■BiSの復活とポストBiSアイドルたちのいま
ーーもう一つ思っているのは、この数年でアイドル・シーンが整備されてきて、ちゃんとお金をかけて高いクオリティのアイドルを作っていけば、ピラミッド構造の上の方にいくというか。奇襲作戦だとなかなか上にいけないのかなっていう気持ちもしているんですけど。
南波 : ちゃんとした事務所で、ちゃんとしたバックアップがあって売れているのは、結果的にそう見えているということだと思うんですよ。だってバックアップがあっても売れてないグループは山程いるわけで。奇襲作戦そのものが悪いわけではないと思います。資本がないなかでどう工夫するのかを考えようということですよね。ただ、個人であろうとちゃんとした事務所であろうと、みんな頭使っていますよねという話で。
ーーBiSに続く世代のベルハーとかゆるめるモ! がもっと突き抜けると思ったんですけど、いま踏ん張りどきで、それがもどかしいんですよ。
南波 : 何が足りないのかは僕にはわからないけど、もっと潤沢な資金があって、どこどこで広告打ちましたとか、雑誌でグラビアの表紙とれましたとかっていうのができたらまた違ったのかもしれないですけど、それもたらればの話なのでわからないですよね。
ーー個人的には、ベルハーの『BEYOND』を聴いてアイドルはこれだけ聴いていればいいって満足してしまったんですよ。ちなみに、ベルハーの楽曲を作っている運営チームが始めたヤなことそっとミュートはどう感じてますか。
南波 : おもしろいなと思いますよ。8cmCDも買いました。ただ、詳しくないのでそれ以上は言えないです。シーンが落ち着いてきているという話でしたけど、新しいアイドルもめちゃくちゃ増えてますよね。
ーーそんななか、アイドル像をぶち壊して進んでいったBiSが形を変えて始まるわけじゃないですか。それはどう捉えていますか。
南波 : 僕は渡辺(淳之介)さんがやることに関しては全部ポジティヴに捉えています。歴史がぐちゃぐちゃになる感じがわけわからなくて面白いですよね。もう一度BiSをやるって言ってBiSHを始めたのに、さらにオリジナルのBiSが出てくるわけで。リアルタイムでタイムパラドックスを見てる感じがするというか。もし、BiSがBiSHとしのぎを削るくらいの存在になったら本当にすごいですよね。
ーーBiSが登場した時代って、アイドルのことは知らないけどおもしろそうだなって人がどんどん入ってきた時期でしたからね。
南波 : BiSを知っちゃったという前提があるから、そういう楽しみとは全然違いますよね。プールイがBiSとしてトーク番組に出ているのを見て、楽しそうにやってるから、それはそれでいいんじゃないかなと思いましたけどね。
■アイドルと切っても切り離せないオタクとの関係性
ーーアイドルを語る上では、オタクの存在も大きいですよね。特に今年の〈TIF〉はセキュリティー会社のBONDSとの騒動が取り上げられ話題になりました。現場だと暴れたお客さんがつまみ出されたり、物々しい感じでしたよね。
南波 : おもしろかったよね。
ーーああいうのは、否定的な考えじゃないんですか?
