一番聞いた。EXILEとかいう人もいたり、怒髪天とかもキセルとかもいう子もいた。クリトリック・リスとかもアングラ好きの若い子に人気だった。だから、みんなが呼びたい人を集めただけっていえばそうなんだよね。
—その中で、キセルを大トリにしたのはなぜですか?
飯田 : それはもう、キセルしかないと思った。
角張 : 最初聞いた時はえ〜! ってマジで? って思ったんだけど。話聞いてて思ったのは、飯田君の中にあるボロフェスタに対する思いがキセルに集約されているんじゃないかな。これを読む人に言っておきますけど、まず熱意が下地に当たり前にあるってことを忘れないでくださいね!
飯田 : (笑)。
角張 : こういうインタビューを読むと、「何だよ、金の話かよ」とか、熱意ねえなとか思うかもしんないんですけど、俺たちは当たり前に熱意があるんですよ。恥ずかしいけど。というか熱意しかないんですよ。だから、デートコースとかブラフマンとか色々思いがある人たちが出ている中で、ボロフェスタの持っている方向性、ベクトルとか初心を表すにはキセルが同じ線上にあったんじゃないかと思ったから、受けましょうっていったんです。
飯田 : 本当にそうですよ。
角張 : だから、キセルがいいライヴをしたとき、ボロフェスタ・スタッフはすげえほめてくれると思ってる。二階堂(和美)さんに、イベントの誰が、どういう気持ちで呼んでくれるのか、どういう場所を提供してくれるのかを全部知りたい、そうじゃないとそのライヴに対して100%どういう力でいっていいのかわからないって言われるんだけど、俺がやり取りしてると100%伝わらないじゃないですか。もちろんマネージメントの意味合いで、100%伝わりすぎちゃうと困ることもあるし、失礼な人もいるから、人気あるから呼びましたとかだったら断るときもある。そういう点で、飯田君はよく知っている人だし、何でトリにしたかはよくわかるんです。
飯田 : だから、キセルがトリっていうことに誰も文句を言わなかった。一番最初、ゆーきゃんが今年のトリはキセルにしたいってメーリングリストで投げたんだけど、みんながそれしかないって一致した。
角張 : ところで、なんでボロっていうの? ボロにも錦ってこと?
飯田 : そうですね。「ボロは着てても」ってイベントをゆーきゃんがやってたんですよ。そこから来てるんです。でも、実際にボロボロになるからですよ。
角張 : おこがましいけど、好きですよ。呼ばれないとさみしいし。
飯田 : ずっと呼んでるのはカクバリズムとセカンドロイヤルだけ。さっき言ったように、立ち位置が近くて、インディペンデントだけど、ちゃんとお金の勘定できるというか。
角張 : でも実は俺、インディーを言い訳にしてたときがあって、怒られたことがあるんです。要はインディーに胡座をかいていたんです。例えば、こういうのやればいいじゃんって言われても、インディーだからって言って出来ない白旗をあげちゃっていた。メジャーに対してアンチテーゼを述べているはずなのに、自分たちはインディだからって壁を作っていた。「インディーズだから金ないんだよなあ」とか言って、ごまかしていたわけですよ。でもそうじゃないんですよ。だって、メジャーにいきたいんだったらいけばいいんだし、好きでインディーズを広げてきたんだから。そこで、なんで俺はインディーに胡座をかいていたんだと思って、それ以来出来る限りやって、無理なことでもそれは決してインディーのせいではないと考えるようになった。垣根を作りたくないといいながら、垣根を作っているのは俺たちだった。
飯田 : なるほどね。ボロフェスタも、柵の問題とかを本気で議論する。お客さんが倒れちゃったり、ケガしたらどうするんだっていう一方で、柵があったらメジャー感があるフェスになっちゃうぞって対決があって、その狭間で一番僕ららしいやり方を探している。だから、学生ノリの延長であることに間違いはないんだけど、参考にするフェスとその学生ノリの間で、相変わらず考えているのがボロフェスタ。それはカクバリズムというレーベルでも一緒なんじゃないかな。
角張 : ねっ。
飯田 : 遊び感覚がなくなったらまずいでしょ?
角張 : 確かにね。でもさあ、20歳くらいの自分に電話して「今の自分どうよ? 」って聞いたときに、「俺、なんか憧れちゃうよ! 」って言わせたいよね。そういう活動をしたいんだけど、そこにお金の話や生活の話とかが関わってくるから。まさか20歳のころにこんな風になっているとは思わなかったけどね(笑)。「30になってそんな悩みあんの?! 」とか昔の俺は言うわけ。でさ、「ボロフェスタはどうなの? 」って言われたらまだまだやってるよっていいたいよね(笑)。
飯田 : 変わってないよって(笑)。
—カクバリさんは、苦労している部分とかほとんど出さないですよね。
角張 : う〜ん、そうかなー。でもこの前マンガ家の人と遊んでいたときに、「楽しそうにマンガを書く」ってツイートしたりしてるから、いいですよねって言ったら、あれ本当にきついんだよって言われた。楽しそうに書かなきゃ夢はないよって言われて、かっこいいなって思ったし、そうあるべきだと思ったというのもあるけど、僕は出しているほうだけどなー。こうゆう対談でもさ。あと、set you freeの千葉ちゃんが言っていたのは、マイペースに見えるハイペースがいいんだって。人様から見るとマイペースなんだけど、自分らは超がんばってやっているのがいいって。確かにそうだなって。やっぱ焦ってると伝わっちゃうよね。
飯田 : それ、見習わんといかんなあ。
角張 : ハイペースだと、あれ? どうしたのかなって思っちゃうよね。だから、そこら辺のバランス感覚は重要だなと思う。お店に立っていたときは、やたらリリースが粗くなってたりとかってのが見えてたし。それでまた曽我部さんの話なんだけど、曽我部さんがすごいのはそれがないんだよね。
飯田 : アルバムが一ヶ月前に出来たから出しちゃおうとかね(笑)。
角張 : あれくらい好きなことをやっていると、逆に楽に見えるよね。例えば、俺が超恐い人に全然好きじゃない音楽持ってこられて、「これ出せや!! 」って言われて出したらすぐバレるんじゃないかな(笑)。それはボロも一緒で、すぐ出るんじゃない?
