2013年kilk recordsの新連載、第2回目はRicco Labelの主宰者、木戸崇博!!

新進気鋭のレーベル、kilk recordsの主宰者、森大地が、様々なゲストとともに音楽業界に疑問を投げかけてきた「kilk records session」。2011年から1年に渡りお届けしてきた本企画だったが、森の野心は留まることを知らず、2013年も連載することが決定!! テーマはより明確に。音楽業界で新しい方法でサヴァイヴしていこうとしている人たちに焦点をあて、森が毎月体当たりで対談に臨んでいく。

第2回目となる今回の対談相手は、Ricco Labelの主宰者、木戸崇博。Anoiceのメンバーであり、様々なユニット、ソロ活動を行うほか、映像作品、映画音楽など、世界をまたにかけて活動するアーティストでもある。Ricco Labelでリリースしている音源の著作権、原盤権はすべて自分たちで管理しているという。今回の連載開始にあたり、森がどうしても呼びたいと言っていた相手が木戸であった。レーベルを運営していくにあたって著作権をどう考えるのか、アーティストとの付き合い方はどうしていくべきか? じっくり読み込んで、あなたの中で咀嚼して考えてみてほしい。

進行&文 : 西澤裕郎

2013年のkilk recordsを担う新人アーティストをいち早く紹介するコンピ

7人の新人アーティストが集結したフリー・サンプラー

VA / kilk Sampler 2013 New Artists
【参加アーティスト】
Ajysytz / urbansole / Glaschelim / AUDIO BOXING / köttur / Marrybelle / arai tasuku

artwork : kiloglams

>>kilk records全タイトルはこちら

Ricco Labelの音源を配信開始!!

作品左上から、

Anoice / The Black Rain
RiLF / Ferris Wheel
Takahiro Kido / Fairy Tale
Yuki Murata / Films
cru / re-Silence
Takahiro Kido / in my Time

新音楽時代 vol.2 対談 : 森大地(kilk records)×木戸崇博(Ricco Label)

左から木戸崇博、森大地

森大地(以下、森) : 木戸さんは、著作権を重要な位置に据えて活動されていらっしゃいますよね。

木戸崇博(以下、木戸) : そうですね。自分のバンドであるAnoice、そのメンバーによるソロであるTakahiro KidoとYuki Murata、あるいはメンバーの携わっているバンドなりユニットであるRiLF、mokyow、films、cru、The Frozen Vaultsの著作権なり原盤権は、基本的には全部自分たちで持っているんですね。なんでそういうことにしたかというと、2006年にリリースしたAnoiceのファースト・アルバムが、日本のレーベルから全然相手にされなくて、唯一拾ってくれたのがアメリカのImportant Recordsというレーベルだったんですけど、そこからリリースしたら、ソニック・ユースに褒められたり好評だったんですよ。

森 : すごいですね。

木戸 : でも、お金が入ってきたら「自分達にはこれだけしかお金が入らないの?」というくらいの額で。1アーティストがレーベルと契約したら、売り上げ金は店舗を通し、ディストリビューターを通し、レーベルを通して、場合によっては著作権管理会社を通して、事務所を通して、バンドにくる。それをメンバーの人数分で割って、ようやく自分の元に来る。そうなると、みそっかすのような金額なんです。だったらレーベルを通して一万枚売るより、自分達で全ての権利を持って三千枚売った方がバンドの運営として繋がるんじゃないかと思って。当時僕らは本当に無知だったので、レーベル・オーナーのジョンが「日本で音楽をやるならMONOに会え」とMONOを紹介してくれて、楽屋に呼んでもらって話をした時に「インディーズっていうものは君たちが思っているよりも簡単に出来る。世界で売ることもこれからは可能になるだろう」ということで、やり方を教えてもらって今に至るんです。

森 : 今も昔もレーベルとしての目的というよりはアーティスト活動の延長ということですか?

木戸 : そうですね。レーベルはただの枠組みだと思っています。世間的には、レーベル名がないと舐められるんです。例えば、制作会社や行政とつるむ時も「東京で音楽をやっています」だけだと取引が難しい。だからレーベル名を作ったというだけの事です。

森 : 当時としては、海外にCDが置かれているのは今より敷居の高いことですよね。

木戸 : そうかもしれませんね。以前は、例えばロンドンのHMVに自分のCDがあったりすると凄く喜んでいたんですけど、今は何も感じないですね。これだけ聞いたらおもしろくない奴に聞こえるかもしれないですけど、今では誰でも出来ることなんです。よく日本の人が「海外でやるのは変わってる」と仰るんですけど、例えばイギリスのバンドの連中曰く「何で日本だけでやるの?」って感じで。例えば、イギリスでは、音楽家でも音楽以外のアーティストにしても、国内だけで活動するという発想がないんです。少なくともヨーロッパとアメリカは活動の範囲内に想定している事が多いですね。言葉が同じだから取引が簡単だって理由もあるとは思いますけど。

森 : 客観的に見て、業界の仕組みは日本も海外も変わらないと思いますか?