南波 : そのことに触れないのかって言われることもあるんですけど、若者がやらかす若気の至りに関しておっさんが何か言ったりするのってナンセンスじゃないですか。バカなことする人たちは、それに怒った人たちに怒られたらいいんじゃないの? くらいにしか思っていないし、個人的にはけしからんとは思ったりしていないんですよね。
ーーStereo Tokyoのお客さんとかはピースな感じがするというか、笑うしかないですよね。SMILE GARDENでのライヴは有料エリアより無料エリアが盛り上がっていて、たくさんの国旗が埋め尽くしているという(笑)。
南波 : ね。あれは考えてやっている訳じゃないですか。トンチを効かせて、どういう答えを出すかみたいな一休さん状態になっている。SKY STAGEでは音を止められましたけど、「はいはい、終わり終わりー」ってなるわけじゃないですか。皮肉込みだけど、ユーモアが効いてるし、だからそれに関して特に言うことないし、ちょっとぐらいそういう人がいた方が活気づくのかなって思いますけどね。

ーーロック・フェスと〈TIF〉を比較して分析している記事もいくつかありましたけど、僕はアイドルのフェスのゴールは〈ROCK IN JAPAN FES〉とかフジロックみたいなところにはないと思っていて。
南波 : そうそう、比較してもしょうがないんですよ。
ーーそれはロック側の考えで、また全然違うと思うんですよね。アイドルはある種日本独自の文化で、それが少しずつ形を変えてひとつまとまろうとしている。まだ誰も形がわからない。オタクを制御しすぎると、アイドル現場のおもしろさを削ぐことにも繋がってしまうと思うんですよ。
南波 : わかります。だから、これは由々しき問題だって物申したとしても、そう言ってほしい人たちが溜飲を下げるだけでなんの意味もない気がします。
■なんとかしてあげたいと思わせるのもアイドル力

ーー僕は南波さんがレーベルを立ち上げたことで、大変だろうなって気持ちもありつつ、うらやましいなって気持ちもあって。
南波 : なんで?
ーー例えば、僕はGANG PARADEが好きなんですけど、文章を書くだけじゃなくて他の応援の仕方があればしたいなって思うわけですよ。そういう意味で南波さんが違うアプローチ方法ができたってすごくいいなって。
南波 : なるほど。それは文章を書く以外の仕事もしているからかもしれない。ネット番組とかラジオとかトークイベントとか。魅力に触れるきっかけをひとつでも増やせたらなとは思っています。例えば、ハコイリ♡ムスメのライヴを一度でも見たら、好きになってくれる人がいっぱいいると思うんですよ。RYUTistも愛され力みたいなのがすごいある。象徴的なのは、旭川から車で3時間くらいかかる西興部村っていう場所のゆるキャラがRYUTistの大ファンになって、わざわざ自分の村のお祭りに呼んでいるんですよ。あとシュガー・ベイブでギターを弾いていた村松邦男さんがRYUTistのインストア・イベントを見に来てくれてステージにも上がってくれたり。それってお金でどうこうって話じゃなくて、ひとつのきっかけがあって、彼女たちに魅力を感じてくれた人たちが動いたということですよね。
ーー女の子たちに魅力があるっていうのはすごい重要なことですよね。
南波 : そう、だから結局全部ないとダメなんですよね。音楽もパフォーマンスも人間力も。
ーーそれこそ、Negiccoの曲を書いた田島貴男さんがタワレコでNegiccoのCDを何枚も買うみたいなことも起こるわけじゃないですか。
南波 : Negiccoこそ、大人がなんとかしてあげなきゃって気持ちにさせる魅力がある人たちじゃないですか。もちろんパフォーマンスとか、いろいろ鍛錬してきてこそだと思うんですけど、なんとかしてあげたいって思わせるキャラクターもアイドル力ですよね。それこそ奇襲作戦とかコンセプトありきだと、シンプルなところを見落としてしまうのかもしれないですね。
ーーBiSだって、俺たちが応援しなきゃって気持ちにさせられましたよね。
南波 : ね。でも、こうやってインタヴューを受けるなかで自分自身、反省していて。ファンなら知っているであろうことをイチから言うのも野暮だろうと思って、言葉で丁寧に説明するっていうことを端折りがちだなと気づかされました。触れるきっかけを増やしたいと思っているのに。いまは、ちゃんと説明したいっていう気持ちです(笑)。
ーー話していて、3組の魅力がすごく伝わってきましたけどね。
南波 : いやー、どうですかね(笑)。
ーー何か言い残したことはありますか?
南波 : うまく話せなかったから、全部カットで…。
ーーええ(笑)、勘弁してください!!
取材&文 : 西澤裕郎
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