飯田 : すぐ出る(笑)。でもうちは、頭下げてくる人でも好きじゃないものとか、好きだけどどうしても流れに合わないものは、断りますよ。
角張 : それが9年続いてきた秘訣なのかもね。ボロフェスタ楽しみにしてますよ!
飯田 : 期待してて下さい!
BOROFESTA2010
【DETAIL】
2010年10月22日(金)〜24日(日)@京都KBSホール / club METRO
■10月22日(金)大前夜祭@京都KBSホール
開場 18:00- / 開演 19:00-
出演 : DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN / ときめき☆ジャンボジャンボ
■10月23日(土) 昼の部@京都KBSホール
開場 11:00- / 開演 12:00-
出演 : BRAHMAN / PE'Z / OGRE YOU ASSHOLE / つじあやの / ホフディラン / Riddim Saunter / PARA / bed / 片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ / 前野健太 / Limited Express(has gone?) / 森ゆに / JUICEBOXXX / GAGAKIRISE / コヨダレ探偵事務所 / ザ・シックスブリッツ / oddeyes / 3月33日 / Hello Hawk / secret guest!
■10月23日(土) 夜の部@神宮丸太町club METRO
開場 / 開演 22:00-
出演 : LOSTAGE / KING BROTHERS / ハヌマーン / Predawn / ゆーきゃん / JAPAN-狂撃-SPECIAL / Taichi Furukawa(Riddim Saunter) / Tomoh / LARGE400 / 高橋孝博(HALFBY) / 田中亮太
■10月24日(日) 昼の部@京都KBSホール
開場 11:00- / 開演 12:00-
出演 : Caravan / キセル / ガガガSP / 曽我部恵一 / world's end girlfriend / やけのはら+ドリアン / Predawn / 毛皮のマリーズ / 神聖かまってちゃん / 踊ってばかりの国 / 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 / Turntable Films / ロボピッチャー / ニーハオ! / マイコン学園 / JUICEBOXXX / ゆーきゃん / THEロック大臣ズ / 奇妙礼太郎 / 山口将司(bed) / ドリアン
【TICKET】
大前夜祭券[22日] : 前売 3,300円 / 当日 3,800円(1ドリンク代別)
1日券[23日 or 24日] : 前売り 3,800円 / 当日 4,300円(1ドリンク代別)
2日券[23日&24日] : 7,000円(1ドリンク付き)☆限定200枚
3日券[2日通し券+大前夜祭] : 9,900円(1ドリンク付き)☆限定200枚
BOROFESTA MIDNIGHT券 : 前売 2,500円 当日 3,000円(1ドリンク代別)
□e+(イープラス) → http://eplus.jp/borofesta
ファミリーマート店頭「Famiポート」で、直接購入もできます。
□ローソンチケット→http://l-tike.com/
□チケットぴあ→http://t.pia.jp
□オフィシャル・サイト取り置き→http://borofesta.ototoy.jp/v/mailform/index.php/
※枚数に制限があるので、プレイガイドでのお買い求めをオススメします。
なお、当日の入場は、プレイガイドで購入された方が優先となります。
【INFORMATION】
BOROFESTA official web : http://borofesta.ototoy.jp/
twitterアカウント : @borofesta
Twitter ハッシュタグ : #borofesta
カクバリズム ニュース!
- キセル、『凪』のアナログ発売! そして凪のツアー秋を開催!!
10月21日@仙台ダーウィン(凪のツアー秋)
10月22日@盛岡CLUB CHANGE WAVE(凪のツアー秋)
10月23日@調布の河川敷・・・「もみじ市」
10月24日@京都KBSホール「ボロフェスタ」
10月28日@金沢VANVAN V4(凪のツアー秋)
10月29日@京都磔磔(凪のツアー秋)
11月18日@恵比寿リキッドルーム(凪のツアー秋・ファイナル)
- SAKEROCK、4thアルバム発売決定!
- YOUR SONG IS GOOD、日比谷野音でのライブをDVDでリリース決定!!
B.A.N.D,T.O.U.R.FINAL @ 日比谷野外大音楽堂
12月1日発売 / 約140分収録 / 2625円(税込)
KAKUBARHYTHM / DDBK-1006
更に!12月4日&5日は「YOUR SONG IS GOODの超2日間」@恵比寿リキッドルームの開催が決定!!
『激動のテン年代。いま、インディー・レーベルは必要ですか? 』
様々なウェブ・サービスの発展により、個人でも気軽に音源を発表/販売できるようになったこの時代にインディー・レーベルの存在意義とはなんなのか? 現在最前線で奮闘するレーベル・オーナー、インディーズの作品を多く扱う配信サイト運営者が集い、現場のリアルな声をお届けします。さらにミニ・ライブも開催されます。
- 2010年11月7日@アップルストア銀座
出演 :
■トークイベント出演者
石本聡(mao) / 飯田仁一郎(ototoy) / 北澤学(penguinmarket records) / 桑村治良(フリー・エディター)
■ ライブ出演者
Tyme.(MAS)、成井幹子(sgt.、MAS)
ボロフェスタ2010出演アーティストの音源はこちら!