木戸 : 基本的な部分は同じだと思います。ちなみに、うちの場合はCDの売り上げよりも楽曲使用や楽曲制作の売り上げが主体となってまして、大体の企業なら制作会社や著作権管理会社などを挟みますが、うちは基本的には直接取引するという信条でやってますね。農家でいうなら産直ということです。一番シンプルな方法ですよね。

森 : 楽曲制作の仕事は大体自分から営業をかけていることが多いですか?

木戸 : そうですね。多摩地区で初めてのミラノ・コレクションでアルマーニの映像の音楽をプロデュースしたレーベルだと自負しております(笑)。

森 : CDの売り上げが必然的に落ちていくとしたら、これからのRicco Labelの方向性的にはそれをなにで補填していこうと思いますか?

木戸 : CDの穴をCDで埋めようとは思っていません。流れ的にCDが主体ではなくなっていきますしね。けど、ダウンロードはまだ可能性があるものだと思います。例えば、売り上げで言えば、去年うちが参加した『…and darkness came』というコンピレーション・アルバムは、一件BBCのラジオの取り扱いを除けば、宣伝はFacebookのみでした。販売はBandcampのみなんです。それでも去年の12月10日にリリースされて二日間だけで一万ドルの収益がありました。一万ドルの収益をCDのプレス代もかけずにあげるのは中々すごいことですよね。もちろん、3日目以降もその売り上げをキープしているわけではないですけど。同じ方法だと『More Hope for Japan』というのもありました。ちょっと金額は下がるんですけれど一ヶ月毎に2000ドルを売り上げています。でもこちらのすごい所は参加アーティストが全員無名なんです。

森 : それは夢がありますよね。では、ダウンロードの先には何があるとお考えですか?

木戸 : 音楽データを販売するということの価値が下がっていき、情報を販売するという概念がなくなると思います。その分、曲の使用費といった著作権的なビジネスに発展していくと思います。あるいは、うちは作曲家や演奏者の集まりなので、30秒の映像があったとしてその映像にタイミングなどがばっちりはまる音楽を作れる技術があります。しばらくは、そこの技術の価値は崩れないと思うんです、伝統工芸と同じで。とは言え、音楽をもっと広い視野で用いるべきだと思うんですね。はっきり言って、既存の一般的なCD屋だけ見ていると先がない。例えば、去年、豊島区のイベントの音楽を担当したんですけれど、そこに来る人たちって普段、僕たちがやっているようなタイプの音楽を聴かないじゃないですか。もしかしたら生きてるうちに出会うチャンスすらないかもしれない。けど、今はそういう人達が自分達の音楽に触れて、楽しむキッカケを作る事も可能なんです。

森 : 前に木戸さんから聞いたお話で興味深かったのは「カタログ化する、レーベルと手を取り合う」というものがあります。

木戸 : 基本的にはレーベルと手を取り合うという方針はありません。営業やマスタリング、ミュージックビデオやホームページの作成、FacebookやMyspace等のSNSの管理。これらは全部アーティストが自分たちで出来ますよね。委託するか本当に自分の手でやっちゃうかは置いておいて。それをアーティスト自身がやらないということは、やり方を知らないか怠慢かです。例えばイギリスでは制作に関して言えば、音楽をカタログ化したサイトが結構あります。日本の人たちにしか作れない音ってあるじゃないですか。日本独自のコード感とかメロディとか、そういう需要は結構あるんです。そういう部分で才能のある音楽家を集めて日本でもカタログとか図書館のような枠組みを作って世界中に売り込むという可能性があると思います。今ちょうど立ち上げ準備中なんですけどね。

森 : 出版社みたいな役割ですよね。それをレーベルが手を取り合ってやってみてはどうかと思うんですけど、それについてはどう思いますか?

木戸 : 結局デジタルな世界でも大切なのは信頼だと思います。だからレーベルではなく、アーティスト本人と会って直接話をして、どんな人かどうかを確かめたい。そしてアーティスト本人と直接取引したい。古くさい考え方ですけどね。

森 : なるほど。

木戸 : もしその団体が大きくなったらジャンルごとに分けることが出来ますよね。例えばホラーに特化したアーティストとかも出てきますし。楽曲制作用のサンプリングCDってあるじゃないですか。あれを人がやっている感じです。

森 : 音楽ジャンルというか、こんな雰囲気やシーンに合いますよというカタログを作るとかですかね?

木戸 : それこそホラーだとか、ドライヴや夏の海水浴とか。更に言えば和菓子を食べている時の音楽とか。そのくらい細分化したものでクライアントに応えていくと。やっぱりお金があるクライアントから取らないと音楽業界は回らないと思うんです。今CDを買ってくれる人は本当にわずかじゃないですか。ダウンロードですらわずか。

森 : 言い替えれば、少なくともコンテンツに関してはこれからはリスナーからお金を取るというよりも、主力としては企業の方から貰う方になるだろうと。

木戸 : どちらもやらなければいけないという考えですね。

森 : そうですね。僕があえてコンテンツと言ったのは、例えばコンサート業でお金を獲得するやり方もあるかもしれないですよね。レコード会社にとってコンテンツというのは「録音した、複製した曲を売ること」ですよね。僕はコンテンツだけを売るという未来は考えられないです。

木戸 : とはいえアーティストとしてはアルバム作品というものは絶対なんです。だから、売れる、売れないを関係なく、アルバムは作っていきたいですね。

>>>第2部に続く

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